Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

米国バイオ工学食品情報開示基準について~日本の遺伝子組換え表示制度との違いと輸出時の注意点~

 2020年1月に施行された米国バイオ工学食品情報開示基準ですが、義務化となる2022年1月まであと半年となりました。これまで米国に食品を輸出されていた方はすでに取組をされていると思いますが、今後輸出を検討される方も多いと思いますので、この機会に日本の制度との違いや注意点を整理してみたいと思います。

<ポイント>

  • バイオ工学食品(以下「BE食品」)とは、遺伝子組換え食品を指す
  • 組換え遺伝子が検出される場合は表示の対象となる(意図せざる混入は除く)
  • 対象食品は、「BE食品」もしくは「BE食品の原材料を含む」の表示が必要となる

BE食品とは


 USDA(米国農務省)によると、「特定の組換え技術によって変更された検出可能な遺伝子物質を含む食品、また従来の育種では作成できない、もしくは自然界に存在しない食品」と定義されています。情報開示をしなければならない原材料であるかどうかを事業者が判断できるよう、USDAは以下のBE食品リストを作成し公開しています。

  • アルファルファ
  • りんご (Arctic種)
  • キャノーラ
  • とうもろこし
  • 綿花
  • ナス (BARI Bt Begun種)
  • パパイヤ (ringspot virus-resistant種)
  • パイナップル (pink flesh種)
  • じゃがいも
  • サケ (AquAdvantage)
  • 大豆
  • カボチャ (summer)
  • テンサイ

 なお上記リストに掲載されていない食品の場合でも、バイオ工学による食品であると記録があるものについては、適切に開示する必要があるとされています。

情報開示の方法


 容器包装の主要面または情報パネル部分に、「bioengineered food」(BE食品)または「contains a bioengineered food ingredient」(BE食品の原材料を含む)と表示します。表示方法としては、“文字”で表示する、“シンボルマーク”を表示する、“QRコード等”を掲載する、そして“テキストメッセージ”で応答できる旨の表示をする、など、大きく4つの方法があります(その他、小規模事業者には電話番号やURLでの表示も認められています)。イメージしやすいよう、以下にUSDAの消費者向けパンフレットの一部を引用します。
How will bioengineered food be labeled?

引用:What is a Bioengineered Food? (pdf)

日本の遺伝子組換え表示制度との違い


 日本から米国に食品を輸出しようとする事業者は、両国の制度の違いを知っておく必要があります。両国の制度の主な違いについて、以下のように整理してみました。

  BE食品情報開示基準(米国) 遺伝子組換え表示制度(日本)
対象食品 アルファルファ、りんご (Arctic種)、キャノーラ、とうもろこし、綿花、ナス (BARI Bt Begun種)、パパイヤ (ringspot virus-resistant種)、パイナップル (pink flesh種) 、じゃがいも、サケ (AquAdvantage)、大豆、カボチャ (summer) 、てん菜、およびこれらを原材料とする加工食品。その他バイオ工学による食品であると記録があるもの。 大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね(キャノーラ)、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤの8農産物と、これらを原材料とする33加工食品。
対象原材料重量割合の基準 表示義務は「主な原材料(重量割合上位3位以内かつ5%以上)」に限られる。
対象外の食品 高度に精製されており組換え遺伝子が検出されない食品(砂糖や油脂等)。 組換え遺伝子またはこれにより生じたたんぱく質が残存しない食品 (従来のものと組成、栄養価等が著しく異なる遺伝子組換え農産物およびその加工品を除く)。また対象原材料が「主な原材料」に該当しない食品。
義務表示の種類
  • 「bioengineered food」(BE食品)
  • 「contains a bioengineered food ingredient」(BE食品の原材料を含む)
  • 「遺伝子組換え」
  • 「遺伝子組換え不分別」
  • 「〇〇〇遺伝子組換え」(高オレイン酸等)
任意表示の種類
  • 「derived from bioengineering」
  • 「ingredient(s) derived from a bioengineered source」
  • 「遺伝子組換えでない」
    (ただし2023年4月より、組換え遺伝子が検出されない場合に限られる)
表示方法 文字、シンボルマーク、QRコード等、またはテキストメッセージで応答できる旨を容器包装に表示。 文字により容器包装に表示。
意図せざる混入率の閾値 5% 5%(分別生産流通管理が適切に行われている場合)
免除される食品 食肉、野禽、卵製品の重量割合が上位2位までの食品。食品にわずかなレベルで存在し、食品に技術的または機能的効果を持たない偶発的な添加物(21 CFR 101.100(a)(3))。外食(レストラン等)、零細事業者の食品。 添加物。外食(食品表示基準として)。

