Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

加工食品の原料原産地表示の拡大について2

 2016年4月27日、第4回目の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が開催され、その議事録が公開されました。読んでみると改めて、いろいろな立場があると感じましたので、検討内容をまとめてみたいと思います。

『可能性表示』、『大括り表示』、『加工地表示』とは


 検討会では「可能性表示」等の案に対して意見が交わされていますが、まずはこれらの用語を知っておく必要があります。検討会資料のなかで、整理されたものがありますので下記に抜粋します。(以下、出典は「原料原産地情報の表示方法について」(平成28年3月31日)消費者庁・農林水産省)

1.切替え産地を列挙する
『可能性表示』
A国産、B国産又はC国産の原料を使用する可能性がある場合
原料原産地名:A国又はB国又はC国
2.「国産」・「外国産」又は「輸入」といった
『大括り表示』
A国産、B国産又はC国産の原料を使用する可能性がある場合
原料原産地名:外国産
3.輸入中間加工品の
『加工地表示』
A国で加工した中間加工品(原料の産地は不明)を使用する場合
加工地:A国

原料原産地表示(主に実行可能性)の課題


 そして上記の表示案の提示に至った背景である、各課題も整理されていますので抜粋します。主に実行可能性に関する内容が記載されています。

対応する表示案 課題
1.『可能性表示』
2.『大括り表示』
課題1:頻繁な原材料産地の切替えへの対応
・複数の原産国の原材料を使用している場合には、重量の多い順に記載する必要があることから、主原料の原産地が季節によって変動したり、複数の原産地のものを混合使用したりする際に、その都度重量順が入れ替わったり、国名が変わることに対応して、その都度包材を切り替えるのは不可能。
・仮に対応可能な場合だとしても、複数の包材を用意するために表示コストが上昇するのみならず表示ミスを招きかねない。
2.『大括り表示』 課題2:物理的スペースの制約
・容器包装の面積は限られており、多種の原料の産地を表示することは困難。
・限られた表示欄に多種の原料の産地を表示した場合、商品購入時に必要な情報を直ちに探し出すのが困難な、分かりにくい表示となる。
3.『加工地表示』 課題3:原料原産地情報の分からない輸入中間加工品への対応
・原材料に輸入された中間加工品を使用している場合、海外では原料の産地を伝達するルールがないため、輸入国は分かっても原料の産地までは正確な情報を入手できない場合がある。

各表示案のメリットとデメリット


 そして各表示案のメリットとデメリットも整理されていますので、抜粋します。

メリット デメリット
1.『可能性表示』 ・課題1が解決できる。 ・「A国又はB国又はC国」と表示されている場合、実際には商品にA国産の原材料が含まれていないケースが発生する。この場合、商品の内容と表示の内容に不整合が生じることになる。
2.『大括り表示』 ・課題1及び2が解決できる。
・原料原産地情報などの食品の情報開示の仕組みに係る検討が行われているが、事業者が消費者に対しウェブサイト等を通じて情報提供を行うことにより、消費者はより多くの情報を入手することが可能になる。
・「購入した商品にはどの国で作られた原材料が使われているかまで知りたい」という消費者の要望には応えきれない。
・国産原料と輸入原料を両方使用している場合は、○○(国産、外国産)」などとなってしまう。(なお、食品情報のウェブサイト等を通じた開示の仕組み方によってはこれら2点の課題を補完することが可能とも考えられる。)
3.『加工地表示』 ・課題3が解決できる。 ・当該中間加工品の原料の原産地の表示であると誤認されないよう工夫する必要がある。

 ほとんど検討会資料の抜粋になりましたが、こうした案をもとに、これまでに各関係団体(主に生産者、加工食品事業者、消費者)のヒアリングと意見収集を終えています。今後は、中小事業者の事情の調査と、海外(原産地表示制度のある韓国)の事情などを考慮しながら、検討が進んでいくものと思われます。関心のある方は、下記検討会ページを引き続き確認されてみてはいかがでしょうか。

参照:
加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html
「原料原産地情報の表示方法について」(平成28年3月31日)消費者庁・農林水産省
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160331_shiryou3.pdf

製造所固有記号制度届出データベースの使い方

 2016年4月より、「製造所固有記号制度届出データベース」が公開されています。今月のコラムは、そのデータベースを使って製造所を検索する方法と、製造所固有記号の届出の方法についてまとめてみたいと思います。

検索ページの使い方


 まずは実際に使ってみましょう。
消費者庁のウェブサイト(http://www.caa.go.jp/)のトップページ下部「注目コンテンツ(※)」にある、「消費者の方」のサービス一覧から、「製造所固有記号の届出情報を確認される方へ」をクリックします。(※2016年5月30日現在)
「製造所固有記号制度届出データベース」というページが表示されますので、ページ上部にある、「製造所固有記号の届出情報を確認される方へ」内の「製造所固有記号の検索」をクリックすると、検索ページに移動できます。

 最初に、製造所固有記号を入力する欄に記号を入力して、検索ボタンをクリックします。
試しに手元にある飲料の製造所固有記号を入力しましたが、やはり始まったばかりの仕組みですので、現時点ではあまり多くは登録されていないようです。ただ、記号の頭文字を入力することで候補が表示されますので、そこから選ぶことができるなど、使いやすい仕組みになっていると思います。

