政府の規制改革会議「健康・医療ワーキンググループ」により、これまで機能性表示のできなかった「一般の健康食品についても、機能性表示を可能にする制度」の構築を進めている状況について、取り上げてみたいと思います。
背景としては、これまでのように「セルフメディケーション」といった考え方もあると思いますが、今回の規制緩和は「TPP参加をきっかけとする国際的な競争力の向上」もあると考えられます。食品表示の制度に関する議論では、栄養表示の義務化の方針が発表されたばかりですが、同時期に機能性表示に関する規制緩和の方針も発表されたことになり、関係者からは注目を集めている話題となっています。
現状の表示制度について
現状では「○○に効く」といった医薬品的な効能効果の表示ができるものは、医薬品の部類に限られ、食品とは明確に区別されています。
その食品のうち、保健の機能に関する表示ができるものを「特定保健用食品」、栄養の機能に関する表示ができるものを「栄養機能食品」とした制度があります(その他「特別用途食品」もあります)。
前者の特定保健用食品は、通称で「トクホ」と呼ばれるもので、例えば「おなかの調子を整える」等の表示が可能となる、主に個別審査による許可表示制度をとっています(一部成分では規格基準型、疾病リスク低減表示の可能なものもあります)。後者の栄養機能食品は、一定の成分において上限下限等の条件を満たせば「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」等と表示が可能となる、事業者の判断による規格基準型の制度をとっています。
ただしこれら対象成分は限られており、例えばグルコサミンやヒアルロン酸等の成分は現行制度には含まれていません。これらを「一般的な健康食品」と呼び、今後機能性表示を可能にする制度を構築しようとするものが、今回の議論です。
米国型の制度を参考に
規制改革会議の健康・医療ワーキンググループでは、「国際先端テスト」の参考資料として、主にアメリカの機能性表示制度と日本の制度との比較を重点においたものをもとに議論を進めています。アメリカの機能性表示制度では「ダイエタリーサプリメント」と呼ばれるものが、日本でいう特定保健用食品、栄養機能食品を包括した大きな概念で運用されています。
(日本の制度と比較すると、主なダイエタリーサプリメントでは
「1:対象の栄養成分の種類が多い(グルコサミン、ヒアルロン酸等も対象)」
「2:言及できる機能の範囲が広い(人の構造・機能への影響等)」
「3:科学的根拠を前提とした届出制(FDAの許可不要)」となっている点に特徴があります。
また健康の強調表示を行う際でも、エビデンスのレベルに応じた表示が可能であり、疾病リスク低減表示の対象成分が日本よりも多い制度となっています。本文末に規制改革会議で使用された議事録のURLを記載しますので、そちらの比較表を参照してみると分かりやすいと思います。)こうした海外の制度と日本の制度を比較し、今後の機能性表示制度を検討していくものと考えられます。
慎重論と今後の予定
規制緩和を望む人たちにはうれしいニュースとなるかと思いますが、やはり「健康食品への機能性表示拡大は時期尚早」と慎重論も多数存在し、一部反対の意見書を提出するなどの動きもあります。これらの根拠としては、参考とする米国型の制度にも課題はあり、結果として工場視察強化などの規制強化の動きにある点を強調しています。日本でも新しい機能性表示制度ができる際には、GMP(Good Manufacturing Practice)等の品質管理基準など、なんらか製造に関する基準への言及の可能性も考えられます。
また今後の予定ですが、消費者庁長官の記者会見(2013年8月28日)で「10月より大規模な消費者意識調査を実施」「どの程度の機能性表示を望んでいるのかということをしっかりと把握した上で考えていきたい」と発表されています。
また消費者庁の26年度予算「規制改革による経済再生のための一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備等に必要な経費」では、事業目的に「規制改革実施計画において実施することとされた食品の機能性表示の新たな方策、栄養機能食品の対象拡大等について調査、検討し、消費者にとって、自主的かつ合理的な商品選択に資する機能性表示制度を平成26年度中に実施することを目的とする」とありますので、実施の時期についても今後注視していく必要があると思います。
おもな参考資料一覧
・規制改革会議 健康・医療ワーキング・グループ 第2回目議事録
・世界(特に米国ダイエタリーサプリメント制度)とのギャップ
・規制改革による経済再生のための一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備等に必要な経費
平成25年行政事業レビューシート
・阿南消費者庁長官記者会見要旨(平成25年8月28日(水))
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