アレルゲンフリーの表示について

By | 2015年12月1日

 「アレルゲンフリー(小麦・卵・乳成分)」といった表示をみて消費者が受ける第一印象は、「小麦・卵・乳成分のアレルギーは含まれていない」といったものではないかと思います。

 しかし実際には、「原材料として小麦、卵、乳成分を使わずにこの商品をつくりました」といったことであれば、受ける印象も変わってきます。

 つまり、「フリー」と「不使用」は異なるということです。「ある特定原材料(アレルゲン)を使用せずに作りました」といった表示については、食品表示基準Q&Aに、参考になる記載があります。

(E-25)特定の特定原材料等を使用していない旨の表示があれば、当該特定原材料等が含まれていないと考えてよいですか。
(答)
 「使用していない」旨の表示は、必ずしも「含んでいない」ことを意味するものではありません。これは、表示をする者が、特定原材料等の使用の有無について、製造記録などにより適切に確認したことを意味するものです。
 例えば、一般に「ケーキ」には「小麦粉(特定原材料)」を使用していますが、「小麦粉」を使用しないで「ケーキ」を製造した場合であって、それが製造記録などにより適切に確認された場合に、「本品は小麦(粉)を使っていません」と表示することができます。しかし、このような場合であっても、同一の調理施設で小麦粉を使ったケーキを製造していた場合、コンタミネーションしている場合がありますので、この表示をもって、小麦が製品に含まれる可能性を否定するものではありません。
 このため、「使用していない」旨の表示をする場合は、コンタミネーションの防止対策の徹底も図るなど、できる限り、アレルゲンの混入を防止するよう努めてください。

 では、こうした混入防止対策をしたうえで、「特定原材料は含まれていません」、といった意味で「アレルゲンフリー」と表示したい場合はどうすればいいのでしょうか。

 参考として、「アレルゲン除去食品」という、消費者庁より許可を受けた場合にのみ表示ができる食品があります。「特定の検査方法により、特定のアレルゲンが検出限界以下である」などの基準があることが1つの目安です。そして加工食品中の特定原材料等の総タンパク量が数μg/g未満の場合、アレルギー表示の必要性がないとされていることも、基準値として目安になるかと思います(食品表示基準Q&A C-3)。

 フリーと表示する際には、まずは配合や製造工程など、コンタミネーション(混入)の防止対策が徹底されているかを確認します。そして自社商品に表示したい特定原材料について、検査します。小麦・卵・乳成分と表示したい場合は、それらの項目についての検査結果がすべて検出限界以下であることを確認してから出荷するなど、品質保証を強化することが求められるでしょう。ついで、こうした許可のある食品と誤認させるような表示をしないよう、注意することが必要です。「除去」といった用語は使用せず、「アレルゲンを使わない」「持ち込まない」の表示をする商品がみられます。

 これらの対応をしたうえでも、やはり大切なのは、市販後の定期的な分析の継続だと思います。
以上のように製造面ではいろいろな課題はあるのですが、アレルギーに配慮した食品が増えることは歓迎されるものですので、こうした確認を1つ1つ積み上げることも大切な仕事ではないかと思います。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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