Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

くるみ義務化の答申、経過措置期間は令和7年3月31日まで~その他、今後の改正情報と経過措置期間まとめ~


 食品表示基準の一部改正(くるみの義務化等)について諮問されていた改正案に対し、2022年12月13日付で改正案のとおりとする答申がされました。答申書によると、くるみの義務化の経過措置期間は令和7年(2025年)3月31日とされています。一部改正は近く公布、施行される見込みですが、今回の改正を機に、今年を含む数年間の食品表示制度改正と経過措置期間について整理してみたいと思います。

各改正の経過措置期間について


 食品表示制度に関する主な改正と経過措置期間について、前後数年のものをまとめると以下のようになります。既に経過措置期間が終了しているもの、経過措置期間終了までわずかなものもありますので、あらためて確認していただければと思います。

主な改正 経過措置期間
新たな原料原産地表示 2022年3月末に経過措置期間終了(済)
添加物表示(人工・合成の削除) 2022年3月末に経過措置期間終了(済)
“遺伝子組換えでない”表示 2023年3月末に経過措置期間終了
添加物不使用表示ガイドライン 2024年3月末に経過措置期間終了
くるみのアレルゲン表示義務化 2025年3月末に経過措置期間終了

 なお、2022年12月13日付で答申された食品表示基準一部改正には、「特定遺伝子組換え農産物へのEPA・DHA産生なたねの追加」も含まれます。その他、2022年12月に「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項改定」がありました。

“遺伝子組換えでない”表示


 2019年4月に、主に以下の2点について改正されたものです。

  • “遺伝子組換えでない”表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に厳格化する。
  • 5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができる。

 最大5%混入しているにもかかわらず、“遺伝子組換えでない“表示を可能としていることは誤認を招く等の意見をもとに、誤認防止等の観点により改正された経緯があります。

 改正による主な注意点は、2023年4月1日以降、「遺伝子組換えでない」旨の表示は、適切に分別流通管理を行った上で、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる大豆・とうもろこし及びこれらを原材料とする加工食品に限り、表示することができるようになる点です。

 例えばこれまで「大豆(遺伝子組換えでない)」と表示していたところ、遺伝子組換え大豆が混入しないように、適切に分別生産流通管理が行われた大豆を原材料としている場合は、「大豆(分別生産流通管理済み)」や「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」などの「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の表示に変更しているケースがみられます。

添加物不使用表示ガイドライン


 2022年3月に、注意すべき食品添加物の不使用表示として10の類型が公表されたものです。

類型1:単なる「無添加」の表示
類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
類型6:健康、安全と関連付ける表示
類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
類型 10:過度に強調された表示

 現状の曖昧な食品表示基準Q&Aを基に「無添加」等の表示を事業者が任意で行っていることが、消費者意向調査において一部の消費者が「無添加」等の表示を理解していない結果が得られた理由の一つとも考えられる等の意見をもとに、ガイドラインの策定に至った経緯があります。

 ガイドラインによる主な注意点は、各類型の例に当てはまることだけではなく、商品の性質等などを基にケースバイケースで全体として、表示禁止事項に該当すると判断される場合がある点といえます。

 ガイドラインを補足する情報として、2022年6月に消費者庁より「啓発チラシ・ポスター」(途中修正あり)と「10類型イラスト」が公表されていますので、あわせて参考にされるとよいと思います。

くるみのアレルゲン表示義務化


 2022年12月13日付で答申された食品表示基準の一部改正により、別表第十四にくるみが追加されるものです。

別表第十四(改正前) 別表第十四(改正後)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

 平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書において、くるみを筆頭に木の実類の即時型アレルギーの健康被害が大幅に増加していると報告されたこと等を受け、改正に至った経緯があります。

 なお、その後の令和3年度の調査においてもさらに症例数が増えている背景があります。

原因食物 区分 平成24年度 平成27年度 平成30年度 令和3年度
くるみ 即時型症例数 40 74 251 463
ショック症例数 4 7 42 58

 以上、現状でいくつかある食品表示制度改正とその経過措置期間について整理をしてみました。とりわけアレルゲンの“くるみ“については、上記のような背景があることから、これまでの義務表示7品目のみを表示している商品のうち、アレルゲンとして“くるみ”を含むものについては、できるだけ早く対応することが必要といえるでしょう。
 また今後、食品表示に関する新しい改正情報などがあれば、こちらで取り上げるようにしたいと思います。

参照:
答申書(食品表示基準の一部改正について)


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地理的表示保護制度の運用見直しについて


 2022年11月1日、農林水産省より「地理的表示保護制度の運用見直し」が公表されました。地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度とは、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因・環境の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。世界では既に100ヶ国以上で導入されており、日本では2015年から導入されました。

地理的表示とは


 市田柿を例にすると、「産品(生産地、特性)」と表示の関係は以下のようになります。

産品 地理的表示
生産地 特性
・下伊那郡高森町(旧市田村)が発祥の「市田柿」のみを使用
・昼夜の寒暖差が大きいため、高糖度の原料柿ができる
・晩秋から初冬にかけて川霧が発生し干柿の生産に絶好の温度と湿度が整う
・じっくりとした「干し上げ」、しっかりとした揉み込み
・「市田柿」は特別に糖度が高い
・もっちりとした食感
・きれいな飴色
・小ぶりで食べやすい
・表面を覆うキメ細かな白い粉化粧
市田柿

