Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

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「大豆ミート食品類」の日本農林規格が制定されました~プラントベース(植物由来)食品の表示の注意点について~

【2022年4月7日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

ミニセミナー(90分拡張版)「プラントベース(植物由来)食品の表示について~国内および海外表示制度の動向~」を開催いたします。こちらの記事の内容を主に題材として、現在の状況を整理しお伝えしたいと思います。

 2022年2月24日、大豆ミート食品類の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2020年秋にJAS規格化に向けた検討(検討主体:大塚食品株式会社)を開始し、その後2021年11月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。大豆ミート食品類の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」の2食品の要件が定義されています。

「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」


 同規格の定義より、2食品の違いを整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
加工 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること
原材料 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料およびその加工品を原材料として使用しないこと 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料(乳及び食用鳥卵を除く)およびその加工品(調味料を除く)を原材料として使用しないこと
大豆たん白質含有率 大豆たん白質含有率が10%以上であること 大豆たん白質含有率が1%以上であること
原料のアミノ酸スコア アミノ酸スコアが100である大豆ミート原料を使用すること -(設定なし)

 なお、アミノ酸スコアの基準値設定の経緯として、「大豆たん白の新たな摂り方を消費者に提案する目的」から「全ての必須アミノ酸をバランスよく摂取できる」点の訴求は重要であるためとされています。

表示について


 同規格より、表示の基準を整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
表示事項 “大豆ミート食品”又は“大豆肉様食品”と容器包装の見やすい箇所に記載 “調製大豆ミート食品”又は“調製大豆肉様食品” と容器包装の見やすい箇所に記載
当該製品が食肉ではないことの説明(“肉を使用していません”,“肉不使用”等)を容器包装の見やすい箇所に記載しなければならない。
表示方法 -(設定なし)
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)

※業務用加工食品については,送り状,納品書等又は規格書等に表示できる。

 大豆ミート食品類においては、“肉を使用していません”,“肉不使用”等の表示が必要となる点については、昨年夏に消費者庁より公表された「プラントベース(植物由来)食品等の表示に関するQ&A」が参考になると思いますので、以下に関連Q&Aを整理してみたいと思います。

プラントベース食品等の表示に関するQ&A


 2021年8月20日に公表された同Q&Aより、植物由来食品の「肉」(代替肉)に関する表示について注意点を抜粋します。(プラントベース食品の定義は、「主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含める。」)

表示例 注意点
商品名に「大豆肉」、「ノットミート」等と表示 商品名とは別に、「大豆を使用したものです」、「原材料に大豆使用」、「お肉を使用していません」、「肉不使用」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食肉ではないのに食肉であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉を使ったハンバーグの商品名に「大豆からつくったハンバーグ」と表示 代替肉の使用割合が100%でない場合は、例えば、商品名とは別に、代替肉の使用割合を表示するなど、一般消費者が、表示全体から、代替肉の使用割合が100%ではないのに100%であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉の商品名に「大豆ミート」と表示し、「100%植物性」と併記 商品名とは別に、「原材料は植物性です(食品添加物を除く)」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食品添加物を含めて全ての原材料に植物性のものを使用していないのに使用しているかのように誤認する表示になっていないこと

 上記は、容器包装を含むすべての表示に関する注意事項です。そして以下が、一括表示内の「原材料名表示」に関する注意点です。プラントベース食品の原材料名表示では、「肉」や「卵」を含む用語は使用できない点に注意が必要といえます。

Q. プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

A. 食品表示基準において、原材料名は「その最も一般的な名称をもって表示する」こととなっております。プラントベース(植物由来)食品の原材料名としては、例えば、大豆から作られている食品の場合には、「大豆」「大豆加工品」等と記載してください。なお、プラントベース(植物由来)食品の原材料の名称としては、現時点では、肉や卵を含む用語は 、「一般的な名称」とは言えないと考えます。

 以上、大豆ミート食品類のJAS規格の概要と、プラントベース食品の表示に関する注意点についてです。また関連する食品として、「ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品」のJAS規格化も検討が進んでいる状況です。大豆をはじめとする植物由来食品を取り扱いの方は、一度、こうした状況を整理しておかれるとよいと思います。

【2022年4月7日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

ミニセミナー(90分拡張版)「プラントベース(植物由来)食品の表示について~国内および海外表示制度の動向~」を開催いたします。こちらの記事の内容を主に題材として、現在の状況を整理しお伝えしたいと思います。


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食品添加物の不使用表示に関するガイドラインの意見募集後修正案が公表されました

【2022年3月24日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。
意見募集の結果を受けて修正されたガイドライン案の資料等(2022年3月1日公表分)をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。

 2022年3月1日、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会において、消費者庁は意見募集(パブリックコメント)後修正の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)」を公表しました。意見募集時の案より変更されている点もありますので、こちらに整理してみたいと思います。

意見募集の結果について


 パブリックコメントは2021年12月22日に開始され、2022年1月21日に締め切られました。寄せられた意見総数は758件です。意見の内訳も資料(「パブリックコメントにおける御意見」)として公表されています。
 「ガイドライン全体」、「ガイドラインの適用範囲」、「類型」、「普及・啓発」、「表示の見直し期間」、「その他」の分類のうち最も意見の多かったものは「類型(376件)」、次に「ガイドライン全体(208件)」です。また「類型」のうち意見の多かったものは「類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示(68件)」、次に「類型10:過度に強調された表示(50件)」、そして「類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示(47件)」、「類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示(46件)」と続きます。

意見募集後修正案の主な変更点について


 同検討会では、「ガイドライン見え消し修正版」として、意見募集時のガイドライン案からの修正点が分かりやすい資料が公表されています。以下に、実務に影響のあると思われる変更点を抜粋します。
(赤文字のうち、下線は追加、取り消し線は削除された箇所)

  意見募集後修正
背景及び趣旨 本ガイドラインは、食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものである。
類型1 単なる「無添加」の表示 ・例:無添加となる対象が不明確な、単に「無添加」とだけ記載した表示
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示 ・例:「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学調味料、天然等の用語を使用した表示
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示 - (軽微な修正のみ)
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示 ・不使用表示の食品添加物と、それと同一機能、類似機能を有する食品添加物の違いが表示において分からない場合
・例2:既存添加物の着色料を使用した食品に、「合成着色料不使用」○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。)
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示 ・例1:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、化学調味料添加物としての調味料を使用していない旨を表示
類型6 健康、安全と関連付ける表示 - (軽微な修正のみ)
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示 ・例2:「開封後」に言及せずに 「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示 ・例1:同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に 「着色料不使用」と表示
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示 - (軽微な修正のみ)
類型10 過度に強調された表示 ・例1:商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
ガイドラインに基づく表示の見直し ・2年程度(令和6年3月末)の間に、必要に応じて適宜、表示の見直しを行うことが求められる
なお、この期間に製造・販売等された加工食品が見直し前の表示で流通することはやむを得ないと考えるが、2年に満たない間においても、可能な限り速やかに見直しを行うことが望ましい。

