Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

機能性表示食品のガイドライン概要について

機能性表示食品とは、生鮮食品から加工食品、サプリメントなど食品全般に、科学的根拠を届出すれば「機能性」を表示できるという新しい制度のものです。

昨年夏に検討会報告書が公表されてからの流れとしては、12月に検討会で条件付きの答申が出され、今年1月にワーキンググループでガイドライン概要が公表され、今はガイドライン全容の公表を待っている、といった状況です。(また関連するものとして昨年11月頃に「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」の文書についての改定が発表されました。臨床試験の方法の考え方など再確認できます。)

今回の「概要」版では、食経験について「当該食品と類似する食品」での評価も認める記載、また臨床試験の参加者について「疾病に罹患していない者」の考え方の記載などもありましたが、より分かりやすくなったものとして「可能な機能性表示の範囲」が改めてまとめてあることが特徴かと思います。

1. 容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
2. 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
3. 身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つ旨

 ※ 身体の特定の部位に言及した表現は可能
 ※ 特定保健用食品で認められている範囲内の表現は可能(疾病リスク低減表示を除く)

概要では上記の内容までですが、ガイドライン全容がでてくるときには、もう少し具体的な例の記載があるかもしれません。

「特定部位」の表現、「特定保健用食品で認められている」表現ができるといった点では、規制緩和として大きな変化であることが改めて認識できます。反対に認められない表現についても記載がありましたが、ここは従来どおりの理解(疾病の治療・予防や意図的な健康の増強などの表現の禁止)と同じで大丈夫です。

また答申書の付帯条件にも「科学的根拠の無い製品群が市場から淘汰されることを強く期待」「科学的根拠の無いイメージ広告等に対する行政処分をより強化すべき」といった記載がありますので、機能性表示食品の制度を利用しない場合でも、科学的根拠を整備したうえで表示と広告を自主点検していく流れになるのではと思います。

科学的根拠が必要とはいえ、自社でもつとなればそれなりに費用と時間がかかるものですが、これを支援する動きもあります。今年1月に農水省より、農産物のシステマティックレビューを実施し、生産現場が活用できるようするという報道発表がありました。

対象は米(γ-アミノ酪酸)、温州ミカン(β-クリプトキサンチン)、緑茶(メチル化カテキン)、鶏肉(イミダゾールジペプチド)の4品目4成分です。生鮮食品、加工食品、サプリメントと扱う商品形態の違いにもよりますが、こうした施策もうまく活用できるようになっていくでしょう。

また制度の特徴として、届出された科学的根拠が情報公開されることが大きなポイントですので、メディアも取材と検証がしやすくなる分、消費者に対する分かりやすい情報発信が進むのではと思います。購入側の立場で考えると、売場にトクホ商品が増えるような印象になるのかもしれないですね。今後も話題になりそうな制度ですので、また機会があればまとめてみたいと思います。

参照資料:
12月9日 消費者委員会答申書
機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/item2.pdf


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食品表示制度の動向と主な変更点

昨年、2014年は食品表示の制度に関する動きが多い年でした。
パブリックコメントなどを受けて修正もいくつかありましたので、情報の整理を兼ねてまとめてみたいと思います。

現状からの主な変更点


食品表示基準の新設に伴い、現状からの主な変更点は下部のとおりです。

【食品表示基準(案)】

1)基本部分について

<全般>
・加工食品(製造、加工)、生鮮食品(調整、選別)の定義の明確化
・原材料名と添加物の事項名を別に表示(または原材料名と添加物を明確に区分)
・製造所固有記号は、原則同一製品を2以上の製造所で製造している場合に使用可
・表示可能面積30cm2以下の省略不可項目追加 (L-フェニルアラニン化合物等)

<アレルギー>
・特定加工食品(例:マヨネーズ)及びその拡大表記(例:からしマヨネーズ)の廃止
・代替表記の拡大表記のうち、卵の「卵白」、「卵黄」の廃止

<栄養表示>
・全ての食品関連事業者に表示義務を適用(業務用、小規模事業者を除く)
・義務、推奨、任意の3区分となり、飽和脂肪酸と食物繊維が推奨に該当
・ナトリウムの量は食塩相当量で表示、ただし併記可(ナトリウム塩添加食品を除く)
・相対表示は、原則としてコーデックスガイドライン(CAC/GL 23-1997)に準じる
・「無添加強調表示」に係る規定の追加

<その他>
・「ステアリドン酸産生(大豆)」に関する表示基準の追加(遺伝子組み換え食品)
・チーズ等の加熱、乳酸菌飲料等の発酵温度に関する表示基準の追加(乳等基準府令)

2)栄養素等表示基準値と栄養機能食品
・栄養素等表示基準値の見直し
・栄養機能食品の対象成分に「n-3系脂肪酸」「ビタミンK」「カリウム」追加
・鶏卵以外の生鮮食品についても新たに栄養機能食品の基準の適用対象へ

3)機能性表示
・新たに「機能性表示食品」を食品表示基準内に規定
・安全性や有効性の科学的根拠資料を事前届出、販売前に消費者庁が公開
・必要な科学的根拠、可能な機能性表示については今後ガイドラインで 通知の見込み

食品表示業務への影響


経過措置期間にもパブリックコメント後に修正があり、加工食品及び添加物は5年、生鮮食品は1年6ヶ月へと延長されました。食品表示作成などの業務をされる方は、その間に準備と対応をすることになりますが、実務上で想定される影響についてまとめてみます。

