Author Archives: 亀山 明一

About 亀山 明一

添加物製剤の業界に長く在籍した経験を活かし、添加物の調査業務を中心に、調査結果の英文と日本語との整合性確認業務に従事しています。また原材料の使用基準や食品表示基準などについて、英語でのセミナー講師も担当しています。
趣味は外国文化に触れることと旅行。

【最近の講演実績(Webセミナー)】
・2020年10月20日 Regulatory Requirements of Food Ingredients/Additives Used in Japan
 ChemLinked(REACH24Hコンサルティンググループ)様主催。

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栄養強調表示に対する基準値比較(日本・米国・EU)


 世界各国、どこの国の食品のパッケージにおいても、その食品に含まれる栄養成分について、「低カロリー」「低コレステロール」等のキャッチフレーズを目にすることがあると思います。他の国々でも日本と同様に、栄養強調表示の基準を設けています。今回は、日本の食品表示基準において定められている、過剰摂取が問題となりうる栄養成分の「適切な摂取ができる旨」の基準をベースに、米国、EU諸国において定められている栄養強調表示の基準との違いを見てみたいと思います。以下の通り、比較表にしましたので、輸出される食品にこの様な強調表示をご検討されている皆様にはご参考にして頂ければ幸いです。

栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨の表示の基準値(日本・米国・EUの比較)

栄養成分及び熱量 含まない旨 低い旨 低減された旨
日本
(100gあたり)
米国(注1) EU(注2)
(100gあたり)
日本
(100gあたり)
米国 EU(注2)
(100gあたり)
日本(注3)
(100gあたり)
米国 EU(注2)
(100gあたり)
熱量 5kcal未満 通常消費基準量
(RACC)および表示分量中5kcal未満
4kcal以下
(注4)
40kcal未満 通常消費基準量
(RACC)中40kcal未満(RACCが少量の場合には50g中)
食事および主菜:100gにつき120kcal以下
40kcal以下 40kcal以上 適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
(食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%)
比較される食品間の熱量の30%以上の相対差

表示の際、当該食品の熱量総量を低下させている特性も併せて表示する。

脂質 0.5g未満(注5) 表示1食分量中通常消費基準量(RACC)につき0.5g未満
(食事および主菜の場合には表示1食分量中0.5g未満)
0.5g以下 3g未満 通常消費基準(RACC)中3g以下
(RACCが少量の場合には50gにつき)
食事および主菜:100gにつき3g以下で、脂質由来カロリーが30%未満
3g以下 3g以上 適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
または食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%
比較される食品間の脂質の量の30%以上の相対差
飽和脂肪酸 0.1g未満 通常消費基準量
(RACC)および1食分量中飽和脂肪0.5g未満およびトランス脂肪酸0.5g未満
(食事および主菜の場合には表示1食分量中飽和脂肪0.5g未満およびトランス脂肪酸0.5g未満)
0.1g以下
(但し飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の合算量とする)
1.5g未満
ただし、当該食品の熱量のうち飽和脂肪酸に由来するものが当該食品の熱量の10%以下で
あるものに限る。
通常消費基準量
(RACC)中1g以下および飽和脂肪由来カロリーが15%以下
食事および主菜:100gにつき1g以下で飽和脂肪由来カロリーが10%未満
1.5g以下
(但し飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の合算量とする)
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸による熱量が当該食品に含有する熱量総量の10%を超えないこと。
1.5g以上 適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
または食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%
比較される食品間の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の合算量の30%以上の相対差

トランス脂肪酸の含有量が、比較される食品と同一若しくはそれ以下

コレステロール 5mg未満
ただし、飽和脂肪酸の量が1.5g未満であって当該食品の熱量のうち飽和脂肪酸に由来するものが当該食品の熱量の10%未満のものに限る。
通常消費基準量
(RACC)および表示分量中2mg未満
(または食事および主菜の場合は表示1食分量中2mg未満)
記載なし 20mg未満
ただし、飽和脂肪酸の量が1.5g以下であって当該食品の熱量のうち飽和脂肪酸に由来するものが当該食品の熱量の10%以下のものに限る。
通常消費基準量
(RACC)中20mg以下
(RACCが少量の場合には50gにつき)
食事および主菜:100gにつき20mg以下
記載なし 20mg以上
ただし、飽和脂肪酸の量が当該他の食品に比べて低減された量が1.5g以上のものに限る。
適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
または食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%
記載なし
糖類 0.5g未満 Sugar free:
(無糖)
通常消費基準量
(RACC)および表示分量中0.5g以下
(または食事および主菜の場合は表示1食分量中0.5g未満)
0.5g以下 5g未満 定義なし
使用出来ないことがある。
5g以下 5g以上 適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
または食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%
比較される食品間の糖類の量の30%以上の相対差