 地理的表示(GI)は、生産者団体が産品について登録を受け、構成員が使用する形式をとります。登録内容は明細書に記載され、構成員が行う生産が適合して行われるよう指導等が実施されます。また登録された地理的表示が不正使用された場合には、行政が取り締るのも特徴の1つです。

 例えばスペインのレストランにおいて、南米産牛肉のメニューに、「TROPICAL KOBE BEEF」と表示している例や、ドイツのスーパーにおいて、NZ産和牛に「Wagyu “Kobe-Style”」と表示している事例等を確認した場合、欧州との相互保護の枠組の下、EU当局等に適切な措置を執るよう要請し、当局からの指導の上、削除されます。

 これまで他産品よりも優位な品質、厳しい生産行程管理を重視する運用と、模倣品排除を通じた産品のブランド強化等に貢献してきた反面、こうした運用が徐々に厳格化していった結果、GI産品は他産品との品質差を証明し易く、地域でまとまり易い小規模・地場の伝統野菜等に偏った経緯があります。

運用見直しの概要について


 そこで2022年11月1日より、GI制度の運用を見直すことになりました。これまでの地域の伝統野菜だけでなく、加工品、海外志向の産品まで、多様な産品の登録につながるよう間口を広げ、輸出促進を更に後押しする狙いがあります。

 運用見直しの概要は以下のとおりです。

1 審査基準の見直し ・差別化された品質がなくとも、地域における自然的・人文的・社会的な要因・環境の中で育まれてきた品質、製法、評判、ものがたり等のその産品独自の多彩な特性を評価する審査を推進
・知名度なども考慮し、生産実績が25年に満たなくとも、登録の可否を弾力的に判断
2 登録前後における手続の見直し ・GI産品と信頼して購入した需要者の利益を毀損しない、GI真正品について、名称の統一が申請への合意形成の支障とならないよう、登録名称を分断する名称の継続使用を可能に(「霞ヶ関りんご」が登録された場合の「霞ヶ関○○りんご」)
・生産者の遵守事項の簡素化を推進。生産行程管理業務も、年1回の実績報告書を廃止し、最終製品ではなく、生産の手順・体制をチェックする方法へ
3 GIの市場における露出の拡大 ・GIマークを、GI産品の加工品に使用する場合のルールを明確化
・GIマークも効果的に活用し、外食、食品、観光などの他業種とのコラボ商品・コラボサービスの開発・提供を推進

 加工品が過半を占め、輸出も多い欧州のGI制度では、他産品との優劣ではなく、地域と結び付いたその産品独自の魅力や強みが評価されます。こうした海外の制度を参考に審査基準を見直しつつ、手続きの簡素化等を推進することにより制度利用の拡大を図る考えです。

食品表示と今後について


 今回の運用見直しは、食品表示実務そのものには大きな影響はありません。日本の登録GI(120産品)と、日本で保護される外国GI(109産品)に注意する点は、これまで同様です。
(※農林水産省「日本における海外のGI保護」→「指定産品一覧」より確認できます。例:Grana Padanoグラナ パダーノ(ナチュラルチーズ))
 一方で、日本から海外へ食品を輸出される方には、まずはGI制度自体について、改めて確認する機会にしていただければと思います。なおEUにおいても「持続可能性」をGI表示の要件とするなどの見直し案が検討されていますので、こうした現在の動向と合わせて確認されておかれるとよいと思います。

参照:
地理的表示保護制度の運用見直し(農林水産省)
指定産品一覧(日本における海外のGI保護)(農林水産省)
Commission strengthens geographical indications to preserve high quality and reinforce protection(EU)


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食品表示基準の一部改正案に関する意見募集が始まりました~くるみの特定原材料追加と特定遺伝子組換え農産物へのEPA・DHA産生なたねの追加~

 2022年10月13日、消費者庁は「食品表示基準の一部改正案」に関する意見募集(パブリックコメント)の開始を公表しました。意見募集の受付締切は11月12日です。

改正の概要


 意見募集要領によると、改正案の概要は以下のとおりです。

  1. アレルギー原因物質を含む食品である「くるみ」については、現在、表示を推奨する品目としているが、即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査の結果等から表示が必要との方針を得たため、アレルギー表示の対象品目である特定原材料として「くるみ」を追加することとする。
  2. 今後、厚生労働省による安全性審査を経て、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を産生させるために遺伝子組換えが行われたなたねに由来する食品が国内に流通することが見込まれることから、遺伝子組換え表示制度における特定遺伝子組換え農産物としての表示の対象に当該なたねを追加することとする。

アレルゲンの義務表示品目の改正


 アレルゲンの表示事項は、「特定原材料を原材料とする加工食品(当該加工食品を原材料とするものを含み、抗原性が認められないものを除く)及び特定原材料に由来する添加物(抗原性が認められないもの及び香料を除く)を含む食品」において必要となりますが、この特定原材料を定めている別表第十四が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十四(改正前) 別表第十四(改正後)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

 くるみはこれまで「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨する品目とされていましたが、表示を義務とする品目に移行する形となります。

EPA・DHA産生なたねの追加について


 遺伝子組換え食品に関する事項は、「別表第十七(対象農産物と加工食品)及び別表第十八(対象形質と加工食品)」の対象において必要となりますが、そのうちの形質を定めている別表第十八が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十八(改正前)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし

別表第十八(改正後)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし
エイコサペンタエン酸(EPA)産生 1 なたねを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
なたね
ドコサヘキサエン酸(DHA)産生