知ることのできる情報


 商品に表示されている販売者名と所在地の他に、製造者名と所在地を知ることができます。
製造者名は会社名(または個人名)まで、所在地は番地まで表示されます。
表示される情報はこの2点だけですので、使ってみるとかなりシンプルに感じるでしょう。

 ただ、これまで各企業に電話をするか、各企業のホームページの中から探すかなどしなければ分からなかった情報を、一か所のホームページから簡単に確認できるようになったということは、大きな変化だと思います。

【製造者固有記号検索 結果例(見本)】

法人番号 製造者又は販売者 住所 製造所固有記号 製造者の名称 製造所の所在地
************* 株式会社ラベル食品 大阪市淀川区西中島○丁目○番○号 ABC 株式会社○○食品工業 兵庫県○○市○○町○番○号

届出には「ID」が必要


 さて消費者側から見ると便利になった今回の仕組みですが、事業者側から見るとひと手間かかります。届出作業をインターネット上で行うことになった点は分かりやすい変更点ですが、それ以上に「届出」に対して登録が必要になったことが挙げられると思います。

 手続きにはユーザIDが必要なのですが、これを取得するためには「食品関連事業者」としての基本情報を届出することになります。「食品関連事業者」とは、表示責任者のことを指します。一括表示に、表示内容に責任を有する者として表示されている会社のことです。

 基本情報の届出には、会社名や担当者連絡先のメールアドレスなどの情報のほか、法人番号やパスワードを入力して送る必要があります。ここで不備があれば差し戻しメールがあり、不備がなければユーザIDが発行されるという流れです。そしてその後に、ユーザIDとパスワードを使ってログインし、ここで製造所固有記号の届出(記号と、それに対応した製造者氏名、製造所所在地等)を行うことができるようになります。

 ログイン後は、大量の届出情報を一括インポートできる専用ファイルや、製造計画(2以上の製造所で製造する予定がある場合に、製造者氏名と所在地を記入するもの)を添付するためのエクセルファイルも使用できます。これらは、同じく「製造所固有記号制度届出データベース」のページ内からダウンロードできるようになっています。

消費者が求める「場所」情報


 このような情報公開の仕組みができた背景として、製造所の名称と所在地を確認したい要望は以前からあったことから、今回の一元化にあわせて実現することとなりました。ただ、製造所の名称と所在地が分かるようになりましたが、表示により安全が担保されるというわけではありません。この意味では、原産地表示の制度に近い性質を持っていると言えるでしょう。

 それでも、こうした「場所」に関する表示が安心安全に必要とされている側面があることも事実です。今回の「製造所固有記号制度届出データベース」による製造者名・製造所所在地の公開が、私を含め食品に関わる仕事をする人に改めてその大切さを考えさせるきっかけの1つになっていくのではと思います。

参照資料:
製造所固有記号制度届出データベース
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/unique_code/

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機能性表示食品の現状と今後について

 今回のコラムは、機能性表示食品についてです。読者のみなさんは、加工食品の製造や販売をされている方が多いと思います。機能性表示食品の届出をされている方は少ないと思いますが、いろいろと注目されている制度ですので、現状について簡単にまとめてみます。

制度開始から1年経過


 2015年4月1日に始まった「機能性表示食品」も、1年が経過しました。本稿を執筆している2016年4月25日の時点で304商品が受理され、その情報が公開されています。特定保健用食品(許可件数 約1,200)と単純比較はできないのですが、多数の利用がある制度であると言えると思います。そして1年経過を機に、いくつかの変更点が発表されていますのでまとめてみます。

4月以降の変更点のまとめ


 まずは以前から告知されていたとおり、4月以降に開始される臨床試験については事前登録が必要となります。(「食品表示基準の施行後1年を超えない日までに開始(参加者1例目の登録)された研究については、事前登録を省略できるものとする」ガイドラインP26)

そしてガイドライン、確認事項、留意事項の各資料に改正がありました。

・機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(平成28年3月31日一部改正)
・機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項(平成28年4月1日一部改正)
・機能性表示食品の届出書作成に当たっての確認事項(平成28年4月1日一部改正)

 また、届出方法も郵送方式から、オンライン方式に変更されました。同時に、届出商品がWEB上で検索できるようデータベース化※されています。(※昨年度の届出商品情報は現在データ移行中)

ガイドラインの主な変更(追記)点について


 ガイドラインは、機能性表示食品の届出をする際の最も重要な資料と言えます。新旧対照表が公表されていますので、主な変更(追記)点をまとめてみます。

・当該食品又は機能性関与成分について「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に含まれるものでないことの確認や、食品衛生法への抵触の確認をすること。また機能性関与成分と同様の関与成分について、特定保健用食品における安全性審査が行われているかどうか、届出者の可能な範囲において情報を収集した上で、評価を行うこと。

・提出する組織図は、届出者の組織内における健康被害情報の対応窓口部署の位置付けが明記されたものとする。また、連絡フローチャートは、行政機関(消費者庁、都道府県等(保健所))への報告等、具体的に記載すること。