該当食品の熱量が、比較される食品と同一若しくはそれ以下

ナトリウム 5mg未満 通常消費基準量
(RACC)および表示分量中5mg未満
(または食事および主菜の場合は表示1食分量中5mg未満)
0.005g以下 120mg未満 通常消費基準量
(RACC)中140mg以下(RACCが少量の場合には50gにつき)
食事および主菜:100gにつき140mg以下
※とても低い旨:
通常消費基準量
(RACC)中35mg以下(RACCが少量の場合には50gにつき)
食事および主菜:100gにつき35mg以下
0.12g以下
(0.04g以下:とても低い旨)
120mg以上 適切な参考食品と比較して通常消費基準量(RACC)中少なくとも25%
または食事および主菜の場合は100gにつき少なくとも25%
比較される食品間のナトリウムの量の25%以上の相対差
  • (注1)米国の「含まない旨」について、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウム、糖類については、当該栄養素の強調表示にアスタリスク(*)を付け、「わずかな〇〇が加えられています」という注釈を付ける場合を除き、一切当該栄養素またはこれを含むと思われる成分が含まれていてはなりません。
  • (注2)EUの基準では食品分類によって例外があります。
  • (注3)日本では「低減された旨」を表示する場合、低減された量が上記基準値以上であることに加え、低減された割合について、比較対象品との相対差が25%以上であることが必要です。
  • (注4)熱量については甘味料を除き100ml当たりの基準です。
  • (注5)食品分類により例外があります。

 上記比較表より、日本と大きく異なる点としては、以下の様な内容が確認出来ます。EU、米国どちらも日本より細かな基準が設けられている点については注意が必要ですが、米国の基準についてはより独自性の強いものが多く見られます。

  • 日本とEUでは、概ね100g単位で基準が設けられています(液体は上記以外、100ml単位に基準があります。)が、米国では、別途「RACC(通常消費基準量:当該食品の標準的消費量)」や「食事における主菜100g単位」という独自の単位をベースに基準が設けられている点が大きく異なります。
  • 米国では、日本で基準が設けられている「糖類」の「低い旨」の強調表示に定義がありません。
  • 米国では、飽和脂肪酸の「含まない旨」栄養強調表示について、「トランス脂肪酸」の上限値を設けています。

 又、米国では、上記基準以外にも、魚介類または狩猟肉製品の「脂質」に関する栄養強調表示について、「Lean(脂質分の少ない)」並びに「Extra Lean (脂質分の特に少ない)」を表示する場合の細かな基準が設けられています。(下記FDAウェブページ10. APPENDIX B(10. 付録B)に記載があります。)

 以上、栄養強調表示の「適切な摂取ができる旨」について、日本とEUそして米国の基準の違いをまとめてみて、特に米国の基準の独自性には注目すべきであり、今後、米国向け食品のパッケージ上にこの様な表示を検討される場合は、基準値を満たすことについて、とりわけ十分に確認を行った上で進められるべきと考えます。


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米国とEUの食品表示基準に見る「複合原材料」の表示方法の日本との違いと注意点について


 昨今、世界各国では関税等の貿易における垣根を低くし、相互の製品を安く仕入れる様に出来る仕組みを取り入れる動きが益々加速する中、2019年2月1日より、日欧間の経済連携協定(EPA)が発効されました。
これにより今後はチーズ、チョコレートやビスケットといったヨーロッパの輸入食品についても段階的に関税が下げられていきますので、より安い価格での販売が可能になることでしょう。又、反対に欧州での和食人気を考えると輸出に対する期待も高まっています。

 そこで今回は、この様に今後食品の輸出入が増加傾向にあることを踏まえ、日本と海外の食品表示作成のルールの違いとその注意点に着目しました。加工食品に使用する「複合原材料」を例にとって説明してみたいと思います。

 日本では、複数の原材料から成る、いわゆる「複合原材料」を使用して製造する食品の場合、以下の例のように、当該原材料の名称の次に括弧を付し、これを構成する二次原材料を最も一般的な名称をもって表示することが基本となっています。
(参照根拠:食品表示基準Q&A 加工-51)

マヨネーズ(食用植物油脂、卵黄(卵を含む)、醸造酢、香辛料、食塩、砂糖)

 一方、以下の様な条件下であれば、複合原材料そのものを表示せず、これを構成する二次原材料を分割して表示することも認められています。
(参照根拠:食品表示基準Q&A 加工-52~53)