 なたねは別表第十七に対象農産物として掲げられているものの、加工食品については設定がされていません。今回の改正により、「なたねを主な原材料とするもの(及び、これを主な原材料とするもの)」に該当するものについては、形質(EPA・DHA産生)の確認が必要になります。

今後について


 意見募集の改正案では、別表第十四(アレルゲン表示)に関する施行期日と経過措置期間は未定となっております。

(施行期日)
第一条 この府令は、公布の日から施行する。ただし、別表第十四の改正規定は、令和○年○月○日から施行する。
(経過措置)
第二条 前条ただし書に規定する改正規定の施行の日から令和○年○月○日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、当該改正規定による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 

2022年12月13日、改正案に対する答申が公表されました。経過措置期間は2025年3月31日までです。

(施行期日)第一条 この府令は、公布の日から施行する。
(経過措置)第二条 この府令の施行の日から令和七年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、この府令による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 現状でアレルゲン表示が7品目のみを対象としている場合は、新たに表示を追加するために原材料規格書の段階から確認が必要になると思います。とりわけ、輸入食品や輸入原材料を取り扱っている場合は、くるみが含まれるかどうかを慎重に確認する必要がある(多くの国では「ナッツ」と一括で管理しているため)といえます。

 くるみは、症例数の増加といった背景を受けての改正です。経過措置期間であっても、消費者からの問い合わせには対応できるよう、原材料規格書などの情報管理について改めて確認することが大切だといえるでしょう。


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「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」の日本農林規格が制定されました

【2022年11月10日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年9月6日に公表された「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」JAS規格をはじめ、「プラントベース食品(代替肉、代替乳等)」の表示とこれに関連する「クリーンラベル(天然、添加物不使用、遺伝子組換え不使用等)」について日本の関連基準を整理のうえ、海外各国の動向についてお伝えします。

 2022年9月6日、ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2021年5月頃にJAS規格化に向けた検討(検討主体:認定特定非営利活動法人 日本ベジタリアン協会)を開始し、その後2022年6月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「ヴィーガンに適した加工食品」の4食品の要件が定義されています。

各食品の基準(箇条4)


 同規格より、各食品の定義を整理すると以下のようになります。

  卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
4a)   ・動物由来の 1 次原料及び2 次原料(2 次原料における加工助剤については、動物の骨炭及び甲殻類から得られるキトサンに限る。)を用いてはならない。
・ただし、1 次原料及び 2 次原料に限らず、いかなる段階における原材料及び添加物について、動物由来であることが当該原材料及び添加物の名称等から容易に判断される場合にあっては、当該原材料及び添加物を用いてはならない。
動物由来のうち、用いることのできる原材料 動物の卵又はその加工食品

×

×

動物の乳又はその加工食品

×

×

蜂蜜又は蜜蜂製品(蜜ろう、プロポリス等)

×

ラノリンを含む羊毛脂

×

4b)

上記食品に関するいかなる動物試験も製造業者等によって実施されていてはならない。
※「〇」の箇所は、その成分又はその派生物を含む

原料受入及び保管、製造について(箇条5)


 同規格より、生産行程管理に関する基準を整理すると以下のようになります。

 

卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
1次原料の受入れ及び保管 調達した1次原料の受入れ時に、各食品の4a)を満たしていることの根拠を入手し、4a)を満たしていない原材料及び添加物と混合しないよう区分して管理されなければならない。
製造 ・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入を防止するため、適切な予防処置が講じられていなければならない。
・各食品に適さない原材料又はこれを使用した加工食品を揚げた油が使用されていてはならない。
・各食品に適した加工食品の製造ラインが、各食品に適さない加工食品の製造と共用である場合は、各食品に適した加工食品の製造開始前に十分な洗浄が行われていなければならない。これは、関連する機械、機器、用具及び原材料が接触するあらゆる表面にも適用される。

表示について(箇条6)


 同規格より、表示に関する基準を整理すると以下のようになります。

用語

“卵・乳製品摂食ベジタリアン”

“卵摂食ベジタリアン”

“乳製品摂食ベジタリアン”

“ヴィーガン”
“ベジタリアン”
表示事項 ・上記の用語を表示する場合は、箇条4(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品に関する基準)及び箇条5(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の生産行程管理に関する基準)の該当する要求事項を満たさなければならない。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性がある場合であっても、適切な予防処置が講じられた場合には、上記の用語を表示してよい。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性に基づくアレルゲンの注意喚起を表示する場合であっても、上記の用語を表示してよい。
表示方法 上記の用語を表示する場合は、動物由来の類似の加工食品との区別を容易にするため、加工食品の商品名と同じ視野に入るように表示しなければならない。
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)
※これらに類似する意味の用語を含む

今後の国際的な動向にも注視


 なお、2021年3月にベジタリアン又はヴィーガンに適した食品の国際規格(ISO 23662:Definitions and technical criteria for foods and food ingredients suitable for vegetarians or vegans and for labelling and claims)が発行されており、今回のJAS規格制定の参考となっています。
 一方で「プラントベース」、「プラントベースドフード」などの用語については、パブリックコメントの結果において、「国内にも国際的にも定義が存在しておらず、今後の国際的な動向も注視し対応する」とされています。ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品に関する用語はもとより、プラントベース(植物由来)など関連する用語の表示を検討する際にも、まずは今回のJAS規格から確認されるとよいでしょう。

現時点での参考情報として、「プラントベース食品等の表示に関するQ&A(消費者庁)」では、「本Q&Aでいう「プラントベース(植物由来)食品」とは、主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない。)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品をいいます。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含めることとします。」とされています。