 上記のとおり、米国ではとりわけ以下の3点は日本の制度と大きく異なるため、注意しておく必要があるといえるでしょう。

  1. 原材料重量割合の基準がない
    (上位4位以下5%未満であっても、組換え遺伝子が検出される場合は対象となる)
  2. 「分別生産流通管理」にあたる基準がない※1
    (「不分別」といった可能性表示は米国では使用できない)
  3. 「遺伝子組換えでない」表示にあたる基準がない※2
    (「not bioengineered」「non-GMO」表示は、米国有機認証があれば妨げないという見解はある)

※1 反対に日本に輸入する場合には、「分別生産流通管理」「安全性審査」を確認する必要があります。
※2 日本の「遺伝子組換えでない」表示は、「検出されない」条件へと厳格化されています(2023年4月)。

 なお米国では外国語の表示に対する基準もありますので、容器包装に日本語表示を残す場合は、こうした制度改正時には同様に注意されるとよいでしょう。

参考サイトと判断ツール


 USDAは、事業者がBE食品情報開示基準の対象となるかを判断しやすいよう、WEBサイト上で判断ツールを公開しています。質問に対しYES/NOで回答を進めると、下記のような質問が表示され、その場で表示対象か対象外であるかが分かります。

Is this a bioengineered food?

引用:Decision Tool – Do I need to make a bioengineered food disclosure?

 対象の原材料(BE食品リストにあるもの)を使用されている場合は、まずは「検出されるかどうか」を確認し、その後、「どのように情報開示するか」を検討する流れになると思います。2020年1月施行、2022年1月義務化というスケジュールですので、今後米国に食品の輸出を検討される方は、注意して確認をされるとよいでしょう。


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改正食品表示法(食品リコール制度)の施行まで1ヶ月となりました

 平成30年(2018年)12月14日に公布された「食品表示法の一部を改正する法律」が、今年、令和3年(2021年)6月1日に施行されます。改正内容のポイントを再確認すると以下のとおりです。

<改正の概要>

  • 自主回収を行った場合は、行政への届出(原則オンライン)が義務化される
  • 届出された自主回収情報は、システム上に公開される
    (システムは6月1日までに稼働予定)

 既存の食品事業者の方はご存知と思いますが、昨今では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う業態転換や事業構造見直しにより、新しく食品事業に参入された方も増えていると思いますので、この機会にあらためて整理してみたいと思います。

届出が義務化される対象の表示


 「第六条第八項の内閣府令で定める事項について食品表示基準に従った表示」がされていない食品を販売した場合の自主回収が対象です。「第六条第八項の内閣府令で定める事項」とはアレルゲンやL-フェニルアラニン化合物を含む旨、消費期限、加熱を要する旨等の安全性に関係する表示を指し、これらの表示に欠落や誤りがある場合が対象となります。

 「第六条第八項の内閣府令で定める事項」の詳細は、「食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」より確認できます。
(具体的には、「名称」「保存の方法」「消費期限又は賞味期限」「アレルゲン」「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」「指定成分等含有食品に関する事項」のほか、保健機能食品、食肉、食肉製品、乳製品、液卵、魚介類、冷凍食品などの食品別に多数の表示事項が指定されています)