 なお、パブリックコメントとして寄せられた意見の多かった類型4および5と、これらに影響のある類型10の「御意見に対する考え方」では、以下の回答が多く使用されています。○○の場合は類型に該当するか、といった具体例を列挙するのは難しいとされていることから、自己点検は各事業者の判断に委ねられることになると思われます。

・消費者の商品選択において表示の正確性は重要なことであると考えられることから、本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関して、誤認又は矛盾させる表示に基づく商品選択が行われることがないよう、食品表示基準第9条に規定する表示禁止事項の解釈を示したものです。

・食品表示基準第9条においては、どのような表示が消費者に対する正確な情報提供となる表示なのか、また、どのような表示が消費者に誤認を与える表示なのか等は、詳細に規定していないこと、実際の商品における食品添加物の不使用表示の種類は多岐に渡っていることから、あらゆる例示を列挙することは困難です。

・本ガイドラインは、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かのメルクマールとして新たに策定されたものです。

・なお、食品添加物の不使用表示が食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するか否かは、各類型のうち、表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる場合に当てはまることだけではなく、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容などを基に、ケースバイケースで全体として判断するものです。

今後の予定


 2022年3月末までに正式なガイドラインとして公表される見通しです。その後、2024年3月末までに表示の見直しを行うといった予定になる見込みです。該当する表示をされている商品を取り扱いの方は、ガイドライン案はじめ検討会の資料について、事前に目を通しておかれるとよいと思います。

【2022年3月24日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。
意見募集の結果を受けて修正されたガイドライン案の資料等(2022年3月1日公表分)をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。


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食品表示基準の一部改正の予定について~栄養成分分析方法の整理、遺伝子組換え”からしな”の追加等~

【2022年3月17日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。食品表示基準などの公開資料等をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。

 2022年1月17日に内閣府消費者委員会にて第66回食品表示部会が開催され、食品表示基準の一部改正に関する審議が行われました。栄養成分、遺伝子組換え等に関する改正案の意見募集(2021年10月27日~11月26日)を終え、2022年3月末までに一部改正の公布と同日施行が予定されていますので、食品表示部会資料「食品表示基準の一部改正(消費者庁)」をもとに、主な改正点について整理してみたいと思います。

<ポイント>

  • 脂質の分析方法を統合整理、クロム、セレン、ヨウ素の新たな分析方法を追加
  • 遺伝子組換え表示対象農産物に「からしな」を追加
  • 特定遺伝子組換え農産物の表示対象から「高オレイン酸」を削除

栄養成分について


 2020年12月に文部科学省より公表された「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」における分析方法等の改訂が、直接的な背景であるといえます。以下、資料「食品表示基準の一部改正について」より引用します。

     栄養成分等に係る公定法については、基準別表第9及び「食品表示基準について」別添栄養成分等の分析方法等(以下「分析等通知」という。)に規定されている。分析等通知に記載されている方法以外の方が、より定量に適している場合があるなど、従前より分析等通知における運用上の課題が指摘されていた。
    これに加え、文部科学省の日本食品標準成分表2020年版(八訂)が公表され、新たな栄養成分等の分析方法等が追加。これらを踏まえ、事業者の実行可能性や都道府県等における検証可能性も踏まえつつ、消費者庁において「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」を実施し、関係法令等の改正の要否等を議論。

 そして上記の調査検討事業における議論の結果をもとに、今回の改正案が示されたことになります。

「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」における議論を踏まえ、栄養成分、栄養機能食品の表示、栄養強調表示に係る分析方法等を定めた基準別表第9を改正し、新たな分析方法の追加を行う。
現行の基準別表第9に規定されているゲルベル法以外の測定及び算出の方法並びに「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」において追加することが妥当と判断された酸・アンモニア分解法は「溶媒抽出-重量法」と整理し、具体的な分析方法等は引き続き分析等通知に規定。

 改正箇所は、食品表示基準別表第9です。以下に別表第9の「栄養成分及び熱量」「測定及び算出の方法」のみを抜粋し、現行と改正案を整理してみます。

栄養成分及び熱量 測定及び算出の方法
脂質 現行 エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法
改正案 ゲルベル法又は溶媒抽出-重量法
クロム 現行 原子吸光光度法又は誘導結合プラズマ発光分析法
改正案 原子吸光光度法誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量法
セレン 現行 蛍光光度法又は原子吸光光度法
改正案 蛍光光度法原子吸光光度法又は誘導結合プラズマ質量法
ヨウ素 現行 滴定法又はガスクロマトグラフ法
改正案 滴定法ガスクロマトグラフ法又は誘導結合プラズマ質量法

 その他、別表第12の「ビタミンK」の「高い旨の表示の基準値」の100kcal当たりが、30㎍から15㎍に変更されます。
 なお、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」では熱量の算出方法が変更(アミノ酸組成によるたんぱく質、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量で表した脂質、利用可能炭水化物(単糖当量)、糖アルコール、食物繊維、有機酸及びアルコールに各成分のエネルギー換算係数を乗じて算出)されましたが、調査検討事業の検討結果、熱量については引き続き「修正アトウォーター法」により算出することになりました。

遺伝子組換えについて


 「からしな」の追加と、「高オレイン酸」の削除の大きく2つの改正が予定されていますが、それぞれ資料「食品表示基準の一部改正について」より背景と改正概要について引用します。

遺伝子組換えからしな(以下「GMからしな」という)について、厚生労働省による安全性審査を経て、GMからしな由来の食品の国内流通が見込まれる。
このため、基準別表第16及び第17に掲げる対象農産物に「からしな」を加える。
今回、安全性審査が行われているGMからしなは油糧用の品種であり、食用油としての流通のみが想定されることから、別表第17のからしなに係る加工食品は規定しないこととする。

高オレイン酸遺伝子組換え大豆は、組換えDNA技術を用いて生産されたことにより、組成、栄養価等が通常の農産物と著しく異なる「特定遺伝子組換え農産物」とされている。
今般、高オレイン酸の形質を有する大豆について、従来育種により生産可能となったことにより、高オレイン酸遺伝子組換え大豆は、「特定遺伝子組換え農産物」の定義に該当しなくなった。
このため、「特定遺伝子組換え農産物」として義務表示の対象を規定している基準別表第18の上欄から、「高オレイン酸」を削除する。

 改正箇所は、食品表示基準別表第16、17、18です。

別表第16(第2条関係)

[1~8 略]
9 からしな 【追加】

別表第17(第3条、第9条関係)

対象農産物 加工食品
(略)  
からしな 【追加】  

別表第18(第3条、第18条関係)

  形質 加工食品 対象農産物
現行 高オレイン酸 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
ステアリドン酸産生
改正案 【削除】
ステアリドン酸産生

