2023年7月3日、消費者庁は機能性表示食品に関する関係団体に対し、すでに届出・公表をされている科学的根拠の再検証を随時行うよう文書で要請をしました(「機能性表示食品に係る届出資料の再検証等について(依頼)」)。また重要なお知らせとして、7月7日に「<機能性表示食品に対する景品表示法に基づく措置命令を踏まえた食品表示法における対応について>」を同庁WEBサイト上に公表しました。
通知の概要
2023年6月30日、機能性表示食品として消費者庁に届出・公表された食品について、その機能性に係る科学的根拠に関する資料も含め、その表示に対応する合理的な根拠として認められないと判断がなされ、景品表示法に基づく措置命令が公表されました。この事案を踏まえ、関係団体に以下の周知を依頼しています。
- 届出した食品の安全性や機能性に関する科学的根拠を改めて再検証すること。
- 届出資料の作成・提出においては、最新の「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」及び「機能性表示食品に関する質疑応答集」並びに「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」等に基づき、適切に行うこと。
背景
通知で触れられた措置命令によると、「機能性に関する表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を求めたところ、提出された資料はいずれも表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった」とされています。対象とされた「機能性に関する表示」には届出されたものも含まれることから、科学的根拠の内容を不十分としたものであり、2015年の制度開始以来で初めてのケースといえます。そして今後は、消費者庁に届出された機能性表示食品であっても、その科学的根拠が適切なものであるかを再検証する必要がある、という経緯になっています。
また同日に、措置命令の対象となった商品と同一成分であって科学的根拠が同一であるという他の商品88件(DHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソール)に対し、科学的根拠に疑義がある点を指摘し、届出者に回答するよう求めました。その後7月27日に、15件の撤回の申し出があった旨と、撤回の申し出がなかった73件の商品の届出情報とその問い合わせ先等の一覧が同サイトに公表されています。
ガイドライン等の再確認を
通知では、最新の「ガイドライン」「質疑応答集」に加え、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」に基づいて適切に検証することとされています。この指針では、機能性表示食品の科学的根拠に関する基本的な考え方として「機能性表示食品は、表示される機能性について国が審査を行った上で消費者庁長官が個別に評価をしたものではない。したがって、表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠くと認められる場合には、その表示は事後チェックにおいて問題となるおそれがある。」と説明したうえで、科学的根拠として適切とは考えられない例などを掲載しています。
なおガイドラインについては、7月24日より一部改正案の意見募集が始まっています。上記の届出関連資料に基づいて科学的根拠を再検証する際には、ガイドラインの一部改正案の内容(「システマティックレビューのPRISMA声明(2020年)への準拠」「届出内容の責任の所在の明確化」など)もあわせて確認されるとよいでしょう。
メールマガジン配信登録
こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。
関連サービス
【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。
【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。
関連記事一覧
川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
>> 講演・セミナーの詳細はこちら
最新記事 by 川合 裕之 (全て見る)
- 食品表示に関する制度改正状況のまとめ(1) - 2024年12月6日
- 米国カリフォルニア州の食品の期限表示に関する標準化法案と期限表示をとりまく食品廃棄問題の現状について - 2024年10月31日
- 各国のアレルゲン表示に関する基準の改正動向について - 2024年10月4日