Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

新しい食品表示基準の動向について(2)

平成25年6月に「食品表示法」が公布され、昨年11月から「食品表示基準」の内容について検討が行なわれています。
先月は中間報告までの動向をお伝えしましたが、引き続き検討されていますので、その動向についてご紹介します。

1 レイアウト、文字の大きさについて


現行、文字の大きさについては原則8ポイント以上、例外として容器又は包装可能面積が150cm2以下の場合は5.5ポイント以上、容器又は包装の面積が30cm2以下の場合は一部省略可能となっていました。また、レイアウトは容器、又は包装の見やすい箇所に様式に沿って、もしくはわかりやすく一括して記載していました。

今回、表示の見やすさという観点から、高齢者の方々にも見やすい表示をといった検討がされましたが、栄養表示の義務化などがあり、表示可能面積が限られた中での表示で文字の大きさの拡大は難しいことから、文字の大きさは8ポイントのままということになりました。省略規定については、容器又は包装の面積が30cm2以下の場合、5.5ポイント以上を6.5ポイント以上に拡大という案もでていましたが、栄養表示の義務化に伴う表示面積の拡大を踏まえ、50cm2以下に拡大されました。

レイアウトについてもほぼ変更はありませんが、「食品添加物以外の原材料と食品添加物は、違いを明確にするために区切り(例 「/」 「:」等)を記載する」といった案が出ています。

2 アレルギー表示について


現行、アレルギー表示は個別表示(繰り返しになるアレルゲンは省略可)を原則としていますが、使用している原材料が多く、表示可能面積の制約がある場合、表示量が多く、かえって消費者にわかりにくい表示となる場合は例外的に一括表示(アレルゲンそのものが使用されていたり、代替表記等で表示されているものは省略可)が可能となっていました。

食品表示基準では、個別表示については、繰り返しになるアレルゲンも省略不可として記載をしてはどうかという案がでています。この案が出た理由としては、使用されている原材料によって食べられるものもある(醤油に含まれる小麦であれば摂取できる等)方もいることから、商品選択を広げるために個別表示にしたほうがよいのではといった理由からです。

また、一括表示についても、現行省略可能とされている内容を省略不可として、含まれるすべてのアレルゲンを把握でき、見落とし防止できるようにしたほうがよいという提案も出ています。

さらに、特定加工食品の代替表記についても見直されています。

・「アレルゲン又はその代替表記を含まないもの(例:マヨネーズ等)」が廃止
・「アレルゲン又はその代替表記を含むもの」のうち「卵白」「卵黄」の廃止
・乳を原材料とする食品についての代替表記も「種類別」がなくなり、「代替表記」が設けられ、「特定加工食品」については先に述べたものと同じように廃止

これらが検討されている理由としては、マヨネーズに卵が含まれていることを知らなかったり、卵白・卵黄については完全分離が困難であることがあげられています。また、「乳を含む」「乳製品を含む」「乳成分を含む」も「乳化剤」等の紛らわしい言葉と区別するため、「乳成分を含む」に統一してはどうかといった検討もされています。

3 製造所固有記号について


現行、製造所所在地や製造者の氏名について義務付けられていますが、消費者庁への届出をした場合、その固有記号を記載することで製造者の氏名の表示に代えることができると規定されていました。食品表示基準では、原則、今までどおり製造所所在地や製造者の氏名については表示することには変更がないのですが、例外的に認められている製造所固有記号の取得に下記のような変更案が出されています。

1:2以上の工場で製造する商品のみ利用可能
2:消費者からの問い合わせがあった場合の応答義務
3:現行のデータベースから新データベースへ移行し、開始届、変更及び廃止届、さらに有効期間を設定し更新(消費者の閲覧可)

こうした変更案が出されており、メリットとしては、消費者が製造所の所在地情報を得られます。しかしながら、デメリットとして、放射性物質はじめ風評問題による購入地域の偏りや事業者への改版の負担などがあり、さらに検討される見通しです。

先月、今月と検討されている内容についてご紹介してまいりましたが、食品表示が消費者にとってわかりやすいものであることは前提としてあります。一方で、事業者にとっても苦痛にならない内容で決められていけばよいと感じています。食品表示基準のパブリックコメント募集は今年の夏の予定です。2020年の栄養表示の義務化もあり、改版は免れない傾向にありますが、食品製造や食品表示業務に従事されている方は、栄養表示の表記の準備と共に、食品表示基準の改正の動向も随時ご確認をされることをおすすめします。


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新しい食品表示基準の動向について(1)

平成25年6月に「食品表示法」が公布され、昨年11月から「食品表示基準」の内容について検討が行われています。その中間報告が3月28日にされましたので、一部動向をご紹介したいと思います。

1 表示責任を有する者について


現行、加工食品については、JAS法では、商品内容を把握しているとして、「表示内容に責任を有する者」の住所と氏名、食品衛生法では、食品衛生上の問題が発生した際に迅速に対応するため、衛生上のリスクが生じる製造や加工を行なう者の氏名と住所を記載していました。

