Author Archives: 中西 知奈海

About 中西 知奈海

栄養学を専門とし、主に海外から国内に輸入される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。
趣味はパン作り。

食品表示へのデジタルツール活用検討について

 2024年10月1日、「第1回 食品表示へのデジタルツール活用検討分科会」(以下、「分科会」とします。)が開催されました。第1回分科会では、デジタルツール活用における国内外の現状と現時点での課題等が検討されました。今回は公表される資料をもとに第1回分科会の内容について整理してみたいと思います。

検討の背景

 「消費者基本計画工程表」において、国際基準との整合性も踏まえながら合理的で分かりやすい食品表示制度の在り方を議論する旨が掲げられています。

 令和5年度食品表示懇談会では今後の食品表示が目指すべき大枠の方向性が示され、その1つとして「食品表示へのデジタルツールの活用」が挙げられました。

 我が国の食品の義務表示事項は多く見づらい状況にあり、現行の表示事項以上に義務表示項目が増えると、ニーズが多様化する消費者にとってさらに表示が見づらく十分に活用されない等の可能性があります。また、現在、コーデックス委員会の食品表示部会において、「技術革新を利用した食品情報の提供に関するガイドライン」の策定に向け国際ルールづくりの議論が進んでいます。 これらを踏まえ、令和6年度食品表示懇談会では、分科会を設け食品表示へのデジタルツールの活用の方向性について検討する方針です。

現在のコーデックスでの検討状況

 義務表示事項のテクノロジーによる代替、提供される情報の内容等について検討が行われ、「食品表示における食品情報の提供のためのテクノロジーの使用に関するガイドライン案」が作成されました。(詳細については分科会資料3をご参照ください。)

海外での取り組み

 諸外国においても食品表示情報の提供方法としてデジタルツールの活用を進めようとする動きがみられます。例えば、インドネシアでは、容器包装上へのQRコードの表示の義務付けおよび、製品情報データベースを国家機関が管理するという事例が確認されています。また韓国、EU、アメリカにおいては、一部の表示項目についてQRコード等による表示を認めるような規制が確認されています。

 その他、海外におけるデジタルツール活用事例の内容としては、運用の主体は国家の他に業界団体、NPO法人、民間企業等がとなっている事例や、デジタルツールの操作が困難な人向けのサポート機能や高齢者等へのスマートフォンの教育等、デジタルツールの利用促進に向けた取り組み等もみられます。(詳細については分科会資料5をご参照ください。)

国内での取り組み

 令和2年度、3年度に行われた消費者庁の調査事業の結果をもとに、今後検討すべき技術的論点が挙げられました。具体的な論点内容を一部以下にまとめます。(詳細については分科会資料4をご参照ください。)

  • 食品表示データのフォーマット(食品表示データの諸規格の統一など)
  • 食品表示データの鮮度及び正確性の担保
  • 食品表示データの流通方法
  • 食品表示データのオープン化に向けた仕組みづくり(食品表示データの公開・流通を進めるための仕組み)
  • 加工食品を一意に識別する方法
  • データ流通に向けた段階的なロードマップの提示


 食品表示情報提供におけるデジタルツールの活用は多様な消費者ニーズ、わかりやすさ・見やすさ等の観点から重要性は増していくものと考えられますが、クリアすべき技術的課題が多いのが現状です。

今後の予定について

 第2回、第3回の分科会では、10月27日から開催される第48回コーデックス食品表示部会の報告や、関連事業者へのヒアリング、技術的課題解決の方向性の議論について検討予定です。その後、議論された方向性に基づき、引き続きデジタルツールの在り方等が議論される予定です。


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第2回「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」が開催されました


 2024年1月31日に「第2回分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」( 以下「検討会」)が開催されました。公表された資料等をもとに、第2回検討会の内容について整理してみたいと思います。

包装前面栄養表示とは


 諸外国の「容器包装前面栄養表示(Front of Pack Nutrition Labeling:FOPNL)」については、検討会資料「資料2 消費者等を対象とするインタビュー調査結果について」に事例が掲載されています。

 ここでは例として、フランス共和国(任意表示)、イタリア共和国の例(任意表示)について取り上げてみます。

  • フランス共和国のFOPNL表示では、⾊分けとアルファベットにより⾷品の健康度をランク付けしています。
  • イタリア共和国のFOPNL表示では、栄養成分(熱量、脂質、飽和脂肪酸、糖類、⾷塩)の含有量等をGDA方式(栄養成分の⾷品単位当たりの含有量と1⽇当たりの⾷事摂取基準に占める割合)で表示しています。

第2回検討会について


 第2回検討会では、国内における⾷品関連事業者の⾃主的な取組、及び消費者等を対象とするインタビュー調査結果等についてまとめられました。
⾷品関連事業者の⾃主的な取組では、栄養成分表⽰のパッケージ前⾯等の表⽰を行うようになった背景や導入するに際しての課題等が、消費者等を対象とするインタビュー調査結果では、消費者が感じる現行の栄養成分表示が分かりにくい理由および分かりやすい表示にするための改善案等の意見(情報量を適切にシンプルにする、消費者自ら判断できるようにする、統一したロゴ/マークにする等)について、それぞれまとめられています。

 また委員の意見として、「諸外国における統一的な評価方法を以てすべての食品を区分する取組や一つの栄養成分だけに特化したような取組については、個人の行動の健康状態も多様化が進むために、消費者の適切なインフォームドチョイスを促すような食環境づくりに結び付かない可能性がある」等が挙げられました。