【2022年11月10日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年9月6日に公表された「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」JAS規格をはじめ、「プラントベース食品(代替肉、代替乳等)」の表示とこれに関連する「クリーンラベル(天然、添加物不使用、遺伝子組換え不使用等)」について日本の関連基準を整理のうえ、海外各国の動向についてお伝えします。


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「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)の意見募集が開始されました。


 2022年8月9日、消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)を作成し公表しました。また同日より9月7日まで、パブリックコメントにて意見を募集しています。一部改定の目的は、「本留意事項の全部改定から年数が経過し、景品表示法及び健康増進法上問題となるおそれの表示への考え方について、より明示的に示すことにより、事業者の適正な広告活動に資するものとする」とされています。以下に、主な改定内容の部分について引用してみたいと思います。

主な改定について(新旧対照表より)


1) 改正により修正または補足されたもの(一部を抜粋)(赤文字下線が改定箇所)

◆明らか食品について、本留意事項の対象となる旨の追記
健康増進法第65条第1項は、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物1に関し、健康保持増進効果等について虚偽誇大な表示をすることを禁止している。

◆「表示」の該当性に係る留意点を補足
・特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に記載された問合せ先に連絡した一般消費者に対し、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する情報が掲載された冊子とともに、特定の商品に関する情報が掲載された冊子や当該商品の無料サンプルが提供されるなど、それら複数の広告等が一体となって当該商品自体の購入を誘引していると認められるとき、
・ 特定の食品や成分の名称を商品名やブランド名とすることなどにより、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に接した一般消費者に特定の商品を想起させるような事情が認められるとき

◆アフィリエイト広告の表示主体性に係る留意点を補足
このようなアフィリエイトサイト上の表示について、広告主がその表示内容を具体的に認識していない場合であっても、広告主自らが表示内容を決定することができるにもかかわらず他の者であるアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合など、表示内容の決定に関与したと評価される場合には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。(中略)必要がある。

2) 改正により新規に追加されたもの(一部を抜粋)

◆健康の保持増進効果に係る例示の追加
(1) 「健康の保持増進の効果」
ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果:「コロナウイルスの予防に」、「認知症予防」の追加
イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果:「アンチエイジング」、「細胞の活性化」、等の追加
ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果:「体脂肪を減らすのを助ける」等の追加
エ 栄養成分の効果:「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」の追加
(3) 「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
「妊活」、「腸活」、「スリム○○」、「減脂〇〇」、「デトックス○○」、「カラダにたまった余分なものをスッキリ」の追加
エ 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの
「最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。」、等の追加

◆表示された効果と実証された内容が適切に対応していない例示を追記
例:痩身効果を標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、内臓脂肪や体重の減少について、実証された内容と表示された効果が著しく乖離していた。
例:特段の運動や食事制限をすることなく摂取するだけで痩身効果が得られることを標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、ヒト試験の被験者に対して運動や食事制限の介入指導が行われていた。等の追加

◆機能性表示食品事後チェック指針の広告パートの考え方を追記
(2) 機能性表示食品
ア 届出内容を超える表示
例:届出表示の内容が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける機能性がある。」であるにもかかわらず、表示全体から、あたかも、特段の運動や食事制限をすることなく、誰でも容易に腹部の痩身効果が得られるかのように表示すること
エ 表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている場合
なお、機能性表示食品については、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」に景品表示法上問題となるおそれのある広告その他の表示として虚偽誇大表示等に当たるおそれのある考え方が詳細に示されているので、参照されたい。

◆「健康保持増進効果等」の例示を追記
2 保健機能食品以外の健康食品(いわゆる健康食品)において問題となる表示例
(1) 解消に至らない身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項等の例示
健康食品が有する健康保持増進効果等では解消に至らない疾病症状のような身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示すること(中略)。また、健康食品が有する健康保持増進効果等ではおよそ得られない身体の組織機能等の変化をイラストや写真を用いることなどにより表示すること(中略)。
(4) 最上級又はこれに類する表現を用いている場合
(中略)例えば「ダイエット部門売上No.1」、「顧客満足度ランキング第1位」などと強調する表示(いわゆる「No.1表示」)が行われることがあるが、その商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかないなど、事実と異なる場合(中略)。
(5) 体験談の使用方法が不適切な表示(赤文字下線部分の追加)
また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合(中略)。

◆打消し表示に係る留意点を補足
体験談において健康食品の効果に言及されている場合において、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における①体験者の数及びその属性、②そのうち体験談と同じような効果が得られた者が占める割合、③体験者と同じような効果が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示することが推奨される。

今後の予定について


 2022年9月7日までの意見募集期間ののち、結果の公示を経て、12月1日には公表される予定です。健康や機能性に関する強調表示をされている食品を取り扱いの方には重要な改定になると思われます。まずは意見募集の一部改定案について、事前に確認しておかれるとよいと思います。


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「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターが発表されました


 先月のことではありますが、消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターを同庁ウェブサイト上で発表しています。合わせて「10類型イラスト」も掲載されていますので、今回のコラムはこれらを取り上げてみたいと思います。

 啓発チラシ・ポスターは、2022年6月22日に発表されています。消費者向けに作成されたものではありますが、具体的な表示例もあることから、食品を製造する方にとっても同ガイドラインの理解に役立つと言えると思います。ただし、この啓発チラシ・ポスターには「片面」版と「両面」版の2種類があり、使用されているイラストの内容に少し違いがあります。まずは記載された3つの例より分かることを整理したいと思います。

