Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

新しい食品表示基準への対応と実務上のポイント

新基準と旧基準の混在に注意


先月に引き続き、4月1日に始まった新しい食品表示基準についてです。多くの食品表示実務担当者にとって、新基準への対応にあたりポイントとなるのは「1つの食品の表示の中での食品表示基準と旧基準の両者に基づいた表示の混在」が認められない点(「食品表示基準について(P.35)」)に対する確認作業ではないかと思います。(ただし製造所固有記号の規則についてのみ、1年間は旧基準での表示の混在が許容されます)

これは、例えば栄養成分表示は新基準、アレルギーは旧基準とした場合、消費者は「アレルギーの一括表示欄は省略せず全て記載してある」と勘違いする可能性があるため、とされています(新基準ではアレルギーの一括表示の際は原材料として記載されているアレルゲンを省略できません)。そこでまず、商品を手にしてすぐに分かる変更点について再確認してみましょう。

新基準に基づく表示の例

名称   ○○○
原材料名 ○○○、○○○(一部に○○を含む)
添加物  ○○○、○○○(一部に○○・○○を含む
内容量  ○○○
賞味期限 ○○○
保存方法 ○○○
製造者  ○○○
栄養成分表示
(○○g あたり)
熱量    ○○kcal
たんぱく質 ○○g
脂質    ○○g
炭水化物  ○○g
食塩相当量 ○○g

表示方法の変更点について、外側からぱっと分かるのは大きく3点です。

・「添加物」の項目がある(もしくは原材料欄の中に「/」等で区分されている)
・栄養成分表示の中に「食塩相当量」の項目がある
・アレルギーを一括表示する場合、(「原材料の一部に〜」ではなく)「一部に〜」から始まっている

変更点がこれだけであれば楽なのですが、実際には「外側からだけでは、混在しているかどうかが分かりにくいもの」があります。
その代表的な例が、強調表示と言えますが、こちらも新基準に伴い変更があります。

・高い、低い、含む、含まないなど「栄養強調表示」の基準値の変更
・低減、強化など「相対表示」の 条件と追加(相対差)と変更(絶対差)
・糖類やナトリウム塩の「無添加」の表示について新しく条件を規定

例えば添加物やアレルギーについては新基準に基づく表示様式でありながら、強調表示だけは旧基準に基づいている場合も考えられます。これらの強調表示の整合性を外側から確認するには、表示値と基準値を比較する必要があるため少々手間がかかります。

栄養素等表示基準値そのものが変更されていることから多くの商品に影響があると考えられるため、規格書情報との整合性確認をしやすい環境づくりが重要になるでしょう。どの商品でどのような表示がされているのかの管理とともに、その表示方法が新旧どちらであるかも管理しておくことが、お客様からの問い合わせに素早く正確に応えることができる体制づくりに求められるのではと思います。

          

【参考】食品表示基準について(消費者庁)


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セミナーのお知らせ


※ 以下はセミナーのご紹介です。

ラベルバンクでは、2015年4月1日に施行された新しい食品表示基準(以下:新基準)についての、基本的なポイントなどをまとめた講演もしております。

主な変更点は下記10点ですが、とりわけ「添加物」「アレルギー」「栄養成分」の3点の表示方法について、食品表示基準、同Q&A、同施行通知のなかから重要と思われる変更点をお伝えします。

食品表示担当者の実務フローで最も大きな影響があると思われる、「新基準にもとづく表示方法と旧基準にもとづく表示方法の混在の禁止」。そのポイントを踏まえたうえで、各表示方法の変更点から実際にどのような確認作業が必要となるのかをお伝えします。

主な変更点:
・加工食品と生鮮食品の区分の変更
・製造所固有記号の使用ルールの変更(※業務用食品を除く)
・アレルギー表示のルールの変更
・栄養成分表示の義務化(※業務用食品、一部小規模事業者等を除く)
・栄養強調表示のルールの変更
・栄養機能食品のルールの変更
・原材料名表示等のルールの変更
・添加物(として販売されるもの)の表示ルールの変更
・通知等に規定されている表示ルールの一部を基準に規定
・表示レイアウトの変更(添加物の表示区分)

また、食品表示実務担当者よりも、商品開発や事業計画の担当者に影響ある変更点として、製造所固有記号の運用の変更点、機能性表示食品制度についてもお伝えいたします。

過去のセミナーについては、こちらからもご確認ください。

機能性表示食品の制度が始まりました。

2015年4月1日に食品表示基準が施行され、同時に機能性表示食品の届出が可能になりました。届出番号を記載のうえ、「本品には○○の成分が含まれるので、○○の機能があります」などの表示ができるようになります。制度を利用される方は、販売日の60日前までに届出する必要があります。届出する主な資料は安全性、機能性に関する科学的根拠資料で、その一部は消費者庁のウェブサイトで消費者向けに公開される予定です。