食品表示基準においても、その必要性に変わりはなく、「表示内容に責任を有する者」の氏名及び住所を記載することとしています。
しかしながら、商品の様々な流通実態(NB商品など)に対応することと、表示の内容に責任を持つものを明らかにするため、今後、流通形態によっては、製造業者や販売業者とは限らず、「当該食品の内容を最も把握しているもの」を表示責任者として「製造者」「販売者」「加工者」「輸入者」として記載することになるようです。

よって、販売者が表示責任者となった場合、製造者は商品の表示は行ないますが、食品の内容を最も把握するものではないので、「販売者」と記載します。そして、実際に製造した場所を「製造所」として記載が必要となります。

「製造者」「加工者」「輸入者」「製造所」「加工所」「輸入所の営業所在地」等の用語について整理されていますが、「製造」「加工」について改めて定義づけされる見通しです。その一方で、製造所固有記号の記載で製造所の所在地などを表示に代えることができる制度については表示可能面積の制約等もありますが、更に審議される見通しです。

2 食品表示基準における加工食品の表示方法等の作成方針について


現行、加工食品は「名称、原材料名・添加物・アレルギー、内容量、消費期限又は賞味期限、保存方法、原産国名(輸入品)、製造者、原料原産地名、遺伝子組換え食品」を記載。さらに個別の品質表示基準で義務表示事項となっているものを記載してきました。

食品表示基準でも、ほぼ変わりはなく、「名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限、原材料名、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産国名(輸入品)、内容量、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所、原料原産地名、遺伝子組換え食品等」を記載します。栄養成分の量及び熱量の記載が増え、前述で記載した食品関連事業者の記載が変更となる見通しですが、記載項目はほとんど変わりません。

個別の品質表示基準での義務表示事項については、消費者の選択の際に有用な表示であることから、そのまま採用となります。

しかしながら、名称の定義は、現状と実態があっていないものもあるため、一部修正、削除が行なわれる予定です。また、表示禁止事項も基準を検索しやすくするため、改めて、品目ごと、もしくは表示事項ごとに整理され、一覧化される見通しです。

3 食品表示基準における販売形態ごとの適用範囲について


現行、「JAS法」では容器包装の有無や製造・生産場所と販売場所の違いから、「食品衛生法」では、一部では容器包装の有無から表示の必要性が決められていました。食品表示基準では、販売形態によって、適用範囲が決められる模様ですが、今までの「JAS法」、「食品衛生法」両方の法律を守らなければならなかったことが合わせられて、ほぼ現行と変わりはないように思われます。

更に今年の夏までにこちらについても検討が行なわれます。
・レイアウト、文字の大きさの検討
・アレルギー表示(代替表記等の見直し、表示方法(個別表示、一括表示など) の整理)
・加工食品関係の用語の統一

総括として、思っていたほどの変更はなく、よりわかりやすいものになっていくのだろうと感じています。
しかしながら、定義が少しずつ変わっている部分もあるので、一つずつ変更ポイントをおさえて従事していく必要があると、まだ案の段階ですが実感しています。


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栄養表示制度の対象となる食品と事業者について

栄養表示制度の対象となる食品と事業者について


栄養表示が今後義務化されることについては以前にも取り上げておりましたが、1月22日に行われた消費者委員会で栄養表示に関する調査会が開催されておりますので、その内容を紹介できればと思います。

対象となる食品の指標となる3つの軸


栄養表示の義務化の目的としては、消費者の適切な食生活を行うための商品選択をする際の情報源としているため、まずは消費者が求めている情報であるかが対象食品を決める際の視点の一つとなります。また事業者の実行が可能かどうか、私達の食生活を取り巻く環境を考慮して、
?消費者における表示の必要性
?事業者における表示の実行可能性
?国際整合性
の3点を主な観点として表示義務を免除する食品を決めていくことになりそうです。

4つの区分

具体的には?と?の2軸で(包装された)食品を4つの区分に分け、それぞれの栄養表示の必要性を?の視点も加えながら、表示義務免除となる食品を決めることになります。?の視点については、ただ海外の事例に倣うのではなく、日本の食文化の中で栄養表示を免除すべきか否か議論・整理した上で、その視点が国際的に共通しているかを計るための視点と思われます。

また、輸入食品についても消費者の栄養表示の必要性が高いものしており、また諸外国での例をみても表示義務を免除している例はないとして、国内製造品と同様に栄養表示を義務化する方向で進められています。

食品表示制度の対象となる事業者について


栄養表示の義務化が決められた際に、原則的に食品関連事業者が食品を販売する場合はすべての事業者が表示義務の対象となりますが、家族経営のような零細な事業者のように適用が困難な場合など一部例外を設けるとしておりました。

この「零細な事業者」をどのように定義するかについて、調査会での案では、中小企業基本法に定める「小規模企業者」の定義(概ね常時使用する従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の事業者)についてはリサイクルマークの表示義務から除外されていることを参考に正社員および正社員に準じた労働形態である従業員数5人以下の事業者については栄養表示義務を免除してはどうかと提案がされています。