 また「自主回収を要しない場合」についても、2021年(令和3年)2月26日に公表されています。例えば「地域の食品製造事業者が、同一地区の個人経営の小売店に消費期限を付していない食品を販売したが、当該製造事業者から当該小売店に連絡を行い、当該小売店が消費者への販売前に販売を取りやめた場合であって、かつ、当該小売店の職員の摂取についても想定されないとき。」や「生食用と表示する予定であった魚介類等の食品に加熱加工用と表示した場合」等が該当します。

 さらに同通知内では、健康危害のレベルに応じ”CLASSⅠ””CLASSⅡ”の分類についても示されています。”CLASSⅠ”は「アレルゲン(特定原材料に準ずる品目も含む。)及びL-フェニルアラニン化合物を含む旨に関する表示」で、”CLASSⅡ”はそれ以外です。詳細は、「食品表示法第10条の2第1項の規定に基づく食品の自主回収の届出について(消食表第80号)」をご確認ください。

オンライン上での届出と公開について


 これまでに自主回収と届出を経験されたことのある食品事業者の方にとって、以前との大きな違いは「オンラインでの届出」と「システム上での公開」の2点になるものと思います。届出と公開は、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」上で行われます。実際の検索画面を見ると、イメージしやすくなると思います。

<食品衛生申請等システム(公開回収事案検索)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspub/_link.do

 このように、「商品名」「届出者名」「回収の理由」「回収方法」のほか、「健康への危険性の程度」などの情報を、都道府県別に指定して検索することができるようになります。また公開された回収事案には、食品表示法違反によるものだけでなく、食品衛生法違反による自主回収情報(カビ、残留農薬、異物混入等)も含まれます。
(【注意】なお、国内での流通後(輸入品を含む)の食品を自主回収する場合が対象となることから、輸入時点の違反事例(添加物使用基準不適合等)についての多くは、これまでどおり「輸入時違反事例(厚生労働省)」より確認をすることになります。)

 自主回収の届出は、こちらから行います。

<食品衛生申請等システム(事業者用ログイン)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspte/page/login.jsp

 現在のところ(2021年4月25日時点)すべての画面や機能が完成しているわけではないようですが、届出作業に必要なイメージをつかむことはできるかと思います。

業務フロー見直しの機会に


 なお、回収事例は公開されますので、消費者だけでなく事業者も検索することができます。どのような食品において、どのような表示にもとづく回収事例があったかを知ることができるため、食品表示確認作業の業務フローを検討する際に、注意すべきポイントの参考情報とすることもできるでしょう。
 
 6月1日の完全施行が近づくにつれ、システムのマニュアル等も追加されるものと思われます。食品表示確認の業務フローを見直したり、新しく用意したりする際のきっかけにしていただければと思います。


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健康食品の表示と確認のポイント~新型コロナウイルス予防表示への改善要請と注意喚起を踏まえ~

 2021年2月19日、消費者庁より「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請及び一般消費者等への注意喚起について」が発表されました。こうした注意喚起の発表は多く、ニュースとしてあまり取り上げていなかったのですが、時期的に公益性の高い情報であることと、最近の事業構造の見直しによる健康食品の製造販売、輸入等への参入も増えていることから、あらためて健康食品の表示の確認のポイントについて整理する機会にしたいと思います。

改善要請と注意喚起の概要


 概要をまとめると、以下のようになります。

  • 新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、かつ、民間施設における試験等の実施も困難な現状において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階においては客観性及び合理性を欠くおそれがある。
  • 一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の規定に違反するおそれが高いと考えられる。
  • インターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品、マイナスイオン発生器、除菌スプレー等に対し、緊急的措置として表示の適正化について改善要請を行うとともに、SNSを通じて一般消費者等への注意喚起を行った。