詳しくは、3月31日に公表された「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」にまとめられていますので、一度ご確認ください。

制度のポイントと社内体制づくり


研究開発から商品企画、品質保証までの業務フローに、臨床試験による安全性と機能性の確認作業が組み込まれている場合は、あとは健康被害の情報収集体制などの届出資料を作成すればスムーズに制度を利用できます。そうでない場合は、安全性であれば食経験評価、機能性であればシステマティックレビューなどの追加作業の想定が必要になるほか、機能性関与成分の同等性(定性、定量)の考察など基本的な社内体制づくりが求められます。

これは例えば、調査や試験で得た成分の情報と、自社商品に含まれる成分とが、同じ安全性と機能性をもっていることを確認する体制のことです。各種の試験や調査の外部委託も可能なのですが、最終的に機能性表示に責任をもつのは届出事業者ですので、この社内体制づくりがまず大きなポイントになるのではないかと思います。

試験、調査の注意点


今から新しく試験や調査に取り組む際の注意点についてですが、ここでは大きく2つ、「商品の形状」と「同等性の確認」について取り上げてみます。

まず多くの場合は、費用のかかる臨床試験よりもシステマティックレビュー(レビューワーの要件を満たせば社内で)の実施を検討されると思います。加工食品、生鮮食品の場合は観察研究の論文も対象にできますので疾病に罹患した被験者が含まれていても対象にできるのですが、サプリメント形状の商品の場合だと「健康な人での臨床試験とその論文」を対象とする必要があります(例外として「特定保健用食品の試験方法」の範囲内であれば軽症者が含まれたデータでも使用できます)。

このように商品の形状によって求められる科学的根拠に違いがある点が、この制度のポイントではと思います。

また販売したい商品に含まれる機能性関与成分の性質と、同等である成分を試験で使用した論文をみつける必要がありますので、機能性表示したい成分によっては使用できる論文自体が少なくなる可能性もあることも注意点といえるでしょう。

一般消費者への分かりやすさと課題


臨床試験の論文やシステマティックレビューを資料としてまとめることのほかに、「一般消費者向けの抄録」を作成して届出することが求められます。

専門用語を誤解の生じない範囲内でなるべく平易な言葉に置き換えて1,000文字以内でまとめるということになっていますが、この抄録と論文の内容が、そして表示の内容が適切に対応しているかを確認する管理体制も大切になるかと思います。

ここまで、機能性表示を目指す事業者向けに簡単に制度の概要と実務上のポイントを書いてみましたが、今回の制度の大きな特徴である「届出資料の開示」が、どこまで分かりやすくなるのかも重要な点だと思います。

開示された情報を消費者が読み込むには専門性が高い内容が多いのですが、そのハードルを下げる役割の1つが「抄録」といえます。誤認を与えない範囲内でどこまで分かりやすく科学的根拠を表現していくのか、どこまで分かりやすく機能性の表示をしていくのか、新しい課題について考えながら挑戦していくことが求められるかと思います。

【参考】機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(消費者庁)
 
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150330_guideline.pdf


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食品表示基準が施行されました!

2015年3月20日に食品表示基準が公布され、2015年4月1日施行されました(ただし製造所固有記号の規定については1年後予定)。

加工食品と添加物は2020年3月31日まで、生鮮食品は2016年9月30日までが経過措置期間となります。
下記の主な変更点のほかに、新しく「機能性表示食品」についても規定されています。

主な変更点のまとめ


1.加工食品と生鮮食品の区分の変更
JAS法の考え方に基づく区分に整理。
簡単な加工を施したもの(例:ドライマンゴー)は「加工食品」に。

2.製造所固有記号の使用ルールの変更(※業務用食品を除く)
原則として同一製品を2以上の工場で製造する場合に限り使用可能に。
使用の場合は連絡先等を表示。

3.アレルギー表示のルールの変更
特定加工食品(「卵を含む」を省略できるマヨネーズ等)とその拡大表記を廃止。
また個別表示を原則とし、例外的に一括表示をする場合には一括表示欄に全て表示が必要に。

4.栄養成分表示の義務化(※業務用食品、一部小規模事業者等を除く)
原則としてすべての消費者向けの加工食品、添加物に栄養成分表示を義務化。
ナトリウムは食塩相当量で表示。

5.栄養強調表示のルールの変更
低減または強化された旨を表示する場合の、要件と計算方法が変更に。
新たに無添加強調表示の規定を追加。

6.栄養機能食品のルールの変更
対象食品の範囲を鶏卵以外の生鮮食品まで拡大。
表示できる成分に「n-3系脂肪酸」「ビタミンK」「カリウム」を追加。
また栄養素等表示基準値の変更に伴い、対象年齢及び基準熱量に関する文言の表示が新しく必要に。

