「食品表示基準」「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」が改正されました~くるみのアレルゲン表示義務化、その他~

By | 2023年4月5日


 2023年3月9日、消費者庁は「食品表示基準」「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」の改正を発表しました。主な改正内容としては、くるみのアレルゲン表示義務化、特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加、が挙げられます。今回は、くるみのアレルゲン表示義務化について、詳細を以下に整理してみたいと思います。
(※特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加については、過去のコラムを参照ください。)

「食品表示基準」の主な改正点


 別表第十四にくるみが追加され、特定原材料が7品目から8品目へと変更されました。

改正前(旧) 改正後(新)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

「食品表示基準について」の主な改正点


 “特定原材料に準ずるもの“からくるみが削除され、21品目から20品目へと変更されました。

改正前(旧) 改正後(新)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

別表1(特定原材料等の範囲)は、変更はありません。ただしQ&A(後述)に「範囲」が追加されています。

特定原材料等 分類番号(1) 分類番号(2) 大分類 中分類 小分類
くるみ 69 8591 殻果類 その他の殻果類 くるみ

別表2(特定原材料等由来の添加物についての表示例)への、表示例の追加はありません(改正前と同じ)。

特定原材料の名称 区分 添加物名 特定原材料の表示 備考
くるみ

別表3(特定原材料等の代替表記等方法リスト)への、表記例の追加はありません(改正前と同じ)。

特定原材料(食品表示基準で定められた品目) 代替表記 拡大表記(表記例)
表記方法や言葉が違うが、特定原材料と同一であるということが理解できる表記 特定原材料名又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例
くるみ クルミ くるみパン くるみケーキ

 なお「2.2定性検査法」に、リアルタイムPCR法とPCR-核酸クロマト法に関する追加がなされています。

改正前(旧) 改正後(新)
定性検査法には、ウエスタンブロット法やPCR法がある。一般に、卵、乳については、ウエスタンブロット法が用いられる。一方、小麦、そば、えび、かに、落花生については、一般にPCR法が用いられる。
なお、ウエスタンブロット法、PCR法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等あるいは同等以上の性能を持っていること。
(略)
定性検査法には、ウエスタンブロット法、PCR法、リアルタイムPCR法やPCR-核酸クロマト法がある。一般的に、卵、乳については、ウエスタンブロット法が用いられる。一方、えび、かにについては一般的にPCR法、小麦、そば、落花生については一般的にPCR法又はリアルタイム PCR法、くるみについては一般的にリアルタイムPCR 法又はPCR-核酸クロマト法が用いられる。
なお、ウエスタンブロット法、PCR法、リアルタイムPCR 法、PCR-核酸クロマト法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等又は同等以上の性能を持っていること。
(略)

 この追加に関連して、「定性検査法」の詳細の追加および「判断樹について」の変更がなされていますので、検査方法について確認をされたい場合は一度目を通しておかれるとよいでしょう。

「食品表示基準Q&A」の主な改正点


 くるみの範囲に関するQ&A(D-3)が追加されました。

(D-3)特定原材料の「くるみ」の範囲を教えてください。
(答)
「くるみ」とは、日本標準商品分類番号 698591 のくるみであり、主に流通している海外産(チャンドラー種やハワード種など)に加えて、国産(オニグルミ、カシグルミやヒメグルミなど)も表示の対象としています。また、くるみオイル、くるみバター等もアレルゲンとなるので、注意が必要です。

 なお本稿には含めておりませんが、「特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加(別表第十八への追加)」に関連して、Q&Aも一部追加および変更がなされています。またその他の改正点として、「セットで販売され、通常一緒に食される食品」の栄養成分表示の方法について、Q&Aの追加がなされていますので、関連する食品を取り扱いされる方はご確認ください。

経過措置期間と今後について


 以下のとおり、令和7年3月末までとされています。

この府令の施行の日から令和七年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、この府令による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 くるみのアレルゲン表示義務化は、平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書において、くるみを筆頭に木の実類の即時型アレルギーの健康被害が大幅に増加していると報告されたこと等を受け、改正に至った経緯があります。

 また、その後の令和3年度の調査においてもさらに症例数が増えている実態がありますので、経過措置期間であっても、消費者からの問い合わせには対応できるよう、原材料規格書などの情報管理について改めて確認することが大切だといえるでしょう。

参照:
食品表示法等(法令及び一元化情報)
新旧対照条文 (食品表示基準 令和5年3月9日内閣府令第15号)
新旧対照表 (食品表示基準について 第28次改正)
新旧対照表 (食品表示基準Q&A 第15次改正)


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関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
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・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
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