 また表示の適性化について改善要請が行われたもののうち、健康食品の例より一部を抜粋しました。

  • 新型コロナウイルスはマグネシウム不足で発症、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、セレンをビタミンCと同時に摂取することで、ウイルスに対する免疫機能を強化
  • コロナウイルス予防、ごまの脂質に含まれるリノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸は、免疫力を高める
  • はちみつの中でもさらに強力な殺菌力をもつマヌカハニー、殺菌効果でウイルス対策、コロナウイルスに負けない為に
  • 新型コロナウイルス感染症対策にも良いと言われる「大麦β-グルカン」、世界に脅威を与えるウイルスにも免疫力を高め、ウイルスに負けない身体作り 等

 発表によると、「客観性及び合理性を欠くおそれがある」ことが、今回の改善要請と注意喚起の(緊急的措置として)直接的な理由になっており、単に「新型コロナウイルスに対する予防効果」の表示をしなければよいというものではない点に注意が必要だと思います。

健康食品の表示の確認のポイント


 新しく健康食品を取り扱う方にとって、「表示制度があること」と「根拠が求められること」を知ることは、健康食品の表示を考えるうえでの基本的なポイントであるといえます。

  1. その表示をするための、必要な要件はあるか
  2. その表示を裏付ける、合理的な根拠はあるか

 保有している合理的な根拠の内容と、利用できる表示制度には相関関係があります。“健康”を広くとらえると、表示制度は大きく4つの選択肢があります(医薬品として販売するケースを除く)。

  1. 特定保健用食品として根拠資料をもとに個別審査を受け、許可を受けた表示をする
  2. 機能性表示食品として根拠資料を届出し、届け出た内容(機能性)の表示をする
  3. 栄養機能食品としての基準を満たす根拠を用意し、定められた栄養機能の表示をする
  4. 上記A~Cの表示制度によらず、A~Cの場合にのみ使用できる表示をしない

その他、栄養成分強調表示の基準を満たす根拠があれば、強調(高い、含む、強化等)の表示をすることもできます。
食品に対して医薬品的な効果を表示すると、「無承認無許可医薬品」の取り締まり対象にもなります。

合理的な根拠について


 合理的な根拠は「不実証広告規制」の考え方を参照します。消費者庁の「不実証広告ガイドラインのポイント(「合理的な根拠」の判断基準)」によると、以下のとおりです。

提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
  2. 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

 健康食品に求められる合理的な根拠の具体例としては、最終製品を用いたヒト試験、使用する原材料や含まれる成分の研究レビューなどの資料があげられます。また栄養成分を強調する場合は、最終製品(賞味期限まで)に含まれる栄養成分の分析などの資料が必要となるでしょう。
 
 先に触れた表示制度による食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)の場合は、インターネット等の広告への表示においても留意点等の基準が示されているのですが、こうした表示制度によらない一般の健康食品の場合は何をどのように表示すればよいのか基準が分かりにくくなるかもしれません。そうした際に、この「不実証広告ガイドラインのポイント」の考え方が、分かりやすい判断基準になるでしょう。

 健康食品の表示の基本は、「表示制度があること」と「根拠が求められること」を知ること。そして合理的な根拠の2つの要件のうち、本質的に重要な「2. 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」です。これから新しく健康食品の取り扱いを考えている方は、こうした制度や規制について、理解しておくことが大切だと思います。


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特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会が始まりました


 今月は、特定保健用食品制度の見直しに関するニュースを取り上げたいと思います。昨年末の2020年12月25日に第1回目の、今年1月22日に第2回目の「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」(以下「検討会」)が、消費者庁において開催されました。

検討会の背景


 特定保健用食品の疾病リスク低減表示は、平成17年(2005年)よりカルシウム及び葉酸の基準を設定し、運用されています。一方で、その運用については、制度開始以降、これまで特段の見直しは行われておりません。
 このため、消費者庁において検討会を開催し、疾病リスク低減表示の今後の運用について諸外国の状況も踏まえつつ、専門家から幅広く意見を伺い、検討を行うこととされました。