7.原材料名表示等のルールの変更
パン類等の原材料と添加物表示順序を他の加工食品の方法に統一。
複合原材料の構成原材料の分割表示が可能に。

8.添加物(として販売されるもの)の表示ルールの変更
業務用は「表示責任者の氏名又は名称及び住所」を、一般消費者向けはこれに加え「内容量」を新たに表示。

9.通知等に規定されている表示ルールの一部を基準に規定
フグ及びボツリヌス食中毒対策の表示ルールを規定。
また栄養素表示基準値等の表示ルールを規定。

10.表示レイアウトの変更
小包装食品に対する省略不可項目の拡大と、製造者の表示義務対象の新規規定。
原材料と添加物は区分を明確にして表示。

最新の追加情報と実務上の注意点


2015年3月31日、「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン」「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が公表されました。

今後は、1つの食品で新基準による表示方法と旧基準による表示方法が(製造所固有記号の規定を除き)混在することのないよう、商品別の表示改版作業について具体的な計画を立てていく段階に入ります。

改版作業時の注意点ですが、上記のようなルールの変更を把握しておくこと以上に、短期間に多くの商品をまとめて改版しなければならない点への理解がポイントと思われます。原材料規格書から配合表、食品表示の作成と最終確認までを人が行いますので、作業量が多くなればそのぶんミスの確率も高くなる可能性があります。

また現在販売している商品の表示と規格書の情報に違いがあるなど、新しいミスに気付く可能性もあると思われます。ルール変更の節目を、情報管理体制の見直しの機会と捉えて、計画的に改版作業を進めていくことが大切だと感じています。

            

【参考】食品表示基準(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf


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乳等表示基準府令の改正について

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ナチュラルチーズ、発酵乳、乳酸菌飲料の表示基準が一部変わります。


今回のコラムは、「乳製品等を主要原料とする食品」についてです。タイトルの「乳等表示基準府令」とは、「乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令」という名前を縮めたものです。この乳等表示基準府令について、平成27年1月9日付けで改正の通知がありましたので、該当する製品を扱うお仕事をされている方は一度確認してみてください。

改正の背景


今回の表示基準一部改正は、「乳等省令」において、乳製品の成分規格に関する改正が行われているためです。乳等省令とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」という名前を縮めたものです。成分規格についての主な変更点は3つです。

1. ナチュラルチーズ※の成分規格にリステリア・モノサイトゲネスの汚染菌数の基準値を設定
(※ソフト及びセミハードのものに限る。以下同様。)
2. 発酵乳の成分規格の改正
3. 発酵乳及び乳酸菌飲料の乳酸菌数の測定法の改正

対象となる乳製品と表示内容


対象となる乳製品は、下記の4点です。

・容器包装に入れた後に加熱殺菌したナチュラルチーズ
・飲食に供する際に加熱するナチュラルチーズ
・発酵後に殺菌した発酵乳
・製造時の発酵温度が摂氏25度前後の発酵乳及び乳酸菌飲料

そして、それぞれ必要になる表示は、下記のとおりです。

・容器包装に入れた後に加熱殺菌したナチュラルチーズ
 →「包装後加熱」、「包装後加熱殺菌」、「容器包装後加熱殺菌済み」等
・飲食に供する際に加熱するナチュラルチーズ
 →「種類別○○」の次に「(要加熱)」、「(加熱が必要)」、「(加熱してお召し上がりください)」等
・発酵後に殺菌した発酵乳→「殺菌済み発酵乳」等
・製造時の発酵温度が摂氏25 度前後の発酵乳及び乳酸菌飲料→「低温発酵」等

この改正を受けて、1月20日に消費者庁より「発酵乳等の表示基準の一部改正に関するQ&A」が発表されています。対象となる食品(乳製品)について、またリステリアに関する消費者への注意喚起について記載されています。安全性に関する情報もありますので、WEBサイトでの事前情報発信など検討されることも大切ではと思います。

参照資料:
食品衛生法第19条第1項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する
内閣府令の一部を改正する内閣府令について(平成27年1月9日消食表第332号)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1403.pdf
新旧対照表
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1404.pdf
発酵乳等の表示基準の一部改正に関するQ&Aについて(平成27年1月20日消食表第1号)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1407.pdf


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機能性表示食品のガイドライン概要について

機能性表示食品とは、生鮮食品から加工食品、サプリメントなど食品全般に、科学的根拠を届出すれば「機能性」を表示できるという新しい制度のものです。

昨年夏に検討会報告書が公表されてからの流れとしては、12月に検討会で条件付きの答申が出され、今年1月にワーキンググループでガイドライン概要が公表され、今はガイドライン全容の公表を待っている、といった状況です。(また関連するものとして昨年11月頃に「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」の文書についての改定が発表されました。臨床試験の方法の考え方など再確認できます。)