ですが、この人数の線引きについては適正なものであるかまだまだ議論の余地があるとして保留されています。また、海外の事例では年間での販売数が少ない事業者に表示義務を免除している例があるため、一部の輸入食品が栄養表示に対応できない可能性があるとして販売数による免除規定を設けるべきという声も挙がっています。

食品表示制度の対象となる事業者について


こちらについては、これまでの制度と大きく変わるものではありませんが、表示義務から免除された食品や事業者の場合でも自主的に栄養成分を記載する場合や「Ca配合」や「ビタミンたっぷり」といった強調表示を行う場合は、表示義務がかかる食品と同じ方法によって表示されるべきであると提案がされています。

例えば、お酒などは調査会では栄養を得る目的ではない嗜好品のため、消費者にとっての表示の必要性は低いとして「区分B」とされていましたが、その中の議論で現在販売されている商品には自主的に栄養表示基準に沿った表示がなされており、また「糖質ゼロ」や「カロリーカット」といった表示がされているものがあり、その場合には強調表示にあたり免除の対象にすべきではないといった話から、訴求したい情報を前面に推し、事業者にとって望ましくない情報が外されるといった事はあるべきではないとして、現行の栄養表示基準と同様に自主的な表示であっても規定された表示方法で記載されるべきという風にまとめられています。

フラットな形で情報提供がなされるということは、消費者の商品選択のために必要なことであり、またその中から新たな商品が生まれることもあるため意味のあることであり、そのレギュレーションを行う今回の調査会は非常に大きな意味を持つと思っています。消費者、事業者どちらか一方の立場に立たず公平な制度となることを祈るばかりです。


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食品の新たな機能性表示制度について(2)

201403

製品分析と情報開示


読者の皆様の多くは一般の加工食品に関する企業の方と思いますが、これまで「いわゆる健康食品」と呼ばれていたものが大きく変わる節目にありますので、先月に引き続き、消費者庁において検討会が開催された「食品の新たな機能性表示」について取り上げてみます。

2月25日に行われた第3回検討会では、主に「安全性の確保」について議論されています。
第2回検討会に引き続き、大きく2つ示された対応方針は、
「?事業者は品質管理の実効性を担保するため製品分析を行うこと」
「??の結果を含めて、生産・製造及び品質の管理の方法については、広く情報を開示することとする」といった内容でした。

製品分析(関与成分量の分析、安全性に関わる成分の量の分析)については、これまでも機能性食品を製造する多くの事業者がされていることから、ここでのポイントは「情報開示」となります。目的に「消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資するもの」とあることから、消費者にリーチできる状態での情報開示が求められると考えてよいと思います。

情報開示項目案は、HACCPやGMP等の取組み状況に加え次のとおりです。

(1)関与成分量及び安全性に関わる成分の量に関する規格
(2)施設や作業員の衛生管理体制
(3)異物混入や他製品との混同の防止体制
(4)製品の均質性とその管理体制
(5)規格外製品の出荷防止体制
(6)製造・品質等の記録文書やサンプルの保管体制
(7)製品分析の結果

3つの食品形態


第2回検討会で提示された資料と、第3回検討会で提示された資料の差を見てみると、例えば「関与成分と医薬品等の相互作用の有無」等を事業者が評価する内容について、3回目の資料では記載がなくなっていました。しかし「関与成分量及び安全性に関わる成分の量に関する規格」を設けて管理することから、これらの内容は引き続き考慮されると考えてよいと思います。

引き続き資料に使用された内容を確認すると、やはりひとくちに機能性と言っても、食品の形態により管理方法は異なるとした考え方は重視されています。参考にするアメリカの制度(栄養補助食品健康教育法:DSHEA)と異なり、原則すべての食品を対象として設計をはじめた今回の制度は、「錠剤、カプセル、液状等製品」「その他の加工食品」「生鮮食品」として大きく3つの食品形態をあげています。

これらのうち、情報開示項目がもっとも多くなる食品形態に、食経験の評価や過剰摂取などの課題があるものとして「錠剤、カプセル、液状等製品」をあげています。

今後するべきこと


今後検討会では、「機能性に関する科学的根拠」についての方針と、その情報開示について議論されるものと思われます。加工食品を製造される方におかれても、今後市場が大きく変わると思われる「サプリメント形態(錠剤、カプセル、液状等)の機能性食品」を検討される方は、引き続き準備が必要と思いますので、その内容をまとめてみます。

・米国DSHEAの構造機能表示制度についての調査
・原材料の安全性情報(過剰摂取、医薬品との相互作用等)の確認
・原材料の機能性情報(論文等の科学的根拠)の確認と、試験等データの確保
・製品分析体制の確認と、製品別の認証レベル(HACCP、ISO、GMP等)の確認
・販路政策と広告政策(保有する科学的根拠での実証性の確認)の見直し
・ウェブサイト等での情報(安全性、機能性)開示体制の確認と、今後の方針設定

機能性に関する科学的根拠について、各方面の識者よりその必要性を議論されているものを集約すると、まず「関与成分のメカニズムの解明」、そして外部試験機関での「ヒトでのランダム化比較試験(二重盲検)」と、査読つきの「論文」による客観性の確保となります。そのうえで、広告表示の実証性を確保することが必要とされると思われます。

