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上級食品表示診断士。主に海外から国内に輸入される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。

日本農林規格の様式改正について

概要


 2023年8月23日、日本農林規格調査会が開催され、「ジャム類の⽇本農林規格」、「醸造酢の⽇本農林規格」等の8規格の改正について審議が行われました。今回の改正ではJASの今後の利便性の向上を目的とした様式の変更、「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の⽇本農林規格について」では表示事項において新設の内容が設けられる予定です。

背景


 JASについては、「⽇本農林規格の制定・⾒直しの基準」(令和4年8⽉29⽇ ⽇本農林規格調査会決定)により制定・⾒直し内容の妥当性が判断されます。今回の改正では対象JASの様式をJIS Z 8301に合わせることで国際規格との連動性や規格の検索性・利便性向上を図り、今後の活用の幅を広げることを主な目的としたものと考えられます。(※JIS Z 8301とは、日本産業規格などの規格票の構成及び規格の作成方法について規定されたものです。)

改正の内容


 今回、改正が行われる規格は以下の8規格となっております。
・障害者が⽣産⾏程に携わった⾷品の⽇本農林規格 ・⻘果市場の低温管理の⽇本農林規格 ・ジャム類の⽇本農林規格 ・醸造酢の⽇本農林規格 ・トマト加⼯品の⽇本農林規格 ・ドレッシングの⽇本農林規格 ・異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の⽇本農林規格 ・パン粉の⽇本農林規格

 今回の改正では8規格においてJASの国際規格との連動性、規格の検索性・利便性向上のため、他のJASと同様に ISOの様式作成の⼿引きを考慮して作成されたJIS Z 8301に従った様式への変更などが行われる予定となっております。

 トマト加⼯品の⽇本農林規格のトマトジュースの一部内容を例に従来と改正後の様式の違いをご確認下さい。

<従来>

4 品質
4.1 トマトジュース
4.1.1 性状
 性状は,次による。
a) 香味及び色沢が良好であり,かつ,異味異臭があってはならない。
b) 粒子が細かく,その分布が均一であり,かつ,粘ちょう性が適度でなければならない。
c) きょう雑物がほとんどないこととする。
4.1.2 無塩可溶性固形分
 無塩可溶性固形分は,5.2 及び 5.3 によって試験したとき,4.5 %以上とする。
(略)

<JIS Z 8301規格対応>

4 品質
4.1 トマトジュース
 トマトジュースの品質は,表1の品質基準に適合していなければならない。

表 1-トマトジュースの品質基準

区分 基準
性状  
次による。
a) 香味及び色沢が良好であり,かつ,異味異臭がないこと。
b) 粒子が細かく,その分布が均一であり,かつ,粘ちょう性が適度で あること。
c) きょう雑物がほとんどないこと。
無塩可溶性固形分  
5.2 及び 5.3 によって試験したとき,4.5 %以上。

(略)

 また、「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の⽇本農林規格」における表示事項について、従来では異性化液糖は「果糖含有率、内容量」、砂糖混合異性化液糖は「異性化液糖の果糖含有率、砂糖含有率、内容量」のみとなっていましたが、今回の改正により両品目に対して「名称、保存の方法、賞味期限、原材料名、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所、原産国名」が項目としてリスト化され、表示すべき項目名が明確にされる予定です。

今後について


 様式の改正により国際規格との連動性や規格の検索性・利便性が向上することで今後の使用の幅が更に広がるものと考えられます。今回の改正に該当する食品に携われている方やJAS制度の利用を検討されている方は改正後の内容に一度目を通されることをおすすめいたします。


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「清酒の製法品質表示基準」の一部改正について


 令和4年7月19日、国税庁より「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達の一部改正について(法令解釈通達)」の通達がありました。

 清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)は、酒類業組合法(昭和28年法律第7号)の規定に基づき平成元年11月に制定(平成2年4月適用)されています。平成元年当時、清酒については、酒造技術の発達や消費の多様化に伴い、吟醸酒、純米酒、本醸造酒といった製法や品質の異なるさまざまなタイプの清酒が酒屋さんの店頭で見られるようになりましたが、それらの表示には法的なルールがなかったため、消費者からどのような品質のものかよく分からないという声が高まっており、消費者の商品選択のよりどころとして制定がされました。