今回の「概要」版では、食経験について「当該食品と類似する食品」での評価も認める記載、また臨床試験の参加者について「疾病に罹患していない者」の考え方の記載などもありましたが、より分かりやすくなったものとして「可能な機能性表示の範囲」が改めてまとめてあることが特徴かと思います。

1. 容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
2. 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
3. 身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つ旨

 ※ 身体の特定の部位に言及した表現は可能
 ※ 特定保健用食品で認められている範囲内の表現は可能(疾病リスク低減表示を除く)

概要では上記の内容までですが、ガイドライン全容がでてくるときには、もう少し具体的な例の記載があるかもしれません。

「特定部位」の表現、「特定保健用食品で認められている」表現ができるといった点では、規制緩和として大きな変化であることが改めて認識できます。反対に認められない表現についても記載がありましたが、ここは従来どおりの理解(疾病の治療・予防や意図的な健康の増強などの表現の禁止)と同じで大丈夫です。

また答申書の付帯条件にも「科学的根拠の無い製品群が市場から淘汰されることを強く期待」「科学的根拠の無いイメージ広告等に対する行政処分をより強化すべき」といった記載がありますので、機能性表示食品の制度を利用しない場合でも、科学的根拠を整備したうえで表示と広告を自主点検していく流れになるのではと思います。

科学的根拠が必要とはいえ、自社でもつとなればそれなりに費用と時間がかかるものですが、これを支援する動きもあります。今年1月に農水省より、農産物のシステマティックレビューを実施し、生産現場が活用できるようするという報道発表がありました。

対象は米(γ-アミノ酪酸)、温州ミカン(β-クリプトキサンチン)、緑茶(メチル化カテキン)、鶏肉(イミダゾールジペプチド)の4品目4成分です。生鮮食品、加工食品、サプリメントと扱う商品形態の違いにもよりますが、こうした施策もうまく活用できるようになっていくでしょう。

また制度の特徴として、届出された科学的根拠が情報公開されることが大きなポイントですので、メディアも取材と検証がしやすくなる分、消費者に対する分かりやすい情報発信が進むのではと思います。購入側の立場で考えると、売場にトクホ商品が増えるような印象になるのかもしれないですね。今後も話題になりそうな制度ですので、また機会があればまとめてみたいと思います。

参照資料:
12月9日 消費者委員会答申書
機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/item2.pdf


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食品表示制度の動向と主な変更点

昨年、2014年は食品表示の制度に関する動きが多い年でした。
パブリックコメントなどを受けて修正もいくつかありましたので、情報の整理を兼ねてまとめてみたいと思います。

現状からの主な変更点


食品表示基準の新設に伴い、現状からの主な変更点は下部のとおりです。

【食品表示基準(案)】

1)基本部分について

<全般>
・加工食品(製造、加工)、生鮮食品(調整、選別)の定義の明確化
・原材料名と添加物の事項名を別に表示(または原材料名と添加物を明確に区分)
・製造所固有記号は、原則同一製品を2以上の製造所で製造している場合に使用可
・表示可能面積30cm2以下の省略不可項目追加 (L-フェニルアラニン化合物等)

<アレルギー>
・特定加工食品(例:マヨネーズ)及びその拡大表記(例:からしマヨネーズ)の廃止
・代替表記の拡大表記のうち、卵の「卵白」、「卵黄」の廃止

<栄養表示>
・全ての食品関連事業者に表示義務を適用(業務用、小規模事業者を除く)
・義務、推奨、任意の3区分となり、飽和脂肪酸と食物繊維が推奨に該当
・ナトリウムの量は食塩相当量で表示、ただし併記可(ナトリウム塩添加食品を除く)
・相対表示は、原則としてコーデックスガイドライン(CAC/GL 23-1997)に準じる
・「無添加強調表示」に係る規定の追加

<その他>
・「ステアリドン酸産生(大豆)」に関する表示基準の追加(遺伝子組み換え食品)
・チーズ等の加熱、乳酸菌飲料等の発酵温度に関する表示基準の追加(乳等基準府令)

2)栄養素等表示基準値と栄養機能食品
・栄養素等表示基準値の見直し
・栄養機能食品の対象成分に「n-3系脂肪酸」「ビタミンK」「カリウム」追加
・鶏卵以外の生鮮食品についても新たに栄養機能食品の基準の適用対象へ

3)機能性表示
・新たに「機能性表示食品」を食品表示基準内に規定
・安全性や有効性の科学的根拠資料を事前届出、販売前に消費者庁が公開
・必要な科学的根拠、可能な機能性表示については今後ガイドラインで 通知の見込み

