【最近の講演・セミナー実績】
・2024年9月3日「日本の食品・飲料市場について: 食品基準、添加物、表示基準」Kansai Food & Beverage Forum 2024:CCI France Japon様主催。
・2024年4月12日「日本の菓子市場について:食品基準、添加物、表示基準」 ISM Japan 国際菓子専門見本市様主催。
欧州食品安全機関本部(HoA)は最近、サプリメントに関する作業部会(WG FS)からの重要な報告書を発表しました。この報告書では、サプリメントによく使用される13種類の物質の使用制限または禁止を提案しています。この取り組みは、消費者保護を強化し、欧州連合(EU)全体で調和のとれた規制アプローチを確保することを目的としています。
WG FSは合計117種類の物質をレビューし、サプリメントとして摂取された場合の潜在的な健康リスクを評価しました。このレビューに基づいて、13種類の物質が潜在的な健康リスクのために優先的に特定されました。これらの13種類の物質については、すでに所轄官庁 食品評価(CAFAB)の新規食品作業部会が連絡を取り、「新規でない※1」または「NFSでない※2」と確認されています。
13種類の物質の概要
植物製剤に含まれるクマリン
ウコン(Curcuma spp.)製剤に含まれるクルクミン
セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)
メラルーカ(Melaleuca spp.)精油
メラトニン
ピペリン
ミカン属(Citrus spp.)製剤に含まれるp-シネフリン
トリプトファン
ブラックコホシュ(Actaea racemose)
マカ(Lepidium meyenii)
カミメボウキ(Ocimum tenuiflorum)
ハマビシ(Tribulus terrestris)
アシュワガンダ(Withania somnifera)
※1 新規でない(Not Novel):’新規でない’ と分類された物質は、1997年5月15日以前にEUでの消費の歴史があるため、新規食品規則(EU)2015/2283に基づく事前市場承認を必要としません。
※2 NFSでない(Not NFS: Not for Supplement Use): ‘NFSでない’ と見なされる物質は、科学的証拠に基づいて、サプリメントでの使用が健康リスクを引き起こす可能性があると示唆されているものです。
食品表示規制での注目すべき流れとして、各国で積極的に取り組みがされている「Front of Pack」表示があります。
シンガポール(Nutri-grade)、オーストラリア(Health Star Rating)、イギリス(Color-coded GDA)、ヨーロッパ地域(Nutri-score)など、それぞれ異なる名称で採用されています。現在、他の国もこの「健康的」な流れに追随しており、例えばブラジルでは昨年2022年10月に同様の表示規制が施行されました。
このような法律は、健康に関連する特定の栄養素が多く含まれていることを、消費者にわかりやすく伝えることを目的としています。
食品が以下の量の栄養素を含む場合、パッケージの前面や上部に、場合に応じて1つまたは複数の栄養素を示す「虫眼鏡」マークを表示する必要があります。
“gene derived from (common name of such animal)” (○○由来の遺伝子)
“gene derived from (origin)”(○○由来の遺伝子)
“genetically modified (name of the ingredient)”(遺伝子組換え(○○))
次回は、本年2月22日にFDAから発表された’Draft Guidance for Industry: Labeling of Plant-Based Milk Alternatives and Voluntary Nutrient Statements’(プラントベース(代替乳)製品の表示に関するガイダンス(案))について、その概要をお伝えします。
このほかにも、世界各国の食品表示規制に関する重要な最新情報をお伝えして参ります。
WHOは、Food and Nutrition Action Plan(食料栄養行動計画)2015-2020の一部としてFOP表示の導入を呼びかけました。その後2017年には、フランスが「Nutri-score(栄養スコア)」といわれるFOP表示を自主的に適用しました。栄養スコアはWHOやEUによる奨励のもと、他のヨーロッパ諸国にも採用の広がりが見られています。
「信号機の色」といえば、2019年10月10日、社会的に増加している2型糖尿病の症例と継続的に取り組むためシンガポール保健省(Ministry of Health、略称MOH)は、糖分や飽和脂肪の含有量が高いすべての包装済みノンアルコール飲料に「Nutri-Grade」(FOPとも呼ばれる)を義務付けることを発表しました。
また、消費者庁はこれまでに3回の議論を行い、医学的・栄養学的に適切な科学的根拠が確立されている場合には、特保(特定保健用食品)製品に「疾病リスクの低減」という表現を使用することを認めています。現在、関係する成分の中では、カルシウムが30件、葉酸が0件となっています。詳細については、国内外の疾病リスク低減の訴求事例を紹介した記事をご参照ください。また、シンガポールでは健康強調表示の使用をコントロールする戦略が採用されており、許可された健康強調表示の正確なリストと一定の基準の下でのみ使用することができます。さらなる手引きとして、「Vitamin and Nutrients Calculator」を参照することを強くお勧めします。
この記事では期限表示の概念で締めくくりたいと思います。このような表示情報の目的である消費者の健康と安全を守るということは共通です。表示上のその情報の選定は国によって異なります。例えば、日本では「賞味期限」、「消費期限」と呼ばれ、表記方法は「yyyy.mm.dd」となっています。しかし、米国では「Use before」、「Sell by」、「Expires on」などいろいろな表記があり、消費者に混乱をもたらすこともあります。このような理由でFDAは食品業界に「Best if Used By」という表示をするよう数年前から推奨しています。
上図:Changes to the Nutrition Facts Label (USDAウェブサイト)より(2)
添加糖類の表示は各国において重大な関心事です。遊離糖類(単糖類、二糖類)、シロップやはちみつ由来の糖類、 一定の条件下で濃縮された果汁や野菜汁由来の糖類などを「添加糖類」として表示させる形で改正後に栄養成分表示に追加する米国がその表れといえるでしょう。
(参照資料:The declaration of Added Sugars applies also on Honey, Maple Syrup, and Certain Cranberry Products (3))
そして、ヨーロッパの2018年5月の原料原産地表示に関する通知(2020年3月まで移行期間)についても触れたいと思います。はちみつ、果物、野菜、オリーブオイル、水産品、牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、鶏肉がその義務表示対象となります。(11)(注意:日本では、食品表示基準において新たな原料原産地表示制度が施行され、経過措置期間は2022年3月末までです。)
消費者は、製品の“Made in …“という製造された国を指す「原産国」と、例えば、「ラム肉(ブラジル産)」のような“Made in …“の「原料『原産地』」を混同することが多々あると思いますので、この通知は消費者の利益を守り、偽装を防ぐための有効な方法だと思います。