  • 分割した状態にしても性状に大きな変化がないこと
  • 複合原材料名が消費者の理解できる一般的な名前ではないか、単に二次原材料の混合されたもので、複合原材料としての表示にメリットがないこと

【一例】
「加糖卵黄(卵黄(卵を含む)、砂糖)」⇒「卵黄(卵を含む)、砂糖」との表示が可能

 又、この様な複合原材料については、上述のQ&Aにも「加工食品を仕入れて、それを原材料として使用する場合」という様に、仕入れて使用する加工原材料であることが前提となっています。

 では、他国において、この「複合原材料」はどの様に表示方法が定められているのか、EUとアメリカを例にとって見てみましょう。

【EUの場合(参照根拠:REGULATION (EU) No 1169/2011)】

(原文)
PART E — DESIGNATION OF COMPOUND INGREDIENTS
1. A compound ingredient may be included in the list of ingredients, under its own designation in so far as this is laid down by law or established by custom, in terms of its overall weight, and immediately followed by a list of its ingredients.

(要点のみ和訳)
慣習的に確立された名称であり、複合原材料全体の重量で表示されており、二次原材料をすぐ後ろに続けて記載すれば、複合原材料としての表示は任意で可能。

【米国の場合(参照根拠:FDA 21CFR101.4 Food; designation of ingredients.)】

(原文)
(b)-(2) An ingredient which itself contains two or more ingredients and which has an established common or usual name, conforms to a standard established pursuant to the Meat Inspection or Poultry Products Inspection Acts by the U.S. Department of Agriculture, or conforms to a definition and standard of identity established pursuant to section 401 of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act, shall be designated in the statement of ingredients on the label of such food by either of the following alternatives:

(i) By declaring the established common or usual name of the ingredient followed by a parenthetical listing of all ingredients contained therein in descending order of predominance except that, if the ingredient is a food subject to a definition and standard of identity established in subchapter B of this chapter that has specific labeling provisions for optional ingredients, optional ingredients may be declared within the parenthetical listing in accordance with those provisions.

(ii) By incorporating into the statement of ingredients in descending order of predominance in the finished food, the common or usual name of every component of the ingredient without listing the ingredient itself.

(要点のみ和訳)
別途定めのない限り、一般的な名称を持つものであれば、以下のいずれかの方法で表示が可能。

  1. 一般的な名前に続けて括弧付きで最終製品における含有率の高い順に二次原材料を表記する。
  2. 複合原材料名は表示せず、その各二次原材料の一般的な名称を最終製品における含有率の高い順に表記する。

 上記の内容からお気付きの通り、EUにおいてもアメリカにおいても、一般的な名称を持つものであれば、複合原材料は、その原材料名を表示することが可能であり(但しこの場合、二次原材料を後ろに続けて記載することが日本と同様に必要)、又、複合原材料を分割して、その二次原材料の一般的な名称のみを表示することもアメリカでは可能であることが判ります。
又、日本の場合※と異なり、どちらの場合も複合原材料が仕入原材料であるという前提の記載がありません(※日本では「食品表示基準Q&A」に記載されています)。

 従って、特にアメリカから食品を輸入し販売される際に、該当食品の原材料が記載された規格書等を入手すると、表示上の記載が前提となっている場合、仕入れ原材料であっても複合原材料が既に二次原材料にまで分割して記載されている可能性があり、ラベルを作成される際に注意が必要です。この場合、現地サプライヤーには、当該原材料が仕入れ原材料であるかどうかと、もしその場合、日本では二次原材料を分割記載するのではなく、あくまでも複合原材料名を記載するのが基本ですので、どの原材料が何という複合原材料を構成しているかの詳細を確認することが、ラベル作成において必要となります。

 さて、今度は輸出の場合で考えてみましょう。うどんのトッピングにも使用される「天かす」を複合原材料とした米国向け食品があるとします。
そもそも「天かす」というもの自体が米国で馴染みのないものであり、この場合、結果として各二次原材料である「小麦粉」や「植物油脂」などを分割して表記することになります。これは「天かす」が仕入れ原材料であることを考えると、日本の食品表示基準上と全く異なることが分かります。
米国では、原材料名が一般的ではない「複合原材料」は、仕入れ原材料如何を問わず分割して表記しなければならない場合がありますので、こちらもラベル作成の際には注意が必要です。

 今回は米国・EUと日本の食品表示基準の違いの違いをご紹介して参りましたが、これらはほんの一部であり、輸出入いずれの食品表示作成においては他にも多くの相違点があり、日頃からこれらに着目しておく必要があります。
無論、米国・EU以外の世界各国においても日本とは異なる表示基準が数多く存在していることは言うまでもありません。


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