食品表示制度の動向と主な変更点

By | 2015年1月5日

昨年、2014年は食品表示の制度に関する動きが多い年でした。
パブリックコメントなどを受けて修正もいくつかありましたので、情報の整理を兼ねてまとめてみたいと思います。

現状からの主な変更点


食品表示基準の新設に伴い、現状からの主な変更点は下部のとおりです。

【食品表示基準(案)】

1)基本部分について

<全般>
・加工食品(製造、加工)、生鮮食品(調整、選別)の定義の明確化
・原材料名と添加物の事項名を別に表示(または原材料名と添加物を明確に区分)
・製造所固有記号は、原則同一製品を2以上の製造所で製造している場合に使用可
・表示可能面積30cm2以下の省略不可項目追加 (L-フェニルアラニン化合物等)

<アレルギー>
・特定加工食品(例:マヨネーズ)及びその拡大表記(例:からしマヨネーズ)の廃止
・代替表記の拡大表記のうち、卵の「卵白」、「卵黄」の廃止

<栄養表示>
・全ての食品関連事業者に表示義務を適用(業務用、小規模事業者を除く)
・義務、推奨、任意の3区分となり、飽和脂肪酸と食物繊維が推奨に該当
・ナトリウムの量は食塩相当量で表示、ただし併記可(ナトリウム塩添加食品を除く)
・相対表示は、原則としてコーデックスガイドライン(CAC/GL 23-1997)に準じる
・「無添加強調表示」に係る規定の追加

<その他>
・「ステアリドン酸産生(大豆)」に関する表示基準の追加(遺伝子組み換え食品)
・チーズ等の加熱、乳酸菌飲料等の発酵温度に関する表示基準の追加(乳等基準府令)

2)栄養素等表示基準値と栄養機能食品
・栄養素等表示基準値の見直し
・栄養機能食品の対象成分に「n-3系脂肪酸」「ビタミンK」「カリウム」追加
・鶏卵以外の生鮮食品についても新たに栄養機能食品の基準の適用対象へ

3)機能性表示
・新たに「機能性表示食品」を食品表示基準内に規定
・安全性や有効性の科学的根拠資料を事前届出、販売前に消費者庁が公開
・必要な科学的根拠、可能な機能性表示については今後ガイドラインで 通知の見込み

食品表示業務への影響


経過措置期間にもパブリックコメント後に修正があり、加工食品及び添加物は5年、生鮮食品は1年6ヶ月へと延長されました。食品表示作成などの業務をされる方は、その間に準備と対応をすることになりますが、実務上で想定される影響についてまとめてみます。

1)原材料規格書収集段階
まずはアレルギーに関する変更点に注意が必要になると思われます。例えば規格書の原材料欄に「マヨネーズ」と記載されているだけで、アレルギー物質欄に「卵」の記載がなければ、思わぬ食品表示ミスにつながる可能性もあるでしょう。また原材料として使用する加工食品の裏面表示を参考にしている場合も、特定加工食品が含まれる場合は注意が必要です。 製造所固有記号の制度変更に伴い、製造所自体の変更と原材料内容の変更が増えると予測できますので、改版管理などこの段階での業務フロー見直しが重要だと思います。

2)表示作成段階
同じくアレルギーの表示方法の変更に伴い、原材料表示の場所の確保を検討する必要があると想定できます。また原材料と添加物の区分を明確に表示するといったルールの追加により、ほとんどの食品で改版が必要になると考えられます。

3)規格書管理段階
管理項目の追加を検討する必要がある変更点もあります。食塩相当量の表示、栄養成分の推奨表示の追加(飽和脂肪酸、食物繊維)などが該当するでしょう。また栄養素等表示基準値の見直し内容によっては、栄養成分の再計算が必要になる可能性もあると思われます。

4)継続的な品質保証
栄養成分表示の設定根拠となった資料の保管に加え、機能性表示もしくはそれに準ずる表示(例:美容・健康に良い等)をする際には、科学的根拠となる資料の保管も重要になるでしょう。また不当表示にならないよう、科学的根拠となる資料の判断や定期的な検査などの品質保証業務も、商品開発担当者と業務フローを決めておく必要があると思われます。

今年は、こうした新しい制度について詳細なガイドラインやQ&Aも発表されていくと想定されます。現在の業務フローを整理しながら、どのように対応していくべきかを検討していくことが大切になるでしょう。いろいろややこしい話が多いですが、お客様により安心してもらえる食品表示のための1つの機会になればと思います。

参照資料:
消費者委員会 食品表示部会(10月31日)


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食品表示コンサルティング:原材料及び添加物の適合性検証、容器包装への食品表示案の適合性検証
配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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