 なお、今回の基準改正は「高オレイン酸」形質に係る表示を妨げるものではないため、基準改正後においても高オレイン酸形質を付加価値として事業者が訴求したい場合は、引き続き、根拠に基づき任意でその表示をすることが可能とされています。また、「高オレイン酸大豆」の使用の旨を強調する場合は「特色のある原材料等に関する事項」に従って表示することが必要です。
 その他、食品表示基準別表第22(表示禁止事項)の「しょうゆ」「食用植物油脂」について、日本農林規格(JAS)の改正に伴い、引用箇所の表現が変更されています。

今後の予定


 2022年3月末までに同日での公布と施行が予定されています。すぐに表示の修正対応が必要になる改正ではありませんが、該当する表示がされている商品を取り扱いの場合は、あらためて確認されておくとよいと思います。

【2022年3月17日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。食品表示基準などの公開資料等をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。


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食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案について意見募集が開始されました

【2022年3月24日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。
意見募集の結果を受けて修正されたガイドライン案の資料等(2022年3月1日公表分)をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。

 2021年12月22日、消費者庁は「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案」に関する意見募集(パブリックコメント)を開始しました。2021年11月18日に公表された「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」(食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会)からいくつか変更されている点もありますので、こちらに整理してみたいと思います。

意見募集の背景


 まずはガイドラインの策定に至った経緯の再確認として、「意見募集の趣旨」より引用します。

  • 食品表示基準第9条では表示すべき事項の内容と矛盾する用語や内容物を誤認させるような文字等を禁止してはいるものの、その解釈を示す食品表示基準Q&Aが網羅的ではない
  • 「無添加」等の表示方法を示す食品表示基準Q&Aが曖昧である
  • 「無添加」等の表示は商品の主要面に義務表示事項よりも目立つように表示されるケースがあり、本来見るべき一括表示欄が活用されていない
  • といった現状等を踏まえ、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるガイドラインを新たに策定することが提案された。

前回(11月18日)検討会案からの変更点


 類型項目(案)からの主な変更点は以下のとおりです。

  • 「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」に一本化
    (「第9条に直ちに該当しないものの、消費者への誤認を生じさせるおそれのある表示」の削除)
  • 11の類型項目のうち旧④と旧⑩を統合し、10の類型項目に再編

 その他は表現の修正や、例文の具体化など、変更は軽微なものであるといえます。

表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示


 食品添加物の「無添加」「不使用」などの表示について、「表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」として、以下の10類型が示されています。(赤文字は、類型項目案より表現の修正があった箇所)

類型1 単なる「無添加」の表示
例:単に「無添加」とだけ記載した表示
(対象を明示せず単に無添加と表示をすると、何を添加していないのかが不明確である)
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例:「人工甘味料不使用」等、人工、合成、化学調味料、天然等の用語を使用
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示
※清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反
例2:食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例1:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示
例2:既存添加物の着色料を使用した食品に、「合成着色料不使用」と表示
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例1:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、化学調味料を使用していない旨を表示
例2:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示
(不使用表示と共に同一機能、類似機能を有する原材料について明示しない場合、消費者が当該原材料の機能であると分からず、他の原材料による機能が作用していると読み取るおそれがあり、内容物を誤認させるおそれがある)
類型6 健康、安全と関連付ける表示
例1:体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
例1:おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
「開封後」に言及せずに表示することで、期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合)
例3:製品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例1:食品元来の色を呈している食品に「着色料不使用」と表示
例2:同種の商品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示(消費者が当該食品添加物の使用を予期していない例としては、ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用等)
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
例1:原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示
例2:原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示
(食品添加物の表示については、当該食品の原材料の製造又は加工の過程まで確認を行うことが必要であり、一括表示外であっても、確認結果に基づいた表示を行わない場合、内容物を誤認させるおそれがある)
類型10 過度に強調された表示
例1:商品の多くの箇所に、目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
例2:保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示

表示の見直しについて

 今回のガイドライン案には、表示の見直しにかかる期間にも言及がされています。

  • 第9条に新たな規定を設けるものではないことから、本来であれば特段の経過措置期間を要するものではない
  • しかし第9条の解釈を示す食品表示基準Q&Aが曖昧等の理由により、表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示が行われている可能性がある
  • 2年程度(令和6年3月末)の間に、必要に応じて表示の見直しを行うこと

 意見募集の受付締切日は2022年1月21日となっております。意見募集の結果による修正を経て、2022年3月までには正式なガイドラインとして公表される見通しです。今後、関連する食品表示基準Q&Aや公正競争規約についても何らかの修正がなされると思われますが、今回のガイドライン案のみをもって、ひとまず現状の表示の見直しの要不要についての判断はしやすくなると思います。関連する不使用表示は現在行っていない場合でも、食品添加物の表示に対する考え方の参考になると思いますので、一度目を通しておかれるとよいでしょう。

【2022年3月24日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。
意見募集の結果を受けて修正されたガイドライン案の資料等(2022年3月1日公表分)をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。

添加物不使用表示の類型項目案が公表されました

【最終更新日:2021年12月13日】

2021年12月9日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)」が公表されました。「前回検討会からの変更点」の資料も公表されていますので、ご確認ください。

 2021年11月18日、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会において消費者庁は「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」を公表しました。以下に、案の概要について整理してみたいと思います。

背景と目的


 2020年2月27日に公表された「食品添加物表示制度に関する検討会報告書(案)」において、「表示禁止事項に当たるかどうかのメルクマールとなるガイドラインを策定すること」と整理されたことが背景となっています。目的は、「食品表示基準で禁止されている表示すべき事項の内容と矛盾する又は内容物を誤認させるような“無添加”等の表示をなくすこと」です。

 そして今回の検討会において①~⑪の類型項目案が示され、これらが「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれのある表示」として以下のいずれに該当するかが検討されている状況です。

(1)第9条第1項の規定に該当するおそれのある表示
(2)第9条第1項の規定に直ちに該当しないものの、消費者への誤認を生じさせるおそれのある表示

類型項目の案


 以下が、「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」として示された①~⑪の類型項目です。

No. 概略 詳細
単なる「無添加」 無添加となる対象が不明確
例:単なる「無添加」の表示
食品表示基準に規定されていない用語 無添加あるいは不使用と共に用いる用語が食品表示基準において規定されていない
例:「人工甘味料不使用」等、人工、合成、化学調味料、天然等の用語を使用
添加物の使用が法令で認められていない 当該食品に対して添加物の使用が法令上で認められていない
例:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」/食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該添加物を無添加あるいは不使用と表示
※清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反
一切の添加物の不使用を想起 添加物を使用しているのに、添加物が全く使用されていないことを想起させる
例:大きく「無添加」と表示した側に小さく「保存料、着色料」の表示(保存料、着色料以外は使用)
同一機能・類似機能(添加物) 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」としながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する他の添加物を使用している
例:「保存料不使用」としながら日持ち向上目的で添加物を使用/合成着色料不使用としながら既存添加物の着色料を使用
同一機能・類似機能(原材料) 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」としながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する原材料を使用している
例:化学調味料を使用していない旨の表示をしながら、原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用/乳化剤を使用していない旨を表示しながら卵黄など乳化作用をもつ原材料を使用
健康、安全と関連付ける 無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける
例:体にいいことの理由として無添加あるいは不使用を表示/安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
健康、安全以外と関連付ける 健康、安全以外の、賞味期限及び消費期限、添加物の用途、おいしい等と関連付ける
例:「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」/製品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示/おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
添加物の使用が予期されていない 消費者が通常その食品に添加物が使用されていることを予期していない
例:食品元来の色を呈している食品に「着色料不使用」/同種の商品が一般的に当該添加物を使用していないことから、消費者が当該添加物の使用を予期していない商品に対して、当該添加物の不使用を表示
強調 過度に無添加あるいは不使用の文字等を使用している
例:場所を変えて複数回、〇〇を使用していない旨を記載する/一括表示欄よりも大きな文字や目立つ色を使用して「〇〇不使用」
加工助剤、キャリーオーバー 加工助剤やキャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)
例:最終製品に「保存料不使用」の表示をしているが、原材料に保存料を使用している/原材料の製造工程において添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示