啓発チラシ・ポスター(片面)

啓発チラシ・ポスター(片面)


啓発チラシ・ポスター(両面)

啓発チラシ・ポスター(両面)

  1. いちごジュースの例
    • 何を添加していないのかが不明確な場合は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、着色料や着色料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、「着色料無添加」等と表示できる。(ただし、クランベリー抽出エキスなどは「着色料と類似機能をもつ原材料」に該当する。)
    • 例2として、『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』等と表示できる。
  2. ドーナツの例
    • 人工甘味料不使用の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、甘味料や甘味料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『甘味料不使用』等と表示できる。(ただし、カンゾウ抽出物などは「甘味料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』等と表示できる。
  3. おにぎりの例
    • 酸化防止剤を使用した食品に「保存料無添加」の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、保存料や保存料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『保存料無添加』等と表示できる。(ただし、酸化防止剤やpH調整剤などは「保存料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『保存効果を持たせるため、酸化防止剤を使用しています』等と表示できる。

 なお、この啓発チラシ・ポスター内では、例1(不使用表示)と例2(同一機能・類似機能を有する原材料又は食品添加物)が共に明示される可能性までは言及されていません。

 2022年11月頃、啓発チラシ・ポシターの内容に修正がありました。主な修正点は、以下のとおりです。

  • いちごジュース 例2『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』を削除
  • ドーナツ 例2『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』を削除
  • おにぎりから「※酸化防止剤やpH調整剤など」を削除

 次に、「10類型イラスト」の資料にも具体例が掲載されているものがありますので、こちらに抜粋してみたいと思います。


 おにぎりの例では、「日持ち向上効果が期待されるグリシンが使用されている」食品に、「保存料無添加」と表示することは、類型4(同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示)に該当するとされています。ガイドラインの説明では『日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示』のみであったことから、具体的な例としてグリシンについては注意が必要である(保存料と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 また白だしの例では、「アミノ酸が主成分である酵母エキスが使用されている」食品に、「調味料(アミノ酸等)無添加」と表示することは、類型5(同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示)に該当することが分かります。ガイドラインの説明では『原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示』のみであったことから、具体的な例として酵母エキスについては注意が必要である(調味料(アミノ酸等)と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 啓発チラシ・ポスターや「10類型イラスト」より、添加物不使用に関する表示をしようとする際に注意すべきポイントは「何が無添加なのか、何が使われているのかを明確にする」ことであるといえます。今後の表示の見直しに向け、以下の参照URLより一度確認されておかれるとよいと思います。


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“くるみ”のアレルゲン表示、推奨から義務化への動きについて(その2)~令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書~


 2022年6月6日に開催された第67回消費者委員会食品表示部会において、”くるみ”のアレルゲン表示の義務化についての見通しが発表されました。また、その背景となった「令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書」について、あわせて取り上げてみたいと思います。

ポイント

  • 今回調査(2020年)より、木の実類が小麦を抜いて主要3大原因食物の1つとなった
  • 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している
  • くるみを義務表示対象品目へ指定する改正案は、今年度内に諮問される見通し

これまでの経緯について


 消費者庁が「くるみの義務表示対象品目への指定」の方針を公表したのは、2019年7月5日に開催された第56回消費者委員会食品表示部会においてです。当時の調査(「2018年度即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」)の結果をとりまとめた報告書において、過去2回と比較して、アーモンドとくるみの症例数が増加していたことが背景にあります。
 その後、アーモンドは同年(2019年)9月に推奨表示品目に追加され、くるみについては「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」「義務表示対象品目に指定する場合、実行担保の観点から、試験方法の開発と妥当性評価が必要」と検討課題が整理されました。また、その後2021年2月より始まった「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」において、調査などの準備と検討が進められました。
 そして調査の結果を受け、くるみの義務表示対象品目への指定時期について、具体的な目標(今年度内の諮問を目指す)が示されたという経緯です。

今回調査について


 第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、今回の調査の概要が以下のとおり整理されていますので、その一部をこちらに抜粋します。

調査方法

  • 調査対象は“食物を摂取後60分以内に何らかの反応を認め、医療機関を受診した患者”とし、食物経口負荷試験や経口免疫療法(OIT)により症状が誘発された症例は調査対象としていない。
  • 調査期間は令和2年1月から12月で、3か月毎にはがきを郵送する方法で行い、はがきでの報告又は要望に応じてメールでも報告を受けた。

調査対象
合計6,677例 ※なお、報告のあった症例のうち、原因物質が特定されていない414例、原因物質が食物以外のもの83例(アニサキス70例、ダニ13例)、年齢性別や治療・転帰、初発/誤食が不明な症例やOIT時の症例100例を除外し、6,080例を解析対象とした。

原因食物
鶏卵2,028例(33.4%)、牛乳1,131例(18.6%)、木の実類819例(13.5%)であった。前回の調査まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回8.2%、第4位)。木の実類の内訳は、くるみが463例で最も多く、以下、カシューナッツが174例、マカダミアナッツが45例であった。

ショック症状
ショック症状を引き起こした原因食物の上位3品目は、これまで鶏卵・牛乳・小麦であったが、木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回12.8%、第4位)。木の実類の内訳としては、くるみが58例で最も多く、単独では落花生46例より上位であった。次いで、カシューナッツが30例であった。