特定保健用食品(疾病リスク低減表示)とは


 まずは特定保健用食品の分類についてですが、以下のとおりに整理されています。

「特定保健用食品」:
食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品
「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」
関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合、疾病リスク低減表示を認める特定保健用食品
(現在は関与成分としてカルシウム及び葉酸がある)
「特定保健用食品(規格基準型)」:
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関与成分について規格基準を定め、消費者委員会の個別審査なく、消費者庁において規格基準への適合性を審査し許可する特定保健用食品
「特定保健用食品(再許可等)」:
既に許可を受けている食品について、商品名や風味等の軽微な変更等をした特定保健用食品
「条件付き特定保健用食品」:
特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可する特定保健用食品

 今回の検討会での審議の対象は、上から2番目の「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」です。「疾病リスク低減表示」の表示基準は、以下のとおりです。

関与成分 特定の保健の用途に
係る表示
摂取する上での
注意事項
一日摂取目安量の下限値 一日摂取目安量の上限値
カルシウム
(食品添加物公定書等に定められたもの又は食品等として人が摂取してきた経験が十分に存在するものに由来するもの)
この食品はカルシウムを豊富に含みます。日頃の運動と適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は、若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません。 一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、カルシウムを過剰に摂取しても骨粗鬆症になるリスクがなくなるわけではありません。 300mg

700mg

葉酸
(プテロイルモノグルタミン酸)
この食品は葉酸を豊富に含みます。適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減するかもしれません。 一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、葉酸を過剰に摂取しても神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクがなくなるわけではありません。 400µg

1,000µg

 「疾病リスク低減表示」の許可件数は、30件です(失効済みの品目を除く)。内訳はカルシウムが30件、葉酸は0件です。なお検討会の資料によると、特定保健用食品全体の許可件数1,075件、機能性表示食品の届出公表件数は3,168件とされています。

主な論点


 検討会の主な論点(案)は、以下のとおりです。

  1. 米国、カナダ、EUで認められている疾病リスク低減表示を踏まえた検討
  2. 許可文言の柔軟性
  3. 表示の内容等の基準が定められていない 疾病リスク低減表示の申請
  4. その他(先行申請者の権利保護)

 現状の「疾病リスク低減表示」において許可されている関与成分は、先述のカルシウム(骨粗鬆症のリスク低減可能性)と葉酸(神経管閉鎖障害のリスク低減可能性)の2つのみです。検討会では、諸外国で認められている疾病リスク低減表示を参考に、対象の拡充や許可文言の柔軟性について審議がなされる見込みです。

<米国・カナダ・EUで認められている疾病リスク低減表示の例>

表現の内容 表示が認められている国・地域
(△は類似の表示が認められている場合)
米国 カナダ EU
1.摂取量を減らすことによる表示      
ナトリウムと高血圧  
飽和脂肪、コレステロールと冠状動脈性心疾患
食事性脂肪とがん    
2.現行のトクホ(疾病リスク低減表示)制度に沿った表示      
カルシウム、ビタミンDと骨粗しょう症  
ビタミンDと転倒    
3-1.既許可のトクホに類似の表示(疾病リスクを低減する旨の直接的な表示)      
非う蝕性糖質甘味料と虫歯
フッ素添加水と虫歯    
3-2.既許可のトクホに類似の表示(疾病の代替指標の取扱い)      
特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠状動脈性心疾患  
大豆たんぱく質と冠状動脈性心疾患    
植物ステロールエステル、スタノールエステルと冠状動脈性心疾患  
4.対象成分が限定されていない表示      
食物繊維を含む穀物製品、果物、野菜とがん    
果物、野菜とがん  
果物、野菜と冠状動脈性心疾患  

今後の予定


 第3回目の検討会は3月に行われる予定で、そこで今後の運用の方向性の取りまとめがなされる見込みです。その際に、例えば「新たな関与成分について基準を設定する」等の対応が必要と判断された場合は、4月以降に具体的な検討が行われる予定です。とりわけ健康に関する表示をされている食品を取り扱いの方は、議事資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