今後の注意点


 「食品表示基準第9条に該当するか否かの確認(案)」において、①②③⑤⑥⑦⑧⑨⑪は上記1(表示禁止事項に該当するおそれ)に該当し、④⑩は2(消費者への誤認を生じさせるおそれ)に該当するとして、それぞれの詳細について整理がされています。以下に、②と⑤⑥、⑦⑧について同資料の「消費者に誤認を生じさせるおそれが高いと考えられる表示の詳細」より注意点を抜粋したいと思います。

 【②食品表示基準に規定されていない用語】として、「化学調味料不使用」の用語は使用できなくなる見込みです。「食品表示基準において、添加物の表示は化学的合成品と天然物に差を設けず原則として全て表示することとし、次長通知でも、添加物の表示において“天然”又はこれに類する表現の使用を認めていない」点に注意が必要です。

 【⑤同一機能・類似機能(添加物)】と【⑥同一機能・類似機能(原材料)】については、分類の背景として「コーデックスにおいては、同程度に顕著な表現で明示されている場合を除き、当該品に同等な特質を与える他の物質により代替されている場合、強調表示を用いることができない」ことが引用されている点に注意が必要です。また今後、どの程度まで具体例が追加されるのかも、実務上のポイントになると思われます。

 【⑦無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける】類型は、「添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難」とされています。

 最後に【⑧健康、安全以外の、賞味期限及び消費期限、添加物の用途、おいしい等と関連付ける】類型については、「おいしい理由として添加物不使用表示をする際に、おいしい理由と添加物不使用であることとの因果関係を説明できない場合には、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある」とされている点に注意が必要といえるでしょう。

 2022年3月末までを目処に、ガイドラインの公表と関連する食品表示基準Q&Aの見直し、そして関連する公正競争規約の改定も発表される見通しですので、まずはこちらで取り上げた資料の詳細を確認されるとよいと思います。

【2021年12月13日 追記】

 2021年12月9日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)」が公表されました。
「前回検討会からの変更点」の資料も公表されていますので、ご確認ください。

<主な変更点>

  • 「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」に一本化
  • 11の類型項目のうち旧④と旧⑩を統合し、10の類型項目に再編

参照:第7回食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2021年12月9日)

「低塩」「無糖」の表示基準について~海外のlow-salt-low-sugar表示動向を参考に~


 2021年9月、香港食品環境衛生局食品安全センター(CFS)は、容器包装済み食品に任意で表示できる新しい取り組みとしてlow-salt-low-sugarマークを発表しました。健康志向を背景に、ナトリウム(塩)と糖類の表示に対する関心が世界各国で高まっているものと思われます。今回のコラムでは、日本の現状の制度における「低塩」や「無糖」などの表示基準について整理してみたいと思います。

適切な摂取ができる旨(含まない、低い、低減された旨)について


 「無糖」「低塩」「糖類25%オフ」といった強調表示については、「栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨」として食品表示基準別表第十三に基準値が定められています。「無糖」などの「含まない旨」は基準値未満である場合に、「低塩」などの「低い旨」は基準値以下である場合に表示できます。「糖類25%オフ」などの「低減された旨」については、他の同種の食品に比べて低減された当該栄養成分の量が基準値以上であって、かつ低減された割合が25%以上である場合に表示できます。なお「糖質」については設定がないため、「糖質〇〇%オフ」と表示する場合は事業者で判断することになります。

栄養成分 含まない旨の表示の基準値 低い旨の表示基準値 低減された旨の表示の基準値
食品100g当たり(括弧内は、一般に飲用に供する液状の食品100ml当たりの場合)
ナトリウム 5mg(5mg) 120mg(120mg) 120mg(120mg)
糖類 0.5g(0.5g) 5g(2.5g) 5g(2.5g)

 具体的な表示例については、「<事業者向け>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第3版」に記載されているので、一度確認されておかれるとよいでしょう。

例)
含まない旨:無〇〇、〇〇ゼロ、ノン〇〇、等
低い旨:低〇〇、〇〇ひかえめ、〇〇少、〇〇ライト、ダイエット〇〇、等
低減された旨:〇〇30%カット、〇〇10gオフ、〇〇ハーフ、等

 栄養成分の測定方法は、食品表示基準別表第九に定められています。ナトリウムは「原子吸光光度法又は誘導結合プラズマ発光分析法」により測定し、食塩相当量に換算(ナトリウムmg×2.54÷1000=食塩相当量g)した値を、栄養成分表示の食塩相当量として小数第一位まで表示します。糖類は「ガスクロマトグラフ法又は高速液体クロマトグラフ法」により測定します。なお糖類については「単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る」と定義されている点に留意が必要です。

添加していない旨について


 「食塩無添加」「食塩不使用」や「糖類無添加」「砂糖不使用」といった強調表示については、「添加していない旨」として食品表示基準第七条に要件が定められています。ナトリウム塩は、塩化ナトリウムの他、リン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムなど調味料としての添加物にも使用されるため、物質名まで確認することが必要です。糖類は「単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る」と定義されており、例としてはショ糖、ぶどう糖、ハチミツ、コーンシロップなどが該当します。

ナトリウム塩を添加していない旨 次に掲げる要件の全てに該当する場合には、ナトリウム塩を添加していない旨の表示をすることができる。

  1. いかなるナトリウム塩も添加されていないこと(ただし、食塩以外のナトリウム塩を技術的目的で添加する場合であって、当該食品に含まれるナトリウムの量が別表第十三の第三欄に定める基準値以下であるときは、この限りでない)。
  2. ナトリウム塩(添加されたものに限る)に代わる原材料(複合原材料を含む)又は添加物を使用していないこと。
糖類を添加していない旨 次に掲げる要件の全てに該当する場合には、糖類を添加していない旨の表示をすることができる。

  1. いかなる糖類も添加されていないこと。
  2. 糖類(添加されたものに限る)に代わる原材料(複合原材料を含む)又は添加物を使用していないこと。
  3. 酵素分解その他何らかの方法により、当該食品の糖類含有量が原材料及び添加物に含まれていた量を超えていないこと。
  4. 当該食品の100g若しくは100ml又は一食分、一包装その他の一単位当たりの糖類の含有量を表示していること。