・その他「同等」から「同等量」への追記など、同等性に関する記載の詳細化。
(「確認事項」にも、「機能性関与成分について評価した場合、既存情報の機能性関与成分と届出をしようとする機能性関与成分との間の同等性を考察しているか」の追記)

今後について


 今年1月18日より、「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」が開催されています。4月26日に第4回目の検討会が開催され、これまでに「機能性関与成分における栄養成分の取扱い」「機能性関与成分が明確でない食品の取扱い」等について検討がされているところです。

 現在は「定量確認及び定性確認が可能な成分」「食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる成分※は対象外」(※ビタミン、ミネラル等の栄養成分)となっていますが、今後は見直しされる可能性がありますので、関心のある方は定期的に検討会情報を確認されるとよいと思います。

 また健康に関する表示をした食品にとって重要な通知である「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」が、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」となる改正案が4月20日に出されており、5月20日までパブリックコメントを受け付けている状態です。

 改正案には「機能性表示食品」「特定保健用食品」に関する記載が追加されており、例えば「機能性表示食品について、届出をした表示内容を超える表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある」といった注意がされています。

 このように、機能性表示食品を取り巻く環境も1年前と少しずつ変わってきていることが見て取れると思います。これらの情報は、下記参照資料から確認できますので、健康に関する表示について関心のある方はあらためて確認されることが大切だと思います。

参照:
機能性表示食品に関する情報(「ガイドライン」「確認事項」「留意事項」の各資料)
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html
機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kinousei_kentoukai.html
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000144018

優良誤認表示の防止と公正競争規約について

今年4月1日に、いわゆる「改正景品表示法」(不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律)が施行されます。不当表示に対して新しく課徴金のことを定めたもので、食品業界のなかでは主に健康食品を扱う事業者、また外食事業者の間で話題になっていると思います。そしてこのコラムは、「改正景品表示法のことは知っているけど、公正競争規約のことは知らない」といった方に向け、基本的な情報をまとめたものです。

「優良誤認表示に該当しない表示」


課徴金に関する一連の発表のなかに、「課徴金納付命令の基本的要件に関する考え方」という資料があります。
優良誤認表示、有利誤認表示とは何か、課徴金対象行為とは何かについて考え方をまとめてある資料ですが、その中の一部を引用してみます。

課徴金対象行為とは、優良・有利誤認表示をする行為である。したがって、例えば、事業者が、「公正競争規約」に沿った表示など、優良・有利誤認表示に該当しない表示をした場合には、課徴金対象行為は 成立せず、課徴金の納付を命ずることはない。(P4)

事業者が、公正競争規約に沿った表示のように優良・有利誤認表示に該当しない表示をした場合等、 課徴金対象行為が成立しないときは、当該事業者について、「相当の注意を怠った者でないと認められる」か否かを判断するまでもなく、課徴金の納付を命ずることはない。(P16)

取り扱いの商品に該当する公正競争規約があるなど、すでに食品表示業務において確認フローに組み込まれている方にとっては「当たり前」のことかもしれませんが、一言で言えば、「公正競争規約に沿った表示をすれば、優良誤認表示に該当することはない」ということです。

公正競争規約とは


公正競争規約(景品表示法第11条に基づく協定又は規約)とは,景品表示法第11条の規定により,消費者庁長官及び公正取引委員会の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルールです。(消費者庁より) 公正競争規約を知らない方も多いのは、食品表示基準と異なり、すべての食品を対象としたものではない点があげられると思います。マーガリンなどの食品、飲用乳などの飲料、チョコレートなどの菓子、ビールなど酒類など含めると40種類強の公正競争規約があるのですが、一覧については下記参照ページから確認してみてください。

例えば「チョコレート類の公正競争規約」では、次のような基準を設けています。

チョコレート生地
カカオ分が全重量の35%以上(ココアバターが全重量の18%以上)であって、 水分が全重量の3%以下のもの(ただし、カカオ分が全重量の21%を下らず (ココアバターが全重量の18%以上)、かつ、カカオ分と乳固形分の合計が全重量の35%を下らない範囲内(乳脂肪が全重量の3%以上)で、カカオ分の代わりに、乳固形分を使用することができる。)

不当表示の禁止
第4条第1項第3号に掲げる基準に適合しないチョコレート又はチョコレート菓子について、「生」の文言を使用することにより、当該商品の品質が他の商品より特に優良であるかのように誤認されるおそれがある表示
第4条第2項第4号から第6号の規定に基づきチョコレート類に果物類の香料を使用している旨を表示している場合であっても、あたかも果物類そのものを使用しているかのように誤認されるおそれがある表示

公正競争規約と食品表示基準

このように、食品表示基準のような様式で、「定義」「原材料名」「禁止表示」などを個別に定めてあります。特にチョコレート類は、食品表示基準において個別の定義がされている食品ではないため、多くの事業者が食品表示を確認する際の実質の基準にしているといってよいでしょう。食品群別に、食品表示基準との関係をまとめると、下記のようになります。

