Author Archives: 吉川 美波

About 吉川 美波

栄養学を専門とし、主に国内で流通される食品の原材料や表示案の調査業務に従事しています。
趣味は旅行と外食と筋トレ。

第4回「令和5年度食品表示懇談会」、第3回「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」が開催されました

第4回「令和5年度食品表示懇談会」が開催されました


 2024年3月7日、第4回「令和5年度食品表示懇談会」が開催されました。公表資料“令和5年度食品表示懇談会とりまとめ(案)”にて、今回議論された内容と今後の方向性が分かりやすく取りまとめられていますので、整理してみたいと思います。

議論の概要と今後の食品表示が目指すべき大枠の方向性について

①諸外国との表示制度の整合性について
 消費者にとっての分かりやすさや事業者の実行可能性の重要性、日本と諸外国の食品表示に関する考え方の違いを踏まえて様々な観点から議論の必要があると結論付けられています。今後は日本の状況を踏まえつつ合わせられるところは諸外国と合わせる予定です。食品添加物に関する諸外国との制度の差異については、表示制度の差異のみならず各種規格基準の差異もその要因として大きいことから、食品衛生基準行政の移管も踏まえて、コーデックス委員会等への働きかけも含めて検討していくべきと考えられています。

②個別品目ごとの表示ルールについて
 JAS法において個別品目ごとに定められていたルールについては、食品表示の一元化の際に、そのまま食品表示基準に移行している等、十分に議論されていない状況もあり、横断的なルールに寄せていく方向で見直す必要があるとされています。しかし一方で、個別品目ごとのルールを比較するだけでなく、ルールの違いが生まれた背景、経緯や、ルールの定期的な見直しの要否についても考慮し、業界団体等の意見を聞いたうえで議論を進める必要があるという意見もありました。今後見直しにあたっては、JAS規格、公正競争規約、食品表示基準の基本的な性質の違いについて整理するとともに、消費者にとっての分かりやすさや、事業者の負担の軽減も踏まえて議論される予定です。

③食品表示へのデジタルツールの活用について
 容器包装上の表示の一部を代替する手段であるデジタルツールの活用について、世界的な情勢や技術の発展、食品表示の見やすさの観点や消費者への情報提供の拡充という面から検討していくべきとされています。また表示可能面積や見やすさによる課題、現行の表示情報の利用実態を踏まえ、容器包装に表示すべき事項と、デジタルツールによる情報提供での代替を許容すべき事項について、コーデックス委員会におけるデジタルツールの活用の議論も踏まえ検討する必要があるとされています。しかし事業者の負担コストの大きさや、商品情報の管理方法や提供手段の技術的な課題もあるため、それらの点も考慮しつつ引き続き議論が進められる予定です。

改正内容の施行時期について

 「食品表示懇談会の今後の進め方のタイムスケジュール(案)」に今後の予定が記載されています。時期について詳細には決定していませんが、表示の改版に伴う事業者の負担に配慮し、各改正事項について十分な経過措置期間を設けるとともに、経過措置終了時期を極力揃えるとされています。これにより食品表示の改正に関する予見可能性を高めつつ、何度も改版しなくてよいようにされるとのことです。

第3回「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」が開催されました


 2024年3月12日に第3回「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」が開催され、その際に日本版包装前面栄養表示(FOPNL)の基本的な方向性として、以下のような中間取りまとめがなされています。

  • 日本版FOPNLについては、任意表⽰の取組と位置付けた上で、⼀定のルールを設ける
  • 対象となる栄養成分等の量については、義務表⽰に位置付けられているものとする(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)
  • 様式については、対象となる栄養成分等の量について、栄養素等表⽰基準値に占める割合を表⽰する
    (⽇本⼈の⾷事摂取基準(2025年版)の策定を踏まえ、2024年度を⽬途に栄養素等表⽰基準値を⾒直す)
  • ⾷品単位を当該⾷品の1⾷分であることを原則とし、当該1⾷分の量を合わせて表⽰する