これら機能性に関する科学的根拠について、昨年12月24日に消費者庁より発表された「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」において「効果効能の裏付けとなる合理的根拠を示す実験結果、データ等をウェブサイト上に適切に表示することが望ましい。」「薬事法に抵触するものではありません。」と記載されていることから、ウェブサイト上での情報開示が今後も進むものとみられています。

ちなみに栄養表示の議論にはあった「小規模・零細事業者への配慮」は、強調表示にあたることから今回の機能性表示制度では見受けられません。そのため各地域で進められている6次産業化にも、大きな影響があると思われます。今後の市場の変化として、試験や管理と広告の重要性から資本力の影響が強くなるのはもとより、品質管理の重要性から主力商品(成分)自体に変化がある、また多くの情報を必要としてきたために伸び続けた通信販売と店舗販売の関係にも、大きな影響を与えると思われます。この表示制度の変化は、引き続き取りあげていきたいと思います。


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食品の新たな機能性表示制度について(1)

新制度の基本的な考え方


2013年12月20日に、消費者庁にて「第1回 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が開催されました(1月31日に第2回開催)。多くの食品事業者にとって、今年もっとも関心の高いテーマの1つではないかと思います。今回は、こちらの新制度の現状についいて、まとめてみます。

同検討会の基本的な考え方として、「消費者の誤認を招かない、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」を目指す方針であると発表されています。また、大きく3つのポイントがあり、それぞれ「安全性の確保」「機能性表示を行うにあたって必要な科学的根拠の設定」「適正な表示による消費者への情報提供」をあげています。

2つの立場と課題


今回の制度は、消費者にとっての安全性と合理性を確保しながら、事業者にとっても利用しやすい表示制度であることが求められるなど、2つの立場での課題の並存が考えられます。同検討会では、今後検討に向けて想定される主な論点として、「消費者の誤認を招かない、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」と「国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上で、その旨及び機能を表示できる制度」の両立をあげています。

どの成分にどの程度の科学的根拠を求められるのか、企業にとっては商品開発のうえで難しい課題だと思います。昨年の規制改革会議(成長戦略)に端を発した制度である以上、企業にとっての使い勝手のよさが求められるところですが、同時に消費者に対して誤解を与えない情報提供をどのように周知していくのか、これらを検討していくものと思われます。

米国の制度研究と消費者意識調査


規制改革会議計画では、国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上で、機能性表示ができることを目指すために、米国の「ダイエタリーサプリメントの表示制度」を参考にする、と発表されました。これを受け、現在消費者庁では米国ダイエタリーサプリメント制度に関する課題の整理として、法令、指針、レポート、論文の和訳と、その結果から新たな機能性表示制度の検討にあたり留意すべきと思われる点を分かりやすく整理する作業を進めています。

また同時に、消費者の誤認を防ぐ新しい表示制度を目指すために、消費者の機能性表示の読み取りについて、グループヒアリングによる実態調査を進めています。さらに消費者のうち健康食品の誤認率が高いと思われる集団を含む調査集団(3000人程度)を対象に、グループヒアリングで得られた基礎的知見の妥当性をインターネット調査により検証する作業を進めています。

今後のスケジュール


米国のダイエタリーサプリメントの表示制度では、「構造機能強調表示」と呼ばれる機能性表示ができる仕組みになっています。今後企業が食品に機能性表示をするにあたり、どの程度の科学的根拠レベルが必要なのかを考えるときの有益な参考情報になると思われます。消費者庁の資料をもとに、裏面に引用掲載しておきますので参照していただければ幸いです。

この新たな機能性表示制度は、平成26年度中の実施が予定されています。検討会は今後も開催され、そのたびに具体的な制度内容が発表されてくると思いますので、こちらでも随時とりあげていきたいと考えています。


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2013年の主な食品表示関連ニュースまとめ

201401

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本年も頑張ってお届けいたしますので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

さて昨年(平成25年)は、食品表示に関連して多くのニュースがありました。
実務面ではアレルギー物質の追加など、規格書検査項目が増えたことが印象的ではありますが、より大きな視点でみますとやはり「新食品表示制度」を中心に、栄養表示、機能性表示、また外食メニューの表示等様々な変化を感じさせる1年だったかと思います。

そこで今回の新年1月号では、昨年1年間の主なニュースをまとめてみましたので、ご参考にしていただけますと幸いです。
こうしてまとめてみると、変化のある1年だったと改めて感じます。現在検討されているもの、制度設計をされているものも多くあるかと思いますが、今後の食品表示への影響として考えておくべきポイントを簡単にまとめてみました。

 

4月4日 規制改革会議による食品への機能性表示規制緩和方針発表
6月21日 食品表示法案成立
6月28日 食品表示法公布(2年以内に施行)
6月28日 新食品表示制度の意見募集結果発表
9月20日 アレルギー物質を含む食品に関する表示の改正(カシューナッツ、ごま追加)
9月20日 乳児用規格適用食品である旨の表示の改正
9月27日 栄養表示基準の一部改正(推定値による設定方法、根拠資料保管等の追加等)
11月6日 食品表示基準の検討方針に関する会議開催(消費者委員会食品表示部会)
11月11日 「第1回食品表示等問題関係府省庁等会議」開催
12月9日 「食品表示等の適正化について」発表(メニュー・料理等の表示について)
12月20日 「第1回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」開催
12月24日 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項意見募集結果発表