今後の予定について


 2024年3月12日に第3回検討会が開催される予定です。第2回検討会の内容を踏まえ、今後、消費者にとって栄養成分表示が利活用しやすく、また食品関連事業者の実行可能性が担保される方策について議論されるものと思いますので、公表された資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


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食品添加物公定書の改正案について


 令和5年2月9日厚生労働省より、第10版食品添加物公定書(案)が公表されました。食品添加物公定書は、食品衛生法第21条の規定に基づき、食品添加物の成分規格や使用基準等を収載することとされています。昭和35年に第1版が作成されて以来、令和4年7月の第9版食品添加物公定書追補2の作成まで、逐次改正が行われてきました。今回は、第10版食品添加物公定書の主な改正案について整理したいと思います。

第10版食品添加物公定書に係る検討経緯・方針


 平成30年6月以降、12回の食品添加物公定書作成検討会が開催されています。その検討結果に係る意見募集が行われ、寄せられた意見について検討をした上で第 10 版食品添加物公定書(案)が作成されました。
 今回の改正では、第 10 版食品添加物公定書作成検討会で検討を行い、意見募集の機会を増やし、より販売等の実態を踏まえた内容とされています。

主な改正案


 現行の第9版食品添加物公定書追補2からの主な改正案は以下(1)~(9)のとおりです。

(1) 既存添加物45品目に係る成分規格(45項目)を新たに設定すること。

「アグロバクテリウムスクシノグリカン」、「アスペルギルステレウス糖たん白質」、 「うに殻焼成カルシウム」、「ウルシロウ」、「エレミ樹脂」、「塩水湖水低塩化ナトリウム液」、「カワラヨモギ抽出物」、「カンゾウ油性抽出物」、「グァーガム酵素分解物」、「クエルセチン」、「グルコサミン」、「くん液」、「ゲンチアナ抽出物」、「香辛料抽出物」、「酵素処理レシチン」、「コメヌカロウ」、「サトウキビロウ」、「サバクヨモギシードガム」、「シェラックロウ」、「ジェルトン」、「シタン色素」、「ジャマイカカッシア抽出物」、「植物炭末色素」、「精油除去ウイキョウ抽出物」、「セイヨウワサビ抽出物」、「造礁サンゴ焼成カルシウム」、「粗製海水塩化カリウム」、「チクル」、「チャ抽出物」、「トウガラシ水性抽出物」、「トレハロース」、「生コーヒー豆抽出物(ペースト品、液体品)」、「乳清焼成カルシウム」、「ヒアルロン酸」、「フィチン(抽出物)」、「分岐シクロデキストリン」、「ヘプタン」、「没食子酸」、「ミルラ」、「メバロン酸」、「モクロウ」、「レイシ抽出物」、「ロシン」、「ローズマリー抽出物(水溶性)」、「ローズマリー抽出物(非水溶性)」

(2) 指定添加物2品目、既存添加物5品目及び添加物製剤2品目に係る成分規格について、
一つの品目あたり複数の子規格として設定されているものをそれぞれ個別規格として規定すること。
※該当の成分については、「第10版食品添加物公定書作成について」をご参照ください。(以下同様)

(3) 指定添加物106品目に係る成分規格(129項目)、既存添加物58品目に係る成分規格(85項目)及び添加物製剤2品目(3項目)について、試験の操作性の改善及び精度の向上、IUPAC命名法に基づく名称及び構造式、用語・用例・計算式等の記載の統一、使用試薬の変更等を行うこと。

(4) 元素分析法等の試験法を新たに一般試験法として「B 一般試験法」の項に規定すること。既存の一部の一般試験法に関しては、技術の更新、使用器具又は試液の変更、記載整備等を行うこと。メトキシ基定量法を削除すること。

(5) 「C 試薬・試液等」の項において、新たに設定された一般試験法や成分規格の規定に伴った試薬の追加、試薬の旧名称の記載削除、各試薬の項目を追加、改正又は削除すること。

(6) 参照赤外吸収スペクトルの項を「C 試薬・試液等」から削除し、「D 成分規格・保存基準各条」の項の各条に規定すること。

(7) 「A 通則」、「B 一般試験法」及び「C 試薬・試液等」の項について、試験の操作性の改善及び精度の向上、有害試薬の他の試薬への代替、IUPAC 命名法に基づく名称及び構造式の記載法や用語、用例等の記載の統一等を行うこと。

(8) 「E 製造基準」及び「F 使用基準」の項において、「砂」を削除、「不溶性の鉱物性物質」を明記すること。

第9版食品添加物公定書 第10版食品添加物公定書案
製造基準 …タルク、、ケイソウ土、二酸化ケイ若しくは炭酸マグネシウム又はこれらに類似する不溶性の鉱物性物質 …タルク、ケイソウ土、二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、パーライト、花こう斑岩、活性白土、クリストバル石、ゼオライト又はひる石
使用基準 …酸性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、、ケイソウ土及びパーライト並びにこれらに類似する不溶性の鉱物性物質 …酸性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、ケイソウ土、パーライト、花こう斑岩、活性白土、クリストバル石、ゼオライト及びひる石

(9) 第9版食品添加物公定書追補2作成以降に新規指定や使用基準の改正が行われた指定添加物について「D 成分規格・保存規格各条」「F 使用基準」に収載すること。

今後の予定


 引き続きパブリックコメントの募集等が行われる予定ですので、今後の改正動向に注目していただくことをおすすめいたします。

参照

第10版食品添加物公定書作成について
第10版食品添加物公定書案


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