食品表示基準に個別の定義(基準)がある 公正競争規約がある
調理冷凍食品、ジャム、乾燥スープ等 ×
果実飲料、ドレッシング、ハム等
チョコレート、ビスケット、コーヒー等 ×
健康食品等(ローヤルゼリーを除く) ×(外食は対象外) ×

冒頭の「優良誤認表示」に該当しないようにするためには、公正競争規約に沿った表示をすればよいということになりますが、難しいのは「食品表示基準での個別の定義も、公正競争規約も両方存在しない」食品の場合です。新しい原料素材、新しい製法などによる新しい食品分類は、研究や技術革新によって今後も増えていくと思われます。

このように新しい食品分類を取り扱う方や、既存の食品分類に対応するものない場合は、表示しようとする内容について基準を定めたものが他の食品分類にないか、この機会にひととおり確認されてみるとよいと思います。

参照:
不当景品類及び不当表示防止法第8条 (課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/160208premiums_3.pdf
表示に関する公正競争規約
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_hyoji.html

加工食品の原料原産地表示の拡大について

今年1月より、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が始まっています。検討会の趣旨は、「実行可能性を確保しつつ、拡大の検討を行う」ものです。今回のコラムは、この検討会の内容をベースに、原料原産地の現状と課題についてまとめてみたいと思います。

検討会の背景と趣旨


まずは背景ですが、下記の決定により原料原産地表示について「実態を踏まえ」「実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」とされていることにあります。

・「消費者基本計画」(平成27年3月24日閣議決定)
・「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月31日閣議決定)
・「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)

これを受けて消費者庁と農林水産省の共催による「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が開催され、今後の対応方策について検討が始まりました。

現状の原料原産地表示制度


食品全体で考えた場合、原産地に関する表示制度は下記のようになっています。

生鮮食品 原産地名の表示義務
加工食品 一部の食品に原産地名の表示義務
輸入品に原産国名の表示義務
外食 表示義務なし

加工食品の「一部」とは、22食品群+4品目を指します(詳細は「食品表示基準別表第十五」を参照してください)。これら対象加工食品の選定基準について、平成12年からいろいろな検討がされてきたのですが、分かりやすいものが「加工食品の原料原産地表示に関する今後の方向(平成15年)」にありますので、下記に引用します。

? 原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品としての品質に大きく反映されると一般に認識されている品目のうち、
? 製品の原材料に占める主原料である農畜水産物の重量の割合が50%以上である商品

このような経緯があり、現在の食品表示基準においても、原産地名の表示方法について、「原材料及び添加物に占める重量の割合が最も高い生鮮食品で、かつ、当該割合が50%以上であるものの原産地を、原材料名に対応させて」表示するなどの基準が定められています。

また食品表示基準以外でも、原産地に関する表示基準が定められているものもあります。東京都消費生活条例では、調理冷凍食品(一部除外規定あり)に対して「重量に占める割合が上位3位までのもので、かつ、当該割合が5パーセント以上である原材料及び商品名等にその名称が付された原材料」に対して原産地表示に関する規則を設けています。また食用塩やコーヒー、蜂蜜などの公正競争規約においても、原産地表示に関する規則を設けています。

主な課題と今後のスケジュール


「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」では、次の3点を検討します。

・ 現行の加工食品の原料原産地表示制度や取組の検証
・ 加工食品の原料原産地表示の拡大に向けた具体的な方策
・ その他

そして主な課題の1つとなるのが、「実行可能性」でしょう。生鮮食品に近い加工食品を製造する国内の食品事業者は原産地表示の拡大を希望する一方で、多種多様な原材料を使用した加工食品を製造する食品事業者は実行可能性を懸念するといった構図になっていると思われますので、検討会ではまず関係者のヒアリングから進めている状況です。

また前回の「食品表示一元化検討会報告書(平成24年)」では、「本検討会では、これまでの「品質の差異」の観点にとどまらず、新たな観点から原料原産地表示の義務付けの根拠とすることについて議論を進めたが、合意には至らなかった。当該事項については、食品表示の一元化の機会に検討すべき項目とは別の事項として位置付けることが適当である。」と、課題のような形でもまとめられています。

この「新たな観点」とは、食品表示一元化検討会のなかで検討された「原料原産地の誤認を防止する観点」と思われますので、今回の検討会においても引き続き重要な意味をもってくるものと思われます。

第3回目の検討会が今年3月31日に行われる予定です。そして今後のスケジュールとしては、今年の秋を目途に中間的な取りまとめが行われる見込みです。これらの検討会議事録は、下記サイトにて公開されていますので、関心のある方は定期的に確認されておくとよいでしょう。

参照:加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html
食品表示基準 別表第十五(P527)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf

製造所に関する問い合わせ先の表示について

今回のテーマは製造所固有記号の続きです。
筆者はときどき講演をするのですが、聴講者の関心がもっとも高いテーマの1つと感じています。本当は添加物やアレルギーなどについて書きたいのですが(原材料規格書の計算や翻訳といった仕事が中心ですので・・・)、それはまた次回以降にしようと思います。