考察と結論


 同じく、第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、考察と結論が以下のとおり整理されています。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

  1. 今回の調査件数は6,080例であり、前回(4,851例)に引き続き増加傾向であった。
  2. 前回調査(2017年)まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、小麦を抜いて主要3大原因食物の一つとなった。
  3. 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している。
  4. 初発例の原因食物では、0歳群は鶏卵、牛乳、小麦の順であったが、幼児期、学童期では上位3位以内に木の実類が入っていた。
  5. 即時型食物アレルギーの原因食物としての木の実類の増加は一時的な現象ではない。

 以上より、くるみについて「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」とされていたところ、「くるみの増加が著しく、また一時的な現象ではない」と考えられることから、義務表示となる特定原材料に追加される方針になりました。

今後の予定について


  消費者庁は、少なくとも今年度内を目標に、消費者委員会に対し食品表示基準の改正にかかる諮問を行う予定としています。また以前に検討課題とされていた「試験方法の開発と妥当性評価」については、来年度には完成する目標で現在開発を進めているとされていることから、2023年3月末までにくるみの表示義務対象品目へ指定する食品表示基準改正がなされる予定であると推測することができるかと思います。
 食品表示の業務に関わる方には、それまでの間に今回の調査結果報告書に目を通しておかれることをお勧めしたいと思います。くるみ以外にも、カシューナッツの増加についても再確認することができるほか、初発と誤食のケースの割合や、誤食のうち食品表示ミスのケースの割合についても再確認することができます。今後の確認業務に活用していただければと思います。


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原料原産地表示の表示実態調査結果が公表されました~その他、アレルゲン表示の視認性向上について~

【2022年5月26日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年3月28日に公表された「アレルゲン表示の視認性向上に関する取組状況」の調査結果を踏まえ、アレルゲン表示ミス防止のポイントをお伝えします。また、海外の主要国のアレルゲン表示制度(主に対象品目)との違いをもとに、輸入および輸出時の規格書確認業務の注意点についてお伝えしたいと思います。

 2022年3月28日、消費者庁は「令和3年度 新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果」を公表しました。新たな原料原産地表示制度は2017年9月の食品表示基準改正によって始まり、経過措置期間を終えた今年2022年4月より新制度に移行しています。制度改正とその後の表示について振り返る機会にできるよう、公表された調査結果をこちらに整理してみたいと思います。

調査の概要


 実態調査は2019年より開始されており、今回で3回目となります。過去3回分をあわせると、以下のようになります。
原料原産地表示に関する調査項目3点は共通で、その他は年度により必要とされた調査が行われているようです。

  2019年度 2020年度 2021年度
日時 2019年7月29日 2020年7月27日 2021年7月27日
場所 神奈川県横浜市の食品スーパー
対象(内訳) 各商品棚の上から2段目の商品1,514 点
(内訳:国産品1,349 点、輸入品165 点)
各商品棚の上から2段目の商品1,349点
(内訳:国産品1,231点、輸入品118点)
各商品棚の上から2段目の商品1,744点
(内訳:国産品1,458点、輸入品286点)
調査項目 (1)加工食品の原料原産地表示の有無
(2)原料原産地表示の根拠法令等
(3)新たな原料原産地表示における商品の表示方法
(4)食品表示基準に基づく表示の実施状況 (4)アレルゲン表示の視認性向上に関する取組状況
  (5)食品添加物の不使用表示等の表示状況  
調査方法 義務表示事項の記載箇所(一括表示欄)及び容器包装上に表示された強調表示等をデジタルカメラで撮影し、確認。

原料原産地表示の有無


 これまでの3回分もあわせてみると、以下のようになります。2021年度の「原料原産地表示なし」の調査結果については、調査実施時点では経過措置期間まで約半年間残っていたためと思われます(賞味期限の短い食品を中心に、2021年9月以降に新制度への表示切替えが行われたケースも多くあります)。

  2019年度 2020年度 2021年度
原料原産地表示あり 494 627 1,122
原料原産地表示なし 855 602 332
合計 1,349 1,229 1,454
※添加物のみで構成される加工食品(2020年は2点、2021年は4点)を除く。

原料原産地表示がある商品の根拠法令


 こちらは以下のとおりです。「②新たな原料原産地表示」が調査期間の3年でもっとも増えており、新しい表示制度のもとで初めて対象となった食品が多いことがうかがえます。

  2019年度 2020年度 2021年度
①従来からの原料原産地表示
(食品表示基準別表第15)
91 88 87
②新たな原料原産地表示
(食品表示基準第3条(別表第15を除く))
274 457 892
③米トレーサビリティ法 99 55 98
④酒類業組合法 14 11 26
⑤公正競争規約 15 14 18
⑥業界ガイドライン等 1 2 1
合計 494 627 1,122

新たな原料原産地表示がある商品の表示方法


 こちらは以下のとおりです。国別重量順表示が多くを占める結果となっています。

対象原材料が生鮮食品の場合

  2019年度 2020年度 2021年度
産地表示(国別重量順表示) 131 161 244
産地表示(又は表示) 2 6 21
産地表示(大括り表示) 2 8 9
産地表示(大括り表示+又は表示) 0 0 8
合計 135 175 282

対象原材料が加工食品の場合

  2019年度 2020年度 2021年度
製造地表示(国別重量順表示) 134 273 568
製造地表示(又は表示) 0 4 14
製造地表示(大括り表示) 1 2 14
製造地表示(大括り表示+又は表示) 4 3 14
合計 139 282 610
※「又は表示」:原材料の原産地として使用する可能性のある複数国を、過去の一定期間における産地別使用実績又は今後の一定期間における産地別使用計画における重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法
※「大括り表示」:外国の原産地表示を「輸入」などと括って表示する方法