1)原材料規格書収集段階
まずはアレルギーに関する変更点に注意が必要になると思われます。例えば規格書の原材料欄に「マヨネーズ」と記載されているだけで、アレルギー物質欄に「卵」の記載がなければ、思わぬ食品表示ミスにつながる可能性もあるでしょう。また原材料として使用する加工食品の裏面表示を参考にしている場合も、特定加工食品が含まれる場合は注意が必要です。 製造所固有記号の制度変更に伴い、製造所自体の変更と原材料内容の変更が増えると予測できますので、改版管理などこの段階での業務フロー見直しが重要だと思います。

2)表示作成段階
同じくアレルギーの表示方法の変更に伴い、原材料表示の場所の確保を検討する必要があると想定できます。また原材料と添加物の区分を明確に表示するといったルールの追加により、ほとんどの食品で改版が必要になると考えられます。

3)規格書管理段階
管理項目の追加を検討する必要がある変更点もあります。食塩相当量の表示、栄養成分の推奨表示の追加(飽和脂肪酸、食物繊維)などが該当するでしょう。また栄養素等表示基準値の見直し内容によっては、栄養成分の再計算が必要になる可能性もあると思われます。

4)継続的な品質保証
栄養成分表示の設定根拠となった資料の保管に加え、機能性表示もしくはそれに準ずる表示(例:美容・健康に良い等)をする際には、科学的根拠となる資料の保管も重要になるでしょう。また不当表示にならないよう、科学的根拠となる資料の判断や定期的な検査などの品質保証業務も、商品開発担当者と業務フローを決めておく必要があると思われます。

今年は、こうした新しい制度について詳細なガイドラインやQ&Aも発表されていくと想定されます。現在の業務フローを整理しながら、どのように対応していくべきかを検討していくことが大切になるでしょう。いろいろややこしい話が多いですが、お客様により安心してもらえる食品表示のための1つの機会になればと思います。

参照資料:
消費者委員会 食品表示部会(10月31日)


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海外への輸出と食品表示

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2014年12月13日より、EUにて新しく改正された食品表示の規則(EU No.1169/2011)が適用されます。今年に入ってから主にEUを拠点とするグローバル商品の容器包装表示の変更作業が増え始め、秋までには流通在庫を切り替えるという会社が多くありました。

また日本から海外に輸出する食品についても、その表示方法の変更に伴い、製品規格書など情報管理の見直しをされた会社も多かったことと思います。そこで今月のコラムでは、表示制度の異なる海外に輸出する際の食品表示について、注意点などを簡単にまとめてみました。

よくある表示ミスの傾向を知る


日本国内に輸入される食品にも表示違反があるように、日本から海外に輸出される食品にも、現地で表示違反とされることがあります。表示違反の事例はインターネットで検索すれば見つけることができますが、ここでまず、どんな表示にミスが生まれやすいのかついて知っておくと防止策を検討しやすくなると思います。

商品が国内に入るときに違反になるものと、国内に入って流通してから違反になるものとありますが、多くは「表示にない添加物(使用基準を満たしてない)の検出」ではと思います。ついで「表示にないアレルギー物質」「表示方法の不備」など、その内容を分類することができます。こうしたミスの多くの原因は、制度に関する確認不足もあると思いますが、それ以上に資材管理不十分などによるコンタミネーション(混入)が想定され、背景として「各国によって表示制度や使用基準が異なること」があるかと思います。米国FDAのサイトでは輸出元の国別に違反事例を知ることができますので、参考になるでしょう。

日本と海外の制度の違いを知る


海外の表示制度や使用基準について詳細を確認する方法についてですが、それにはまず日本の食品表示制度と、新しい食品表示基準の設置に伴って生じるいくつかの変更点(アレルギー表示方法の変更、栄養成分の表示方法の変更等)について知ることが大切だと思います。そのうえで海外の表示制度について知ることで、その違いをより比較しやすくなるでしょう。

現在の輸出先国の制度をいきなり知るのもよいですが、その前にお薦めしたいのが、冒頭に触れたEUの新しい食品表示制度(EU No.1169/2011)とその変更点について知ることです。やはり最近改正された規則であることと、関わる対象国の多さが第一の理由です。日本とEUの制度を比較してその違いを把握し、そのうえで他の輸出対象国の制度について確認することができれば、情報管理のうえで様々なケースを想定できるようになり、食品表示のミスを防ぐことに役立つのではと思います。

表示方法の違い、表示項目の違い


そのEUの制度を例に、具体的にどのような違いがあるのかについてあげてみます。

まずアレルギーの表示方法についてですが、EUでは原材料の最後にまとめて表示する方法(一括表示)は認められていません(日本では認められています)。アレルギー物質は各原材料名の箇所に個別に記載することになるのですが、その際に太字や斜体、下線など強調した表示方法が必要になります(日本では認められていません)。また添加物の扱いも異なるため、香料や酵素の表示方法も異なります。さらに実務上で慎重な対応を求められるのが、表示項目自体の違いです。これらは、商品規格書の項目の違いから確認することができます。

例えばアレルギー表示の場合、日本では小麦は表示対象ですが、大麦やライ麦は表示対象ではありません。ですがEUではグルテンを含めばこれらも表示対象になります。その他マスタードや貝類など、日本国内で流通する規格書にない項目のものが該当します。このように、輸出時にはトレーサビリティの情報管理対象に追加する必要があるものがある、という点に注意が必要です。EUから日本への輸入時に、規格書のコンタミネーションの欄に豚肉やりんごの項目自体がないなどの理由でヒアリングが必要になりますが、輸出時にはその反対のことが起こりうるということです。

