日本と海外各国では、食品の制度は大きく異なります。例えばアレルゲンの表示対象品目も異なってきますので、十分な事前調査が必要です。また、こうした規則の違いによる対応の難易度にも大きな差があります。例えばアレルゲンの表示基準の違いがあることについては、その違いを知ってしまえば、対応自体はそれほど難しくありません。表示を変更すればよい、ということになるためです。その一方で、規則の違いを把握できたとしても、実際に対応することはかなり難しいということもあります。
そこで今回のミニコラムでは、実務対応上の課題からみた「使用基準」と「表示基準」について簡単にまとめてみたいと思います。まずは以下の表をみてください。
基準の判断のしやすさ | 基準への対応のしやすさ | ||
---|---|---|---|
使用基準 | 原材料 | Hard | Hard(食品分類による) |
添加物 | Easy | Hard(食品分類による) | |
表示基準 | 義務表示 | Hard | Easy |
任意表示 | Hard | Easy |
使用基準については「原材料」と「添加物」の区分で、表示基準については「義務表示」と「任意表示」で分けて考えてみました。Easyは「対応が簡単」、そしてHardは「対応が難しい」という意味です。
【原材料使用基準】
原材料使用基準については、とりわけ添加物については規則をみつけること自体は難しくありません。ただし、必要であることから使用されているものであるため、同じような機能をもつ代替の添加物を探す必要があります。その際、製造性での課題や、栄養成分訴求等の品質保証の課題について検証が必要な場合は、時間がかかることになります。
添加物以外の原材料(食品素材)については、使用基準そのものをみつけることが困難な場合があります。とくにノベルフード(食経験が長くないもので例としては成分を抽出し濃縮したエキス等があります)に該当するものを主要原材料としている場合は、代替原材料の選定は難しくなります。
【表示基準】
表示事項、表示方法、禁止表示といった表示基準は、規則が分かってしまえば対応は難しくありません。ただし、原材料使用基準の規則と違い、現地の規則は長文で記載されており、現地の担当者でも理解が難しい場合があります。つまり規則の把握自体が簡単ではないとも言えます。とりわけ強調表示など特定の条件下で表示の必要性が生じる規則などについては、規則自体の把握はかなり難しい場合があります。
そして共通する課題が、「食品分類の特定」でしょう。原材料使用基準も表示基準も、日本と同様に「食品分類」によってそれぞれ異なります。輸出入の際、どこに時間がかかりそうかを考えるうえで参考になればと思います。
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関連サービス
【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
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