アレルゲン表示の視認性向上について


 最後に、2021年度のみの調査にはなりますが、アレルゲン表示の視認性向上に関する調査結果のうち一部を抜粋します。

一括表示枠内にアレルゲン表示有のうち、その表示方法

  商品数
個別表示 445
一括表示 588
合計 1,033
※「個別表示」:個々の原材料又は添加物の直後に括弧を付して特定原材料等を含む旨を表示する方法
※「一括表示」:当該食品に含まれる全ての特定原材料等について、原材料欄の最後(原材料と添加物を事項欄を設けて区分している場合は、それぞれ原材料欄の最後と添加物欄の最後)に「(一部に○○・○○・…を含む)」と表示する方法

一括表示枠外のアレルゲンに関する強調表示の有無

  商品数
表示あり 598
表示なし 435
合計 1,033

一括表示枠外のアレルゲンに関する強調表示有のうち、対象範囲(対象品目数)に関する表示の有無

  商品数
特定原材料のみである旨の表示 7
特定原材料等である旨の表示 534
表示なし 57
合計 598
※「アレルゲンの対象範囲(対象品目数)に関する表示」表示例

  • 特定原材料のみである旨の表示:「アレルゲンは義務7品目を対象範囲としています。」、「アレルゲン(特定原材料のみ)」等
  • 特定原材料等である旨の表示:「この食品は28品目のアレルゲンを対象範囲としています。」、「アレルゲン(28品目対象)」等

一括表示枠内にアレルゲンに関する表示がない商品の「特定原材料等を使用していない旨の表示」の有無

  商品数
表示あり 47
表示なし 410
合計 457

 その他、「一括表示枠外にアレルゲンに関する強調表示がある商品の文字の表示方法(一括表示枠内の表示事項の文字と比較した際の「文字の色」、「文字の大きさ」、「文字の太さ」及び「下線の有無」)」などの調査結果も確認することができます。

 原料原産地表示の表示方法についてはあくまで実態の把握にとどまるかと思いますが、アレルゲン表示については対象範囲に関する表示や文字の表示方法など今後の改善のヒントになる情報も含まれるといえますので、ぜひ一度見ておかれるとよいと思います。

参照:新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果(消費者庁)
令和3年(2021年)度
令和2年(2020年)度
令和元年(2019年)度

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「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されました

【2022年4月26日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。
3月末に公表された正式なガイドラインの内容についてお伝えする予定です。各類型の詳細な例示や基準までは示されていませんが、ガイドライン新設の背景や、案からの修正の経緯より、ポイントをお伝えできればと思います。また類型4および5の参考情報に言及されているCODEX基準をはじめ、海外各国の添加物不使用表示の基準の動向もご紹介したいと思います。

 2022年3月30日、消費者庁により「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されました。「第8回食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2022年3月1日)」で使用された「【資料2】ガイドライン修正反映版」(意見募集後修正案)の内容からの主な変更点はこちら(下線赤文字部分)です。

(5)本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関して、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめたものであり、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではない。食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものである。

 その他は意見募集後修正案のとおりですが、あらためて、今回のガイドラインの概要をこちらに整理したいと思います。

不使用表示の類型


 不使用表示の類型1~10は以下のとおりです。(ガイドラインの説明文および例より一部を抜粋したものです。)

類型1 単なる「無添加」の表示
例:単に「無添加」とだけ記載した表示のうち、無添加となる対象が消費者にとって不明確な表示
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例:「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示(清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反である。)
例2:食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例1:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示
例2:既存添加物の着色料を使用した食品に、○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。)
(同程度に顕著な表現で明示されている場合を除き、当該食品に同等な特質を与える他の物質により代替されている場合、強調表示を用いることができない。)
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例1:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示
例2:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示
(食品の特定の成分のみを抽出したこと等により、当該食品との科学的な同一性が失われていると考えられるもので代替することは、社会通念上食品であると考えられるもので代替することとは異なる。不使用表示と共に同一機能、類似機能を有する原材料について明示しない場合、消費者が当該原材料の機能であると分からず、他の原材料による機能が作用していると読み取るおそれがある。)
類型6 健康、安全と関連付ける表示
例1:体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
例1:おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
(おいしい理由と食品添加物を使用していないこととの因果関係を説明できない場合)
例2:「開封後」に言及せずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
(期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合)
例3:商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示
(変色と着色料の用途との関係について説明ができない場合)
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例1:同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に、「着色料不使用」と表示
例2:同種の製品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示(ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用等)
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
例1:原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示
例2:原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示
(食品添加物の表示については、当該食品の原材料の製造又は加工の過程まで確認を行うことが必要であり、一括表示外であっても、確認結果に基づいた表示を行わない場合、内容物を誤認させるおそれがある。)
類型10 過度に強調された表示
例1:商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
例2:保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示
(一括表示欄における表示と比較して過度に強調されたフォント、大きさ、色、用語など。他の類型項目と組み合わさった際、他の類型項目による誤認を助長させるおそれがある。)

 またあわせて、添加物不使用表示に関連する食品表示基準Q&A(加工-90の改正、加工-232の削除)も改正されています。

【改正】(加工-90)「食品添加物は一切使用していません」、「無添加」などと食品添加物が不使用である旨の表示をすることはできますか。

(答)

