近年クラフトビールが盛り上がりを感じますね。大手メーカー様の商品と比較すると割高に感じられることもありますが、それぞれの醸造所独自の商品に魅力を感じる方も多いと思います。そこでクラフトビールとはそもそも何なのか、地ビールとは違うものなのかについても触れながら、今回はビールの表示について取り上げたいと思います。
まず、「地ビール」については国税庁のHPに次のように記載されています。
一つの製造場でのビールの年間の製造見込数量が2,000キロリットル以下の小口醸造ビールを地ビールといいます。平成6年4月の酒税法改正により、ビールの製造免許を取得する際の要件である最低製造数量基準が、2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことから、小規模なビールの製造が可能となりました。
また、「クラフトビール」については日本では明確な定義はないようでしたが、現在のところ「クラフトビール=地ビール」との認知が多いのではと感じられます。
一方アメリカでは、こういう醸造者が地ビール醸造者と考えられているというおおまかな概念は存在しているようでしたので、興味を持たれた方はこちらをご覧いただければと思います。
いずれのビールであっても表示が必要となる点に変わりはありません。酒類の表示については、食品表示基準や公正競争規約の他、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律等から表示事項を確認していくこととなります。表示は、それぞれに基づく表示内容が満たされている必要があり、どれかの基準に基づく表示のみをし、他の基準の表示を省略することはできません。食品表示基準において酒類に定められている表示は次の通りです。
「名称」、「添加物」、「内容量」、「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」、「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」、「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」、「遺伝子組換え食品に関する事項」、「原料原産地名」(輸入品を除く。)
(食品表示基準第3条第1項、同条第2項)※ 食品表示基準においては、酒類は「原材料名」、「アレルゲン」、「原産国名」の表示を要しないこととされており、表示義務は課されていません。(食品表示基準第5条)
(参照:食品表示法における酒類の表示のQ&A問8 一部引用)
また、食品表示基準では「保存の方法」、「消費期限又は賞味期限」、「栄養成分の量及び熱量」についても表示の省略が可能となります。
次に酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律についてですが、普段酒類を取り扱われない方にとってはほとんど接点のないものかと思います。こちらでも食品表示基準などと同様に表示すべき事項が定められており、例としては酒類の品目、アルコール分、20歳未満の者の飲酒防止に関する表示等となります。
今回はビールをテーマとしていますので、こちらのコラムでは「ビールの表示に関する公正競争規約」をメインに表示事項を確認していきたいと思います。まずは”必要な表示事項”についてです。こちらについては義務表示になりますので問題ないかと思います。
(1) ビールである旨
(2) 原材料名
(3) 賞味期限
(4) 保存方法
(5) 内容量
(6) アルコール分
(7) 事業者の名称及び所在地
(8) 取扱上の注意等
次に”特定用語の表示基準”です。ビールについて次の用語を使用の場合はそれぞれ基準に従う必要があります。これは日本語以外での表示であっても同様となります。
(1) ラガービール
貯蔵工程で熟成させたビールでなければラガービールと表示してはならない。
(2) 生ビール及びドラフトビール
熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない。この文言を容器又は包装に表示する場合は、「熱処理していない」旨を併記して表示しなければなりません。
(3) 黒ビール及びブラックビール
濃色の麦芽を原料の一部に用いた色の濃いビールでなければ、黒ビール又はブラックビールと表示してはならない。
(4) スタウト
濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビールでなければ、スタウトと表示してはならない。
※(1)~(3)までの文言は、ビールである旨が明瞭である場合には、当該文言中のビールの文字を省略し、単に「ラガー」、「生」などと表示することができる。
- 「特製」、「吟醸」等製造方法に関する文言は、施行規則で定めるところにより表示することができる。
- 「高濃度」、「高純度」、「高アルコール」等品質、成分に関する文言は、施行規則で定めるところにより表示することができる。
最後に”不当表示の禁止”についてです。表示してはならないとされている表示ですので、こちらも確認されることをおすすめします。主に商品の内容や品質などに誤認をあたえる表示が禁止されており、「原産国、産地等について誤認されるおそれがある表示」、「原材料の原産国について、あたかもその原産国のもののみを用いているかのように誤認されるおそれがある表示」等があげられています。不当表示の禁止については、公正競争規約施行規則に具体的に記載されていますので、そちらもご確認いただければと思います。
今回は地ビールということで「ビールの表示に関する公正競争規約」より確認いたしましたが、輸入品のビールについては「輸入ビールの表示に関する公正競争規約」がございますので、輸入品についてはそちらをご確認ください。
ビールについては平成29年度の税制改正により定義が拡大されたことによってこれからさらにクラフトビール(今回は地ビールと同意といたします。)が賑わいを見せるのではと思います。アルコールですので適度に楽しみながら、その地域や醸造所ならではのビールを飲み比べつつ各々の好きなビールを見つけてみてはいかがでしょうか。
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