原料原産地表示の表示実態調査結果が公表されました~その他、アレルゲン表示の視認性向上について~

By | 2022年5月13日

【2022年5月26日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年3月28日に公表された「アレルゲン表示の視認性向上に関する取組状況」の調査結果を踏まえ、アレルゲン表示ミス防止のポイントをお伝えします。また、海外の主要国のアレルゲン表示制度(主に対象品目)との違いをもとに、輸入および輸出時の規格書確認業務の注意点についてお伝えしたいと思います。

 2022年3月28日、消費者庁は「令和3年度 新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果」を公表しました。新たな原料原産地表示制度は2017年9月の食品表示基準改正によって始まり、経過措置期間を終えた今年2022年4月より新制度に移行しています。制度改正とその後の表示について振り返る機会にできるよう、公表された調査結果をこちらに整理してみたいと思います。

調査の概要


 実態調査は2019年より開始されており、今回で3回目となります。過去3回分をあわせると、以下のようになります。
原料原産地表示に関する調査項目3点は共通で、その他は年度により必要とされた調査が行われているようです。

  2019年度 2020年度 2021年度
日時 2019年7月29日 2020年7月27日 2021年7月27日
場所 神奈川県横浜市の食品スーパー
対象(内訳) 各商品棚の上から2段目の商品1,514 点
(内訳:国産品1,349 点、輸入品165 点)
各商品棚の上から2段目の商品1,349点
(内訳:国産品1,231点、輸入品118点)
各商品棚の上から2段目の商品1,744点
(内訳:国産品1,458点、輸入品286点)
調査項目 (1)加工食品の原料原産地表示の有無
(2)原料原産地表示の根拠法令等
(3)新たな原料原産地表示における商品の表示方法
(4)食品表示基準に基づく表示の実施状況 (4)アレルゲン表示の視認性向上に関する取組状況
  (5)食品添加物の不使用表示等の表示状況  
調査方法 義務表示事項の記載箇所(一括表示欄)及び容器包装上に表示された強調表示等をデジタルカメラで撮影し、確認。

原料原産地表示の有無


 これまでの3回分もあわせてみると、以下のようになります。2021年度の「原料原産地表示なし」の調査結果については、調査実施時点では経過措置期間まで約半年間残っていたためと思われます(賞味期限の短い食品を中心に、2021年9月以降に新制度への表示切替えが行われたケースも多くあります)。

  2019年度 2020年度 2021年度
原料原産地表示あり 494 627 1,122
原料原産地表示なし 855 602 332
合計 1,349 1,229 1,454
※添加物のみで構成される加工食品(2020年は2点、2021年は4点)を除く。

原料原産地表示がある商品の根拠法令


 こちらは以下のとおりです。「②新たな原料原産地表示」が調査期間の3年でもっとも増えており、新しい表示制度のもとで初めて対象となった食品が多いことがうかがえます。

  2019年度 2020年度 2021年度
①従来からの原料原産地表示
(食品表示基準別表第15)
91 88 87
②新たな原料原産地表示
(食品表示基準第3条(別表第15を除く))
274 457 892
③米トレーサビリティ法 99 55 98
④酒類業組合法 14 11 26
⑤公正競争規約 15 14 18
⑥業界ガイドライン等 1 2 1
合計 494 627 1,122

新たな原料原産地表示がある商品の表示方法


 こちらは以下のとおりです。国別重量順表示が多くを占める結果となっています。

対象原材料が生鮮食品の場合

  2019年度 2020年度 2021年度
産地表示(国別重量順表示) 131 161 244
産地表示(又は表示) 2 6 21
産地表示(大括り表示) 2 8 9
産地表示(大括り表示+又は表示) 0 0 8
合計 135 175 282

対象原材料が加工食品の場合

  2019年度 2020年度 2021年度
製造地表示(国別重量順表示) 134 273 568
製造地表示(又は表示) 0 4 14
製造地表示(大括り表示) 1 2 14
製造地表示(大括り表示+又は表示) 4 3 14
合計 139 282 610
※「又は表示」:原材料の原産地として使用する可能性のある複数国を、過去の一定期間における産地別使用実績又は今後の一定期間における産地別使用計画における重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法
※「大括り表示」:外国の原産地表示を「輸入」などと括って表示する方法

アレルゲン表示の視認性向上について


 最後に、2021年度のみの調査にはなりますが、アレルゲン表示の視認性向上に関する調査結果のうち一部を抜粋します。

一括表示枠内にアレルゲン表示有のうち、その表示方法

  商品数
個別表示 445
一括表示 588
合計 1,033
※「個別表示」:個々の原材料又は添加物の直後に括弧を付して特定原材料等を含む旨を表示する方法
※「一括表示」:当該食品に含まれる全ての特定原材料等について、原材料欄の最後(原材料と添加物を事項欄を設けて区分している場合は、それぞれ原材料欄の最後と添加物欄の最後)に「(一部に○○・○○・…を含む)」と表示する方法

一括表示枠外のアレルゲンに関する強調表示の有無

  商品数
表示あり 598
表示なし 435
合計 1,033

一括表示枠外のアレルゲンに関する強調表示有のうち、対象範囲(対象品目数)に関する表示の有無

  商品数
特定原材料のみである旨の表示 7
特定原材料等である旨の表示 534
表示なし 57
合計 598
※「アレルゲンの対象範囲(対象品目数)に関する表示」表示例

  • 特定原材料のみである旨の表示:「アレルゲンは義務7品目を対象範囲としています。」、「アレルゲン(特定原材料のみ)」等
  • 特定原材料等である旨の表示:「この食品は28品目のアレルゲンを対象範囲としています。」、「アレルゲン(28品目対象)」等

一括表示枠内にアレルゲンに関する表示がない商品の「特定原材料等を使用していない旨の表示」の有無

  商品数
表示あり 47
表示なし 410
合計 457

 その他、「一括表示枠外にアレルゲンに関する強調表示がある商品の文字の表示方法(一括表示枠内の表示事項の文字と比較した際の「文字の色」、「文字の大きさ」、「文字の太さ」及び「下線の有無」)」などの調査結果も確認することができます。

 原料原産地表示の表示方法についてはあくまで実態の把握にとどまるかと思いますが、アレルゲン表示については対象範囲に関する表示や文字の表示方法など今後の改善のヒントになる情報も含まれるといえますので、ぜひ一度見ておかれるとよいと思います。

参照:新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果(消費者庁)
令和3年(2021年)度
令和2年(2020年)度
令和元年(2019年)度

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
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