さて、新しい食品表示基準(新基準)のもとでは、「原則として同一製品を二以上の製造所で製造している場合」にのみ、製造所固有記号が使えることになりました。その場合、製造者と製造所所在地についての問い合わせに対しても応答する必要がありますので、今回はそれをまとめてみます。

旧基準との比較


旧基準においても、製造所固有記号を使う場合は、消費者からの問い合わせに対し製造者と製造所所在地について対応する必要性はありました。

消費者等から製造者及び製造所所在地についての問い合わせがあった場合には、すぐに回答できるよう、既に届け出ている製造所固有記号を一覧にまとめ、問い合わせ窓口に備えておくなどの対応が必要です。

参照:製造所固有記号に関する手引きQ&A(消費者庁)

ただ、消費者からすれば「どこに問い合わせればよいのか」がいまひとつ分かりにくく、そのため事業者も備えが十分でない実情があったと思います。
これに対して、新基準ではその問い合わせ先を「表示」することになりました。
今回の改正のなかでは、消費者から見ると分かりやすいメリットといえると思います。新基準に記載された規則は、以下のとおりです。

次に掲げるいずれかの事項を表示しなければならない。

1. 製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称の情報の提供を求められたときに回答する者の連絡先

2.製造所固有記号が表す製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称を表示したウェブサイトのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)

3.当該製品を製造している全ての製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称及び製造所固有記号

参照:食品表示基準(P20)

消費者からみる製造所固有記号


つまり消費者は、パッケージの食品表示に記載された製造所固有記号(例:+ABC)について、その付近に表示されている電話番号等から製造者と製造所所在地をすぐに知ることができるようになります。

(固有記号-12)製造所の所在地等が製造所固有記号で表示されている場合、消費者は、どのようにして製造所の所在地等を把握すればよいですか。

? 表示
・食品にお客様ダイヤル等の電話番号が表示されていれば、その連絡先に問合せを行うこと
・食品にウェブサイトアドレスが表示されていれば、当該ウェブサイト等にアクセスして確認すること
・食品のパッケージに製造所の所在地等一覧が表示されていれば、パッケージに表示された製造所固有記号と照合すること

? 消費者庁の製造所固有記号制度届出データベースで検索する

参照:食品表示基準Q&A(固有記号 – 12)

応答義務について


右記のように、製造所固有記号を使う事業者の立場としては「表示されている電話番号に製造者や製造所所在地に関する問い合わせがあれば、回答しなければならない」といった変化が生じることになります。これまで表示されていたお客様相談室等での回答ではなく、別部署からの回答をしていた場合は、FAQリストを更新する必要性などが想定できるでしょう。
 また「何をどこまで回答するか」についても、食品表示基準Q&Aに記載されています。

製造所固有記号を使用しない場合に表示される内容である製造所の所在地や製造者の氏名若しくは名称を回答してください

参照:食品表示基準Q&A(固有記号 – 14)

具体的な表示方法


ではどのように表示すればよいのか、その具体例も食品表示基準Q&Aに記載されていますので、代表的な例をこちらにあげてみます。

名称
原材料名
添加物
内容量
賞味期限
保存方法
製造者  ●●株式会社+Aa
東京都千代田区霞が関■?■?■
お客様ダイヤル0120(○○)○○○○
当社ウェブサイトアドレス
http://www.・・・・・

参照:食品表示基準Q&A(固有記号?17)

その他二次元コード(QRコード)や、固有記号別に製造者と製造所所在地を列挙する方法なども具体的に事例が記載されていますので、一度確認をしておかれるとよいと思います。

製造者と製造所所在地を簡単に確認ができるようになることを、特に事業者側は気にかけていることも多いでしょう。ただそれは、「消費者が何に不安を感じて、製造者と製造所所在地を確認したいと考えるのか」、今一度考える機会でもあるのではと思います。

参照:製造所固有記号に関する手引きQ&A(消費者庁)http://www.caa.go.jp/foods/qa/seizousho_qa.html
食品表示基準 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf
食品表示基準Q&Ahttp://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_qa-togo.pdf
食品表示基準について(施行通知)


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アレルギーは表示確認だけでなく実際の確認を


食品表示に関する業務に関わっていない方でも、アレルギー表示の重要性についてご存知の方は多いでしょう。
食品表示を実際に作る担当者はもちろん、通販カタログやECサイトでアレルギー表示を記載する上で、その重要性を把握することも業務の役に立つはずです。今回は、アレルギー表示についての業務上の注意点を解説します。

「安全性のための表示」であることの再認識を


アレルギー表示は、単に「間違いのない表示を作ればよい」というわけではありません。
本質的に重要なことは、「食べても大丈夫かどうか」を考えて、表示を作っているかということです。

アレルギー表示は、正しい表示方法で記載する義務に加えて、表示と実際の情報が間違いなく対応していることを確認する責任があります。表示と実際の情報が正確に対応していなかった場合、消費者に下記のような事故が起きる可能性があります。

  • 食前にアレルギー表示を確認したにも関わらず、想定していなかったアレルギー反応が突然起きる
  • 重症の際はアナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難、意識障害を誘発する
  • 死に至る可能性もある