 また「ナトリウム塩に代わる原材料」の具体例は、ウスターソース、ピクルス、ペパローニ、しょう油、塩蔵魚、フィッシュソース等が、「食品表示基準について」に例示されています。「糖類に代わる原材料」の具体例は、ジャム、ゼリー、甘味の付いたチョコレート、甘味の付いた果実片、濃縮果汁、乾燥果実ペースト等です。

栄養成分表示以外の表示方法(マーク等)について


 日本の食品表示基準の実施機関である消費者庁は、こうした強調表示を促進するためのマーク等の配布は行っていません。消費者庁以外の機関による取り組み例としては、国立循環器病研究センターによる「かるしお認定マーク」と一般社団法人 食・楽・健康協会による「ロカボマーク」などがあります。

海外の動向について


 冒頭で紹介した香港の「低塩」「無糖」などの強調表示基準は、Food and Drugs (Composition and Labelling) Regulations (Cap.132W)に定められています。2021年9月に発表されたlow-salt-low-sugarマーク(図1)は香港食品環境衛生局食品安全センター(CFS)に申請することで使用できるようになり、食品業界による低塩低糖食品の開発を促進することが目的とされています。

図1:”Salt/Sugar” Label Scheme for Prepackaged Food Products(香港)

 カナダでは、FOP(Front of Pack:容器包装前面)表示制度の施行がカナダ保健省により計画されています。対象となる栄養成分は、糖類、ナトリウム、飽和脂肪の3つです。FOP表示としては4案(図2)が検討されており、「High in Sugars(糖類を多く含む)」「High in Sodium(ナトリウムを多く含む)」などのデザインが検討されています。

Food Front-of-Package Nutrition Symbols

図2:Food Front-of-Package Nutrition Symbols(カナダ)

 アメリカでは2018年の栄養成分表示制度改正の際に、新しく「添加糖類(Added Sugars)」の表示事項が必要になっています。添加糖類には、食品の加工中に添加される糖類が含まれ、シロップおよびハチミツに由来する糖類のほか、濃縮された果物または野菜ジュースに由来する糖類も含まれます。

 日本では栄養成分表示に関する改正計画は現時点で発表はされていませんが、「低塩」や「無糖」などの強調表示がされた食品は一般的なものとなっています(またナトリウムや糖類などの過剰摂取につながる恐れのある食品は機能性表示食品の対象外となっています)。こうした強調表示をする食品を販売する場合だけでなく、新しく日本への輸入や海外への輸出をしようとする場合に、参考にしていただける機会になれば幸いです。


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遺伝子組換え農産物の意図せざる混入の検査法について~「食品表示基準について」が一部改正(主に「遺伝子組換えでない」表示について)されました~


 2021年9月15日、「食品表示基準について」の第24次改正が行われ、遺伝子組換え農産物の意図せざる混入の検査法新設と検査機器の追加等が公表されました。

<ポイント>

  • 通知「食品表示基準について」の「別添 安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法」において、
  • 分別生産流通管理を実施した非遺伝子組換えダイズ穀粒及びトウモロコシ穀粒について、
  • 意図せざる混入を確認するための検査法の新設と、現行の検査法で使用できる検査機器の追加等がされた

改正の背景


 2018年3月28日、消費者庁より公表された「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」の「(2)表示方法 ② 「遺伝子組換えでない」の表示方法」において、以下のような整理がなされたことが改正の背景となっています。

 「意図せざる混入」の許容率については、できるだけ引き下げてほしいという消費者の要望があるが、事業者による原材料の安定的な調達が困難となる可能性、許容率引下げに伴う検査に係る作業量やコストの増大などの事情を総合的に勘案すると、大豆及びとうもろこしについて5%以下の意図せざる混入を認めている現行制度を維持することが適当と考えられる。
 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件については、大豆及びとうもろこしに対して遺伝子組換え農産物が最大5%混入しているにもかかわらず、「遺伝子組換えでない」表示を可能としていることは誤認を招くとの意見を踏まえ、誤認防止、表示の正確性担保及び消費者の選択幅の拡大の観点から、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることが適当と考えられる。なお、引下げに当たっては、新たな表示制度が現在の食品の製造・流通・消費に与える影響に配慮し、これらの現場で混乱が生じないよう、新たに公定検査法を確立し、円滑な検証や監視を担保するとともに、事業者や消費者に十分な周知を行うことが必要である。新たな公定検査法の確立に当たっては、遺伝子組換え農産物の混入率を判定する現行の定量検査法のように、正確性と実行可能性のバランスにも配慮すべきである。

主な改正点


 追加された検査方法は以下のとおりです。検査方法の他に通知文の修正も多くありますので、詳細は第24次改正の「(別紙)新旧対照表」を参照すると分かりやすいと思います。

2.2. ダイズ穀粒の検査法(遺伝子組換え農産物混入の判定に係る検査法)
 2.2.1. リアルタイム PCR を用いた定性 PCR 法
  2.2.1.1. ABI PRISM® 7900HT 96 well を用いた定性 PCR
  2.2.1.2. Applied Biosystems® 7500 を用いた定性 PCR
  2.2.1.3. QuantStudio 5 を用いた定性 PCR
  2.2.1.4. QuantStudio 12K Flex を用いた定性 PCR
  2.2.1.5. LightCycler® 96 を用いた定性 PCR
  2.2.1.6. LightCycler® 480 を用いた定性 PCR
  2.2.2. 結果の判定
2.4. トウモロコシ穀粒の検査法(遺伝子組換え農産物混入の判定に係る検査法)
 2.4.1. リアルタイム PCR を用いた定性 PCR 法
  2.4.1.1. ABI PRISM® 7900HT 96 well を用いた定性 PCR
  2.4.1.2. Applied Biosystems® 7500 を用いた定性 PCR
  2.4.1.3. QuantStudio 5 を用いた定性 PCR
  2.4.1.4. QuantStudio 12K Flex を用いた定性 PCR
  2.4.1.5. LightCycler® 96 を用いた定性 PCR
  2.4.1.6. LightCycler® 480 を用いた定性 PCR
  2.4.2. 結果の判定

 なお、日本への輸入食品を取り扱われる方は、検査対象の遺伝子組換え食品が日本において「安全性審査済みであるか」を別途確認する必要がありますのでご注意ください。

「遺伝子組換えでない」表示は“不検出”が条件


 検査の目的は「意図せざる混入」が「5%以下であるか」「不検出であるか」を確認することにあります。先述の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」を受け、2019年4月の食品表示基準改正により、「不検出」でない限り「遺伝子組換えでない」と表示することはできなくなったためです。ただし5%以下であれば「分別生産流通管理が適切に行われている旨」を任意で表示することができます。

 第46回食品表示部会(内閣府消費者委員会)で使用された資料「(資料4)新たな遺伝子組換え表示制度に係る内閣府令一部改正案の考え方(2018年10月10日)」に、改正について分かりやすい比較図が使用されていますので、こちらに引用します。

