2022年3月に公表された「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の経過措置期間が、2024年3月末に終了しました。最近では、売り場に並ぶ商品にも少しずつ変化がみられてきたと感じています。そこで今回は、添加物不使用表示を含む「強調表示」と輸出入について、実務上の注意点や課題をこちらにまとめてみたいと思います。(本稿は2024年4月11日『アヌーガ・セレクト・ジャパン2024』内で講演内容の一部をまとめたものです。)
様々な強調表示と不使用表示
食品の強調表示には様々な種類がありますが、制度上では主に保健関連(栄養、機能など含まれる成分に関するもの)と品質関連(天然、自然など使用する原材料に関するもの)の2つに分類することができます。またその他の分け方として、例えば使用している、含んでいる、または増やした等の足し算のような強調表示と、使用していない、含んでいない、または減らした等の引き算のような強調表示に分類することもできると思います。
そして近年で増えているのは、『添加物不使用』と『糖類不使用』といった引き算のような強調表示といえます。本来、「使用される原材料を強調するもの」に比べて、「含まれる成分を強調するもの」については、外部関係者からは気づきにくいといった課題があります。そして引き算型の強調表示は「含まれていないか」だけではなく「代わりとなる原材料は使用されていないか(または成分が含まれていないか)」などの確認が必要となります。さらに輸出入においては、「不使用とする原材料に代わる原材料は、対象国(または日本)で使用できるか」まで確認しなければならない場合があります。
強調表示に関わる原材料の使用基準を確認
日本と同じく多くの国で、添加物や原材料の使用基準(用途、使用量等)が定められています。例えば「乳酸カルシウム」を使用した「果汁入り飲料」に『カルシウム豊富』と表示する、足し算型の強調表示について考えてみましょう。手順としては、①対象国(または日本)で「果汁入り飲料」に該当するか(食品規格確認)、②「果汁入り飲料」に「乳酸カルシウム」は使用できるか(使用基準確認)、③「カルシウム豊富」と表示できるか(表示基準確認)、といった流れで事前調査をします。このように商品特徴に直結する原材料や添加物の存在が分かりやすい場合は、輸出入業者など製造者以外の関係者の間でもチェックがしやすく、早い段階での確認がされやすいといえます。
これに対して、例えば『甘味料不使用』といった引き算型の強調表示の場合には、上記でいう②の手順で使用基準を確認すべき原材料が存在しないことになります。このような商品は甘味料に代わる成分を含む原材料(多くの場合は添加物に該当しない食品素材)で補っている場合があるのですが、「甘味料の代わりに〇〇を使用しています」等の表示がない限りは、商品特徴に直結する原材料や添加物の存在に気づいてもらうのが難しく、輸出入の直前になって確認に追われることがあります。
そしてこれらの原材料や添加物が使用できない場合は、単に『〇〇豊富』や『〇〇不使用』の表示をしなければよいという話にはなりにくく、やはり初期の段階で確認することが大切といえます。
その他、日本では『糖類不使用』と表示できる場合でも、食品に由来する糖類が含まれる場合には「天然に存在する糖類を含む」と表示する必要がある国や地域もあります。また表示基準上の「糖類」の定義も、各国で同じとは限りません(特に「糖質」については注意が必要です)。
輸出入をする場合には、互いの国の制度における用語の定義をはじめ、慎重に確認をしなければならない点は、その他の重要な表示事項と同様です。対象国で強調表示ができるかも大切ですが、その表示に関わる原材料や添加物が使用できるか(または含んでよいか)、早い段階で確認することが大切といえるでしょう。
メールマガジン配信登録
こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。
関連サービス
【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。
【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。