アレルギー表示に基づく事故は、食品に携わる事業者にとって最も大きな問題といえます。
しかし、アレルギーは実際に経験しているか、もしくはそうした人が身内にいなければ、事故を具体的にイメージすることは難しいかもしれません。きちんとアレルギーの方の実情に目を向けながら、アレルギー表示の重要性を考えることが重要です。

表示対象27品目とその理由を知っておくこと


どの原材料をアレルギーとして表示する必要があるのか、まとめてみましょう。基本的には下記の27品目が表示の対象(特定原材料等)とされています。しっかり覚えておきましょう。

義務(7品目)
「特定原材料」
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生
推奨(20品目)
「特定原材料に準ずるもの」
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、
牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、
もも、やまいも、りんご、ゼラチン

「27品目はもちろん知っていますよ」という事業者にも、改めて考えていただきたいことがあります。
それは、「なぜその原材料が表示対象とされているのか」ということです。
消費者庁の資料(アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック)によると、次のようにまとめることができます。

「アレルギーの原因植物」うち義務7品目を抜粋(平成23?24年度 消費者庁調査)

症例数が多いもの 卵(39.0%)、乳(21.8%)、小麦(11.7%)
重篤度が高いもの 落花生(5.1%)、そば(2.2%)
成人期での発症や誤食が多いもの えび(2.7%)、かに(0.6%)

資料によると、何らかの食物アレルギーを持っている人の割合は、日本の全人口の1?2%(乳児に限定すると約10%)と考えられます。間違いのない食品表示を作るためだけであれば、このようなことは知らなくてもよいかもしれません。しかし、アレルギー表示を「安全性確保のためのもの」と考えると、それぞれの原材料が持つ特性(症例数や重篤度など)を知っておくことが、事故を未然に防ぐために大切なのです。

使用しているかではなく「含まれているか」で表示


実際にアレルギー表示を作る上での注意点をまとめます。

  • ・原材料名の表示項目 → 「使用した」ものを記載
  • ・添加物とアレルギー → 「含む」ものを記載

たとえば「レシピに牛乳を使っていない」=「食品全体に乳成分が含まれない」とはなりません。
乳成分がその他の二次原材料に含まれる場合や、添加物に含まれる場合があるためです。

つまり手元のレシピを見て使用しているかどうかで表示を決めるのではなく、実際に含まれているかどうかで表示を決める必要があります。アレルギーの表示は、「数μg/g, 数μg/ml含有レベル以上の特定原材料等の総タンパク量を含有する食品(「アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック
」には必要となります。

どうやってそんな詳細な情報を確認すればよいのでしょうか。

ここで必要になるのが、「原材料規格書」です。
仕入元から取り寄せた原材料規格書の確認するポイントを、下記にまとめておきます。

【原材料規格書から「アレルゲンは含まれないか」を確認するポイント】

  • 複合原材料に注意。詳細な二次原料を確認する。
  • 複合原材料の省略に注意。複合原材料のうち「その他」と表示される原材料を確認する。
  • 添加物の省略に注意。キャリーオーバーや加工助剤の添加物を確認する。
  • 添加物の由来に注意。アレルゲン由来のものはないか確認する。
  • 製造時の混入に注意。使用した原材料だけでなく、製造時の混入情報を確認する。
  • 海外の規格書に注意。制度が違うため表示の対象となるアレルゲンが異なる。
    (義務7品目では「そば」が、推奨20品目では「大豆」以外の品目が対象外であることが多い)
  • 調査の対象範囲に注意。商品によっては義務7品目のみや推奨品目の中でも一部のみを対象としている場合がある。

なお、「入っているかもしれない」といった可能性についての表示は、消費者の食品選択の可能性を狭めてしまうため禁止されています。ご注意ください。

簡単にアレルギー表示についてまとめてみましたが、アレルギー表示とは、安全性のための表示であり、表示と実際とが対応していることが大切であることが理解いただければ幸いです。次回コラムは、「添加物」についてまとめてみたいと思います。


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新しい「製造所固有記号」の制度について

昨年末の 12 月 24 日に、「食品表示基準 Q&A」および「食品表示基準について(施行通知)」が改正されましたが、そのなかで製造所固有記号に関する詳細な情報が発表されています。今月のコラムは、2016 年 4 月より始まる新しい製造所固有記号の制度について、まとめてみたいと思います。

主な改正内容


食品表示基準が施行されてから発表されたものと概要は大きく変わるものではなく、規則の詳細な解説や、補足が中心となります。

【新しく確認が必要な箇所】
・固有記号は「+」を冠して表示
・手続きはすべてオンライン、登録まで約 2 週間
・有効期間は 5 年で満了、継続には更新手続き必要

【これまでの理解を補完するもの】
・「2以上とは」「同一製品とは」の詳細な定義
・旧制度の固有記号取得は今年 3 月 31 日まで
・業務用食品は例外あり(使用の際は届出し「+」を冠する)
・「乳、乳製品及び乳又は乳製品を主要原料とする食品」は、製造所の表示が必要(Q&A(固有記号?3))
・旧制度の固有記号使用の場合、法人名変更すると使用不可