現行の遺伝子組換え表示制度と改正後の遺伝子組換え表示制度

※「分別生産流通管理が適切に行われている旨」については、その後、食品表示基準Q&Aに以下の表示例が示されています。

(一括表示事項欄に表示する場合の例)
「大豆(分別生産流通管理済み)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」 等

(一括表示事項欄外に表示する場合の例)
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」 等

<2019年4月の改正のポイント>

  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」 から「不検出」に引き下げる。
  • 5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができる。

 2019年4月の食品表示基準改正(遺伝子組換え表示制度改正)の経過措置期間は2023年3月末です。
「遺伝子組換えでない」表示をされている商品を取り扱う事業者の方はすでに準備をされているところと思いますが、そうでない方は、検査法の新設が公表された今回をきっかけに改めて遺伝子組換え表示制度について確認される機会にしていただければと思います。


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食品表示の全体像に関する提言に基づく「空間的情報量に関する調査」「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」 報告書が公表されました


 2021年8月6日、内閣府消費者委員会食品表示部会において、「空間的情報量に関する調査」「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」の報告書が公表されました。これらは2019年8月の“食品表示の全体像に関する提言”により検討が必要とされたものですが、その後時間も経っていることから、ここにあらためて整理してみたいと思います。

背景と目的


 検討の背景と目的については、以下(“食品表示の全体像に関する報告書”より抜粋)のとおりです。

<背景>

  • 義務表示の内容増加に伴い、製品上に表示する文字が多くなっている。
  • 今後、義務化される表示が増えれば、状況は更に深刻化し、消費者が安全性に関わる表示を見落とす可能性もある。

<目的>

  • 食品表示を取り巻く現状等について整理しつつ、消費者のニーズにも十分留意した上で、食品表示の全体像について以下の点を中心に検討。
    1. 表示事項間の優先順位
    2. インターネットを活用した表示の可能性を含む、ウェブ上における情報提供と従来の容器包装上の表示との組合せ

 そして同報告書において以下のような提言がなされたことが、冒頭の2つの調査事業の直接的な背景となっています。

  • 「分かりやすさ」の定義を明確にするために、また、消費者のより詳細な利活用の実態や問題点等を把握するために、表示可能面積に対する一括表示面積の割合や、一括表示のデザイン、フォント、文字サイズ等の情報量の把握等の科学的アプローチに基づく調査が必要。
  • ウェブによる食品表示を検討するために、優良事例等の現状を把握する調査が必要。

「空間的情報量に関する調査」の概要


 調査としては、「空間的情報量に関する調査」「消費者による視認性等調査」の2つが実施されています。

<空間的情報量に関する調査>

  • 加⼯⾷品の市販品約300点を買い上げ、次の事項を測定。
    • 容器包装全体の表⽰可能⾯積と⾯の数を確認。
    • 表⽰可能⾯積に対する⼀括表⽰⾯積の割合を算出。
    • 消費・賞味期限表⽰、栄養成分表⽰及び注意喚起表⽰等の表⽰事項における「⽂字サイズ」、「⽂字数」、「⽂字の変形率」、「⾏間」、「⾏⻑」、「⾯積」等を測定。

<消費者による視認性等調査>

  • ⽂字サイズ、⾏間、⾏⻑、変形率(※)が視認性に与える影響について調査を実施。(「消費者による視認性調査」)
    変形率(縦横幅に対する割合。縦横が共に100%である時、変形無しとする。)
  • 消費者が商品選択をする際に⾒ている⼜は⾒ていない表⽰の傾向を探るため、視線追尾分析を実施。(「消費者の視線追尾分析」)

 報告書での調査結果については、立場によって必要な情報が変わると思います。ひとまず一般的に重要と思われる内容を以下に抜粋しますが、実際の報告書には各データの詳細もありますので、そちらを見ることをお勧めします。

  • 全体の傾向として、注意喚起情報、原材料名、栄養成分表⽰は裏⾯にまとめて表記されていることが多い。すなわち、裏⾯に情報が集中しすぎる状態を招いて情報の量を⾼めている可能性が考えられる。
  • ⽇本語パンフレットのサンプルを⽤いた「読みにくさ」に関する先⾏調査の、「情報量が19%を超えると、読みたくない⼜はストレスを感じる消費者が8割に達する」という結果を踏まえ、この19%を基準値とすると、約61%が基準値を超過している。対して基準値以下は約39%であった。
  • 消費者がパッケージを⾒る際に、裏⾯の左上を注視する傾向にあることが分かった。⼀⽅で、同じ裏⾯であっても、バーコードやその周辺の注意喚起情報はほとんど⾒られておらず、消費者が効率的に読み取っていない可能性が明らかになった。

「アプリケーションを活用した食品表示実証調査」の概要


 容器包装の表示をデジタルツール化し、食品スーパーの消費者を対象に実証実験したものです。

<アプリケーションを活用した食品表示実証調査>

  1. ⾷品製造事業者・データ管理会社が⾷品表⽰データを提供
  2. データベースを構築し、提供された⾷品表⽰データを格納
  3. アプリを構築し、モニター(消費者)がスーパーで商品のバーコードをスキャン
  4. データベースに格納された⾷品表⽰データをアプリで表⽰し、消費者に実証前後でアンケートを実施。

 こちらも報告書での調査結果から様々な情報を得ることができます。ひとまず一般的に重要と思われる内容を以下に抜粋しますが、実際の報告書には技術的な課題や考察等もありますので、同じく確認されることをお勧めします。

  • アプリで⾷品表⽰を⾒て購⼊商品が変わった⼜は変わる可能性があると回答した⼈が実証参加者の7割を超え、アプリで⾷品表⽰を確認することにより消費者の購買⾏動が変化する可能性を⽰した。
  • 情報の確認・収集のしやすさといった基本的な機能だけでは利便性が意識されず、消費者があえてアプリを使ってまで⾷品情報を確認するには、情報の確認・収集のしやすさ以上の付加価値が求められると推察される。
  • ⾷品表⽰に対するニーズを問う質問に対して、「より簡潔に情報を掲載してほしい」という回答が最も多く、次いで「栄養成分の活⽤⽅法を⽰してほしい」、3番⽬が「健康維持・増進に必要な項⽬をもっと増やしてほしい」という回答で、健康に配慮した⾷品の選択を意識する消費者が多い。

分かりやすい食品表示のために


 現在、多くの事業者により、文字を大きくする・色やデザインを工夫する・WEBで詳細な情報提供をするなど、「分かりやすい食品表示」への自主的な取り組みがされています。今回の調査報告書は、こうした「分かりやすさ」について、客観的な定義や改善すべき要素、また消費者の意向を示すエビデンスを考えるうえでのヒントとなりますので、食品表示業務にかかわる方には大変参考になる情報になると思います。
 また海外の読者の方におかれましても、各国でのこうした取り組みと共通する課題も多いと思いますが、報告書には日本市場ならではの気づきも得られるでしょう。日本への食品輸出や、日本からの食品を輸入する際の参考にしていただければと思います。


