Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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遺伝子組換え農産物の意図せざる混入の検査法について~「食品表示基準について」が一部改正(主に「遺伝子組換えでない」表示について)されました~


 2021年9月15日、「食品表示基準について」の第24次改正が行われ、遺伝子組換え農産物の意図せざる混入の検査法新設と検査機器の追加等が公表されました。

<ポイント>

  • 通知「食品表示基準について」の「別添 安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法」において、
  • 分別生産流通管理を実施した非遺伝子組換えダイズ穀粒及びトウモロコシ穀粒について、
  • 意図せざる混入を確認するための検査法の新設と、現行の検査法で使用できる検査機器の追加等がされた

改正の背景


 2018年3月28日、消費者庁より公表された「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」の「(2)表示方法 ② 「遺伝子組換えでない」の表示方法」において、以下のような整理がなされたことが改正の背景となっています。

 「意図せざる混入」の許容率については、できるだけ引き下げてほしいという消費者の要望があるが、事業者による原材料の安定的な調達が困難となる可能性、許容率引下げに伴う検査に係る作業量やコストの増大などの事情を総合的に勘案すると、大豆及びとうもろこしについて5%以下の意図せざる混入を認めている現行制度を維持することが適当と考えられる。
 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件については、大豆及びとうもろこしに対して遺伝子組換え農産物が最大5%混入しているにもかかわらず、「遺伝子組換えでない」表示を可能としていることは誤認を招くとの意見を踏まえ、誤認防止、表示の正確性担保及び消費者の選択幅の拡大の観点から、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることが適当と考えられる。なお、引下げに当たっては、新たな表示制度が現在の食品の製造・流通・消費に与える影響に配慮し、これらの現場で混乱が生じないよう、新たに公定検査法を確立し、円滑な検証や監視を担保するとともに、事業者や消費者に十分な周知を行うことが必要である。新たな公定検査法の確立に当たっては、遺伝子組換え農産物の混入率を判定する現行の定量検査法のように、正確性と実行可能性のバランスにも配慮すべきである。

主な改正点


 追加された検査方法は以下のとおりです。検査方法の他に通知文の修正も多くありますので、詳細は第24次改正の「(別紙)新旧対照表」を参照すると分かりやすいと思います。

2.2. ダイズ穀粒の検査法(遺伝子組換え農産物混入の判定に係る検査法)
 2.2.1. リアルタイム PCR を用いた定性 PCR 法
  2.2.1.1. ABI PRISM® 7900HT 96 well を用いた定性 PCR
  2.2.1.2. Applied Biosystems® 7500 を用いた定性 PCR
  2.2.1.3. QuantStudio 5 を用いた定性 PCR
  2.2.1.4. QuantStudio 12K Flex を用いた定性 PCR
  2.2.1.5. LightCycler® 96 を用いた定性 PCR
  2.2.1.6. LightCycler® 480 を用いた定性 PCR
  2.2.2. 結果の判定
2.4. トウモロコシ穀粒の検査法(遺伝子組換え農産物混入の判定に係る検査法)
 2.4.1. リアルタイム PCR を用いた定性 PCR 法
  2.4.1.1. ABI PRISM® 7900HT 96 well を用いた定性 PCR
  2.4.1.2. Applied Biosystems® 7500 を用いた定性 PCR
  2.4.1.3. QuantStudio 5 を用いた定性 PCR
  2.4.1.4. QuantStudio 12K Flex を用いた定性 PCR
  2.4.1.5. LightCycler® 96 を用いた定性 PCR
  2.4.1.6. LightCycler® 480 を用いた定性 PCR
  2.4.2. 結果の判定

 なお、日本への輸入食品を取り扱われる方は、検査対象の遺伝子組換え食品が日本において「安全性審査済みであるか」を別途確認する必要がありますのでご注意ください。

「遺伝子組換えでない」表示は“不検出”が条件


 検査の目的は「意図せざる混入」が「5%以下であるか」「不検出であるか」を確認することにあります。先述の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」を受け、2019年4月の食品表示基準改正により、「不検出」でない限り「遺伝子組換えでない」と表示することはできなくなったためです。ただし5%以下であれば「分別生産流通管理が適切に行われている旨」を任意で表示することができます。

 第46回食品表示部会(内閣府消費者委員会)で使用された資料「(資料4)新たな遺伝子組換え表示制度に係る内閣府令一部改正案の考え方(2018年10月10日)」に、改正について分かりやすい比較図が使用されていますので、こちらに引用します。

現行の遺伝子組換え表示制度と改正後の遺伝子組換え表示制度

※「分別生産流通管理が適切に行われている旨」については、その後、食品表示基準Q&Aに以下の表示例が示されています。

(一括表示事項欄に表示する場合の例)
「大豆(分別生産流通管理済み)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」 等

(一括表示事項欄外に表示する場合の例)
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」 等

<2019年4月の改正のポイント>

  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」 から「不検出」に引き下げる。
  • 5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができる。

 2019年4月の食品表示基準改正(遺伝子組換え表示制度改正)の経過措置期間は2023年3月末です。
「遺伝子組換えでない」表示をされている商品を取り扱う事業者の方はすでに準備をされているところと思いますが、そうでない方は、検査法の新設が公表された今回をきっかけに改めて遺伝子組換え表示制度について確認される機会にしていただければと思います。


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食品表示の全体像に関する提言に基づく「空間的情報量に関する調査」「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」 報告書が公表されました


 2021年8月6日、内閣府消費者委員会食品表示部会において、「空間的情報量に関する調査」「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」の報告書が公表されました。これらは2019年8月の“食品表示の全体像に関する提言”により検討が必要とされたものですが、その後時間も経っていることから、ここにあらためて整理してみたいと思います。

背景と目的


 検討の背景と目的については、以下(“食品表示の全体像に関する報告書”より抜粋)のとおりです。

<背景>

  • 義務表示の内容増加に伴い、製品上に表示する文字が多くなっている。
  • 今後、義務化される表示が増えれば、状況は更に深刻化し、消費者が安全性に関わる表示を見落とす可能性もある。

<目的>

  • 食品表示を取り巻く現状等について整理しつつ、消費者のニーズにも十分留意した上で、食品表示の全体像について以下の点を中心に検討。
    1. 表示事項間の優先順位
    2. インターネットを活用した表示の可能性を含む、ウェブ上における情報提供と従来の容器包装上の表示との組合せ