製造所固有記号の主旨と定義


また、今後製造所固有記号を使用できないケースが多いと想定されるため、各方面で注目を集めている制度でもあると言えると思います。まずは昨年末の改正内容から主旨と定義をまとめてみました。

【主旨】
製造所固有記号の表示は、原則として同一製品を2以上の製造所で製造している場合のように、包材の共有化のメリットが生じる場合にのみ認められます。(出典:Q&A(固有記号-1))

【定義】
・「同一製品」とは、同一の規格で同一の包材を使用した製品をいう。
・「同一製品を2以上の製造所で製造している場合」とは、製造所固有記号の届出時に次の2つの要件を満たすものとする。

(a) 2以上の製造所が、それぞれ、食品の衛生状態を最終的に変化させる場所であること。
(b) 製造所固有記号の使用によって包材が共有化されること。
(出典:食品表示基準について P12)

「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」の判断事例


ここで、「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」の判断について、具体的な事例がQ&Aに記載されていますので下記に引用します。

(固有記号-11)以下の場合は、「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」に該当しますか。
? 中間加工原料を製造する工場と、その後、それを用いて最終製品を製造する工場の2工場で製造する場合
?繁忙期(例えば、年末の1~2か月間)だけ、2以上の工場で製造する場合
? 新商品について、売行きがよい場合には、2以上の工場で製造する予定がある場合
? 届出時には2以上の工場で製造しているが、届出の有効期間内に製造を縮小し、いずれ1工場で製造する予定がある場合

(答)
? 中間加工原料を製造する工場は、最終的に当該食品の衛生状態を変化させる製造所には当たらないため「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」に該当しません。
??製造所固有記号の有効期間内に2以上の工場で製造する計画があることから、同一製品につき製造を行うことが計画されている製造所について、製造計画書を添付して届け出るのであれば、「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」に該当します。
? 届出時には2以上の工場での製造が行われているため、「同一製品を二以上の製造所で製造している場合」に該当します。

その他、「最終的に衛生状態を変化させる行為として小分け作業を行う場所について、同一製品を2以上の場所で加工している場合」など例外的に使用が認められるケースも Q&A(固有記号-7)に公表されています。

新しい製造所固有記号の制度は今年 4 月に始まります。新しい食品表示基準に基づく表示に切替える作業を進められているところと思いますが、今後、製造所固有記号を使用される方は、改正点や申請方法を確認されておかれるとよいと思います。

参考:
食品表示基準Q&A 新旧対照表 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_qa-shinkyu.pdf
食品表示基準について 新旧対照表 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_tuchi-shinkyu.pdf


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新基準移行時の主な変更点まとめ ~ Q&A 資料より~


昨年末に製造所固有記号の詳細が発表され、いよいよ新基準への移行準備が整った形になりました。そして移行作業時に食品表示基準の理解を助けてくれるのが、表示事例の記載されている「食品表示基準 Q&A(消費者庁)」となるかと思います。

そこで、今回は主な変更点として添加物、アレルギー、栄養成分について、Q&A 資料から確認しやすいようポイントとしてまとめてみました。(※一部、Q&A にないポイントは食品表示基準、施行通知を参照)

1.添加物について

主なポイント 旧基準 新基準 Q&A番号
原材料名と明確に
区分して添加物表示
原材料名欄内に
重量順区分で表示
添加物の事項名欄を設けるか
(「なし」の表示不可)、原材料名欄内で
明確に区分
(加工-249)
(加工-251)

2.アレルギーについて

主なポイント 旧基準 新基準 Q&A番号
個別表示の原則化 個別表示の原則規定なし 個別表示の原則化(乳は
(乳成分を含む)、(乳由来)と表示)
(E-2)
(E-6)
(E-10)
特定加工食品と
その拡大表記
改めての記載は不要
(例:「マヨネーズ」に
「卵」の表示は不要)
改めて記載が必要(卵黄、
卵白にも(卵を含む)
が必要)
(F-1)
(F-2)
(F-3)
一括表示時の省略規定 繰り返し省略可 繰り返し省略不可
(個別表示のみ繰り返し省略可)
(E-7)
(E-4)
一括表示時の末尾表現と
接続方法
(原材料の一部に~を含む)、
「、」の接続規定なし
(一部に~を含む)、
(小麦・卵・落花生)と「・」で接続
(E-7)
(E-11)

3.栄養成分について

主なポイント 旧基準 新基準 Q&A番号
ナトリウムから
食塩相当量へ
「ナトリウム」を表示
(任意で枠外に食塩相当量併記可)
「食塩相当量」を表示(ナトリウムを
併記できる場合も枠内に記載)
(加工-216)
栄養成分の項目の変更 表示の位置規定なし、
糖質と食物繊維表示での
炭水化物表示の代用可、
ショ糖は枠内
上位表示より1字下げ、
糖質と食物繊維表示での
炭水化物表示の代用不可、
ショ糖は枠外に表示
(加工-199)
(加工-257)
(加工-233)
栄養成分表示と 1 食重量 「栄養成分表示」と記載、
1 食の場合は重量併記
(加工-259)
(加工-105)
以下は Q&A 資料に事例はありませんが、食品表示基準、施行通知から基準値などを確認できるよう該当ページをまとめています。
低減・強化された
旨などの相対表示
基準値以上の絶対差 25%以上の相対差の追加、
栄養素等表示基準値の10%以上の
絶対差(一部変更)
基準 P67 ~ 69
通知 P27 ~ 29
糖類・食塩の無添加・
不使用表示
明確な規定なし 規定の新設、糖類・食塩に代わる
原材料使用も不可
基準 P70 ~ 71
通知 P29
栄養成分強調表示と
栄養機能食品