食品表示業務への影響


経過措置期間にもパブリックコメント後に修正があり、加工食品及び添加物は5年、生鮮食品は1年6ヶ月へと延長されました。食品表示作成などの業務をされる方は、その間に準備と対応をすることになりますが、実務上で想定される影響についてまとめてみます。

1)原材料規格書収集段階
まずはアレルギーに関する変更点に注意が必要になると思われます。例えば規格書の原材料欄に「マヨネーズ」と記載されているだけで、アレルギー物質欄に「卵」の記載がなければ、思わぬ食品表示ミスにつながる可能性もあるでしょう。また原材料として使用する加工食品の裏面表示を参考にしている場合も、特定加工食品が含まれる場合は注意が必要です。 製造所固有記号の制度変更に伴い、製造所自体の変更と原材料内容の変更が増えると予測できますので、改版管理などこの段階での業務フロー見直しが重要だと思います。

2)表示作成段階
同じくアレルギーの表示方法の変更に伴い、原材料表示の場所の確保を検討する必要があると想定できます。また原材料と添加物の区分を明確に表示するといったルールの追加により、ほとんどの食品で改版が必要になると考えられます。

3)規格書管理段階
管理項目の追加を検討する必要がある変更点もあります。食塩相当量の表示、栄養成分の推奨表示の追加(飽和脂肪酸、食物繊維)などが該当するでしょう。また栄養素等表示基準値の見直し内容によっては、栄養成分の再計算が必要になる可能性もあると思われます。

4)継続的な品質保証
栄養成分表示の設定根拠となった資料の保管に加え、機能性表示もしくはそれに準ずる表示(例:美容・健康に良い等)をする際には、科学的根拠となる資料の保管も重要になるでしょう。また不当表示にならないよう、科学的根拠となる資料の判断や定期的な検査などの品質保証業務も、商品開発担当者と業務フローを決めておく必要があると思われます。

今年は、こうした新しい制度について詳細なガイドラインやQ&Aも発表されていくと想定されます。現在の業務フローを整理しながら、どのように対応していくべきかを検討していくことが大切になるでしょう。いろいろややこしい話が多いですが、お客様により安心してもらえる食品表示のための1つの機会になればと思います。

参照資料:
消費者委員会 食品表示部会(10月31日)


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海外への輸出と食品表示

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2014年12月13日より、EUにて新しく改正された食品表示の規則(EU No.1169/2011)が適用されます。今年に入ってから主にEUを拠点とするグローバル商品の容器包装表示の変更作業が増え始め、秋までには流通在庫を切り替えるという会社が多くありました。

また日本から海外に輸出する食品についても、その表示方法の変更に伴い、製品規格書など情報管理の見直しをされた会社も多かったことと思います。そこで今月のコラムでは、表示制度の異なる海外に輸出する際の食品表示について、注意点などを簡単にまとめてみました。

よくある表示ミスの傾向を知る


日本国内に輸入される食品にも表示違反があるように、日本から海外に輸出される食品にも、現地で表示違反とされることがあります。表示違反の事例はインターネットで検索すれば見つけることができますが、ここでまず、どんな表示にミスが生まれやすいのかついて知っておくと防止策を検討しやすくなると思います。

商品が国内に入るときに違反になるものと、国内に入って流通してから違反になるものとありますが、多くは「表示にない添加物(使用基準を満たしてない)の検出」ではと思います。ついで「表示にないアレルギー物質」「表示方法の不備」など、その内容を分類することができます。こうしたミスの多くの原因は、制度に関する確認不足もあると思いますが、それ以上に資材管理不十分などによるコンタミネーション(混入)が想定され、背景として「各国によって表示制度や使用基準が異なること」があるかと思います。米国FDAのサイトでは輸出元の国別に違反事例を知ることができますので、参考になるでしょう。

日本と海外の制度の違いを知る


海外の表示制度や使用基準について詳細を確認する方法についてですが、それにはまず日本の食品表示制度と、新しい食品表示基準の設置に伴って生じるいくつかの変更点(アレルギー表示方法の変更、栄養成分の表示方法の変更等)について知ることが大切だと思います。そのうえで海外の表示制度について知ることで、その違いをより比較しやすくなるでしょう。

現在の輸出先国の制度をいきなり知るのもよいですが、その前にお薦めしたいのが、冒頭に触れたEUの新しい食品表示制度(EU No.1169/2011)とその変更点について知ることです。やはり最近改正された規則であることと、関わる対象国の多さが第一の理由です。日本とEUの制度を比較してその違いを把握し、そのうえで他の輸出対象国の制度について確認することができれば、情報管理のうえで様々なケースを想定できるようになり、食品表示のミスを防ぐことに役立つのではと思います。