 そして同報告書において以下のような提言がなされたことが、冒頭の2つの調査事業の直接的な背景となっています。

  • 「分かりやすさ」の定義を明確にするために、また、消費者のより詳細な利活用の実態や問題点等を把握するために、表示可能面積に対する一括表示面積の割合や、一括表示のデザイン、フォント、文字サイズ等の情報量の把握等の科学的アプローチに基づく調査が必要。
  • ウェブによる食品表示を検討するために、優良事例等の現状を把握する調査が必要。

「空間的情報量に関する調査」の概要


 調査としては、「空間的情報量に関する調査」「消費者による視認性等調査」の2つが実施されています。

<空間的情報量に関する調査>

  • 加⼯⾷品の市販品約300点を買い上げ、次の事項を測定。
    • 容器包装全体の表⽰可能⾯積と⾯の数を確認。
    • 表⽰可能⾯積に対する⼀括表⽰⾯積の割合を算出。
    • 消費・賞味期限表⽰、栄養成分表⽰及び注意喚起表⽰等の表⽰事項における「⽂字サイズ」、「⽂字数」、「⽂字の変形率」、「⾏間」、「⾏⻑」、「⾯積」等を測定。

<消費者による視認性等調査>

  • ⽂字サイズ、⾏間、⾏⻑、変形率(※)が視認性に与える影響について調査を実施。(「消費者による視認性調査」)
    変形率(縦横幅に対する割合。縦横が共に100%である時、変形無しとする。)
  • 消費者が商品選択をする際に⾒ている⼜は⾒ていない表⽰の傾向を探るため、視線追尾分析を実施。(「消費者の視線追尾分析」)

 報告書での調査結果については、立場によって必要な情報が変わると思います。ひとまず一般的に重要と思われる内容を以下に抜粋しますが、実際の報告書には各データの詳細もありますので、そちらを見ることをお勧めします。

  • 全体の傾向として、注意喚起情報、原材料名、栄養成分表⽰は裏⾯にまとめて表記されていることが多い。すなわち、裏⾯に情報が集中しすぎる状態を招いて情報の量を⾼めている可能性が考えられる。
  • ⽇本語パンフレットのサンプルを⽤いた「読みにくさ」に関する先⾏調査の、「情報量が19%を超えると、読みたくない⼜はストレスを感じる消費者が8割に達する」という結果を踏まえ、この19%を基準値とすると、約61%が基準値を超過している。対して基準値以下は約39%であった。
  • 消費者がパッケージを⾒る際に、裏⾯の左上を注視する傾向にあることが分かった。⼀⽅で、同じ裏⾯であっても、バーコードやその周辺の注意喚起情報はほとんど⾒られておらず、消費者が効率的に読み取っていない可能性が明らかになった。

「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」の概要


 容器包装の表示をデジタルツール化し、食品スーパーの消費者を対象に実証実験したものです。

<アプリケーションを活用した食品表示実証調査>

  1. ⾷品製造事業者・データ管理会社が⾷品表⽰データを提供
  2. データベースを構築し、提供された⾷品表⽰データを格納
  3. アプリを構築し、モニター(消費者)がスーパーで商品のバーコードをスキャン
  4. データベースに格納された⾷品表⽰データをアプリで表⽰し、消費者に実証前後でアンケートを実施。

 こちらも報告書での調査結果から様々な情報を得ることができます。ひとまず一般的に重要と思われる内容を以下に抜粋しますが、実際の報告書には技術的な課題や考察等もありますので、同じく確認されることをお勧めします。

  • アプリで⾷品表⽰を⾒て購⼊商品が変わった⼜は変わる可能性があると回答した⼈が実証参加者の7割を超え、アプリで⾷品表⽰を確認することにより消費者の購買⾏動が変化する可能性を⽰した。
  • 情報の確認・収集のしやすさといった基本的な機能だけでは利便性が意識されず、消費者があえてアプリを使ってまで⾷品情報を確認するには、情報の確認・収集のしやすさ以上の付加価値が求められると推察される。
  • ⾷品表⽰に対するニーズを問う質問に対して、「より簡潔に情報を掲載してほしい」という回答が最も多く、次いで「栄養成分の活⽤⽅法を⽰してほしい」、3番⽬が「健康維持・増進に必要な項⽬をもっと増やしてほしい」という回答で、健康に配慮した⾷品の選択を意識する消費者が多い。

分かりやすい食品表示のために


 現在、多くの事業者により、文字を大きくする・色やデザインを工夫する・WEBで詳細な情報提供をするなど、「分かりやすい食品表示」への自主的な取り組みがされています。今回の調査報告書は、こうした「分かりやすさ」について、客観的な定義や改善すべき要素、また消費者の意向を示すエビデンスを考えるうえでのヒントとなりますので、食品表示業務にかかわる方には大変参考になる情報になると思います。
 また海外の読者の方におかれましても、各国でのこうした取り組みと共通する課題も多いと思いますが、報告書には日本市場ならではの気づきも得られるでしょう。日本への食品輸出や、日本からの食品を輸入する際の参考にしていただければと思います。


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シンガポール 個別食品規格を削除する改定について意見募集


 2021年6月21日、シンガポール食品庁(Singapore Food Agency:以下SFA)は、食品業界および関係者に2022年4月に施行予定の個別食品規格(食品の定義に関する基準)を削除する改定に関して、意見を募集すると発表しました。

<ポイント>

  • 200以上の個別食品規格のうち大半は削除されるが、1割程度は部分的または完全に存続する
  • 削除された食品規格については、CODEX規格など他の現行の国際規格基準の参照を可能としている
  • 今後はCODEXに基づいた食品分類システムにより、明確な定義がない食品の添加物使用基準が定められる

「食品規格」とは、食品別の必須組成(原材料等)や品質要件(含有成分等)などを定めたものです

改正の背景と概要


 今回の改定についての背景と概要が分かるよう、発表内容の一部を抜粋してみます。

“個別食品規格(規則No.39~260)は、1970年代から1990年代初頭に開発されました。”
”現在、さまざまな消費者のニーズや好みに対応するために、市場には多種多様な食品があります。これらの食品の多くは、食品規制(Food Regulations)で規定されている食品規格を持っていません。たとえば、朝食用シリアル、3-in-1粉末飲料、冷凍調理済み食品などです。”
”SFAは、気候、環境要因、製造方法などの理由により、食品規制(Food Regulations)の品質基準に適合しない食品の輸入/製造および販売を許可するように要請を受けることがあります。 食用植物油の比重/屈折率/ヨウ素値、牛乳の乳固形分、加工チーズの乳脂肪含有量などがそうです。これらの製品の食品規制(Food Regulations)で規定されている品質基準を満たせないということは、製品が安全に消費できないことを意味するものではありません。”
“食品業界が製品のバリエーション(砂糖を含まないカヤジャム、卵を含まないマヨネーズなど)を生産するために革新するにつれて、一定の食品規格に準拠しなければならないことは、革新への取り組みを阻害します。”