加工食品であれば必ず対応しなければならないポイントは、次のとおりです。

・今年8月末までに、アレルギー表示改正への対応が必要になること
・来年6月まで公布予定の「食品表示基準」により、表示変更の対応準備が必要になること
・その後5年以内に完全義務化をめざす「栄養表示」への対応準備が必要になること

また機能性表示や、原材料などの商品特長を訴求する場合は、次のポイントに関する動向に注目しておく必要があるかと思われます。

・平成26年度中に施行される、食品の新たな機能性表示制度の動向に注意すること
・昨年にすでに発表された景品表示法、健康増進法に関する留意事項に注意すること

また海外企業と食品を輸出入されている方は、EUのように食品表示制度自体について現在変更されている地域がある点と、日本国内のアレルギー物質に関する制度が変更されている点について、あわせての注意が引き続き重要になると思います。

以上が、昨年までのニュースのまとめと、今年のポイントについてのお知らせでした。

今年はこれらの制度改正に備えて、現状整理が大事になると考えております(当社自身の現場もそうですが・・・)。原材料の規格書情報管理の効果的な進め方など、これからの状況にあわせた課題解決についても提供できるよう、常に考え続けていきたいと思っております。

それでは、これをもちまして新年最初のラベルバンクコラムとさせていただきます。
新しい1年が、皆様にとってよい年になりますように。
今年もお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。


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食品の機能性表示の緩和と、機能性表示の実証について

201312

規制改革会議による食品の機能性表示の緩和


食品の機能性表示が緩和される見通しです。2013年4月の規制改革会議に端を発したもので、現在消費者庁が平成26年度中の実施に向け、制度を構築している段階です。
2013年11月末時点では、一般消費者向けに大規模なアンケート調査を実施しているところで、この結果を受けて本格的な制度検討に入るとみられています。消費者庁としては今年8月末に記者会見でこの話題に触れたのちに、制度に関する大きな発表は行っていませんが、「月刊激流11月」「週間東洋経済11/30」など専門誌各誌が今後の見通しをまとめていますので、機能性表示を検討される企業の皆さまは参考にされるとよいと思います。

要点をまとめると、このようになります。

・元々緩和の予定はなかったが、規制改革会議の決定により取り掛かることになった
・アメリカの「ダイエタリーサプリメント」の表示 制度を参考に、日本独自の制度を目指す
・製品ベースで個別認可を出す特定保健用食品とは別の制度と考えている
・科学的根拠と届出制により、表示規制緩和は原則すべての食品を対象と検討している

ただ参考にするといわれるアメリカの制度も科学的根拠の届出制をとっていますが、その科学的根拠のレベルにバラツキがあるなど運用面で課題はあることと、さらに日本国内の健康食品の不当表示問題などにより、一部からは「食品への機能性表示緩和は時期尚早では」と慎重論もあがっています。消費者庁としては、これらの声を集約しながら、制度設計を進めていくものと思われます。

消費者庁、いわゆる健康食品の不当表示に対する監視指導案を発表


来年予定されている「食品の機能性表示の規制緩和」は、科学的根拠の研究をすすめながら積極的に機能性表示をすすめたい企業にとっては朗報になりましたが、その一方で今年11月1日に、「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(案)」が発表されました。こちらはやや規制を強化する旨のガイドラインです。

これまでは「病気が治る」等の表示に対する規制(「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(厚生労働省)」)でしたが、今後はその実証に関することがポイントになると考えてよいと思います。12月1日にパブリックコメントを締め切り、12月中には正式に発表されるとのことです。

食品のうち、なんらか健康を訴求しているものは「いわゆる健康食品」に入りますので、多くの食品にとって影響のあるガイドラインと考えてよいと思います。こちらは、消費者庁ホームページに掲載されていますので、一度確認されることをおすすめいたします。

要点をまとめると、このようになります。

・表示や表現方法への規制に加え、それが実証できる根拠の有無を問う規制であること
・健康増進法を含めた ガイドラインであるため、広告会社も対象になること

どちらにも重要な役割となる表示の裏づけとなる合理的な根拠


ある商品の表示が不当表示(優良誤認)に該当する可能性がある場合、消費者庁からその表示内容を裏付ける合理的な根拠の提出を要求されることになります。
企業がその表示内容が正しいものであると、ここで合理的な根拠として資料提出しても、それが認められない場合もありますので、ガイドラインには指導事例が掲載されています。機能性表示の緩和にも科学的根拠が必要になる見込みであることを考えると、今後より大切になるのは、表示内容を実証できる合理的な根拠資料の準備、といえると思います。

また今回のガイドライン案の対象者に広告会社が含まれていることから、広告審査が厳しくなる可能性があることも想定しておく必要があります。
食品とは関係はありませんが、今年9月27日に厚生労働省より出された医療広告ガイドラインにあわせ、広告媒体大手のYahoo! が広告審査基準を2014年1月6日より改定することが発表されています。