栄養素等表示基準値変更で
強調表示等要見直し、
栄養機能食品の上限下限変更と
対象年齢等の追記
基準 P504 ~ 506
通知 P26

実際の作業時には、食品表示基準の詳細やほかの変更点などを確認して正しい表示づくりを進めていくことになりますが、こうした Q&A 資料を読むことで移行作業に必要な情報整理などの計画を立てやすくなりますので、一度確認されておくとよいと思います。

参照:
食品表示基準 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf
食品表示基準 Q&A http://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_qa-togo.pdf
食品表示基準について(施行通知)


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2015年の主な食品表示ニュースと今後の予定

あけましておめでとうございます。おかげさまで、ラベルバンク新聞も8 年目を迎えました。いつもありがとうございます。本年もお届けできるよう頑張りますので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

さて2015年は食品表示を取り巻く環境に大きな変化がありました。今回のコラムでは、食品表示の実務を担当する方にとって重要となった出来事を、昨年の時系列でまとめてみたいと思います。

昨年の主な出来事


2015年 1月 「遺伝子組換え食品に関する品質表示基準」改正(ステアリドン酸産生大豆関連)
「乳等表示基準府令※1」改正(リステリア・モノサイトゲネス関連)
3月 「食品、添加物等の規格基準」一部改正(保健機能食品関連)
「安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令※2」公布
「食品表示基準」「食品表示基準Q&A」「食品表示基準について(施行通知)」公表
「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」公表
4月 「食品表示基準」施行
「機能性表示食品」届出受付開始
「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」使用期間開始
5月 「食品表示法における酒類の表示のQ&A」公表
6月 「食品表示基準について(施行通知)」第1次改正
「機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項」公表
「地理的表示保護制度(GI マーク)」運用開始
7月 「食品表示基準Q&A」第1 次改正
「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」開催
9月 「食品表示基準について(施行通知)」第2次改正
「機能性表示食品の届出書作成に当たっての確認事項」公表
10月 「酒類の地理的表示に関する表示基準」改正
「果実酒等の製法品質表示基準」公布
12月 「改正景品表示法※3」公布(課徴金制度関連)
「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」開催
「食品表示基準Q&A」第2次改正※4
「食品表示基準について(施行通知)」第3次改正※4

このコラムでは主に新しい「食品表示基準(アレルギー、添加物、栄養成分、強調表示等)」を取り上げてきましたが、食品表示に関することとしてもう少し広く見るとこのような出来事がありました。食品表示担当の業務範囲も人によって様々だと思いますので、例えばトランス脂肪酸やレッドミートへの対応で忙しかった方や、機能性評価試験と製品分析に追われた方など様々な1年だったかと思います。

今年以降に予定されていること


また、今年以降に予定されている食品表示関連の出来事についても、まとめてみたいと思います。

2016年 4月 「製造所固有記号データベース」運用開始
「改正景品表示法※3」の施行
9月 「食品表示基準」の経過措置期間(生鮮食品)終了
2017年 4月 機能性表示食品制度見直し目途(「施行後2年を目途に新制度の施行状況を検討」)
2020年 3月 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)終了
「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」の使用期間終了

新しい食品表示基準への移行作業については、ポイントになるのはやはり今年4月に予定されている「製造所固有記号データベース」の運用開始かと思われます。ここで新しい固有記号を申請し取得することで、今後の改版作業を進める計画を立てられている方も多いと思いますので、現在ではまだ少ない新基準表示の商品も、今年の秋口からは多くの商品が店に並ぶようになるのではと思います。

機能性表示食品については、「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」において「施行後2年を目途に新制度の施行状況を検討」と記載がありますので、今年の後半あたりから見直しに関する話題が増えていくようになるのではと思われます。
 
これらの変化を契機に、さしあたって業務に求められるのは「情報管理」あたりからが多いかと思いますが、以前に比べて大量の情報を短時間で扱うようになった今の業務環境においては、以前にも増して1つ1つ丁寧に確認できる仕組みづくりの重要性が問われてくる、そんな1年になるのではと思います。
長々と書きましたが、今後も少しでもお役に立てるコラムを書いていきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

注釈:
※1「食品衛生法第19条第1項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令」(2015年1月9日)
※2「食品表示法第6条第8項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」(2015年3月20日)
※3「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」(2015年12月16日)
※4 昨年末の12月24日に、「食品表示基準Q&A」「食品表示基準について(施行通知)」が改正されています。
「ナトリウム低減」の特例の規定や、新しい「製造所固有記号」の詳細等が公表されていますので、確認をおすすめします。