“食品規制(Food Regulations)で保持されている個別食品規格については、業界はこれらの基準への準拠を保証する必要があります。 食品規制(Food Regulations)から削除された個別食品規格については、業界は利用可能な国際基準(コーデックス委員会の基準など)またはシンガポール基準を参照できます。”
“個別食品規格の削除は、食品の安全性に影響を与えません。シンガポールで輸入、製造、販売されるすべての食品は、食品添加物の使用や偶発的成分の上限、関連する表示要件など、一般的な食品安全規定に準拠する必要があります。”
“SFAは、将来、食品添加物の規定に関して業界に明確さを提供するために、食品カテゴリーシステム(関連する食品カテゴリー参照を含む)を開発する計画を持っています。食品カテゴリーシステムは、食品添加物に関するコーデックス一般基準(CODEX STAN 192-1995)に基づいています。”

 なおSFAは、今回の改正に関する「よくある質問と回答」についても発表しており、以下の点に注意しておく必要があるといえます。

 “個別食品規格の削除に伴い事業者は、表示する際の一般的な名称について責任を持ち、食品の特性を正確に反映する名称を表記する必要があります。” “食品の名称だけでなく食品の特性を強調する表示についても、食品の特性を正確に反映する表示をしなければなりません。”

今後について


 意見は2021年8月20日午後5時まで、メールにて募集しています。削除される個別食品規格の一覧は、通知の別紙1(ANNEX I)に記載されています。

<ANNEX Iより一部(FLOUR, BAKERY AND CEREAL PRODUCTS)抜粋>

Standard Regulation to be Deleted Regulation to be Retained
39 Flour or wheat flour 39  
40 Wholemeal, whole wheat or entire wheat flour 40  
40A Wholegrain   40A
41 Vital gluten flour 41  
・・・ 42-51  
52 Milk bread 52  
53 Labelling of bakery products Paragraph (1) of
Rg 53
Paragraph (2) of
Rg 53
54 Flour confectionery 54  
55 Pasta 55  
56 Labelling of pasta 56  

<個別食品規格(STANDARDS AND PARTICULAR LABELLING REQUIREMENTS FOR FOOD)より一部(39. Flour or wheat flour)抜粋>

  1. Flour or wheat flour shall be the fine, clean and sound product obtained in the commercial milling of sound and clean wheat grain and shall —
    1. have a moisture content of not more than 15%;
    2. have not less than 6% protein (total nitrogen x 5.7) calculated on a wet basis of 14% moisture content; and
    3. yield not more than 0.6% of ash calculated on a wet basis of 14% moisture content.
  2. Flour may contain the following:
    1. malted wheat flour;
    2. malted barley flour in an amount not exceeding 0.75% of the weight of the flour;
    3. harmless preparation of enzymes obtained from Aspergillus oryzae;
    4. ascorbic acid as bread improver;
    5. ammonium or potassium persulphate in an amount not exceeding 250 ppm (calculated by weight);
    6. ammonium chloride in an amount not exceeding 0.2% (calculated by weight); and
    7. acid calcium phosphate [calculated as CaH4(PO4)2] in an amount not exceeding 0.7%.
  3. Flour shall not be artificially bleached except by oxidizing changes brought about by means of an electrical process in which only ozone or oxides of nitrogen are produced, or by chlorine or chlorine dioxide, or by benzoyl peroxide. The residue of chlorine dioxide and benzoyl peroxide in the flour shall not exceed 50 ppm (calculated by weight).
  4. Flour intended for the manufacture of biscuit may contain sulphur dioxide not exceeding 200 ppm (calculated by weight).
  5. No flour, intended for sale as such, shall contain any emulsifier or stabiliser.

 今回の「個別の食品規格(その食品の定義に関する基準)」の削除に関する改正は、日本の制度でいうところの”「食品、添加物等の規格基準」のうち個別食品規格“と”「食品表示基準」のうち別表第三(個別加工食品の定義)(およびその参照元となっている「JAS規格」)“が削除されるようなものだと考えると、イメージしやすくなるかと思います。

・容器包装の義務表示は、個別の食品ごとに表示基準が定められている場合があること、
・使用できる添加物は、個別の食品ごとに使用基準が定められている場合があること、など、
食品の輸出業務において「個別の食品の定義」は重要な確認事項ですので、とても興味深いものといえるでしょう。

 技術革新や新素材の開発などにより、ニーズの変化に応える様々な食品が生まれています。今回の改正に関する意見募集の結果についてはもとより、今後他の国や地域における動向についても、関心を寄せていただく機会になればと思います。


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【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

輸出食品の原材料調査と食品表示チェックの実務上の大切なポイント


 今回のコラムでは、日本から海外に向けて食品を輸出しようとするときに確認が必要となる、各国の「食品表示基準」の違いへの対処について、実務上のポイントを整理してみたいと思います。(本稿はNPO法人食の安全と安心を科学する会様での2021年5月24日講演内容を一部まとめたものです)

何から確認すればよいか迷うときは


 海外への輸出業務が初めてであり、かつ日本への輸入業務の経験がない場合、何から確認すればよいか分からないこともあるかと思います。そうした場合は、食品表示確認の周辺業務を整理したうえで考えるとよいと思います。

  1. 許認可の確認(管轄省庁への届出、許可申請等)
  2. 食品規格の確認(微生物、重金属、化学物質、カビ毒、残留農薬等)
  3. 使用基準の確認(添加物物質名・用途等)
  4. 表示基準の確認(表示方法、表示事項、表示禁止事項、および強調表示基準等)
  5. 広告規制の確認(広告で用いる強調表示の科学的根拠等)

 このように整理すると、食品表示(表示基準)確認の前に「使用基準」を確認する手順があることが分かります。またその前には「食品(および添加物の)規格」を確認する手順もあり、これらを分けて考える(そして時には連動して考える)必要がある点が、輸出と輸入のいずれの業務においても大事なポイントになるといえます。