事前の確認作業時間を十分に確保する


表示方法や表示項目の違いにより、その確認作業に時間がかかるものもある、という点にも留意しておくことは大切です。例えば栄養成分表示のうち糖類(Sugars)など、日本では表示義務ではないことから、表示値をすぐに設定すること自体が難しいものもあります。こうした点を確認するには、まず対象国内で流通する商品の規格書をもらうことが手早いでしょう。そこから情報管理対象の違い(と制度の違い)を想定できますので、必要な作業とその準備時間についても検討しやすくなるかと思います。

最後に、十分な準備と十分な確認により表示のミスを少しでも減らすことも大切ですが、調理方法やお召し上がり方の表示など、なるべく現地の方にも分かりやすい表示にすることに時間をかけることも大切です。海外への対応作業は大変ですが、互いの食文化を理解できる機会になるなど、仕事の楽しみにできればと思います。

参照資料:食品安全関係情報詳細(食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03491280305


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【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

外食等におけるアレルゲン情報の提供について

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今月のコラムではアレルゲン表示について触れてみたいと考えています。

今年より消費者庁にて何度か開催されている「外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会」についてです。読者のみなさんの多くは加工食品に携わる方と思いますが、現在の加工食品においてもアレルゲン表示対策は最重要課題のひとつであり、また新しい食品表示基準のもとでも表示方法に変更がありますので、改めてアレルゲン表示について考えるきっかけになればと考えております。

基本的なスタンスと加工食品との違い


5回目の検討会でいったん情報が整理され、基本的なスタンスについてまとめられました。外食においても「アレルゲン情報が正確かつ適切に提供されることが望ましい」としながらも、「表示の義務化については慎重に考える必要がある」とした考え方です。既に義務化されている加工食品と最も状況が異なる点として、加工食品の計画生産に対し外食は注文生産に近いオペレーションであることから、原材料の調達計画と、調理作業中でのコンタミネーション防止策の影響度合いに大きな違いがあることにも触れられています。

アレルゲン情報提供の内容と方法


情報提供の内容については「加工食品におけるアレルギー表示の対象品目に係る情報提供が基本」とし、そのうえで「コンタミネーションの防止措置が取られていない場合においては、その旨の注意喚起を行う情報提供」なども必要との議論のほか、料理の持込への対応や近隣の医療機関に関する情報提供など、外食ならではの情報提供内容についての議論が整理されています。

情報提供の方法としては、患者さん側の立場より「WEBサイト等による事前の情報の提供があると助かる」ことからWEBサイト等についてまず挙げられていますが、やはり「メニューの見直し等にあわせて正確な情報に更新されること」が課題となります。
そのうえで「電話等を含めた相対でのコミュニケーション」も重要になるのですが、そこでは従業員の知識不足や独自判断による事故を起こすことがないよう、店舗の関係者の間で食物アレルギーの対応に係る情報の共有とそのための体制整備が必要であることが課題として認識できます。

情報管理と従業員教育


アレルギーに関する情報提供を行う際には、情報が管理されていることが前提になります。「原材料管理」と「フロー管理」、そして「従業員教育」の仕組みです。この体制の整備があってはじめて、正確で検証性のある情報提供が実現できるかと思います。

入れ替わりの多い現場の従業員に対しては基本的な教育による対応を検討し、専門的な事項については現場責任者や本部担当者による回答をするなど、事業者には組織としての対応も求められる一方で、十分な情報提供により最終的には個人ごとに異なる症状をもつ患者さん自身に判断してもらえるようにするなど、双方の立場にたった課題解決が大切であると感じます。

今後の実務上でのポイント


外食WEBサイトでのアレルギー情報の更新と管理に携わると、こちらの情報提供の量に応じて検索キーワードの割合やアクセス数も変化していることが実感できます。またWEBサイトからの情報提供量が増えれば、店舗スタッフへのお客様からの質問も増えますので、店舗での対応方法などWEBサイトと連動した運用を決めておくことが、実務においては重要なポイントであると思います。

これはアレルギー情報に係らず、オーガニックや思想・信仰によるものなど、原材料や調理方法の確認が必要なすべての食品においても同じことが言えるかもしれません。自分が作った食品を、より多くの人に食べてもらいたいと考えるときには、ぜひ一度この「外食等におけるアレルゲン情報の提供の検討会情報」に、目を通しておかれることをお薦めします。

参照資料:外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会情報(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index20.html


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食品表示基準の修正案が公開されました

2014年9月23日、「食品表示基準(案)についての意見募集結果について」が公開されました。パブリックコメントに寄せられた意見総数は4,329件で、その概要と意見に対する考え方が掲載されています。 翌日9月24日、パブリックコメントを受けた食品表示基準(案)修正案が消費者庁より提示され、消費者委員会食品表示部会において議論がされました。

パブコメ案からの主な修正点は次のとおりです。

小包装の食品について


表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合であっても省略不可とされていた表示事項(名称、保存方法、消費期限又は賞味期限、表示責任者およびアレルゲン)に、「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」が追加されました。フェニルケトン尿症患者の安全性の確保のためです。

さらにインストア加工されたサンプル品や小学校のバザーでの袋詰め品など、表示責任者を表示しなくてもよい場合であっても、製造所所在地と製造者名については省略不可となりました。

実務で影響がありそうな変更点は、L-フェニルアラニン化合物の追記です。通常は「甘味料(アスパルテテーム・L-フェニルアラニン化合物)」と用途名併記されるため、添加物として使用している場合はそれほど問題になりません。ですが修正案として再度注目されることから、アスパルテーム自体をキャリーオーバーとして扱っている商品はないかといった確認の問い合わせの可能性については、想定されておくとよいと思います。

経過措置期間の延長


また修正案では、経過措置期間(食品表示基準の施行後、新しいルールに基づく表示への移行の猶予期間)が延長されています。加工食品は2年から5年に、添加物は1年から5年と、移行に際して猶予期間が延長されたことになります。

