今回は、各国の栄養成分および健康に関する表示の動向について、整理していきたいと思います。
米国 包装前面栄養表示
2023年12月14日、米国上院下院議員より包装前面栄養表示(FOPNL)の義務化に関する法案についての報道発表がありました。法案全文(PDF)では、①主要表示面の一定の場所に表示されること、②既存の表示と視覚的に対照的で目立つデザインであること、③容易に判別できる十分な大きさであること、等を主な要件としています。また同報道発表の事前調査によると、75%の回答者が包装前面栄養表示の義務化を支持しているとされています。今後米国に食品を輸出する際の、消費者ニーズについて参考になると思われます。
なお、日本では2023年11月2日より、「包装前面栄養表示(FOPNL)」の検討が開始されたところです。
オーストラリア 添加糖類の任意表示
2023年11月14日、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は添加糖類の任意表示に関する基準改正案を承認したと公表しました。改正案では、①基準で定義される添加糖類を含んでいる場合、②添加糖類は含まれなくとも、10.0g/100g(固形)、7.5g/100ml(液状)を超える糖類(例:単糖類、二糖類)を含む場合は、「no added sugar(s)」(糖類不使用)の表示をしてはならないとされています。
日本では添加糖類の表示基準はありませんが、「糖類を添加していない旨」(例:糖類不使用)の表示ができる基準(①いかなる糖類も添加されていない、②糖類に代わる原材料又は添加物を使用していない、③当該食品の糖類含有量が原材料及び添加物に含まれていた量を超えていない、④糖類の含有量を表示している)は定められています。
韓国 「無糖」と「甘味料が使用されている旨」の表示
2023年12月28日、韓国食品医薬品安全省(MFDS)は食品表示基準改正案を公表しました。改正案のうち栄養成分に関する基準として、 甘味料が使用されている製品に「無糖」等の強調表示する場合は、熱量に関する情報と甘味料が使用されている旨を表示しなければならない、とされています。(その他、酒類の熱量の表示サイズを大きくし太字にするなどの改正案が提示されています。)
日本では甘味料が使用されている旨に関する表示基準はありません。(なお、「甘味料不使用」と表示する場合には、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」に注意する必要があります。)
英国 「健康的でない」食品や飲料への広告規制
2023年12月13日、英国の広告関連団体ASAおよびCAPは、英国政府の方針にもとづき健康的でない商品に関する広告規制を2025年10月より開始すると発表しました。「HFSS(High in fat, sugar, salt)」(脂質、糖分、塩分が高いもの)に分類される製品を対象とし、5:30~21:00の広告が禁止されます。
日本では同様の規制はありませんが、酒類などの広告には自主基準が運用されています。
各国で様々な動向がありますが、こうした改正案の資料にはその背景などが記載されていることがよくあります。食品の輸出入では、その国の関心について知ることも大事だと思いますので、機会をみて読んでいただければと思います。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
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