各国基準の事前調査について


 各国の「食品規格」「使用基準」「表示基準」を調べようとする場合、まずは分かりやすい情報サイトを探すことをお勧めします。日本であれば、農林水産省の「各国の食品・添加物等の規格基準」が役に立つでしょう。「食品添加物」「食品表示」「健康強調・機能性食品」「栄養成分表示」「個別食品規格」等のテーマ別に、約30ヶ国の基準の概要が日本語で整理されています。特に「法的枠組」より全体像(どのような規則があるのか)を確認できる点が便利です。

 最終的には対象国管轄省庁の文書(現地語)を直接確認するのですが、この段階で、実務上で必要な情報がどこにあるのかが分からなくなるときがあります。そうした場合はまず「英文で書かれたガイドライン」を探し、その中に記載されている「元となる規則の名称」(出典、参考法令名の一覧)より、関連する基準名(添加物使用基準、食品表示基準等)を特定するとよいと思います。

原材料調査について


 輸出と輸入のいずれの業務においても、もっとも多くの時間や労力を費やすことになるのが「原材料調査」(特に添加物の使用基準の確認)といえます。ただし対象国の現地語で書かれた添加物使用基準や添加物公定書にあたる文書を調べること自体は、それほど難しいわけではありません。多くの場合は物質名がリスト化され、閾値とともに表形式になっているためです。

 添加物の使用基準を満たさないと分かった場合、同じような機能をもつ代替の添加物を探す必要があるのですが、やはり製造性での課題や、栄養成分訴求等の品質保証の課題について検証が必要になりますので、その分の時間もかかることになります。また添加物以外の原材料(食品素材)については、添加物と異なり、使用基準などが記載された文書自体をみつけることが困難ですので、対象国管轄省庁への問い合わせも含め、多くの時間がかかる可能性があります。

食品表示チェックについて


 対象国が5ヶ国、10ヶ国など複数になる場合は、各国の表示基準をすべて把握するのは難しいといえます。そうした際に1つの物差しとして、「日本の食品表示基準の視点」で調べることをお勧めしています。

・表示事項(何を表示するか)
・表示方法(どのように表示するか)
・表示禁止事項(何を表示してはならないか)
× ・横断的(すべての食品)か
・個別的(食品または特定の条件による)か

 何の事項をどのように表示すればよいかといった表示基準は、規則が分かってしまえば対応は難しくありません。ただし添加物等のリストと異なり、現地語で記載された文書から該当する規則を探すことは簡単ではないと思います。とりわけ、特定の条件下で表示の必要性が生じる規則には注意が必要ですので、商品特徴の訴求など強調表示が多い場合には、やはり対応は難しくなるといえます。

 例えば表示基準のうち「アレルゲンにはハイライトをつける」「添加物には物質名とEナンバーを表示する」といった規則への対応自体は難しいものではないと思いますが、「内容量は表面の底辺から30%以内の高さに記載」「容器包装の主要面に特定の原材料名が含まれる場合は、その量について、容器包装の同じ面に表示」などの”表示位置の指定”や”強調表示”に関する規則は、対応に時間がかかる場合が多いといえます。

 なお「日本の食品表示基準の視点」で調べるとお伝えしましたが、あくまでも対象国の文書から該当する規則を調べるときの視点(表示事項、表示方法、表示禁止事項と、横断的か個別的か)にとどめるよう注意が必要です。とりわけ日本の「表示方法」(特に原材料表示順、重量計算、添加物表示名、アレルゲンの対象、栄養成分の対象、数値の丸め方等)については思い込みをしてしまいがちであり、かえって支障になる場合もある点に注意が必要です。

大切なポイント


 とはいえ実際の各国の基準を調べながら原材料や表示の確認をするには、やはり多くの課題があると思います。そこで輸出業務の際には、そうした課題に常に注意できるよう、以下の3点を考えておくとよいと思います。

  1. 用語や要件の定義の確認に時間をかける
  2. 日本の基準を説明できるようにする
  3. 表示と連動する他の基準(使用基準等)について考える

 ポイントとしては、特に「(食品および添加物の)規格」と「使用基準」、「使用基準」と「表示基準」について分けて考えることが大切だと思います。例えばある食品に含まれる添加物について確認しようとする場合、使用基準(割合、用途等)だけを確認するのではなく、その添加物の規格(成分、製法等)も確認することが求められる場合があります。ただしその食品の原材料配合表には該当の添加物の規格までは記載されないため、その食品に使用されている添加物(使用されている添加物製剤)の規格書をもって確認することが必要になります。(原材料配合表の確認段階では、「添加物」だけでなく遺伝子組換え原料や医薬品成分などの確認もできるよう、「使用基準」確認工程として広義に定義しておいたほうがよいと思います)

 また原料メーカーより入手した規格書に、キャリーオーバーや加工助剤にあたる添加物が、最終製品の食品の配合表に記載されないといったケースも起こり得ます。日本の表示基準上では確かに表示を免除できるものですが、使用基準においては使用できるかどうかの確認が求められます。こうした添加物の記載のない規格書や配合表である場合、書類を受け取った担当者がその添加物の存在に気付くことはかなり難しいといえますので、規格書を請求する際には「輸出時の原材料使用基準の確認のため」と目的を明確に伝えるとよいでしょう。

 最後に、対象国の現地担当者とのチェック業務においては、キャリーオーバーなどの用語や表示免除などの要件についても、その定義は同じであるかを改めて確認することも重要なポイントです。例えば「炭水化物」も、日本とEUとでは算出方法が異なります。そのためには、日本の基準を説明できることが必要になります。そして調査の結果、原材料や表示などを変更する場合は、その他の基準に連動して影響を与えるものではないか、あわせて考えることが大切だと思います。

<追伸>
 宣伝になりますが、WEBツールとしてgComplyをご紹介いたします。約200ヶ国の規則に関する文書(主に現地語、一部英語版あり)が格納されており、添加物使用基準や食品表示基準、微生物や重金属などの規格について実際の文書を元に確認できるメリットがあります。当社は日本のデータベース更新を担当しており、情報は2週間ごとに更新されます。詳しくはこちらをご覧ください。


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米国バイオ工学食品情報開示基準について~日本の遺伝子組換え表示制度との違いと輸出時の注意点~

 2020年1月に施行された米国バイオ工学食品情報開示基準ですが、義務化となる2022年1月まであと半年となりました。これまで米国に食品を輸出されていた方はすでに取組をされていると思いますが、今後輸出を検討される方も多いと思いますので、この機会に日本の制度との違いや注意点を整理してみたいと思います。