また生鮮食品については経過措置期間なしだったところを、1年6ヶ月とされました。アレルギー表記方法の見直しや栄養成分表示の義務化、また原材料と添加物に区分を要するなど、今回の食品表示基準施行によりほぼすべての商品において表示の改版作業が必要になることに対する負担軽減への配慮であると考えられます。

ただ消費者庁の修正案の資料には、経過措置期間延長の背景として「製造所固有記号制度のデータベース整備」について記載されています。平成27年度予算で所要額を要求し、その整備を終えてから施行することを予定しており、そのデータベースが整備された時点から表示ラベルの改版作業を始める事業者が多いと考えられる、とあります。

この点からも、今回の食品表示基準で最も重要なポイントは、やはり「製造所固有記号」であると言えると思います。

そのほかの修正点


その他、修正があった事項については次のとおりです。まずは製造所固有記号についてですが、これはパブコメ案から修正された点は「業務用食品を除く」の追加のみです。パブコメ案のとおり、現状で製造所が1箇所である商品については、製造所を表示しない「販売者」のみの表示はできなくなります。先の記載のとおり、多くの商品が該当するものと思われます。

栄養成分表示義務化の例外規定については、小規模事業者の定義が「課税売上高1000万円以下」から、「中小企業基本法に規定する小規模企業者」に修正されています。従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下の事業者については、当分の間栄養成分表示の省略が認められることになります。

ナトリウムと食塩相当量の表示にも、若干の修正がありました。食塩相当量の表示が必須なのはパブコメ案から変更はありませんが、現行の表示のように、ナトリウムの量の次に食塩相当量を括弧書き等で併記することも認められます。
(※2014/11/5 追記:ただしナトリウム塩を添加していない食品に限る)

また栄養強調表示の相対表示についても修正がありました。低減された旨の表示の場合は25%以上の相対差が必要だったのですが、ナトリウムだけ相対差の特例が認められます。

消費者、事業者への影響


食品表示基準の修正案を通してみると、アレルギー表記方法変更や製造所所在地の表示など全体的に消費者にとってメリットのある改善がなされていると感じます。また事業者にとっても猶予期間の延長や、小規模事業者への配慮などがされているなど、バランスのとれた内容だと感じます。

ただ製造所固有記号制度の変更は、消費者と事業者といった区分に関わらない影響と課題があるのではと考えています。販売者として表記できる、つまり製造工場を持たなくともオリジナルの商品を開発できる点で、これまで生活に身近な食品事業を開業する新しい食品販売者が増えてきた背景もあります。

事業をするにあたって大変なのは集客であり、新しいお客さんを開拓するには相応のコストがかかります。販売者にとっては、留め型商品のロットをはじめ、様々な課題が生じると思われます。また製造者にとっても販売してくれる人がいなければ困るため、より小ロットでの製造や独自の対応などを検討せざるを得なくなることも考えられます。

農業水産業から製造を通して食べものをつくる人を増やすことも、新しく開業して身近な食品を販売する人を増やすことも、社会全体でみると大切なことだと思います。今回の製造所固有記号制度の変更に事業者がどのように対応するかは、消費者だけでなく生活者の立場として受ける影響についても考えていかなければいけない課題があると思います。

参照資料:
第31回食品表示部会資料 食品表示基準の概要 平成26年9月消費者庁食品表示企画課
http://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/141015_shiryou3_6.pdf
パブリックコメント:結果公示案件詳細 食品表示基準(案)についての意見募集結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080024&Mode=2


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今後求められるキーワード、「情報公開」と「根拠管理」

ずっと以前からもそうだったのですが、今回の一元化(食品表示基準)による見直しや、機能性表示新制度の案をみていると、ますます表面化してきたと実感できるトレンドが浮かび上がってきたように思えます。今月はこちらの内容をコラムにしてみたいと思います。

製造所固有記号と機能性表示の根拠情報届出


食品表示基準案に記載された「製造所固有記号制度の見直し」には、いくつか今後のトレンドを考えさせられる表現が盛り込まれています。「消費者からの応答に対応する義務を課す」「消費者庁に新固有記号データーベースを構築し、消費者からの検索が可能となる一般開放」などがそうです。

同様に機能性表示新制度の最終案にも、このような表現があります。「安全性や有効性等の根拠情報を含めた製品情報について、消費者庁に販売前に届出」「届出を受理した際は、消費者庁において届出に係る情報を原則として販売前に公開」という、これらのくだりです。

お伝えしたいのは、いずれの表現も「情報公開」をはじめとする透明性にかかるキーワードに触れられている点です。
これらはパブリックコメントの結果を受けた今後はどのようになるか未定ではありますが、こうした最終案が消費者庁より示されたということは事実ですので、流れを理解するうえでは押さえておく必要があるかと思います。

情報公開のタイミング


情報公開はこれまでも求められてきたことであり、多くの企業はウェブサイトやお客様相談室を通じて、製品に関する情報を公開しています。
公開のタイミングにも大きく2種類あり、事前のものと事後のものがあります。
事前のものの例はウェブサイトでの原料原産地の公開や、栄養成分、アレルギー情報などの公開が該当します。
事後のものとしては、事故対応のときの製造ロット情報の公開などが該当します。

事前の公開については、都度更新により情報を最新に保つなど、「実際のものとの整合性を維持する」など継続的な保守作業が求められます。事後の公開については、情報と実際との整合性もさることながらその対応のスピードが問われる点も注意しておくべきポイントであると実感します。

