令和4年6月15日に食品表示基準Q&Aが改正され、「魚介類の名称のガイドライン」が改正されました。改正の経緯としては、新たな魚種の輸入・流通の拡大、分類学的研究の発展による名称の変更など、魚介類の名称をめぐる状況が変化していることを受けたもので、魚介類のうち魚類については令和2年に改正が行われていましたが、この度は甲殻類について改正されたものとなります。
また令和4年3月30日の改正では、水産物の原産地表示(特に貝類)について新設のQAの記載とこれに伴った改正がされましたので、今回はこちらについて取り上げたいと思います。貝類(主にアサリ)に関する内容となりますが、農産物や畜産物の原産地とは異なる水産物の規定について、知っていただける機会になればと思います。
改正の経緯
食品表示基準Q&A(生鮮-27)に、水産物の原産地表示(特に貝類)について、現在の表示の方法と考え方、それに至る改正の経緯がまとめられていますが、主に経緯について記載します。
1 生鮮食品の原産地は、原則として農畜水産物が生産(採取及び採捕を含む。)された場所となっていますが、養殖した水産物については、製品となる前に、生きたまま産地を移動し、複数の産地で育成された場合、最も育成期間の長い場所を原産地として表示することが原産地表示の基本的な考え方です。
2~3(略)
4 この考え方は、食品表示法による改正前のJAS法以来から引き継がれているものですが、特に貝類のうちアサリの原産地表示については、平成17年4月に、原産地を誤った表示方法で表示する等の不適正な事例が確認されたことを受け、輸入したアサリを国内で2、3か月蓄養しても国内の成育期間より外国での採捕前の成育期間の方が明らかに長いことから、原産地表示の基本的な考え方によれば、輸入前に採捕された国が原産国となる旨を示した上で、適正な表示を行っていただくよう周知していました。
5 また、平成22年3月には、食品表示基準Q&Aの前身である「食品表示に関するQ&A」を公表し、アサリの稚貝を輸入し又は国内から移植して繁殖させ、成貝を漁獲する場合に、当該アサリの最も蓄養期間が長い産地を表示することとし、その場所での蓄養期間が長いことを証明できる必要があるという考え方を示していました。
6 しかしながら、輸入したアサリについては、外形により成育期間を正確に把握することが困難であり、さらに、事実と異なる成育期間の証明等をもって、国内での成育期間が海外での成育期間より長いこととした上で、原産地を国内の産地と表示する複数の事案が確認されました。
7 このため、令和4年3月、原産地表示の考え方について適正な理解を促進するため、
① 出荷調整用その他の目的のため、水産動植物を短期間一定の場所に保存することを「蓄養」と定義した上で、「蓄養」の期間は貝類の全体の成育期間には含まれないこととする。
② 輸入したアサリの原産地は、蓄養の有無にかかわらず輸出国となることを示す。なお、例外として輸入された稚貝のアサリを区画漁業権に基づき1年半以上(※)育成(養殖)し、育成等に関する根拠書類を保存している場合には、国内の育成地を原産地として表示できることを示す。
(※)輸入したアサリの成育期間の確認が困難なため、アサリの採捕までの一般的な所要年数が3年程度であることを踏まえた整理。
③ 国内の他地域から稚貝のアサリを導入する場合、成貝の輸入したアサリを放流したことと区別するため、稚貝のアサリの根拠書類を保存する必要があることを示す。
の3点について食品表示基準Q&Aの改正を行いました。
根拠書類
(生鮮-27)7②のように、稚貝のアサリを区画漁業権に基づき1年半以上育成し、国内の育成地を原産地として表示する際に保存が必要となる根拠書類(行政機関等の求めに応じて表示の根拠を説明できる書類)については(生鮮-34)3に記載されています。
3 具体的には、輸入業者や国内生産者が保存している
① 輸入したアサリに係る根拠書類として
(ア) 輸入したアサリの通関に関する書類(輸入許可通知書、産地証明書(CERTIFICATE OF ORIGIN)、その他通関に関する書類)
(イ) 輸入した稚貝のアサリを小分けする場合、実際に漁場に導入されたアサリと通関証明書を突合できる書類(ロット単位で番号管理することとし、小分けしても小分け後のアサリに番号を付与する等の対応が必要となります。)
に加え、
② 国内における育成に係る根拠書類として、
(ア) 区画漁業権の免許を受けた区域における漁場の利用状況が確認できる書類(漁場図、小間図、小間の番号、面積がわかるもの等)
(イ) 稚貝のアサリの搬入・搬出明細書(税関提出書類:小間別の搬入・搬出の記録)
(ウ) 小間毎の漁場へのアサリの導入日、導入数量の記録
(エ) 小間毎の漁場からのアサリの収穫日、収穫数量の記録
(オ) 区画漁業権の登録済証(区画漁業権の免許を漁協等が受けている場合には、育成をする者が当該区画漁業権を行使できる者か別途確認する必要があります。)
などが考えられます。
この他、(生鮮-27)7③の稚貝のアサリの根拠資料については、(生鮮-35)に記載されていますのでご参照ください。
「魚介類の名称のガイドライン」や水産物の原産地の考え方については、生鮮の魚介類を扱われる方に限らず、製品の原材料に魚介類を使用される方におきましても、一度改正内容について目を通されるとよいと思います。
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