<ポイント>

  • バイオ工学食品(以下「BE食品」)とは、遺伝子組換え食品を指す
  • 組換え遺伝子が検出される場合は表示の対象となる(意図せざる混入は除く)
  • 対象食品は、「BE食品」もしくは「BE食品の原材料を含む」の表示が必要となる

BE食品とは


 USDA(米国農務省)によると、「特定の組換え技術によって変更された検出可能な遺伝子物質を含む食品、また従来の育種では作成できない、もしくは自然界に存在しない食品」と定義されています。情報開示をしなければならない原材料であるかどうかを事業者が判断できるよう、USDAは以下のBE食品リストを作成し公開しています。

  • アルファルファ
  • りんご (Arctic種)
  • キャノーラ
  • とうもろこし
  • 綿花
  • ナス (BARI Bt Begun種)
  • パパイヤ (ringspot virus-resistant種)
  • パイナップル (pink flesh種)
  • じゃがいも
  • サケ (AquAdvantage)
  • 大豆
  • カボチャ (summer)
  • テンサイ

 なお上記リストに掲載されていない食品の場合でも、バイオ工学による食品であると記録があるものについては、適切に開示する必要があるとされています。

情報開示の方法


 容器包装の主要面または情報パネル部分に、「bioengineered food」(BE食品)または「contains a bioengineered food ingredient」(BE食品の原材料を含む)と表示します。表示方法としては、“文字”で表示する、“シンボルマーク”を表示する、“QRコード等”を掲載する、そして“テキストメッセージ”で応答できる旨の表示をする、など、大きく4つの方法があります(その他、小規模事業者には電話番号やURLでの表示も認められています)。イメージしやすいよう、以下にUSDAの消費者向けパンフレットの一部を引用します。
How will bioengineered food be labeled?

引用:What is a Bioengineered Food? (pdf)

日本の遺伝子組換え表示制度との違い


 日本から米国に食品を輸出しようとする事業者は、両国の制度の違いを知っておく必要があります。両国の制度の主な違いについて、以下のように整理してみました。

  BE食品情報開示基準(米国) 遺伝子組換え表示制度(日本)
対象食品 アルファルファ、りんご (Arctic種)、キャノーラ、とうもろこし、綿花、ナス (BARI Bt Begun種)、パパイヤ (ringspot virus-resistant種)、パイナップル (pink flesh種) 、じゃがいも、サケ (AquAdvantage)、大豆、カボチャ (summer) 、てん菜、およびこれらを原材料とする加工食品。その他バイオ工学による食品であると記録があるもの。 大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね(キャノーラ)、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤの8農産物と、これらを原材料とする33加工食品。
対象原材料重量割合の基準 表示義務は「主な原材料(重量割合上位3位以内かつ5%以上)」に限られる。
対象外の食品 高度に精製されており組換え遺伝子が検出されない食品(砂糖や油脂等)。 組換え遺伝子またはこれにより生じたたんぱく質が残存しない食品 (従来のものと組成、栄養価等が著しく異なる遺伝子組換え農産物およびその加工品を除く)。また対象原材料が「主な原材料」に該当しない食品。
義務表示の種類
  • 「bioengineered food」(BE食品)
  • 「contains a bioengineered food ingredient」(BE食品の原材料を含む)
  • 「遺伝子組換え」
  • 「遺伝子組換え不分別」
  • 「〇〇〇遺伝子組換え」(高オレイン酸等)
任意表示の種類
  • 「derived from bioengineering」
  • 「ingredient(s) derived from a bioengineered source」
  • 「遺伝子組換えでない」
    (ただし2023年4月より、組換え遺伝子が検出されない場合に限られる)
表示方法 文字、シンボルマーク、QRコード等、またはテキストメッセージで応答できる旨を容器包装に表示。 文字により容器包装に表示。
意図せざる混入率の閾値 5% 5%(分別生産流通管理が適切に行われている場合)
免除される食品 食肉、野禽、卵製品の重量割合が上位2位までの食品。食品にわずかなレベルで存在し、食品に技術的または機能的効果を持たない偶発的な添加物(21 CFR 101.100(a)(3))。外食(レストラン等)、零細事業者の食品。 添加物。外食(食品表示基準として)。

 上記のとおり、米国ではとりわけ以下の3点は日本の制度と大きく異なるため、注意しておく必要があるといえるでしょう。

  1. 原材料重量割合の基準がない
    (上位4位以下5%未満であっても、組換え遺伝子が検出される場合は対象となる)
  2. 「分別生産流通管理」にあたる基準がない※1
    (「不分別」といった可能性表示は米国では使用できない)
  3. 「遺伝子組換えでない」表示にあたる基準がない※2
    (「not bioengineered」「non-GMO」表示は、米国有機認証があれば妨げないという見解はある)

※1 反対に日本に輸入する場合には、「分別生産流通管理」「安全性審査」を確認する必要があります。
※2 日本の「遺伝子組換えでない」表示は、「検出されない」条件へと厳格化されています(2023年4月)。

 なお米国では外国語の表示に対する基準もありますので、容器包装に日本語表示を残す場合は、こうした制度改正時には同様に注意されるとよいでしょう。

参考サイトと判断ツール


 USDAは、事業者がBE食品情報開示基準の対象となるかを判断しやすいよう、WEBサイト上で判断ツールを公開しています。質問に対しYES/NOで回答を進めると、下記のような質問が表示され、その場で表示対象か対象外であるかが分かります。

Is this a bioengineered food?

引用:Decision Tool – Do I need to make a bioengineered food disclosure?

 対象の原材料(BE食品リストにあるもの)を使用されている場合は、まずは「検出されるかどうか」を確認し、その後、「どのように情報開示するか」を検討する流れになると思います。2020年1月施行、2022年1月義務化というスケジュールですので、今後米国に食品の輸出を検討される方は、注意して確認をされるとよいでしょう。


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改正食品表示法(食品リコール制度)の施行まで1ヶ月となりました

 平成30年(2018年)12月14日に公布された「食品表示法の一部を改正する法律」が、今年、令和3年(2021年)6月1日に施行されます。改正内容のポイントを再確認すると以下のとおりです。

<改正の概要>

  • 自主回収を行った場合は、行政への届出(原則オンライン)が義務化される
  • 届出された自主回収情報は、システム上に公開される
    (システムは6月1日までに稼働予定)

 既存の食品事業者の方はご存知と思いますが、昨今では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う業態転換や事業構造見直しにより、新しく食品事業に参入された方も増えていると思いますので、この機会にあらためて整理してみたいと思います。