表示値の根拠資料保管と実証性


間違った情報を公開するわけにはいかないため、必ずセットで考えなければいけないのが「その情報が正しいと実証できる根拠資料」など情報公開の元となる情報管理体制を整備することです。例えば2013年9月27日には、栄養表示基準に「表示された値の設定の根拠資料を保管すること」と追記されています。これまで分析による許容差の範囲内であることが要件でしたが、これを緩和し、計算など合理的な方法により得られた数値であれば表示できるようになりました。

表示の自由度も広がったのですが、それには根拠を持つことが必要であるといったことは、今回の機能性表示新制度でも同じことが言えるでしょう。
これまでできなかった特定部位まで含む機能性に関する表示ができるようになる代わりに、これを実証できる根拠資料をもっておくことが前提となるということです。機能性表示については、その根拠資料をさらに公開することとしている点も、今回のコラムのテーマでお伝えしたい事実です。

より大切になる情報管理


これまでより一層、考えなければならないキーワードとして「情報公開」と「根拠管理」のセットについてお伝えしてきました。つまりこれをつなぐ「情報の管理と運用の体制」が大切です。業務フローのなかで適切に運用されていなければ、せっかく公開した情報も保管した根拠情報も、すばやく正確に活かすことが難しくなってしまいます。個々の担当者のスキルアップも必要ですが、組織としての運用も大きなポイントになることと思います。

このごろの企業活動のなかでは、個人情報をはじめ管理しなければならない情報そのものが増えてきている傾向ですが、その管理の多くは社会から求められていることに応えているものでもあると思います。食品表示に関する情報も、そのなかのひとつです。これらの社会の変化に適切に対応することで、お客様から支持を得られる商品づくりのきっかけにできるよう、考えていくことが大切だと思います。


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食品の新たな機能性表示制度の検討会報告書公表

2014年7月30日、消費者庁より「国ではなく企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新制度」について、販売前届出・公開制などの方針案をとりまとめた「食品の新たな機能性表示制度検討会報告書」が公表されました。今後、パブリックコメントによる意見募集が実施される見通しです。

新制度の概要について


新制度では、企業の責任において科学的根拠をもとに機能性表示が可能になります。ただし科学的根拠等の資料を消費者庁に対し販売前に届出する必要があり、また消費者庁は受理した科学的根拠等の資料を国民に公開することが前提になる制度です。特定保健用食品のような事前規制型ではないため、「食品表示基準」に規定したうえで販売後の収去や監視を行うといった運用になる見込みです。

1 対象食品:食品全般(アルコール含有飲料、ナトリウム・糖分等を過剰摂取させる食品は除く)

2 対象成分:作用機序が考察され、直接的又は間接的に定量可能な成分
   ・食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養成分については、今後さらに慎重に検討
   ・機能性関与成分が明確でないものの取扱いについては、制度の運用状況を踏まえ検討

3 対象者:生活習慣病等の疾病に罹患する前の人又は境界線上の人(疾病に既に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む)及び授乳婦への訴求はしない)

4 可能な機能性表示の範囲:部位も含めた健康維持・増進に関する表現(疾病名を含む表示は除く)

(参照:消費者庁「食品の新たな機能性表示制度検討会報告書」)

新しく表示をする際に必要な科学的根拠


まずは科学的根拠が必要です。
安全性の面では「機能性関与成分を中心とする食品について、食経験を評価」した情報(日常的な摂取量、食品の販売期間・販売量、機能性関与成分の含有量、摂取集団、摂取形状、摂取方法、摂取頻度等)、もしくは安全性試験に関する情報などが必要となります。

機能性の面では大きく2つの要件があり、「最終製品での臨床試験(特定保健用食品の試験方法に準じたもの)」もしくは「機能性関与成分に関する査読つき論文のシステマティックレビュー」などが必要になります。臨床試験の場合には経過措置期間つきでの研究計画の事前登録と査読つき論文による報告、またシステマティックレビューにおいては査読付き論文からの表示内容への支持などが要件になりますが、これらの情報が消費者庁により「公開される」点を考慮しておくことがポイントになると思われます。

制度の特徴と表示実務への影響


新制度の特徴は、下記のように3点あると思われます。

・公開による高い透明性から、消費者の科学的根拠に対する知識が向上する
・食品表示基準への規定により、機能性表示に対する品質保証業務が明確になる
・科学的根拠の要件が食品形態によって異なり、商品開発計画に影響が生じる

例えば最終製品による臨床試験が行われていない場合は、対応されていないことを届出する必要があり、その情報が公開されることになりますので、
なるべく臨床試験のできる商品での届出を求める声が増えると思われます。昨年末に消費者庁より「効果効能の裏付けとなる合理的根拠を示す実験結果、データ等をウェブサイト上に適切に表示することが望ましい」と発表されたことを受け、最終製品の臨床試験を実施した企業は、機能性表示の範囲を超えない程度でウェブサイトでの情報発信が進むことも想定できます。

また1度の臨床試験では客観性の確保に課題があるとされる場合も想定し、ほかの論文をまとめるなどシステマティックレビューの併用などの情報公開も進みますので、消費者の科学的根拠に対する知識が向上し、商品選択の眼が厳しくなると考えられます。

同じことは企業の品質保証の現場にも言えます。企業にとっては食品表示基準に規定されることから、日常の品質保証の業務のなかで、仕入れ商品の科学的根拠に対し一定の判断基準が加わることになるため、これまでと比べて検査や確認が容易になるものと思われます。これまで、機能性をぼかして販売している健康食品についても、新制度と同様の要件での商品審査が実施される可能性を考えると、今後届出をするかしないかに関わらず、科学的根拠をベースに、新商品開発ないしリニューアルの計画を立てることが求められるものと考えられます。