クリエイティブのリンク先のサイトも広告として取り扱われる、等の改定です。
広告媒体に安全に広告を出稿するためにも、今後は表示内容についての、合理的な根拠を念のため準備しておくことが重要といえると思います。

今後の見通し 根拠資料のトレーサビリティが大切


今年9月27日に栄養表示基準が改正され、すべての食品で「表示された値の設定の根拠資料を保管すること」が追加されています。機能性表示緩和も、不当表示に対する監視にも、栄養成分の表示もすべて、これらの根拠資料をどのように管理するかといったトレーサビリティが重要になるでしょう。

例えば消費者庁から「この表示が優良誤認ではないか、表示内容を裏付ける合理的な根拠を提出してください」と連絡があると、15日以内に提出しなければ優良誤認表示とみなされてしまいます。製品レベルでの根拠が必要になるため、原材料が大きく変わる場合にはその都度、最新の製品において合理的な根拠といえるのか検討が必要になると思われます。

食品開発の場面では、これまで出番の少なかった機能性に関するエビデンス(製品レベルでの科学的根拠)であっても、保有しているということ自体が強みになっていく可能性があると考えられます。

また「どこでどんな表示をしているのか、その根拠はどこにあるのか」といったことを把握しておき、すぐに対応できるようトレーサビリティ体制を整えておくことも、品質保証業務の一環としてこれからも求められていくのではないかと考えています。


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栄養表示基準改正のポイント

2013年9月末に栄養表示基準の改正が行われ、表示の方法などが変更されましたので、今回は変更点について紹介いたします。

誤差の許容範囲の拡張


これまで、表示されている栄養成分量と実測値との間に認められる誤差は一律±20%(五大栄養成分の場合)とされていました。ただこの場合、含有量が少ない場合は、誤差の許容範囲も狭くなってしまうため、一部の栄養成分について、少含量の場合はパーセントによる許容範囲をやめ、絶対値(±○gなど)による許容範囲を追加する形となりました。これにより、誤差の許容範囲が拡大されることになります。

推定表示が認められる旨が追加


これまでも、計算上の値を記載することは可能でしたが、「実際に分析して得られた値」と「記載されている含有量」とが誤差の許容範囲を超えていた場合は不適正な表示となっていました。そのため、栄養表示を行う際は指定された分析方法で各栄養素の含有量を算出することを求められる場合が多く、その際に分析設備を持たない場合は外部の分析会社に委託する必要がありました。

ですが、今回の改正により、分析によって得られた数値の他、「合理的な推定により得られた値を記載することができる」ことが追加されるようになり、分析だけでなく文部科学省から出されている「五訂増補日本食品標準成分表」などをもとに計算によって得られた数値を記載することが広く可能となりました

 

推定値であることを記載する必要がある


必ずしも分析によって得られた数値でない場合でも記載が認められるようになりましたが、その際には栄養表示の近傍に分析値ではないことがわかるように
1.「推定値」
2.「この表示値は目安です。」
のいずれかの文言を含むことが必要となります。
(消費者への情報提供として、「日本食品標準成分表2010の計算による推定値」などと、設定根拠を併記しても差し支えありません。)

イメージ

栄養数値の根拠について


また、推定値による数値を記載する場合は、その数値を算出するに至った根拠
―例えば、計算値による推定値の場合は、
1. 採用した計算方法、
2. 引用したデータベースの名称、
3. 原材料について、配合量が重量で記載されたレシピ、
4. 原材料について、その栄養成分等の含有量を示す妥当な根拠に基づくデータ、
5. 調理加工工程表、
6. 調理加工前後における重量変化率に関するデータ―
を資料として保管する必要があり、たとえ推定値による数値算出が認められる場合においても、憶測や伝聞を根拠とした表示は認められないということになります。

 

栄養機能食品や栄養成分について強調表示を行う場合は推定値表示の対象外


1食中に栄養素が適切量含んでいるものとして、規定の機能性表示が認められる「栄養機能食品」や、「ビタミンCたっぷり」や「カロリーオフ」といったような特定の栄養成分について強調してパッケージに記載する場合は推定値による表示を認めておらず、これまで同様分析値による正確な値が求められる事になります。

今回の栄養表示の改正は、今後控えている栄養表示の義務化に関して、これまでに挙がっていた過剰な取り締まりや分析コストへの懸念に対応するためのものと思われます。

この改正に至るまでに、「本来食材個々の栄養にはばらつきがあり、悪意がなく良識の範囲で作成された表示については取り締まりの対象にすべきではない」という意見の一方で、「生活習慣病などの非感染性疾患予防の観点から、正確な表示値を確保する努力をすべきであり、断り書きをつけることで済ますことは適当ではない。」とする慎重意見もありました。どちらの意見も一概に間違っているものではなく、これを完全にルール化できるものでは無いと考えます。ただ、商品の特性から購入されるお客様の望まれる情報の提供であることを第一としてほしいと思います。


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一般の健康食品への「機能性表示」容認の議論の現状について