届出が義務化される対象の表示


 「第六条第八項の内閣府令で定める事項について食品表示基準に従った表示」がされていない食品を販売した場合の自主回収が対象です。「第六条第八項の内閣府令で定める事項」とはアレルゲンやL-フェニルアラニン化合物を含む旨、消費期限、加熱を要する旨等の安全性に関係する表示を指し、これらの表示に欠落や誤りがある場合が対象となります。

 「第六条第八項の内閣府令で定める事項」の詳細は、「食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」より確認できます。
(具体的には、「名称」「保存の方法」「消費期限又は賞味期限」「アレルゲン」「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」「指定成分等含有食品に関する事項」のほか、保健機能食品、食肉、食肉製品、乳製品、液卵、魚介類、冷凍食品などの食品別に多数の表示事項が指定されています)

 また「自主回収を要しない場合」についても、2021年(令和3年)2月26日に公表されています。例えば「地域の食品製造事業者が、同一地区の個人経営の小売店に消費期限を付していない食品を販売したが、当該製造事業者から当該小売店に連絡を行い、当該小売店が消費者への販売前に販売を取りやめた場合であって、かつ、当該小売店の職員の摂取についても想定されないとき。」や「生食用と表示する予定であった魚介類等の食品に加熱加工用と表示した場合」等が該当します。

 さらに同通知内では、健康危害のレベルに応じ”CLASSⅠ””CLASSⅡ”の分類についても示されています。”CLASSⅠ”は「アレルゲン(特定原材料に準ずる品目も含む。)及びL-フェニルアラニン化合物を含む旨に関する表示」で、”CLASSⅡ”はそれ以外です。詳細は、「食品表示法第10条の2第1項の規定に基づく食品の自主回収の届出について(消食表第80号)」をご確認ください。

オンライン上での届出と公開について


 これまでに自主回収と届出を経験されたことのある食品事業者の方にとって、以前との大きな違いは「オンラインでの届出」と「システム上での公開」の2点になるものと思います。届出と公開は、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」上で行われます。実際の検索画面を見ると、イメージしやすくなると思います。

<食品衛生申請等システム(公開回収事案検索)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspub/_link.do

 このように、「商品名」「届出者名」「回収の理由」「回収方法」のほか、「健康への危険性の程度」などの情報を、都道府県別に指定して検索することができるようになります。また公開された回収事案には、食品表示法違反によるものだけでなく、食品衛生法違反による自主回収情報(カビ、残留農薬、異物混入等)も含まれます。
(【注意】なお、国内での流通後(輸入品を含む)の食品を自主回収する場合が対象となることから、輸入時点の違反事例(添加物使用基準不適合等)についての多くは、これまでどおり「輸入時違反事例(厚生労働省)」より確認をすることになります。)

 自主回収の届出は、こちらから行います。

<食品衛生申請等システム(事業者用ログイン)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspte/page/login.jsp

 現在のところ(2021年4月25日時点)すべての画面や機能が完成しているわけではないようですが、届出作業に必要なイメージをつかむことはできるかと思います。

業務フロー見直しの機会に


 なお、回収事例は公開されますので、消費者だけでなく事業者も検索することができます。どのような食品において、どのような表示にもとづく回収事例があったかを知ることができるため、食品表示確認作業の業務フローを検討する際に、注意すべきポイントの参考情報とすることもできるでしょう。
 
 6月1日の完全施行が近づくにつれ、システムのマニュアル等も追加されるものと思われます。食品表示確認の業務フローを見直したり、新しく用意したりする際のきっかけにしていただければと思います。


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健康食品の表示と確認のポイント~新型コロナウイルス予防表示への改善要請と注意喚起を踏まえ~

 2021年2月19日、消費者庁より「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請及び一般消費者等への注意喚起について」が発表されました。こうした注意喚起の発表は多く、ニュースとしてあまり取り上げていなかったのですが、時期的に公益性の高い情報であることと、最近の事業構造の見直しによる健康食品の製造販売、輸入等への参入も増えていることから、あらためて健康食品の表示の確認のポイントについて整理する機会にしたいと思います。

改善要請と注意喚起の概要


 概要をまとめると、以下のようになります。

  • 新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、かつ、民間施設における試験等の実施も困難な現状において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階においては客観性及び合理性を欠くおそれがある。
  • 一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の規定に違反するおそれが高いと考えられる。
  • インターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品、マイナスイオン発生器、除菌スプレー等に対し、緊急的措置として表示の適正化について改善要請を行うとともに、SNSを通じて一般消費者等への注意喚起を行った。

 また表示の適性化について改善要請が行われたもののうち、健康食品の例より一部を抜粋しました。

  • 新型コロナウイルスはマグネシウム不足で発症、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、セレンをビタミンCと同時に摂取することで、ウイルスに対する免疫機能を強化
  • コロナウイルス予防、ごまの脂質に含まれるリノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸は、免疫力を高める
  • はちみつの中でもさらに強力な殺菌力をもつマヌカハニー、殺菌効果でウイルス対策、コロナウイルスに負けない為に
  • 新型コロナウイルス感染症対策にも良いと言われる「大麦β-グルカン」、世界に脅威を与えるウイルスにも免疫力を高め、ウイルスに負けない身体作り 等

 発表によると、「客観性及び合理性を欠くおそれがある」ことが、今回の改善要請と注意喚起の(緊急的措置として)直接的な理由になっており、単に「新型コロナウイルスに対する予防効果」の表示をしなければよいというものではない点に注意が必要だと思います。

健康食品の表示の確認のポイント


 新しく健康食品を取り扱う方にとって、「表示制度があること」と「根拠が求められること」を知ることは、健康食品の表示を考えるうえでの基本的なポイントであるといえます。

  1. その表示をするための、必要な要件はあるか
  2. その表示を裏付ける、合理的な根拠はあるか

 保有している合理的な根拠の内容と、利用できる表示制度には相関関係があります。“健康”を広くとらえると、表示制度は大きく4つの選択肢があります(医薬品として販売するケースを除く)。

  1. 特定保健用食品として根拠資料をもとに個別審査を受け、許可を受けた表示をする
  2. 機能性表示食品として根拠資料を届出し、届け出た内容(機能性)の表示をする
  3. 栄養機能食品としての基準を満たす根拠を用意し、定められた栄養機能の表示をする
  4. 上記A~Cの表示制度によらず、A~Cの場合にのみ使用できる表示をしない