表示方法の違い、表示項目の違い


そのEUの制度を例に、具体的にどのような違いがあるのかについてあげてみます。

まずアレルギーの表示方法についてですが、EUでは原材料の最後にまとめて表示する方法(一括表示)は認められていません(日本では認められています)。アレルギー物質は各原材料名の箇所に個別に記載することになるのですが、その際に太字や斜体、下線など強調した表示方法が必要になります(日本では認められていません)。また添加物の扱いも異なるため、香料や酵素の表示方法も異なります。さらに実務上で慎重な対応を求められるのが、表示項目自体の違いです。これらは、商品規格書の項目の違いから確認することができます。

例えばアレルギー表示の場合、日本では小麦は表示対象ですが、大麦やライ麦は表示対象ではありません。ですがEUではグルテンを含めばこれらも表示対象になります。その他マスタードや貝類など、日本国内で流通する規格書にない項目のものが該当します。このように、輸出時にはトレーサビリティの情報管理対象に追加する必要があるものがある、という点に注意が必要です。EUから日本への輸入時に、規格書のコンタミネーションの欄に豚肉やりんごの項目自体がないなどの理由でヒアリングが必要になりますが、輸出時にはその反対のことが起こりうるということです。

事前の確認作業時間を十分に確保する


表示方法や表示項目の違いにより、その確認作業に時間がかかるものもある、という点にも留意しておくことは大切です。例えば栄養成分表示のうち糖類(Sugars)など、日本では表示義務ではないことから、表示値をすぐに設定すること自体が難しいものもあります。こうした点を確認するには、まず対象国内で流通する商品の規格書をもらうことが手早いでしょう。そこから情報管理対象の違い(と制度の違い)を想定できますので、必要な作業とその準備時間についても検討しやすくなるかと思います。

最後に、十分な準備と十分な確認により表示のミスを少しでも減らすことも大切ですが、調理方法やお召し上がり方の表示など、なるべく現地の方にも分かりやすい表示にすることに時間をかけることも大切です。海外への対応作業は大変ですが、互いの食文化を理解できる機会になるなど、仕事の楽しみにできればと思います。

参照資料:食品安全関係情報詳細(食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03491280305


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外食等におけるアレルゲン情報の提供について

2014restaurant

今月のコラムではアレルゲン表示について触れてみたいと考えています。

今年より消費者庁にて何度か開催されている「外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会」についてです。読者のみなさんの多くは加工食品に携わる方と思いますが、現在の加工食品においてもアレルゲン表示対策は最重要課題のひとつであり、また新しい食品表示基準のもとでも表示方法に変更がありますので、改めてアレルゲン表示について考えるきっかけになればと考えております。

基本的なスタンスと加工食品との違い


5回目の検討会でいったん情報が整理され、基本的なスタンスについてまとめられました。外食においても「アレルゲン情報が正確かつ適切に提供されることが望ましい」としながらも、「表示の義務化については慎重に考える必要がある」とした考え方です。既に義務化されている加工食品と最も状況が異なる点として、加工食品の計画生産に対し外食は注文生産に近いオペレーションであることから、原材料の調達計画と、調理作業中でのコンタミネーション防止策の影響度合いに大きな違いがあることにも触れられています。

アレルゲン情報提供の内容と方法


情報提供の内容については「加工食品におけるアレルギー表示の対象品目に係る情報提供が基本」とし、そのうえで「コンタミネーションの防止措置が取られていない場合においては、その旨の注意喚起を行う情報提供」なども必要との議論のほか、料理の持込への対応や近隣の医療機関に関する情報提供など、外食ならではの情報提供内容についての議論が整理されています。

情報提供の方法としては、患者さん側の立場より「WEBサイト等による事前の情報の提供があると助かる」ことからWEBサイト等についてまず挙げられていますが、やはり「メニューの見直し等にあわせて正確な情報に更新されること」が課題となります。
そのうえで「電話等を含めた相対でのコミュニケーション」も重要になるのですが、そこでは従業員の知識不足や独自判断による事故を起こすことがないよう、店舗の関係者の間で食物アレルギーの対応に係る情報の共有とそのための体制整備が必要であることが課題として認識できます。

情報管理と従業員教育


アレルギーに関する情報提供を行う際には、情報が管理されていることが前提になります。「原材料管理」と「フロー管理」、そして「従業員教育」の仕組みです。この体制の整備があってはじめて、正確で検証性のある情報提供が実現できるかと思います。

入れ替わりの多い現場の従業員に対しては基本的な教育による対応を検討し、専門的な事項については現場責任者や本部担当者による回答をするなど、事業者には組織としての対応も求められる一方で、十分な情報提供により最終的には個人ごとに異なる症状をもつ患者さん自身に判断してもらえるようにするなど、双方の立場にたった課題解決が大切であると感じます。

