「そしゃく配慮食品」の日本農林規格が制定されました

By | 2016年10月4日


 2016年8月17日、「そしゃく配慮食品の日本農林規格(JAS規格)」が制定されました。以前より農林水産省の部会等で検討されてきた「新しい介護食品(「スマイルケア食」)」に、規格を設けてJASマークを表示することができるようになります。

4つの分類と定義


そしゃく配慮食品の定義は、以下のとおりです。

「通常の食品に比してそしゃくに要する負担が小さい性状、固さその他の品質を備えた加工食品(乳児用のものを除く。)をいう。」

そして、以下の4つの分類が定義づけられています。

容易にかめる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかみ切り、かみ砕き又はすりつぶせる程度のもの(適度なかみごたえを有するものに限る。)をいう。
歯ぐきでつぶせる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかめる食品と舌でつぶせる食品の中間程度のものをいう。
舌でつぶせる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、舌と口蓋の間で押しつぶせる程度のものをいう。
かまなくてよい食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、かまずに飲み込める程度のものをいう。

かまなくてもよい食品を除く3食品には「一般に飲食に供される食品としての外観及び食味を有していること」が要件とされています。加えて、舌でつぶせる食品とかまなくてよい食品の2食品には「著しい離水がないこと」の要件が必要とされ、4つの食品すべてに「付着性及び凝集性が適度であること」が必要とされます。

表示の方式


 そしゃく配慮食品においては「表示の方式」が定められており、以下の表示を「容器または包装の見やすい箇所」に表示することとなっています。

  • 容易にかめる旨、歯ぐきでつぶせる旨、舌でつぶせる旨、かまなくてよい旨
  • 調理方法(食品表示基準で調理方法の表示義務が規定されているものを除く)
  • 内容量または固形量および内容総量

 文字ポイントの規定までは記載がありませんが、「そしゃく配慮食品」の特性を考えると、読みやすい大きさでの表示が望ましいと思われます。ここで、そしゃく配慮食品の農林規格が制定された背景である「新しい介護食品(スマイルケア食)」について整理してみたいと思います。

スマイルケア食とは


[背景]

  • 65歳以上の高齢者人口は、平成14年度の2,363万人から平成24年度の3,074万人へと約1.3倍に増加し、今や4人に1人が65歳以上の高齢者となっている。
  • 高齢者の中には、きちんと食事をとらない為にエネルギーやタンパク質などが不足し、体重の減少、食欲減退、だるい、歩けなくなるといった症状が起きてくる「低栄養」状態になってしまう方も多くいる。
  • そこで役立つのがスマイルケア食(新しい介護食品)。見た目も美しく、おいしく食べられる。

[対象者]

原則、在宅の高齢者や障がい者の方であって、

  • 食機能(噛むこと、飲み込むこと)に問題があることから栄養状態が不良
  • 食機能に問題があるが、本人又は介護を行っている方の食内容や食形態の工夫により栄養状態は良好
  • 食機能に問題はないが、栄養状態が不良

+上記に移行する恐れのある人

[内容]

  • 単品としての加工食品(レトルト食品など)
  • 個々の食品が組み合わされた料理
  • 料理を組み合わせた一食分の食(配食サービス、宅配食など)

[対象外]

  • 治療食
  • 病院食
  • 形状がカプセル、錠剤のもの

(参照:農林水産省ホームページ「スマイルケア食」)

 スマイルケア食は、「美味しさ」や「食べる楽しみ」への配慮を要件としており、今後普及を推進していくとされています。今年2月からは「青マーク」と呼ばれる分類(医師等の指導のもと摂取)マークの運用が始まっており、すでにいくつかの商品において、マーク利用の許諾を受け販売されています。
 今回のそしゃく配慮食品の農林規格は、医師等の指導によらず消費者自身が選択できる商品分類(赤マーク、黄色マーク)の規格として制定されたものといえます。高齢者向けの食品等を扱う事業者の方、今後そうした食品を扱うことに関心のある方は、一度情報を確認してみてはいかがでしょうか。

参照:そしゃく配慮食品の日本農林規格
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/kikaku_itiran-7.pdf
スマイルケア食(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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