その他、栄養成分強調表示の基準を満たす根拠があれば、強調(高い、含む、強化等)の表示をすることもできます。
食品に対して医薬品的な効果を表示すると、「無承認無許可医薬品」の取り締まり対象にもなります。

合理的な根拠について


 合理的な根拠は「不実証広告規制」の考え方を参照します。消費者庁の「不実証広告ガイドラインのポイント(「合理的な根拠」の判断基準)」によると、以下のとおりです。

提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
  2. 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

 健康食品に求められる合理的な根拠の具体例としては、最終製品を用いたヒト試験、使用する原材料や含まれる成分の研究レビューなどの資料があげられます。また栄養成分を強調する場合は、最終製品(賞味期限まで)に含まれる栄養成分の分析などの資料が必要となるでしょう。
 
 先に触れた表示制度による食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)の場合は、インターネット等の広告への表示においても留意点等の基準が示されているのですが、こうした表示制度によらない一般の健康食品の場合は何をどのように表示すればよいのか基準が分かりにくくなるかもしれません。そうした際に、この「不実証広告ガイドラインのポイント」の考え方が、分かりやすい判断基準になるでしょう。

 健康食品の表示の基本は、「表示制度があること」と「根拠が求められること」を知ること。そして合理的な根拠の2つの要件のうち、本質的に重要な「2. 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」です。これから新しく健康食品の取り扱いを考えている方は、こうした制度や規制について、理解しておくことが大切だと思います。


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特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会が始まりました


 今月は、特定保健用食品制度の見直しに関するニュースを取り上げたいと思います。昨年末の2020年12月25日に第1回目の、今年1月22日に第2回目の「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」(以下「検討会」)が、消費者庁において開催されました。

検討会の背景


 特定保健用食品の疾病リスク低減表示は、平成17年(2005年)よりカルシウム及び葉酸の基準を設定し、運用されています。一方で、その運用については、制度開始以降、これまで特段の見直しは行われておりません。
 このため、消費者庁において検討会を開催し、疾病リスク低減表示の今後の運用について諸外国の状況も踏まえつつ、専門家から幅広く意見を伺い、検討を行うこととされました。

特定保健用食品(疾病リスク低減表示)とは


 まずは特定保健用食品の分類についてですが、以下のとおりに整理されています。

「特定保健用食品」:
食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品
「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」
関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合、疾病リスク低減表示を認める特定保健用食品
(現在は関与成分としてカルシウム及び葉酸がある)
「特定保健用食品(規格基準型)」:
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関与成分について規格基準を定め、消費者委員会の個別審査なく、消費者庁において規格基準への適合性を審査し許可する特定保健用食品
「特定保健用食品(再許可等)」:
既に許可を受けている食品について、商品名や風味等の軽微な変更等をした特定保健用食品
「条件付き特定保健用食品」:
特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可する特定保健用食品

 今回の検討会での審議の対象は、上から2番目の「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」です。「疾病リスク低減表示」の表示基準は、以下のとおりです。

関与成分 特定の保健の用途に
係る表示
摂取する上での
注意事項
一日摂取目安量の下限値 一日摂取目安量の上限値
カルシウム
(食品添加物公定書等に定められたもの又は食品等として人が摂取してきた経験が十分に存在するものに由来するもの)
この食品はカルシウムを豊富に含みます。日頃の運動と適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は、若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません。 一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、カルシウムを過剰に摂取しても骨粗鬆症になるリスクがなくなるわけではありません。 300mg

700mg

葉酸
(プテロイルモノグルタミン酸)
この食品は葉酸を豊富に含みます。適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減するかもしれません。 一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、葉酸を過剰に摂取しても神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクがなくなるわけではありません。 400µg

1,000µg

 「疾病リスク低減表示」の許可件数は、30件です(失効済みの品目を除く)。内訳はカルシウムが30件、葉酸は0件です。なお検討会の資料によると、特定保健用食品全体の許可件数1,075件、機能性表示食品の届出公表件数は3,168件とされています。

主な論点


 検討会の主な論点(案)は、以下のとおりです。

  1. 米国、カナダ、EUで認められている疾病リスク低減表示を踏まえた検討
  2. 許可文言の柔軟性
  3. 表示の内容等の基準が定められていない 疾病リスク低減表示の申請
  4. その他(先行申請者の権利保護)

 現状の「疾病リスク低減表示」において許可されている関与成分は、先述のカルシウム(骨粗鬆症のリスク低減可能性)と葉酸(神経管閉鎖障害のリスク低減可能性)の2つのみです。検討会では、諸外国で認められている疾病リスク低減表示を参考に、対象の拡充や許可文言の柔軟性について審議がなされる見込みです。

<米国・カナダ・EUで認められている疾病リスク低減表示の例>

表現の内容 表示が認められている国・地域
(△は類似の表示が認められている場合)
米国 カナダ EU
1.摂取量を減らすことによる表示      
ナトリウムと高血圧  
飽和脂肪、コレステロールと冠状動脈性心疾患
食事性脂肪とがん    
2.現行のトクホ(疾病リスク低減表示)制度に沿った表示      
カルシウム、ビタミンDと骨粗しょう症  
ビタミンDと転倒    
3-1.既許可のトクホに類似の表示(疾病リスクを低減する旨の直接的な表示)      
非う蝕性糖質甘味料と虫歯
フッ素添加水と虫歯    
3-2.既許可のトクホに類似の表示(疾病の代替指標の取扱い)      
特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠状動脈性心疾患  
大豆たんぱく質と冠状動脈性心疾患    
植物ステロールエステル、スタノールエステルと冠状動脈性心疾患  
4.対象成分が限定されていない表示      
食物繊維を含む穀物製品、果物、野菜とがん    
果物、野菜とがん  
果物、野菜と冠状動脈性心疾患  

今後の予定


 第3回目の検討会は3月に行われる予定で、そこで今後の運用の方向性の取りまとめがなされる見込みです。その際に、例えば「新たな関与成分について基準を設定する」等の対応が必要と判断された場合は、4月以降に具体的な検討が行われる予定です。とりわけ健康に関する表示をされている食品を取り扱いの方は、議事資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


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2020年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 年初にあたり、まずは昨年に起きた食品表示に関するニュースと、今後の予定について整理してみました。昨年は新型コロナ感染症に関する話題が多かったと思いますが、ここでは食品表示関連の話題について改めて確認する機会にできればと思います。