 当該基準では、消費者利益の保護の観点から特定名称を表示するのにふさわしい製法品質の確保と表示の適正化を図るため、特定名称表示の要件を規定するほか、清酒全般における必要表示事項等が規定されています。今回、国内外の消費者にとっての表示の分かりやすさや日本酒のブランド価値向上等の観点より行われた改正の内容について、改正前の表示基準の概要と共に確認したいと思います。(※赤字は必要な見直しが実施される項目です。)

表示基準の概要(改正前)


特定名称表示

特定名称の清酒とは、吟醸酒、純米酒、本醸造酒をいい、それぞれ所定の要件に該当するものにその名称を表示することができます。 なお、特定名称は、原料、製造方法等の違いによって8種類に分類されます。
特定名称:吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、本醸造酒、特別本醸造酒

必要記載事項

清酒には、次の事項を、原則として8ポイントの活字以上の大きさの日本文字で表示することになっています。
(1)原材料名
(2)製造時期
(3)保存又は飲用上の注意事項
(4)原産国名(輸入品の場合に記載します。)
(5)外国産清酒を使用したものの表示

以上のほか、次の事項も必ず表示するよう清酒製造者に表示義務が課されています。
製造者の氏名又は名称、製造場の所在地、内容量、清酒、アルコール分

任意記載事項

次に掲げる事項は、それぞれの要件に該当する場合に表示することができます。
(1)原料米の品種名
表示しようとする原料米の使用割合が50%を超えている場合に、使用割合と併せて、例えば、山田錦100%と表示できます。
(2)清酒の産地名
その清酒の全部がその産地で醸造されたものである場合に表示できます。
(3)貯蔵年数
1年以上貯蔵した清酒に、1年未満の端数を切り捨てた年数を表示できます。
(4)原酒
製成後、水を加えてアルコール分などを調整しない清酒に表示できます。
(5)生酒
製成後、一切加熱処理をしない清酒に表示できます。
(6)生貯蔵酒
製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理した清酒に表示できます。
(7)生一本
ひとつの製造場だけで醸造した純米酒に表示できます。
(8)樽酒
木製の樽で貯蔵し、木香のついた清酒に表示できます。
(9)「極上」、「優良」、「高級」等品質が優れている印象を与える用語
自社に同一の種別又は銘柄の清酒が複数ある場合に、品質が優れているものに表示できます(使用原材料等から客観的に説明できる場合に限ります。)。
(10)受賞の記述
国、地方公共団体等公的機関から受賞した場合に、その清酒に表示できます
上記以外の事項については、事実に基づき別途説明表示する場合に限り表示しても差し支えないことになっています。

表示禁止事項

次に掲げる事項は、これを清酒の容器又は包装に表示してはいけません。
(1)清酒の製法、品質等が業界において「最高」、「第一」、「代表」等最上級を意味する用語
(2)官公庁御用達又はこれに類似する用語
(3)特定名称酒以外の清酒について特定名称に類似する用語

主な改正事項


製造時期表示の改正

・製造時期表示について、食品の国際規格であるコーデックス規格や食品表示基準に沿って、必要記載事項から任意記載事項に変更。
・現行の製造時期表示の取扱い(原則として容器詰めした年月表示)に代えて、商品特性に応じた日付表示(出荷等の時期)を可能とする。
(注)具体的な日付表示は、日本酒造組合中央会において明確化。

受賞記述表示の改正

現行の受賞の記述表示の取扱い(公的機関から付与された賞に限り受賞機関及び受賞年の表示可)を廃止し、公的機関以外の機関から付与された賞の表示を可能とする。
食品表示基準に倣い、品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語及び官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語を表示の禁止事項に追加。

その他の改正(通達)

上記のほか、「生原酒」、「生貯蔵原酒」など原酒、生酒、生貯蔵酒、樽酒の用語を複合して用いることを可能とする等、取扱通達において関係規定の見直しを実施。

※ 令和5年1月1日から適用。適用日前に移出等した清酒について、必要な経過措置を設ける。

 以上、清酒の製法品質表示基準の概要及び改正内容について見てまいりましたが、改正の背景としては国際規格や食品表示基準に沿った内容にすることでの表示の分かりやすさ、製品特性に合わせた表示を行う事でのブランド価値の向上等が考えられます。清酒を扱われている方におきまして、一度改正内容について目を通されるとよいと思います。今回の情報がお役に立ちましたら幸いです。


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