今後の予定


新制度は近くパブリックコメントの募集を受け、その後再度検討を行った後に、今年度中に正式に発表される見込みです。臨床試験に関する研究計画の事前登録要件等については経過措置期間が設けられるため、これまでに実施した試験結果をもつ企業にとっては、これを活用できる見通しです。

新制度を機に、食品業界全般で科学的根拠に対する知見が高まり、今後のよりよい製品づくりのきっかけにしていくことができればと思います。

※ システマティックレビュー…対象成分の機能性について、様々な論文・データを収集し、結論をまとめたもの。

 


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食品表示基準の最終案、パブリックコメント募集へ

2014年6月25日消費者委員会食品表示部会において、消費者庁は栄養表示義務化をはじめとする新基準をとりまとめた「食品表示基準」の最終案を提示しました。7月中にパブリックコメント募集を実施する予定です。

主な変更点


最終案として提示されたもので、現行制度との主な変更点は次のとおりです。

《 基準の一元化 》
・食品表示基準として規則を一元化
・原材料名表示等のルールの変更
・加工食品と生鮮食品の区分の統一

《 栄養表示 》
・加工食品への栄養表示義務化
・栄養強調表示のルール変更

《 その他 》
・アレルギー表示のルール変更
・製造所固有記号のルール変更
・表示レイアウトのルール(表示可能面積)変更

想定される表示実務に対する影響


基準の一元化を受け、特に重量順表記ルールの違いから食添区分の表示に違いのあったパン類、食用植物油脂、ドレッシング及びドレッシングタイプ調味料、風味調味料においては原材料の表記方法が変わってきます。また複合原材料の分割表記が認められることになり、複合原材料の表記に自主ルールを運用していた企業は対応の検討が必要となると思われます。

栄養表示においては、これまでの「ナトリウム」から、「食塩相当量」への表示切り替えが必要になる見込みです。また相対表示としての栄養強調表示を行う際の絶対差の要件に変更があるもの、新しく相対差を満たす必要があるものの変更が明記されています。さらに糖類無添加やナトリウム塩無添加といった無添加強調表示に対する新しい規制が提示されていますので、強調表示をする際には基準の確認等の工程が必要になると思われます。

もっとも実務に影響がありそうなのが、アレルギー表示の変更です。特定加工食品とその拡大表記の廃止ですが、例えば「マヨネーズ」の表示だけでは不十分となり、別途「卵」の表示が必要になる、というものです。また表記方法も個別表示が原則となり、例外的に一括表示が可能となります。一括表示の際は原材料部分に例えば小麦と表示してある場合でも、改めて一括表示として末尾に小麦と記載することが必要になる見込みです。

新しく対応が必要となる表示


加工食品と生鮮食品の区分が一元化されたことを受け、現行の食品衛生法に基づく表示基準では表示対象とはされていない、軽度の撤塩、生干し、湯通し、調味料等により簡単な加工等を施したもの(例:ドライマンゴー)についても、「加工食品」として整理されることになりました。その結果、新たに、アレルギー表示、製造所等の所在地等の表示義務が生じます。

栄養表示義務化の対象に、例外規定が明記されました。1:消費税法第9条に規定する小規模事業者(課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者)、2:業務用食品を販売する事業者及び 3:食品関連事業者以外の販売者、は対象外となります。それ以外の事業者で現在栄養表示をしていない商品は、新たに栄養表示が必要となります。

表示レイアウトのルールにも変更があり、表示可能面積が30㎠以下の場合であっても、「名称」「保存方法」「消費期限又は賞味期限」「表示責任者」「アレルギー表示」を省略不可とされていますので、新しく表示の追加が必要になる場合がでてきます。

製造所固有記号も、「原則として2以上の工場で製造する商品のみに利用可能」とされることから、多くの商品において製造所表示への切り替えが必要になると思われます。

機能性表示制度の状況について


また、「第7回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が6月26日に開催されましたが、ヒト試験や文献調査が必要という点では主な方針に変わりはありません。対象成分については「直接的又は間接的に定量可能な成分」に、「作用機序について試験に基づいて考察されていること」と但し書きが付されました。

今回は「販売前の届出制」が明記されたことが特徴です。これにより、新制度での商品であるかどうかが分かるようになります。今後は、消費者庁側より構造機能表示の範囲についての対応法新案が提示されると考えられます。一般的な機能性食品製造企業にとっては対応可能な制度かと思いますが、農産物などから6次産業化に取り組む原料製造の立場では、十分な準備が必要な制度になる見込みです。

今後の予定と猶予期間


食品表示基準については、最終案に対するパブリックコメントの募集が7月中に実施され、寄せられた意見をもとに最終案の再度修正が検討されます。その後食品表示部会で再度議論され、最終的な消費者委員会の答申は年内に出される見込みです。猶予期間は、加工食品が2年、添加物は1年、栄養表示は5年、変更の少ない生鮮食品は猶予期間なしでのスタートとなります。

それぞれの業種、商品特徴から、主に規格書の管理と表示作成・確認フロー等の実務に影響のある制度変更について、引き続き注視されることが大切だと考えています。


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新しい食品表示制度に向けての準備について

prepare

2014年5月30日現在、消費者委員会食品表示部会と消費者庁では、食品表示の制度に関する調査会、検討会を重ねているところです。

消費者委員会での調査会では「食品表示基準(加工食品、生鮮食品)」「栄養成分表示」について議論されており、消費者庁での検討会では「機能性表示」について議論されています。前者である調査会は食品表示現行制度の見直し議論であり、後者の機能性表示制度については新規構築の議論となっていますが、どちらも今後の食品事業者における食品表示の実務フローに与える影響がありますので、まとめてみます。