昨年の主なニュース


 食品表示に関する実務を進めるうえで大きな話題となったのは、添加物の表示の見直しのため、2020年7月に食品表示基準から「人工」「合成」の用語が削除されたことかと思います。主に「食品表示基準」を中心に、関連する基準等の改正とその概要についてこちらに整理してみました。

2020年 3月24日 「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」公表※1
3月27日 食品表示基準の一部改正(「指定成分含有食品※2」等の追加)
3月31日 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)(製造所固有記号)終了
3月31日 「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」公表※3
7月16日 食品表示基準の一部改正(「魚介類の名称のガイドライン」の一部改正※4、「人工」「合成」の用語の削除※5、「有機畜産物の日本農林規格」の追加※6、等)
8月21日 「特定保健用食品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」施行※7
10月14日 「玄米及び精米の食品表示制度の改正(案)」のパブリックコメント募集※8
※1.事業者の予見可能性を高めるため、主に「科学的根拠」と「広告表示」について具体的な基準を示したもの。
※2.「コレウス・フォルスコリー」、「ドオウレン」、「プエラリア・ミリフィカ」、「ブラックコホシュ」の4成分が対象。
※3.「人工」「合成」の用語は削除とした。「無添加」、「不使用」等は、新たにガイドラインが策定される予定。
※4.同時に「魚介類の名称のガイドラインに係る魚類の新標準和名の提唱手順」を公表。
※5.第3条第1項の表(着色料)、別表第6(甘味料、着色料、保存料)、別表第7(香料)を改正。
※6.有機畜産物、有機畜産物加工食品についても第三者認証を受け有機JASマークを付すことが必要。
※7.「容器包装以外の表示」(広告等の表示)についても「必要」「推奨」「任意」表示事項を規定している。
※8.農産物検査規格の見直しに伴う改正案。意見募集後(11月18日、12月17日)の審議中。

 その他、「食品表示基準について(通知)」については1月15日、3月27日、6月18日、7月16日、11月30日に第18~22次改正が、「食品表示基準Q&A」については3月27日に第10次改正、7月16日に第11次改正が行われています。

 また3月から4月にかけて、新型コロナウイルス感染症を背景に、食品表示制度に関しての弾力的な運用に関する通知も発表されました。(「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」「(同)米トレーサビリティ法の弾力的運用について」「(同)製造所等及び製造所固有記号の表示の運用について」等)

今後の予定


 最後に、今後数年の間に予定されている表示関連情報をまとめてみました。

2021年6月1日 「食品表示法の一部を改正する法律」の施行期日(自主回収報告の義務化)
2021年7月1日 「玄米及び精米の食品表示制度の改正」の施行予定
2022年3月31日 新たな原料原産地表示制度 経過措置期間終了
未定 「くるみ」のアレルゲン義務表示品目への移行予定
「無添加」、「不使用」等の表示に関するガイドラインの策定
栄養強化目的の添加物についての実態調査実施(原則全ての加工食品に表示させる方向)

 昨年は新型コロナ感染症とその影響に関する話題が多くを占めた年でした。今年は少なくとも、昨年よりは明るい話題が増えるよう願っています。


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農産物検査規格の見直しに伴う「玄米及び精米の食品表示制度の改正(案)」について

 
 玄米及び精米の食品表示制度が、今後改正される見込みです。2020年10月14日~11月15日の期間、パブリックコメントの募集がなされました。また10月27日および11月18日に、消費者委員会食品表示部会において審議がなされています。以下に、主な改正点とその背景、今後の予定について整理してみたいと思います。

主な改正のポイント


  1. 玄米及び精米の表示に関して、現行、農産物検査による証明を受けている場合のみ、産地、品種及び産年の表示が可能であるところ、農産物検査による証明を受けていない場合であっても、産地、品種及び産年の表示を可能とすること
  2. 産地、品種及び産年の表示の根拠となる資料の保管を義務付けること
  3. 産地、品種、産年等の表示事項の根拠を確認した方法の表示を可能とすること

参照:「食品表示基準の一部改正案に関する意見募集について(消費者庁)令和2年10月14日」より

改正の背景


 規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、「農産物検査規格の見直し」が対象とされ、玄米及び精米について農産物検査を要件とする食品表示制度の見直しを行うこととされたことが直接の背景です。
 規制改革実施計画は、2016年より推進されてきた「農業競争力強化プログラム(農林水産省)」における「農産物規格・検査の見直し」の状況や、2020年1月に提出された「農産物(米)規格・検査に関する意見(公益社団法人 日本農業法人協会)」等をもとに、「規制改革推進会議 農林水産ワーキング・グループ」において検討されたものです。

規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)(抜粋)

産地、品種、産年などの食品表示
食品表示基準上、検査米、未検査米双方を対象に表示義務のある産地に加え、品種、産年、生産者、検査・品質確認を行った者などの一定の事実情報の任意表示を可能とする(例:品質確認 JA〇〇(登録検査機関名)、品質確認 〇〇ライス(農業者名))。農産物検査済みのものについては、「農産物検査証明による」旨の表示ができるようにするとともに、農産物検査を受検しない場合についてその旨の表示を義務付けることはしない。
また、根拠が不確かな表示がなされた米が流通することを排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、検査や取引に関する記録の保存方法など必要な措置は食品表示基準等やその運用で担保する。
以上のことを、消費者委員会の意見も踏まえ、結論を得る。

現行と改正案の違い


 現行との比較については消費者庁の資料が分かりやすいので、こちらに引用いたします。

玄米及び精米に関する表示の改正について

規制改革実施計画を踏まえ、①農産物検査による証明を受けていない場合であっても産地、品種及び産年の表示を可能とし、②一方で、根拠が不確かな表示がなされた米の流通を排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、産地、品種、産年の根拠を示す資料の保管を義務付け、③農産物検査証明による等、表示事項の根拠の確認方法の表示を可能とするとともに、④生産者名等、消費者が食品を選択する上で適切な情報は、枠内への表示を可能とするため、基準第23条、別表第24及び別記様式4の改正を行う。

引用:食品表示基準の一部改正について 令和2年10月 消費者庁食品表示企画課

食品表示基準の改正による単一原料米の表示事項の変更点
(※画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。)

引用:補足説明資料 令和2年11月 消費者庁食品表示企画課

今後の予定


 消費者委員会食品表示部会による諮問・答申を経て、2021年3月31日までに公布、2021年7月1日に施行予定とされており、令和3年(2021年)産米から改正後の規定で表示可能になる見込みです。玄米や精米だけでなく、米を主な原材料とする食品を取り扱いの方は、改正点について確認をされておくとよいと思います。


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配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。