今後の実務上でのポイント


外食WEBサイトでのアレルギー情報の更新と管理に携わると、こちらの情報提供の量に応じて検索キーワードの割合やアクセス数も変化していることが実感できます。またWEBサイトからの情報提供量が増えれば、店舗スタッフへのお客様からの質問も増えますので、店舗での対応方法などWEBサイトと連動した運用を決めておくことが、実務においては重要なポイントであると思います。

これはアレルギー情報に係らず、オーガニックや思想・信仰によるものなど、原材料や調理方法の確認が必要なすべての食品においても同じことが言えるかもしれません。自分が作った食品を、より多くの人に食べてもらいたいと考えるときには、ぜひ一度この「外食等におけるアレルゲン情報の提供の検討会情報」に、目を通しておかれることをお薦めします。

参照資料:外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会情報(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index20.html


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食品表示基準の修正案が公開されました

2014年9月23日、「食品表示基準(案)についての意見募集結果について」が公開されました。パブリックコメントに寄せられた意見総数は4,329件で、その概要と意見に対する考え方が掲載されています。 翌日9月24日、パブリックコメントを受けた食品表示基準(案)修正案が消費者庁より提示され、消費者委員会食品表示部会において議論がされました。

パブコメ案からの主な修正点は次のとおりです。

小包装の食品について


表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合であっても省略不可とされていた表示事項(名称、保存方法、消費期限又は賞味期限、表示責任者およびアレルゲン)に、「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」が追加されました。フェニルケトン尿症患者の安全性の確保のためです。

さらにインストア加工されたサンプル品や小学校のバザーでの袋詰め品など、表示責任者を表示しなくてもよい場合であっても、製造所所在地と製造者名については省略不可となりました。

実務で影響がありそうな変更点は、L-フェニルアラニン化合物の追記です。通常は「甘味料(アスパルテテーム・L-フェニルアラニン化合物)」と用途名併記されるため、添加物として使用している場合はそれほど問題になりません。ですが修正案として再度注目されることから、アスパルテーム自体をキャリーオーバーとして扱っている商品はないかといった確認の問い合わせの可能性については、想定されておくとよいと思います。

経過措置期間の延長


また修正案では、経過措置期間(食品表示基準の施行後、新しいルールに基づく表示への移行の猶予期間)が延長されています。加工食品は2年から5年に、添加物は1年から5年と、移行に際して猶予期間が延長されたことになります。

また生鮮食品については経過措置期間なしだったところを、1年6ヶ月とされました。アレルギー表記方法の見直しや栄養成分表示の義務化、また原材料と添加物に区分を要するなど、今回の食品表示基準施行によりほぼすべての商品において表示の改版作業が必要になることに対する負担軽減への配慮であると考えられます。

ただ消費者庁の修正案の資料には、経過措置期間延長の背景として「製造所固有記号制度のデータベース整備」について記載されています。平成27年度予算で所要額を要求し、その整備を終えてから施行することを予定しており、そのデータベースが整備された時点から表示ラベルの改版作業を始める事業者が多いと考えられる、とあります。

この点からも、今回の食品表示基準で最も重要なポイントは、やはり「製造所固有記号」であると言えると思います。

そのほかの修正点


その他、修正があった事項については次のとおりです。まずは製造所固有記号についてですが、これはパブコメ案から修正された点は「業務用食品を除く」の追加のみです。パブコメ案のとおり、現状で製造所が1箇所である商品については、製造所を表示しない「販売者」のみの表示はできなくなります。先の記載のとおり、多くの商品が該当するものと思われます。

栄養成分表示義務化の例外規定については、小規模事業者の定義が「課税売上高1000万円以下」から、「中小企業基本法に規定する小規模企業者」に修正されています。従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下の事業者については、当分の間栄養成分表示の省略が認められることになります。

ナトリウムと食塩相当量の表示にも、若干の修正がありました。食塩相当量の表示が必須なのはパブコメ案から変更はありませんが、現行の表示のように、ナトリウムの量の次に食塩相当量を括弧書き等で併記することも認められます。
(※2014/11/5 追記:ただしナトリウム塩を添加していない食品に限る)

また栄養強調表示の相対表示についても修正がありました。低減された旨の表示の場合は25%以上の相対差が必要だったのですが、ナトリウムだけ相対差の特例が認められます。

消費者、事業者への影響


食品表示基準の修正案を通してみると、アレルギー表記方法変更や製造所所在地の表示など全体的に消費者にとってメリットのある改善がなされていると感じます。また事業者にとっても猶予期間の延長や、小規模事業者への配慮などがされているなど、バランスのとれた内容だと感じます。

ただ製造所固有記号制度の変更は、消費者と事業者といった区分に関わらない影響と課題があるのではと考えています。販売者として表記できる、つまり製造工場を持たなくともオリジナルの商品を開発できる点で、これまで生活に身近な食品事業を開業する新しい食品販売者が増えてきた背景もあります。

