新しい食品表示基準の動向について(2)

By | 2014年5月2日

平成25年6月に「食品表示法」が公布され、昨年11月から「食品表示基準」の内容について検討が行なわれています。
先月は中間報告までの動向をお伝えしましたが、引き続き検討されていますので、その動向についてご紹介します。

1 レイアウト、文字の大きさについて


現行、文字の大きさについては原則8ポイント以上、例外として容器又は包装可能面積が150cm2以下の場合は5.5ポイント以上、容器又は包装の面積が30cm2以下の場合は一部省略可能となっていました。また、レイアウトは容器、又は包装の見やすい箇所に様式に沿って、もしくはわかりやすく一括して記載していました。

今回、表示の見やすさという観点から、高齢者の方々にも見やすい表示をといった検討がされましたが、栄養表示の義務化などがあり、表示可能面積が限られた中での表示で文字の大きさの拡大は難しいことから、文字の大きさは8ポイントのままということになりました。省略規定については、容器又は包装の面積が30cm2以下の場合、5.5ポイント以上を6.5ポイント以上に拡大という案もでていましたが、栄養表示の義務化に伴う表示面積の拡大を踏まえ、50cm2以下に拡大されました。

レイアウトについてもほぼ変更はありませんが、「食品添加物以外の原材料と食品添加物は、違いを明確にするために区切り(例 「/」 「:」等)を記載する」といった案が出ています。

2 アレルギー表示について


現行、アレルギー表示は個別表示(繰り返しになるアレルゲンは省略可)を原則としていますが、使用している原材料が多く、表示可能面積の制約がある場合、表示量が多く、かえって消費者にわかりにくい表示となる場合は例外的に一括表示(アレルゲンそのものが使用されていたり、代替表記等で表示されているものは省略可)が可能となっていました。

食品表示基準では、個別表示については、繰り返しになるアレルゲンも省略不可として記載をしてはどうかという案がでています。この案が出た理由としては、使用されている原材料によって食べられるものもある(醤油に含まれる小麦であれば摂取できる等)方もいることから、商品選択を広げるために個別表示にしたほうがよいのではといった理由からです。

また、一括表示についても、現行省略可能とされている内容を省略不可として、含まれるすべてのアレルゲンを把握でき、見落とし防止できるようにしたほうがよいという提案も出ています。

さらに、特定加工食品の代替表記についても見直されています。

・「アレルゲン又はその代替表記を含まないもの(例:マヨネーズ等)」が廃止
・「アレルゲン又はその代替表記を含むもの」のうち「卵白」「卵黄」の廃止
・乳を原材料とする食品についての代替表記も「種類別」がなくなり、「代替表記」が設けられ、「特定加工食品」については先に述べたものと同じように廃止

これらが検討されている理由としては、マヨネーズに卵が含まれていることを知らなかったり、卵白・卵黄については完全分離が困難であることがあげられています。また、「乳を含む」「乳製品を含む」「乳成分を含む」も「乳化剤」等の紛らわしい言葉と区別するため、「乳成分を含む」に統一してはどうかといった検討もされています。

3 製造所固有記号について


現行、製造所所在地や製造者の氏名について義務付けられていますが、消費者庁への届出をした場合、その固有記号を記載することで製造者の氏名の表示に代えることができると規定されていました。食品表示基準では、原則、今までどおり製造所所在地や製造者の氏名については表示することには変更がないのですが、例外的に認められている製造所固有記号の取得に下記のような変更案が出されています。

1:2以上の工場で製造する商品のみ利用可能
2:消費者からの問い合わせがあった場合の応答義務
3:現行のデータベースから新データベースへ移行し、開始届、変更及び廃止届、さらに有効期間を設定し更新(消費者の閲覧可)

こうした変更案が出されており、メリットとしては、消費者が製造所の所在地情報を得られます。しかしながら、デメリットとして、放射性物質はじめ風評問題による購入地域の偏りや事業者への改版の負担などがあり、さらに検討される見通しです。

先月、今月と検討されている内容についてご紹介してまいりましたが、食品表示が消費者にとってわかりやすいものであることは前提としてあります。一方で、事業者にとっても苦痛にならない内容で決められていけばよいと感じています。食品表示基準のパブリックコメント募集は今年の夏の予定です。2020年の栄養表示の義務化もあり、改版は免れない傾向にありますが、食品製造や食品表示業務に従事されている方は、栄養表示の表記の準備と共に、食品表示基準の改正の動向も随時ご確認をされることをおすすめします。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
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