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2020年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 年初にあたり、まずは昨年に起きた食品表示に関するニュースと、今後の予定について整理してみました。昨年は新型コロナ感染症に関する話題が多かったと思いますが、ここでは食品表示関連の話題について改めて確認する機会にできればと思います。

昨年の主なニュース


 食品表示に関する実務を進めるうえで大きな話題となったのは、添加物の表示の見直しのため、2020年7月に食品表示基準から「人工」「合成」の用語が削除されたことかと思います。主に「食品表示基準」を中心に、関連する基準等の改正とその概要についてこちらに整理してみました。

2020年 3月24日 「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」公表※1
3月27日 食品表示基準の一部改正(「指定成分含有食品※2」等の追加)
3月31日 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)(製造所固有記号)終了
3月31日 「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」公表※3
7月16日 食品表示基準の一部改正(「魚介類の名称のガイドライン」の一部改正※4、「人工」「合成」の用語の削除※5、「有機畜産物の日本農林規格」の追加※6、等)
8月21日 「特定保健用食品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」施行※7
10月14日 「玄米及び精米の食品表示制度の改正(案)」のパブリックコメント募集※8
※1.事業者の予見可能性を高めるため、主に「科学的根拠」と「広告表示」について具体的な基準を示したもの。
※2.「コレウス・フォルスコリー」、「ドオウレン」、「プエラリア・ミリフィカ」、「ブラックコホシュ」の4成分が対象。
※3.「人工」「合成」の用語は削除とした。「無添加」、「不使用」等は、新たにガイドラインが策定される予定。
※4.同時に「魚介類の名称のガイドラインに係る魚類の新標準和名の提唱手順」を公表。
※5.第3条第1項の表(着色料)、別表第6(甘味料、着色料、保存料)、別表第7(香料)を改正。
※6.有機畜産物、有機畜産物加工食品についても第三者認証を受け有機JASマークを付すことが必要。
※7.「容器包装以外の表示」(広告等の表示)についても「必要」「推奨」「任意」表示事項を規定している。
※8.農産物検査規格の見直しに伴う改正案。意見募集後(11月18日、12月17日)の審議中。

 その他、「食品表示基準について(通知)」については1月15日、3月27日、6月18日、7月16日、11月30日に第18~22次改正が、「食品表示基準Q&A」については3月27日に第10次改正、7月16日に第11次改正が行われています。

 また3月から4月にかけて、新型コロナウイルス感染症を背景に、食品表示制度に関しての弾力的な運用に関する通知も発表されました。(「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」「(同)米トレーサビリティ法の弾力的運用について」「(同)製造所等及び製造所固有記号の表示の運用について」等)

今後の予定


 最後に、今後数年の間に予定されている表示関連情報をまとめてみました。

2021年6月1日 「食品表示法の一部を改正する法律」の施行期日(自主回収報告の義務化)
2021年7月1日 「玄米及び精米の食品表示制度の改正」の施行予定
2022年3月31日 新たな原料原産地表示制度 経過措置期間終了
未定 「くるみ」のアレルゲン義務表示品目への移行予定
「無添加」、「不使用」等の表示に関するガイドラインの策定
栄養強化目的の添加物についての実態調査実施(原則全ての加工食品に表示させる方向)

 昨年は新型コロナ感染症とその影響に関する話題が多くを占めた年でした。今年は少なくとも、昨年よりは明るい話題が増えるよう願っています。


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農産物検査規格の見直しに伴う「玄米及び精米の食品表示制度の改正(案)」について

 
 玄米及び精米の食品表示制度が、今後改正される見込みです。2020年10月14日~11月15日の期間、パブリックコメントの募集がなされました。また10月27日および11月18日に、消費者委員会食品表示部会において審議がなされています。以下に、主な改正点とその背景、今後の予定について整理してみたいと思います。