機能性食品

政府の規制改革会議「健康・医療ワーキンググループ」により、これまで機能性表示のできなかった「一般の健康食品についても、機能性表示を可能にする制度」の構築を進めている状況について、取り上げてみたいと思います。

背景としては、これまでのように「セルフメディケーション」といった考え方もあると思いますが、今回の規制緩和は「TPP参加をきっかけとする国際的な競争力の向上」もあると考えられます。食品表示の制度に関する議論では、栄養表示の義務化の方針が発表されたばかりですが、同時期に機能性表示に関する規制緩和の方針も発表されたことになり、関係者からは注目を集めている話題となっています。

現状の表示制度について


現状では「○○に効く」といった医薬品的な効能効果の表示ができるものは、医薬品の部類に限られ、食品とは明確に区別されています。

その食品のうち、保健の機能に関する表示ができるものを「特定保健用食品」、栄養の機能に関する表示ができるものを「栄養機能食品」とした制度があります(その他「特別用途食品」もあります)。

前者の特定保健用食品は、通称で「トクホ」と呼ばれるもので、例えば「おなかの調子を整える」等の表示が可能となる、主に個別審査による許可表示制度をとっています(一部成分では規格基準型、疾病リスク低減表示の可能なものもあります)。後者の栄養機能食品は、一定の成分において上限下限等の条件を満たせば「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」等と表示が可能となる、事業者の判断による規格基準型の制度をとっています。

ただしこれら対象成分は限られており、例えばグルコサミンやヒアルロン酸等の成分は現行制度には含まれていません。これらを「一般的な健康食品」と呼び、今後機能性表示を可能にする制度を構築しようとするものが、今回の議論です。

米国型の制度を参考に


規制改革会議の健康・医療ワーキンググループでは、「国際先端テスト」の参考資料として、主にアメリカの機能性表示制度と日本の制度との比較を重点においたものをもとに議論を進めています。アメリカの機能性表示制度では「ダイエタリーサプリメント」と呼ばれるものが、日本でいう特定保健用食品、栄養機能食品を包括した大きな概念で運用されています。

(日本の制度と比較すると、主なダイエタリーサプリメントでは
「1:対象の栄養成分の種類が多い(グルコサミン、ヒアルロン酸等も対象)」
「2:言及できる機能の範囲が広い(人の構造・機能への影響等)」
「3:科学的根拠を前提とした届出制(FDAの許可不要)」となっている点に特徴があります。

また健康の強調表示を行う際でも、エビデンスのレベルに応じた表示が可能であり、疾病リスク低減表示の対象成分が日本よりも多い制度となっています。本文末に規制改革会議で使用された議事録のURLを記載しますので、そちらの比較表を参照してみると分かりやすいと思います。)こうした海外の制度と日本の制度を比較し、今後の機能性表示制度を検討していくものと考えられます。

慎重論と今後の予定


規制緩和を望む人たちにはうれしいニュースとなるかと思いますが、やはり「健康食品への機能性表示拡大は時期尚早」と慎重論も多数存在し、一部反対の意見書を提出するなどの動きもあります。これらの根拠としては、参考とする米国型の制度にも課題はあり、結果として工場視察強化などの規制強化の動きにある点を強調しています。日本でも新しい機能性表示制度ができる際には、GMP(Good Manufacturing Practice)等の品質管理基準など、なんらか製造に関する基準への言及の可能性も考えられます。

また今後の予定ですが、消費者庁長官の記者会見(2013年8月28日)で「10月より大規模な消費者意識調査を実施」「どの程度の機能性表示を望んでいるのかということをしっかりと把握した上で考えていきたい」と発表されています。

また消費者庁の26年度予算「規制改革による経済再生のための一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備等に必要な経費」では、事業目的に「規制改革実施計画において実施することとされた食品の機能性表示の新たな方策、栄養機能食品の対象拡大等について調査、検討し、消費者にとって、自主的かつ合理的な商品選択に資する機能性表示制度を平成26年度中に実施することを目的とする」とありますので、実施の時期についても今後注視していく必要があると思います。

    

おもな参考資料一覧
規制改革会議 健康・医療ワーキング・グループ 第2回目議事録
世界(特に米国ダイエタリーサプリメント制度)とのギャップ
規制改革による経済再生のための一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備等に必要な経費
 平成25年行政事業レビューシート

阿南消費者庁長官記者会見要旨(平成25年8月28日(水))


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アレルギー表示推奨品目にカシューナッツとゴマ追加へ

2013Cashew

3年ごとの見直しの一環として


5月30日、消費者庁がアレルギー表示の推奨品目に、カシューナッツとゴマを追加する方針を固めたと報道がありました。もともとアレルギー物質を含む食品表示については、概ね3年に1度、食物アレルギーによる健康被害の実態調査を行い、その結果のうえで表示制度を見直していることが背景にあります。前回は平成20年度に、「えび」「かに」の表示義務品目への追加(推奨からの格上げ)がありました。これで義務7品目、推奨20品目の計27品目の表示対象となる見込みです。

義務表示(7品目) 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
推奨表示(18品目)
(通知により表示を推奨)
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