規格書の管理運用に影響のあるもの


以下は、原材料配合率や添加物使用基準の確認フローなど、食品表示の実務上で要になる「規格書(原材料配合、添加物用途、アレルギー情報、遺伝子組み換え食品について等がまとめられた書類)」に与える影響の度合いについてです。

特に食品表示基準(加工食品、生鮮食品)は、用語の整理や個別規則の統合方法に関する議論だけでなく、アレルギー情報の表示方法など各論にまで及んでいることに注意が必要です。食品表示を組み立てるうえでの重要書類である規格書の管理運用に変更が必要になる可能性について、とりわけ「記載方法を変える必要性」「規格書の仕様を変える必要性」と「規格書を再回収する必要性」について、これらを事前に把握しておくことは今後のスムーズな業務のためにも大切なことであると思います。

記載方法の変更が想定されるもの


記載方法の変更とは、書類の中の情報を一部修正することを指しています。新しい制度によっては、食品表示になる前の規格書管理の段階から修正対応が必要になる可能性を想定しておくことは、食品表示のミスを回避するためにも大切なことだと思います。

・複合原材料を個々に分割して表記する記載方法の検討 (第4回資料:「加工食品における表示基準の統合について(各論)」より)
・特定原材料または代替表記を含まない特定加工食品、卵黄卵白の代替表記の廃止を検討 (第5回資料:「食品表示基準におけるアレルゲンを含む食品の表示について」より)

詳細は先の調査会資料を参照していただきたいのですが、1点目の「複合原材料の分割表記」を選択する際は、規格書内の原材料配合情報への記載方法まで変更する可能性もあるでしょう。また「代替表記を含まない特定加工食品の廃止」は、規格書内のアレルギー物質情報欄への記載の徹底につながると想定されます(原材料欄に「マヨネーズ」と記載されていても、アレルギー物質欄に「卵」の記載がなければ食品表示ミスを生む可能性があります)。

また調査会では「用語の整理(例:「油脂」「食肉」等)」もされていますので、自社製品に関係する用語が議論にあがっていないか、確認しておかれるとよいと思います。

規格書の仕様変更が想定されるもの


仕様変更とは、書類の中の記入項目が変わるなどのことを指しています。昨年の「ごま」「カシューナッツ」の追加は1つの例ですが、これは従来からある「アレルギー物質」の管理項目の行列を追加するといった仕様変更が必要になるタイプです。同じようなものとしては、栄養表示の対象栄養成分が拡大することなどが該当するでしょう。

・栄養成分表示の推奨項目としての「飽和脂肪酸、食物繊維」の追加(資料:栄養表示に関する調査会中間報告)

こちらも行や列を追加する対応となるかと思います。現段階での調査会での議論を見る限り、そのほかに「糖類、トランス脂肪酸、コレステロール」等も記載場所の確保がされた規格書仕様への変更が求められる可能性がありますので、栄養成分の項目はできるだけ余裕をもっておかれるとよいと思います。また行や列の追加といった仕様変更ではなく、管理項目そのものの新規設置を検討する可能性がある議論もあります。

・無添加強調表示の規定の新設(第4回資料:「栄養強調表示等について」より)
・安全性確保を目的とした製品分析の結果等の情報開示(機能性食品)(第3回:「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について」より)
・最終製品を用いたヒト試験による実証、適切な研究レビューによる実証の情報開示(機能性食品)(第6回:「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について」より)

規格書の再回収が想定されるもの


最後に、レシピ自体が変更になるなどの影響から、規格書そのものを仕入れ業者から再度回収する可能性がある議論についてです。

・原則として製造所の所在地及び製造者氏名の表示(製造所固有記号の例外化)の検討(第5回資料:「食品表示基準における製造所固有記号制度について」より)

見直し案では、「原則、2以上の製造所において同一商品を製造・販売する場合のみ固有記号の利用を認める」「新固有記号データーベースを構築し、消費者からの検索が可能」といった議論が進められています。これは、製造所そのものが変わる可能性も含んでいますので、まずは「販売者+製造所固有記号」を使用されている製品のうち、製造所が1箇所のみである製品を特定しておく準備が必要になると思われます。

このように現在の調査会、検討会での議論の途中でありますが、対応には時間のかかるものも多くあります。原材料情報などの規格書仕様、管理フロー、品質管理ポリシーなどは事業者それぞれにあると思いますので、まずはそうした視点からこれら新制度の議論について確認されてみるとよいと思います。


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食品の新たな機能性表示制度について(3)

「消費者意向等調査結果」の発表


2014年4月4日、消費者庁「食品の新たな機能性表示検討委員会」において3月実施の消費者意向等調査の結果が発表されていますので、こちらでご紹介します。消費者の求める情報そのままということもあり、大事なことですので、背景から改めて整理します。

「いわゆる健康食品に関し、企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策について、今年度中に検討を開始し、来年度中に結論を得た上で実施」と、規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定) にて決定されたことが始まりです。

そして「消費者の誤認を招かず、消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資するような機能性表示制度を検討するための基礎資料を得ること」を目的に、2つの調査を実施することになりました。

1点目が「米国ダイエタリーサプリメント制度に関する課題等整理」、そして2点目が「機能性表示に対する消費者の読み取りに関する実態調査」であり、今回の「消費者意向等調査結果」とは、この2点目のうちの1部(「グループヒアリング」と「インターネット調査」の2つの方法が提示されています)に該当するものと思われます。

