食品の新たな機能性表示制度について(1)

By | 2014年2月1日

新制度の基本的な考え方


2013年12月20日に、消費者庁にて「第1回 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が開催されました(1月31日に第2回開催)。多くの食品事業者にとって、今年もっとも関心の高いテーマの1つではないかと思います。今回は、こちらの新制度の現状についいて、まとめてみます。

同検討会の基本的な考え方として、「消費者の誤認を招かない、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」を目指す方針であると発表されています。また、大きく3つのポイントがあり、それぞれ「安全性の確保」「機能性表示を行うにあたって必要な科学的根拠の設定」「適正な表示による消費者への情報提供」をあげています。

2つの立場と課題


今回の制度は、消費者にとっての安全性と合理性を確保しながら、事業者にとっても利用しやすい表示制度であることが求められるなど、2つの立場での課題の並存が考えられます。同検討会では、今後検討に向けて想定される主な論点として、「消費者の誤認を招かない、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」と「国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上で、その旨及び機能を表示できる制度」の両立をあげています。

どの成分にどの程度の科学的根拠を求められるのか、企業にとっては商品開発のうえで難しい課題だと思います。昨年の規制改革会議(成長戦略)に端を発した制度である以上、企業にとっての使い勝手のよさが求められるところですが、同時に消費者に対して誤解を与えない情報提供をどのように周知していくのか、これらを検討していくものと思われます。

米国の制度研究と消費者意識調査


規制改革会議計画では、国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上で、機能性表示ができることを目指すために、米国の「ダイエタリーサプリメントの表示制度」を参考にする、と発表されました。これを受け、現在消費者庁では米国ダイエタリーサプリメント制度に関する課題の整理として、法令、指針、レポート、論文の和訳と、その結果から新たな機能性表示制度の検討にあたり留意すべきと思われる点を分かりやすく整理する作業を進めています。

また同時に、消費者の誤認を防ぐ新しい表示制度を目指すために、消費者の機能性表示の読み取りについて、グループヒアリングによる実態調査を進めています。さらに消費者のうち健康食品の誤認率が高いと思われる集団を含む調査集団(3000人程度)を対象に、グループヒアリングで得られた基礎的知見の妥当性をインターネット調査により検証する作業を進めています。

今後のスケジュール


米国のダイエタリーサプリメントの表示制度では、「構造機能強調表示」と呼ばれる機能性表示ができる仕組みになっています。今後企業が食品に機能性表示をするにあたり、どの程度の科学的根拠レベルが必要なのかを考えるときの有益な参考情報になると思われます。消費者庁の資料をもとに、裏面に引用掲載しておきますので参照していただければ幸いです。

この新たな機能性表示制度は、平成26年度中の実施が予定されています。検討会は今後も開催され、そのたびに具体的な制度内容が発表されてくると思いますので、こちらでも随時とりあげていきたいと考えています。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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