即時型食物アレルギーに関する試験検査


今回の委員会では、『平成24年度食品表示に関する試験検査「即時型食物アレルギーによる健康被害、及びアレルギー物質を含む食品に関する試験検査」』をもとに議論がされました。

この調査報告書は、アレルギーを専門とする医師(日本アレルギー学会指導医および専門医、日本小児アレルギー学会会員の中で調査の主旨に賛同をえられたもの(平成22年度1079名))が、調査対象として「何らかの食物を摂取後60分以内に症状が出現し、かつ医療機関を受診したもの」2954例(平成23年)を研究したものです。

調査結果から原因食物とショック誘発頻度を上位から並べたところ、現在の義務表示7品目と推奨表示18品目合計で82?93%を占めているとされています。
ここで「原因食物上位でカバーされていない食品は、カシューナッツ(全体に占める割合0.6%)、ゴマ(0.4%)、またショック症例においては、カシューナッツ(ショック症例に占める割合1.6%)」として、カシューナッツとゴマについては表示の検討をすべきという報告となり、今回の委員会で表示対象追加の運びとなったようです。

原因食物およびショック誘発食物の頻度
原因食物およびショック誘発食物の頻度

(また同時に甘味料の摂取によるアレルギー調査の結果も報告されていました。結果ではエリスリトール15例、キシリトール10例、ステビア2例などが即時型アレルギーの健康被害の疑いがあるとされています。キシリトールとステビアは添加物なので物質名の表示が必要であることから、食品表示に対する影響は今後も少ないとみられます。エリスリトールは食品ですので、ごく微量の使用で表示を省略している場合は、今後の発表を見守る必要があるかと思います。)

時期、経過措置等は今後検討


こうした経緯で「カシューナッツとゴマ」推奨表示対象化の方向性が決まったとされています。気になる時期についてですが、公開された議事録では通知時期に関しては明記されていません。施行から1年もしくは2年の経過措置を経て、正式に運用となるのが通例ですが、通知以前に事業者側に必要な準備を検討すると思われます。今回はえび・かに(元々推奨だったものを義務に格上げ)とは異なり、元々資料に含まれていない物質の追加ですので、通知までにある程度時間がかかる可能性もあるかと思います。

例えば代替表記と認められる複合原材料などの範囲の検討です。代替表記とは、例えば「醤油」のみの表記で大豆表記の代わりになる、「マヨネーズ」のみの表記で卵表記の代わりになる、といったものをまとめたルールです。

また添加物中に含まれるアレルギー物質の一覧表(「特定原材料等由来の食品添加物についての表示例」)もそうです。例えば「レシチン」などは大豆由来であることも多いのですが、その文字外見だけからはアレルギー物質由来かどうかが判断しづらいものです。こうしたものをまとめた一覧表についても、カシューナッツやごまを反映されたものが発表されると思います。

実務上での大切なポイント


カシューナッツやゴマを含む複合原材料、またそれらを由来とする添加物が少ないようであれば、意外と早く通知自体があるかもしれません。そのため、起こりうる変化を早めに察知しておきたいものです。

まずは、現在の規格書中から情報を遡って、「カシューナッツ」「ゴマ」が使用されている原料や商品がどの程度あるかを、把握しておく必要があると思います。

また海外サプライヤーから原料を輸入している場合は、多くの場合「ナッツ類」と情報を受け取っていると思います。これまでは「ナッツ類に”くるみ”は含まれるか」の確認ですみましたが、ここに「カシューナッツ」を追加してヒアリングする必要があると思います。

もしも推奨品目含め特定原材料は使わない、という商品開発ポリシーであれば、原料変更など商品開発自体に関わる問題については、早めに対応しておく必要があります。

次にシステム面の見直しです。
情報を管理する規格書等に、アレルギー物質として最大25品目までの登録しかできないフォーマットであれば、これを変更することも検討が必要です。

デザイン上ですでにアレルゲンテーブルなどを使って25品目すべてを表記している場合は、こちらのスペース確保も検討が必要になると思います。またすでにホームページやカタログ等で消費者向けにアレルギー物質を含む商品一覧表などの情報を提供している会社は、これらの修正を検討する時間も確保が必要です。

そして正式な通知があれば、消費者庁等から先ほどの「代替表記」「特定原材料由来の添加物」などの周辺情報も発表されると思います。例えば「芝麻醤」はゴマとしての代替表記が可能なのか、などといった問題もここで確認できるようになると思います。


長くなりましたが、私は表示には賛成です。アレルギーというのは、当事者の立場で考えると大変な問題です。推奨とはいえ、今は多くの事業者が情報開示しているので、該当のアレルギーを持つ方にはよい知らせではないかと思います。ただ私も、商品開発側や品質保証側の苦労も同時に味わうことになりますので、また大変な作業が増えそうだな・・・という気持ちもあります。

いずれにしてもこうした制度見直し自体が、商品の見直しの契機にもなりますので、よりよい商品づくりに応用できるきっかけになれば、と思います。

追記

アレルギーのカシューナッツとゴマの追加については、
2013年9月20日消費者庁より正式発表され、猶予期間は2014年8月31日まででした。


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