  1. 消費者に誤認等を与えないよう留意して表示する必要があると考えます。
  2. 例えば、(中略)
  3. 消費者に誤認等を与えないための留意点は、別添「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」としてまとめています。

【削除】(加工-232)糖類や食塩(ナトリウム)以外のものであっても、事実であれば無添加の表示は可能ですか。

今後について


 表示の見直しとして、「2年程度(2024年3月末まで)」の経過措置期間が示されています。また今後は、ガイドラインを参考とした景品表示法等の適用により、ウェブサイトや広告など容器包装外における不使用表示の縮減も見込まれています(その他、公正競争規約の見直しも見込まれています)。
 パブリックコメントに寄せられた意見に対する考え方において、「あらゆる例示を列挙することは困難」「ケースバイケースで全体として判断」と記載のとおり、ガイドラインは具体例を示すものではなく、表示禁止事項の解釈を示したものという位置づけです。表示の見直しにあたり判断に迷うケースも多いと思いますが、その際には、今回のガイドラインの検討会の資料を読むことで、不使用表示の課題と解決について確認されることが大切だと思います。

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3月末に公表された正式なガイドラインの内容についてお伝えする予定です。各類型の詳細な例示や基準までは示されていませんが、ガイドライン新設の背景や、案からの修正の経緯より、ポイントをお伝えできればと思います。また類型4および5の参考情報に言及されているCODEX基準をはじめ、海外各国の添加物不使用表示の基準の動向もご紹介したいと思います。


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「大豆ミート食品類」の日本農林規格が制定されました~プラントベース(植物由来)食品の表示の注意点について~

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 2022年2月24日、大豆ミート食品類の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2020年秋にJAS規格化に向けた検討(検討主体:大塚食品株式会社)を開始し、その後2021年11月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。大豆ミート食品類の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」の2食品の要件が定義されています。

「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」


 同規格の定義より、2食品の違いを整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
加工 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること
原材料 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料およびその加工品を原材料として使用しないこと 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料(乳及び食用鳥卵を除く)およびその加工品(調味料を除く)を原材料として使用しないこと
大豆たん白質含有率 大豆たん白質含有率が10%以上であること 大豆たん白質含有率が1%以上であること
原料のアミノ酸スコア アミノ酸スコアが100である大豆ミート原料を使用すること -(設定なし)

 なお、アミノ酸スコアの基準値設定の経緯として、「大豆たん白の新たな摂り方を消費者に提案する目的」から「全ての必須アミノ酸をバランスよく摂取できる」点の訴求は重要であるためとされています。

表示について


 同規格より、表示の基準を整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
表示事項 “大豆ミート食品”又は“大豆肉様食品”と容器包装の見やすい箇所に記載 “調製大豆ミート食品”又は“調製大豆肉様食品” と容器包装の見やすい箇所に記載
当該製品が食肉ではないことの説明(“肉を使用していません”,“肉不使用”等)を容器包装の見やすい箇所に記載しなければならない。
表示方法 -(設定なし)
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)

※業務用加工食品については,送り状,納品書等又は規格書等に表示できる。

 大豆ミート食品類においては、“肉を使用していません”,“肉不使用”等の表示が必要となる点については、昨年夏に消費者庁より公表された「プラントベース(植物由来)食品等の表示に関するQ&A」が参考になると思いますので、以下に関連Q&Aを整理してみたいと思います。

プラントベース食品等の表示に関するQ&A


 2021年8月20日に公表された同Q&Aより、植物由来食品の「肉」(代替肉)に関する表示について注意点を抜粋します。(プラントベース食品の定義は、「主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含める。」)

表示例 注意点
商品名に「大豆肉」、「ノットミート」等と表示 商品名とは別に、「大豆を使用したものです」、「原材料に大豆使用」、「お肉を使用していません」、「肉不使用」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食肉ではないのに食肉であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉を使ったハンバーグの商品名に「大豆からつくったハンバーグ」と表示 代替肉の使用割合が100%でない場合は、例えば、商品名とは別に、代替肉の使用割合を表示するなど、一般消費者が、表示全体から、代替肉の使用割合が100%ではないのに100%であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉の商品名に「大豆ミート」と表示し、「100%植物性」と併記 商品名とは別に、「原材料は植物性です(食品添加物を除く)」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食品添加物を含めて全ての原材料に植物性のものを使用していないのに使用しているかのように誤認する表示になっていないこと

 上記は、容器包装を含むすべての表示に関する注意事項です。そして以下が、一括表示内の「原材料名表示」に関する注意点です。プラントベース食品の原材料名表示では、「肉」や「卵」を含む用語は使用できない点に注意が必要といえます。

Q. プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

A. 食品表示基準において、原材料名は「その最も一般的な名称をもって表示する」こととなっております。プラントベース(植物由来)食品の原材料名としては、例えば、大豆から作られている食品の場合には、「大豆」「大豆加工品」等と記載してください。なお、プラントベース(植物由来)食品の原材料の名称としては、現時点では、肉や卵を含む用語は 、「一般的な名称」とは言えないと考えます。

 以上、大豆ミート食品類のJAS規格の概要と、プラントベース食品の表示に関する注意点についてです。また関連する食品として、「ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品」のJAS規格化も検討が進んでいる状況です。大豆をはじめとする植物由来食品を取り扱いの方は、一度、こうした状況を整理しておかれるとよいと思います。

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