主な改正のポイント


  1. 玄米及び精米の表示に関して、現行、農産物検査による証明を受けている場合のみ、産地、品種及び産年の表示が可能であるところ、農産物検査による証明を受けていない場合であっても、産地、品種及び産年の表示を可能とすること
  2. 産地、品種及び産年の表示の根拠となる資料の保管を義務付けること
  3. 産地、品種、産年等の表示事項の根拠を確認した方法の表示を可能とすること

参照:「食品表示基準の一部改正案に関する意見募集について(消費者庁)令和2年10月14日」より

改正の背景


 規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、「農産物検査規格の見直し」が対象とされ、玄米及び精米について農産物検査を要件とする食品表示制度の見直しを行うこととされたことが直接の背景です。
 規制改革実施計画は、2016年より推進されてきた「農業競争力強化プログラム(農林水産省)」における「農産物規格・検査の見直し」の状況や、2020年1月に提出された「農産物(米)規格・検査に関する意見(公益社団法人 日本農業法人協会)」等をもとに、「規制改革推進会議 農林水産ワーキング・グループ」において検討されたものです。

規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)(抜粋)

産地、品種、産年などの食品表示
食品表示基準上、検査米、未検査米双方を対象に表示義務のある産地に加え、品種、産年、生産者、検査・品質確認を行った者などの一定の事実情報の任意表示を可能とする(例:品質確認 JA〇〇(登録検査機関名)、品質確認 〇〇ライス(農業者名))。農産物検査済みのものについては、「農産物検査証明による」旨の表示ができるようにするとともに、農産物検査を受検しない場合についてその旨の表示を義務付けることはしない。
また、根拠が不確かな表示がなされた米が流通することを排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、検査や取引に関する記録の保存方法など必要な措置は食品表示基準等やその運用で担保する。
以上のことを、消費者委員会の意見も踏まえ、結論を得る。

現行と改正案の違い


 現行との比較については消費者庁の資料が分かりやすいので、こちらに引用いたします。

玄米及び精米に関する表示の改正について

規制改革実施計画を踏まえ、①農産物検査による証明を受けていない場合であっても産地、品種及び産年の表示を可能とし、②一方で、根拠が不確かな表示がなされた米の流通を排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、産地、品種、産年の根拠を示す資料の保管を義務付け、③農産物検査証明による等、表示事項の根拠の確認方法の表示を可能とするとともに、④生産者名等、消費者が食品を選択する上で適切な情報は、枠内への表示を可能とするため、基準第23条、別表第24及び別記様式4の改正を行う。

引用:食品表示基準の一部改正について 令和2年10月 消費者庁食品表示企画課

食品表示基準の改正による単一原料米の表示事項の変更点
(※画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。)

引用:補足説明資料 令和2年11月 消費者庁食品表示企画課

今後の予定


 消費者委員会食品表示部会による諮問・答申を経て、2021年3月31日までに公布、2021年7月1日に施行予定とされており、令和3年(2021年)産米から改正後の規定で表示可能になる見込みです。玄米や精米だけでなく、米を主な原材料とする食品を取り扱いの方は、改正点について確認をされておくとよいと思います。


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日本の「健康」に関する食品表示制度について~台湾は2022年7月より一般食品の商品名に「健康」の表示が禁止に~


 少し前になりますが、今年8月に興味深いニュースが台湾にて発表されました。台湾衛生福利部食品薬物管理署(Taiwan Food and Drug Administration: TFDA)の発表によると、「一般食品の商品名に“健康”と表示することは禁止」されることになるようです。施行は2022年7月1日からです。以下に発表の本文を引用します。

 TFDAは、消費者が「健康」という強調表示をされた食品について、消費者に商品がより健康的なイメージを誤解することを防ぐために、「食品および関連商品において、誤解または医薬品的効能効果を標ぼうするなど事実でない、または誇張される広告表示の認定基準」の第4および第6の規定を修正すると発表しました。
 修正後、検査および登録され、または免許を取得した健康食品を除いて、消費者に一般食品と誤解されることを避けるために、商品名の一部としても「健康」という言葉を使用してはならないことを規定しています。
 TFDAは、この規制が2022年7月1日以降製造される製品分から有効になるため、今後上記規定を満たしていないと判明した場合は、食品安全衛生管理法第28条および同条に違反するとみなし、第45条の法令より台湾ドル4万から400万の罰金を科します。
同法の第52条によって、包装食品は期限内に回収および修正されるものとします。