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シンガポール 個別食品規格を削除する改定について意見募集


 2021年6月21日、シンガポール食品庁(Singapore Food Agency:以下SFA)は、食品業界および関係者に2022年4月に施行予定の個別食品規格(食品の定義に関する基準)を削除する改定に関して、意見を募集すると発表しました。

<ポイント>

  • 200以上の個別食品規格のうち大半は削除されるが、1割程度は部分的または完全に存続する
  • 削除された食品規格については、CODEX規格など他の現行の国際規格基準の参照を可能としている
  • 今後はCODEXに基づいた食品分類システムにより、明確な定義がない食品の添加物使用基準が定められる

「食品規格」とは、食品別の必須組成(原材料等)や品質要件(含有成分等)などを定めたものです

改正の背景と概要


 今回の改定についての背景と概要が分かるよう、発表内容の一部を抜粋してみます。

“個別食品規格(規則No.39~260)は、1970年代から1990年代初頭に開発されました。”
”現在、さまざまな消費者のニーズや好みに対応するために、市場には多種多様な食品があります。これらの食品の多くは、食品規制(Food Regulations)で規定されている食品規格を持っていません。たとえば、朝食用シリアル、3-in-1粉末飲料、冷凍調理済み食品などです。”
”SFAは、気候、環境要因、製造方法などの理由により、食品規制(Food Regulations)の品質基準に適合しない食品の輸入/製造および販売を許可するように要請を受けることがあります。 食用植物油の比重/屈折率/ヨウ素値、牛乳の乳固形分、加工チーズの乳脂肪含有量などがそうです。これらの製品の食品規制(Food Regulations)で規定されている品質基準を満たせないということは、製品が安全に消費できないことを意味するものではありません。”
“食品業界が製品のバリエーション(砂糖を含まないカヤジャム、卵を含まないマヨネーズなど)を生産するために革新するにつれて、一定の食品規格に準拠しなければならないことは、革新への取り組みを阻害します。”

“食品規制(Food Regulations)で保持されている個別食品規格については、業界はこれらの基準への準拠を保証する必要があります。 食品規制(Food Regulations)から削除された個別食品規格については、業界は利用可能な国際基準(コーデックス委員会の基準など)またはシンガポール基準を参照できます。”
“個別食品規格の削除は、食品の安全性に影響を与えません。シンガポールで輸入、製造、販売されるすべての食品は、食品添加物の使用や偶発的成分の上限、関連する表示要件など、一般的な食品安全規定に準拠する必要があります。”
“SFAは、将来、食品添加物の規定に関して業界に明確さを提供するために、食品カテゴリーシステム(関連する食品カテゴリー参照を含む)を開発する計画を持っています。食品カテゴリーシステムは、食品添加物に関するコーデックス一般基準(CODEX STAN 192-1995)に基づいています。”

 なおSFAは、今回の改正に関する「よくある質問と回答」についても発表しており、以下の点に注意しておく必要があるといえます。

 “個別食品規格の削除に伴い事業者は、表示する際の一般的な名称について責任を持ち、食品の特性を正確に反映する名称を表記する必要があります。” “食品の名称だけでなく食品の特性を強調する表示についても、食品の特性を正確に反映する表示をしなければなりません。”

今後について


 意見は2021年8月20日午後5時まで、メールにて募集しています。削除される個別食品規格の一覧は、通知の別紙1(ANNEX I)に記載されています。

<ANNEX Iより一部(FLOUR, BAKERY AND CEREAL PRODUCTS)抜粋>

Standard Regulation to be Deleted Regulation to be Retained
39 Flour or wheat flour 39  
40 Wholemeal, whole wheat or entire wheat flour 40  
40A Wholegrain   40A
41 Vital gluten flour 41  
・・・ 42-51  
52 Milk bread 52  
53 Labelling of bakery products Paragraph (1) of
Rg 53
Paragraph (2) of
Rg 53
54 Flour confectionery 54  
55 Pasta 55  
56 Labelling of pasta 56  

<個別食品規格(STANDARDS AND PARTICULAR LABELLING REQUIREMENTS FOR FOOD)より一部(39. Flour or wheat flour)抜粋>

  1. Flour or wheat flour shall be the fine, clean and sound product obtained in the commercial milling of sound and clean wheat grain and shall —
    1. have a moisture content of not more than 15%;
    2. have not less than 6% protein (total nitrogen x 5.7) calculated on a wet basis of 14% moisture content; and
    3. yield not more than 0.6% of ash calculated on a wet basis of 14% moisture content.
  2. Flour may contain the following:
    1. malted wheat flour;
    2. malted barley flour in an amount not exceeding 0.75% of the weight of the flour;
    3. harmless preparation of enzymes obtained from Aspergillus oryzae;
    4. ascorbic acid as bread improver;
    5. ammonium or potassium persulphate in an amount not exceeding 250 ppm (calculated by weight);
    6. ammonium chloride in an amount not exceeding 0.2% (calculated by weight); and
    7. acid calcium phosphate [calculated as CaH4(PO4)2] in an amount not exceeding 0.7%.
  3. Flour shall not be artificially bleached except by oxidizing changes brought about by means of an electrical process in which only ozone or oxides of nitrogen are produced, or by chlorine or chlorine dioxide, or by benzoyl peroxide. The residue of chlorine dioxide and benzoyl peroxide in the flour shall not exceed 50 ppm (calculated by weight).
  4. Flour intended for the manufacture of biscuit may contain sulphur dioxide not exceeding 200 ppm (calculated by weight).
  5. No flour, intended for sale as such, shall contain any emulsifier or stabiliser.

 今回の「個別の食品規格(その食品の定義に関する基準)」の削除に関する改正は、日本の制度でいうところの”「食品、添加物等の規格基準」のうち個別食品規格“と”「食品表示基準」のうち別表第三(個別加工食品の定義)(およびその参照元となっている「JAS規格」)“が削除されるようなものだと考えると、イメージしやすくなるかと思います。

・容器包装の義務表示は、個別の食品ごとに表示基準が定められている場合があること、
・使用できる添加物は、個別の食品ごとに使用基準が定められている場合があること、など、
食品の輸出業務において「個別の食品の定義」は重要な確認事項ですので、とても興味深いものといえるでしょう。

 技術革新や新素材の開発などにより、ニーズの変化に応える様々な食品が生まれています。今回の改正に関する意見募集の結果についてはもとより、今後他の国や地域における動向についても、関心を寄せていただく機会になればと思います。


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輸出食品の原材料調査と食品表示チェックの実務上の大切なポイント


 今回のコラムでは、日本から海外に向けて食品を輸出しようとするときに確認が必要となる、各国の「食品表示基準」の違いへの対処について、実務上のポイントを整理してみたいと思います。(本稿はNPO法人食の安全と安心を科学する会様での2021年5月24日講演内容を一部まとめたものです)