調査概要と報告書の全体像


調査は、「健康食品の誤認率が高いと想定される集団を含む集団」として「3,000名(15?79歳の男女を全国の人口構成に合わせて割当抽出)を対象に行われています。また対象者を、「?20?64歳(疾病なし)」「?20?64歳(何らかの疾病あり)」「?65歳以上」「?15?19歳」「?健康食品を摂取している中学生以下の子どもを持つ者」「?妊娠中・妊娠計画中の者」と、6つに群分けされています。報告書内に調査内容についても記載されていますが、ここでは報告結果の構成(目次)をみることで、今後どんな準備が求められるかが参考になるのではないかと思います。

・診断又は疑いのある疾病
・最近1年間の「健康食品」の摂取状況
・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における「いわゆる健康食品」に対するイメージ
 (1)?(5)(「試験などで安全性が証明されている」
 「食事では摂取しにくい栄養成分を摂取することができる」
 「製品パッケージの表示を、しっかり見て選ぶ必要がある」等と思う者の割合について、グループ別に報告)

・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における摂取頻度と摂取目的
・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における購入時に重視する点(1)(2)
 (「厳しい品質管理のもと製造・販売されていること」、「ヒトで効果が確かめられていること」、
 「原材料が天然・自然由来のものであること」を重視する者の割合について、グループ別に報告)
・「健康食品」を摂取させている中学生以下の子どもの有無
・中学生以下の子どもに摂取させた「いわゆる健康食品」の種類と摂取される頻度と目的
・「いわゆる健康食品」に機能を表示できないことの認知度
・「いわゆる健康食品」に機能性を表示する際に必要な表示事項
・米国のダイエタリーサプリメント制度に基づく表示に対する印象
・「いわゆる健康食品」に機能性を表示する際の表示の在り方と最低限必要な試験

ヒト介入試験の必要性


事業者側にとって、もっとも準備に時間のかかるものの1つが「試験」ではないかと思います。
報告書の最後のページは、「いわゆる「サプリメント」形状のもの(錠剤等)」「サプリメント形状ではない加工食品(お菓子等)」「生鮮食品(野菜・くだもの等)」といった3分類の食品形態に対し、それぞれ「試験管試験」「動物実験」「ヒト観察研究」「ヒト介入試験」の必要性を質問したものの結果が記載されています。

「いずれの項目でも、「ヒト研究」を最低限必要と思う者(「ヒト介入試験」又は「ヒト観察研究」と回答した者)は全体の6割以上であった。グループ???において、「いわゆる『サプリメント』形状のもの」について「ヒト介入試験」が最低限必要と回答した者の割合は、「サプリメント形状ではない加工食品」や「生鮮食品」に比べて有意に高かった。」

表示の裏づけとなる合理的な根拠と、統計的な客観性の確保


この報告書最終ページから、消費者(今後の制度)の求める「科学的根拠」のレベルについて、推測することができるかと考えます。質問内でもっともレベルの高い「ヒト介入試験」については、「例)調査参加者を対象に、ある成分又は食品を一定量摂取してもらう群と、摂取しない群に分け、その摂取が健康状態におよぼす影響について、直接評価する研究」と定義されています。

また、この報告書の調査概要部分に、「(中略)グループ?(20?64歳(疾病なし))を対照群として、要配慮者グループ???との比率の差の検定を行った」「(中略)同一グループ内で比率の差の検定を行った」「統計学的有意水準は5%(両側検定)とした」といった「統計解析」に関する記載があります。
不当表示についての1つの考え方となる「不実証広告規制に関する指針(消費者庁)」では、例えば体験談やモニターの意見等などの表示をする際に必要な合理的な根拠として「これら消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある」といった説明がされています。

もちろん、冒頭で触れた「グループヒアリング(本調査の基礎的知見となったもの)」の結果が同委員会のページで公開されていない点も、考慮に入れておく必要はあります。いずれにしても機能性表示に必要な準備について検討する際に、この報告書は大変参考になる情報が盛り込まれていると思いますので、まだ確認されていない方は、ぜひ一度消費者庁のページで参照していただくことをお勧めします。

また機能性表示に限らず、誤認などの不当表示を生まないために必要な「表示の裏づけとなる根拠」を考えるときにも、このような試験や調査、報告の方法について確認しておくことは大切なことではないかと思います。

参照:第4回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index19.html

※2014年5月8日(木)追記


5月2日、第5回検討会の資料が発表されました。科学的根拠についての方針案がありますので、追記いたします。

【対応方針(案)の要点】

◇対象成分は「直接的又は間接的に定量可能な成分」。
 ただし栄養機能食品と特定保健用食品の対象栄養成分(食事摂取基準のあるビタミン、ミネラル)は対象外。

◇新制度においては、表示しようとする機能性について
 下記(1)(2)のいずれかを行うことが必須となる。

(1)最終製品を用いたヒト試験による実証
  ・ヒト試験の方法は特定保健用食品の方法に準じる。
  ・UMIN臨床試験登録システム等への事前登録が必要。
  ・CONSORT声明等に準拠した形式での査読付き論文での報告が必要。

(2)適切な研究レビュー(システマティックレビュー)による実証
  ・サプリメント形状ヒト介入試験、その他加工食品、生鮮食品においては、ヒト研究(介入試験又は観察研究)で肯定的結果が得られていること。
  ・検索条件や採択・不採択の文献情報等、出版バイアスの検討結果等について詳細に公表する必要がある。
  ・表示しようとする機能について、査読付きのヒト研究論文がこれを支持しない場合は、機能性表示ができない。

◇複数の保健機能成分についてそれぞれ機能性を表示しようとする場合は、成分ごとに機能性を実証すればよいこととされる。

参照資料:平成26年5月2日 第5回 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会
http://www.caa.go.jp/foods/index19.html

詳しくは、次号コラムにて触れていきたいと思います。


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