今後について


 令和5年度食品表示懇談会について、来年度からは個別品目ルールとデジタルツールについて分科会形式で議論が行われる予定です。また包装前面栄養表示(FOPNL)に関する議論については、栄養に関する専門的な内容も含むため、本懇談会とは別に検討の場(「分かりやすい栄養成分表示の取組検討会」)を設けて進められます。事業者の皆様は一度目を通し、今後の動向についてご確認されることをおすすめします。


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遺伝子組換え表示制度の改正に伴う表示方法について


 任意表示である「遺伝子組換えでない」旨の表示ができる条件の改正について、経過措置期間が令和5年3月31日で終了します。今回は、改正後の表示方法について整理しました。

改正のポイント


  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件が、「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入*1率)5%以下」 から「不検出」に厳格化される。
  • 5%以下の場合、分別生産流通管理*2が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができる。
*1 意図せざる混入:分別生産流通管理が適切に行われた場合において、遺伝子組換え農産物の一定の混入のこと。
*2 分別生産流通管理:遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物を農場から食品業者まで生産、流通及び加工の各段階で相互に混入が起こらないよう管理し、そのことが書類等により証明されていること。

改正後の具体的な表示例について


 遺伝子組換え農産物「大豆」を例に、3つの場合に分けて表示例を挙げます。

① 遺伝子組換え大豆を分別していない大豆を原材料としている場合

<表示例>

  • 「大豆(遺伝子組換え不分別)」

 遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物が分別されていない場合、表示は義務になります。分別していない旨が分かる文言であれば 「遺伝子組換え不分別」以外の文言でも差し支えありません。
 なお、消費者に情報を正しく伝える手段として、一括表示の原材料名欄に「遺伝子組換え不分別」と表示した上で、枠外に「不分別」 の意味について説明文を付記することは有効とされています。

② 遺伝子組換え大豆が混入しないように適切に分別生産流通管理が行われ、意図せざる混入が5%以下の大豆を原材料としている場合

<表示例>

  • 「大豆」
  • 「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」
  • 「大豆(分別生産流通管理済み)」
  • 「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています」

※こちらは一括表示事項欄外に表示する場合の例です。

 適切に分別生産流通管理されている旨の表示が任意で可能です。
 遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物を分けて生産、流通及び製造・加工の各段階で管理を行っていることが分かるように表示することが必要です。

③ 遺伝子組換え大豆が混入しないように適切に分別生産流通管理が行われ、混入がないことを確認した大豆を原材料としている場合

<表示例>

  • 「大豆(遺伝子組換えでない)」
  • 「大豆(非遺伝子組換え)」

 「遺伝子組換えでない」旨の表示は、適切に分別生産流通管理を行った上で、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる大豆及びとうもろこし及びこれを原材料とする加工食品に限り、表示することができるようになります。ただし、行政の行う科学的検証及び社会的検証において、使用された原料農産物に遺伝子組換え農産物を含むことが確認された場合は、不適正な表示となることに注意が必要です。
 現在原料農産物に遺伝子組換え農産物の混入がないことの確認は、下記が有効とされています。

  • 生産地で遺伝子組換えのものとの混入がないことを確認した農産物を袋等又は専用コンテナに詰めて輸送し、製造者の下で初めて開封していることが証明されていること
  • 国産品又は遺伝子組換え農産物の非商業栽培国で栽培されたものであり、生産、流通過程で、遺伝子組換え農産物の栽培国からの輸入品(適切に分別生産流通管理され、遺伝子組換え農産物の混入が5%以下に抑えられた場合を含む。)と混ざらないことを確認しており、その旨が証明されていること
  • 生産、流通過程で、各事業者において遺伝子組換え農産物が含まれていないことが証明されており、遺伝子組換え農産物が含まれない旨が記載された分別生産流通管理証明書を用いて取引を行っている場合

まとめ


 「遺伝子組換えでない」旨の表示が認められるのは、遺伝子組換え農産物が「混入がない」と認められる場合のみですので、十分にご留意ください。経過措置期間が残り少ないですので、該当する表示を取り扱われている事業者の方は、これを機に再度ご確認されるとよいと思います。

参照:
食品表示基準Q&A 別添 遺伝子組換え食品に関する事項


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