2014年6月25日消費者委員会食品表示部会において、消費者庁は栄養表示義務化をはじめとする新基準をとりまとめた「食品表示基準」の最終案を提示しました。7月中にパブリックコメント募集を実施する予定です。
主な変更点
最終案として提示されたもので、現行制度との主な変更点は次のとおりです。
《 基準の一元化 》
・食品表示基準として規則を一元化
・原材料名表示等のルールの変更
・加工食品と生鮮食品の区分の統一
《 栄養表示 》
・加工食品への栄養表示義務化
・栄養強調表示のルール変更
《 その他 》
・アレルギー表示のルール変更
・製造所固有記号のルール変更
・表示レイアウトのルール(表示可能面積)変更
想定される表示実務に対する影響
基準の一元化を受け、特に重量順表記ルールの違いから食添区分の表示に違いのあったパン類、食用植物油脂、ドレッシング及びドレッシングタイプ調味料、風味調味料においては原材料の表記方法が変わってきます。また複合原材料の分割表記が認められることになり、複合原材料の表記に自主ルールを運用していた企業は対応の検討が必要となると思われます。
栄養表示においては、これまでの「ナトリウム」から、「食塩相当量」への表示切り替えが必要になる見込みです。また相対表示としての栄養強調表示を行う際の絶対差の要件に変更があるもの、新しく相対差を満たす必要があるものの変更が明記されています。さらに糖類無添加やナトリウム塩無添加といった無添加強調表示に対する新しい規制が提示されていますので、強調表示をする際には基準の確認等の工程が必要になると思われます。
もっとも実務に影響がありそうなのが、アレルギー表示の変更です。特定加工食品とその拡大表記の廃止ですが、例えば「マヨネーズ」の表示だけでは不十分となり、別途「卵」の表示が必要になる、というものです。また表記方法も個別表示が原則となり、例外的に一括表示が可能となります。一括表示の際は原材料部分に例えば小麦と表示してある場合でも、改めて一括表示として末尾に小麦と記載することが必要になる見込みです。
新しく対応が必要となる表示
加工食品と生鮮食品の区分が一元化されたことを受け、現行の食品衛生法に基づく表示基準では表示対象とはされていない、軽度の撤塩、生干し、湯通し、調味料等により簡単な加工等を施したもの(例:ドライマンゴー)についても、「加工食品」として整理されることになりました。その結果、新たに、アレルギー表示、製造所等の所在地等の表示義務が生じます。
栄養表示義務化の対象に、例外規定が明記されました。1:消費税法第9条に規定する小規模事業者(課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者)、2:業務用食品を販売する事業者及び 3:食品関連事業者以外の販売者、は対象外となります。それ以外の事業者で現在栄養表示をしていない商品は、新たに栄養表示が必要となります。
表示レイアウトのルールにも変更があり、表示可能面積が30㎠以下の場合であっても、「名称」「保存方法」「消費期限又は賞味期限」「表示責任者」「アレルギー表示」を省略不可とされていますので、新しく表示の追加が必要になる場合がでてきます。
製造所固有記号も、「原則として2以上の工場で製造する商品のみに利用可能」とされることから、多くの商品において製造所表示への切り替えが必要になると思われます。
機能性表示制度の状況について
また、「第7回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が6月26日に開催されましたが、ヒト試験や文献調査が必要という点では主な方針に変わりはありません。対象成分については「直接的又は間接的に定量可能な成分」に、「作用機序について試験に基づいて考察されていること」と但し書きが付されました。
今回は「販売前の届出制」が明記されたことが特徴です。これにより、新制度での商品であるかどうかが分かるようになります。今後は、消費者庁側より構造機能表示の範囲についての対応法新案が提示されると考えられます。一般的な機能性食品製造企業にとっては対応可能な制度かと思いますが、農産物などから6次産業化に取り組む原料製造の立場では、十分な準備が必要な制度になる見込みです。
今後の予定と猶予期間
食品表示基準については、最終案に対するパブリックコメントの募集が7月中に実施され、寄せられた意見をもとに最終案の再度修正が検討されます。その後食品表示部会で再度議論され、最終的な消費者委員会の答申は年内に出される見込みです。猶予期間は、加工食品が2年、添加物は1年、栄養表示は5年、変更の少ない生鮮食品は猶予期間なしでのスタートとなります。
それぞれの業種、商品特徴から、主に規格書の管理と表示作成・確認フロー等の実務に影響のある制度変更について、引き続き注視されることが大切だと考えています。
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