事業をするにあたって大変なのは集客であり、新しいお客さんを開拓するには相応のコストがかかります。販売者にとっては、留め型商品のロットをはじめ、様々な課題が生じると思われます。また製造者にとっても販売してくれる人がいなければ困るため、より小ロットでの製造や独自の対応などを検討せざるを得なくなることも考えられます。

農業水産業から製造を通して食べものをつくる人を増やすことも、新しく開業して身近な食品を販売する人を増やすことも、社会全体でみると大切なことだと思います。今回の製造所固有記号制度の変更に事業者がどのように対応するかは、消費者だけでなく生活者の立場として受ける影響についても考えていかなければいけない課題があると思います。

参照資料:
第31回食品表示部会資料 食品表示基準の概要 平成26年9月消費者庁食品表示企画課
http://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/141015_shiryou3_6.pdf
パブリックコメント:結果公示案件詳細 食品表示基準(案)についての意見募集結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080024&Mode=2


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今後求められるキーワード、「情報公開」と「根拠管理」

ずっと以前からもそうだったのですが、今回の一元化(食品表示基準)による見直しや、機能性表示新制度の案をみていると、ますます表面化してきたと実感できるトレンドが浮かび上がってきたように思えます。今月はこちらの内容をコラムにしてみたいと思います。

製造所固有記号と機能性表示の根拠情報届出


食品表示基準案に記載された「製造所固有記号制度の見直し」には、いくつか今後のトレンドを考えさせられる表現が盛り込まれています。「消費者からの応答に対応する義務を課す」「消費者庁に新固有記号データーベースを構築し、消費者からの検索が可能となる一般開放」などがそうです。

同様に機能性表示新制度の最終案にも、このような表現があります。「安全性や有効性等の根拠情報を含めた製品情報について、消費者庁に販売前に届出」「届出を受理した際は、消費者庁において届出に係る情報を原則として販売前に公開」という、これらのくだりです。

お伝えしたいのは、いずれの表現も「情報公開」をはじめとする透明性にかかるキーワードに触れられている点です。
これらはパブリックコメントの結果を受けた今後はどのようになるか未定ではありますが、こうした最終案が消費者庁より示されたということは事実ですので、流れを理解するうえでは押さえておく必要があるかと思います。

情報公開のタイミング


情報公開はこれまでも求められてきたことであり、多くの企業はウェブサイトやお客様相談室を通じて、製品に関する情報を公開しています。
公開のタイミングにも大きく2種類あり、事前のものと事後のものがあります。
事前のものの例はウェブサイトでの原料原産地の公開や、栄養成分、アレルギー情報などの公開が該当します。
事後のものとしては、事故対応のときの製造ロット情報の公開などが該当します。

事前の公開については、都度更新により情報を最新に保つなど、「実際のものとの整合性を維持する」など継続的な保守作業が求められます。事後の公開については、情報と実際との整合性もさることながらその対応のスピードが問われる点も注意しておくべきポイントであると実感します。

表示値の根拠資料保管と実証性


間違った情報を公開するわけにはいかないため、必ずセットで考えなければいけないのが「その情報が正しいと実証できる根拠資料」など情報公開の元となる情報管理体制を整備することです。例えば2013年9月27日には、栄養表示基準に「表示された値の設定の根拠資料を保管すること」と追記されています。これまで分析による許容差の範囲内であることが要件でしたが、これを緩和し、計算など合理的な方法により得られた数値であれば表示できるようになりました。

表示の自由度も広がったのですが、それには根拠を持つことが必要であるといったことは、今回の機能性表示新制度でも同じことが言えるでしょう。
これまでできなかった特定部位まで含む機能性に関する表示ができるようになる代わりに、これを実証できる根拠資料をもっておくことが前提となるということです。機能性表示については、その根拠資料をさらに公開することとしている点も、今回のコラムのテーマでお伝えしたい事実です。

より大切になる情報管理


これまでより一層、考えなければならないキーワードとして「情報公開」と「根拠管理」のセットについてお伝えしてきました。つまりこれをつなぐ「情報の管理と運用の体制」が大切です。業務フローのなかで適切に運用されていなければ、せっかく公開した情報も保管した根拠情報も、すばやく正確に活かすことが難しくなってしまいます。個々の担当者のスキルアップも必要ですが、組織としての運用も大きなポイントになることと思います。

このごろの企業活動のなかでは、個人情報をはじめ管理しなければならない情報そのものが増えてきている傾向ですが、その管理の多くは社会から求められていることに応えているものでもあると思います。食品表示に関する情報も、そのなかのひとつです。これらの社会の変化に適切に対応することで、お客様から支持を得られる商品づくりのきっかけにできるよう、考えていくことが大切だと思います。


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