何から確認すればよいか迷うときは


 海外への輸出業務が初めてであり、かつ日本への輸入業務の経験がない場合、何から確認すればよいか分からないこともあるかと思います。そうした場合は、食品表示確認の周辺業務を整理したうえで考えるとよいと思います。

  1. 許認可の確認(管轄省庁への届出、許可申請等)
  2. 食品規格の確認(微生物、重金属、化学物質、カビ毒、残留農薬等)
  3. 使用基準の確認(添加物物質名・用途等)
  4. 表示基準の確認(表示方法、表示事項、表示禁止事項、および強調表示基準等)
  5. 広告規制の確認(広告で用いる強調表示の科学的根拠等)

 このように整理すると、食品表示(表示基準)確認の前に「使用基準」を確認する手順があることが分かります。またその前には「食品(および添加物の)規格」を確認する手順もあり、これらを分けて考える(そして時には連動して考える)必要がある点が、輸出と輸入のいずれの業務においても大事なポイントになるといえます。

各国基準の事前調査について


 各国の「食品規格」「使用基準」「表示基準」を調べようとする場合、まずは分かりやすい情報サイトを探すことをお勧めします。日本であれば、農林水産省の「各国の食品・添加物等の規格基準」が役に立つでしょう。「食品添加物」「食品表示」「健康強調・機能性食品」「栄養成分表示」「個別食品規格」等のテーマ別に、約30ヶ国の基準の概要が日本語で整理されています。特に「法的枠組」より全体像(どのような規則があるのか)を確認できる点が便利です。

 最終的には対象国管轄省庁の文書(現地語)を直接確認するのですが、この段階で、実務上で必要な情報がどこにあるのかが分からなくなるときがあります。そうした場合はまず「英文で書かれたガイドライン」を探し、その中に記載されている「元となる規則の名称」(出典、参考法令名の一覧)より、関連する基準名(添加物使用基準、食品表示基準等)を特定するとよいと思います。

原材料調査について


 輸出と輸入のいずれの業務においても、もっとも多くの時間や労力を費やすことになるのが「原材料調査」(特に添加物の使用基準の確認)といえます。ただし対象国の現地語で書かれた添加物使用基準や添加物公定書にあたる文書を調べること自体は、それほど難しいわけではありません。多くの場合は物質名がリスト化され、閾値とともに表形式になっているためです。

 添加物の使用基準を満たさないと分かった場合、同じような機能をもつ代替の添加物を探す必要があるのですが、やはり製造性での課題や、栄養成分訴求等の品質保証の課題について検証が必要になりますので、その分の時間もかかることになります。また添加物以外の原材料(食品素材)については、添加物と異なり、使用基準などが記載された文書自体をみつけることが困難ですので、対象国管轄省庁への問い合わせも含め、多くの時間がかかる可能性があります。

食品表示チェックについて


 対象国が5ヶ国、10ヶ国など複数になる場合は、各国の表示基準をすべて把握するのは難しいといえます。そうした際に1つの物差しとして、「日本の食品表示基準の視点」で調べることをお勧めしています。

・表示事項(何を表示するか)
・表示方法(どのように表示するか)
・表示禁止事項(何を表示してはならないか)
× ・横断的(すべての食品)か
・個別的(食品または特定の条件による)か

 何の事項をどのように表示すればよいかといった表示基準は、規則が分かってしまえば対応は難しくありません。ただし添加物等のリストと異なり、現地語で記載された文書から該当する規則を探すことは簡単ではないと思います。とりわけ、特定の条件下で表示の必要性が生じる規則には注意が必要ですので、商品特徴の訴求など強調表示が多い場合には、やはり対応は難しくなるといえます。

 例えば表示基準のうち「アレルゲンにはハイライトをつける」「添加物には物質名とEナンバーを表示する」といった規則への対応自体は難しいものではないと思いますが、「内容量は表面の底辺から30%以内の高さに記載」「容器包装の主要面に特定の原材料名が含まれる場合は、その量について、容器包装の同じ面に表示」などの”表示位置の指定”や”強調表示”に関する規則は、対応に時間がかかる場合が多いといえます。

 なお「日本の食品表示基準の視点」で調べるとお伝えしましたが、あくまでも対象国の文書から該当する規則を調べるときの視点(表示事項、表示方法、表示禁止事項と、横断的か個別的か)にとどめるよう注意が必要です。とりわけ日本の「表示方法」(特に原材料表示順、重量計算、添加物表示名、アレルゲンの対象、栄養成分の対象、数値の丸め方等)については思い込みをしてしまいがちであり、かえって支障になる場合もある点に注意が必要です。

大切なポイント


 とはいえ実際の各国の基準を調べながら原材料や表示の確認をするには、やはり多くの課題があると思います。そこで輸出業務の際には、そうした課題に常に注意できるよう、以下の3点を考えておくとよいと思います。

  1. 用語や要件の定義の確認に時間をかける
  2. 日本の基準を説明できるようにする
  3. 表示と連動する他の基準(使用基準等)について考える

 ポイントとしては、特に「(食品および添加物の)規格」と「使用基準」、「使用基準」と「表示基準」について分けて考えることが大切だと思います。例えばある食品に含まれる添加物について確認しようとする場合、使用基準(割合、用途等)だけを確認するのではなく、その添加物の規格(成分、製法等)も確認することが求められる場合があります。ただしその食品の原材料配合表には該当の添加物の規格までは記載されないため、その食品に使用されている添加物(使用されている添加物製剤)の規格書をもって確認することが必要になります。(原材料配合表の確認段階では、「添加物」だけでなく遺伝子組換え原料や医薬品成分などの確認もできるよう、「使用基準」確認工程として広義に定義しておいたほうがよいと思います)

 また原料メーカーより入手した規格書に、キャリーオーバーや加工助剤にあたる添加物が、最終製品の食品の配合表に記載されないといったケースも起こり得ます。日本の表示基準上では確かに表示を免除できるものですが、使用基準においては使用できるかどうかの確認が求められます。こうした添加物の記載のない規格書や配合表である場合、書類を受け取った担当者がその添加物の存在に気付くことはかなり難しいといえますので、規格書を請求する際には「輸出時の原材料使用基準の確認のため」と目的を明確に伝えるとよいでしょう。

 最後に、対象国の現地担当者とのチェック業務においては、キャリーオーバーなどの用語や表示免除などの要件についても、その定義は同じであるかを改めて確認することも重要なポイントです。例えば「炭水化物」も、日本とEUとでは算出方法が異なります。そのためには、日本の基準を説明できることが必要になります。そして調査の結果、原材料や表示などを変更する場合は、その他の基準に連動して影響を与えるものではないか、あわせて考えることが大切だと思います。

<追伸>
 宣伝になりますが、WEBツールとしてgComplyをご紹介いたします。約200ヶ国の規則に関する文書(主に現地語、一部英語版あり)が格納されており、添加物使用基準や食品表示基準、微生物や重金属などの規格について実際の文書を元に確認できるメリットがあります。当社は日本のデータベース更新を担当しており、情報は2週間ごとに更新されます。詳しくはこちらをご覧ください。


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