出典:台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)(日本語訳は弊社による)

 台湾には「健康食品管理制度」があり、TFDAの認可(個別審査または規格基準審査)を受けた食品を「健康食品」と呼びます。ちょうど、日本の「トクホ(特定保健用食品)」にあたると考えると分かりやすいと思います。(※ただし日本ではトクホなどの保健機能食品ではない健康食品を「いわゆる健康食品」と呼びます。)
 そして台湾における一般食品とは、「(TFDAに)健康食品として認可を得たものではない食品」を指します。つまり今回の発表を日本に当てはめてイメージするとすれば、「トクホなど保健機能食品ではない食品の商品名の一部に“健康”と表示してはならない」ということになるでしょう。

 日本では、食品に単に“健康”と表示をすることへの規制は現時点ではありません。ただし保健機能食品以外の一般食品には、「保健機能食品と紛らわしい名称、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待できる旨を示す用語」を表示することが禁止されています。つまり日本では、一般食品の商品名に「保健」や「機能」などの用語を使用することができないようになっています。

 分かりやすくするために、日本の“健康”に関する表示制度について、“保健機能”と“栄養成分の強調”に関する表示基準を整理してみました。(※食品表示基準を対象とします。実際に“健康”に関する表示をする際には、景品表示法や健康増進法等の規則にも注意が必要です。)

◆ 日本の“保健機能”に関する表示基準について

食品名大分類 食品名中分類 審査等の必要性 表示事項等
保健機能食品 特定保健用食品※1 必要(個別許可型、規格基準型) 許可等を受けた表示(「特定の保健の目的が期待できる旨」)の内容のとおり表示。
機能性表示食品 必要(届出型) 消費者庁長官に届け出た内容(「科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性」)を表示。ただし「機能性関与成分以外の成分を強調する用語※2」や「栄養成分の機能を示す用語」等は禁止。
栄養機能食品 不要(規格基準型) 別表に定められた「栄養機能食品に係る栄養成分の機能」を表示。ただし「特定の保健の目的が期待できる旨を示す用語」等は禁止。
一般食品 分類名なし(いわゆる健康食品) 不要 「保健機能食品と紛らわしい名称、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待できる旨を示す用語」等は禁止。
※1.別制度である「特別用途食品」(病者用食品等)の一部に位置づけられます。
※2.以下の「栄養成分の補給ができる旨」「栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨」の表示をする場合を除く。そのため「糖質」など以下に設定のない成分を強調する用語は不可。

◆ 日本の栄養成分の強調に関する表示基準について
(審査等は不要。表示値設定の根拠資料の保管が必要。)

表示事項 規定の分類
栄養成分の補給ができる旨 高い旨(例:「高○○」「○○豊富」等)
含む旨(例:「○○源」「○○含有」等)
強化された旨(例:「○○30%アップ」等)
栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨 含まない旨(例:「無○○」「○○ゼロ」等)
低い旨(例:「低○○」「○○ひかえめ」等)
低減された旨(例:「○○30%カット」等)
糖類を添加していない旨 -(例:「糖類無添加」「砂糖不使用」等)ただし「ノンシュガー」、「シュガーレス」のような表示は、「含まない旨」の規定が適用される。
ナトリウム塩を添加していない旨 -(例:「食塩無添加」「食塩不使用」等)

 日本では、上記のように審査や届け出を必要としない一般食品であっても基準を満たす場合、“栄養成分の機能”もしくは“栄養成分の強調”を表示することは可能です。しかしながら、こうした商品を台湾に輸出する際には、台湾での許可を得ない限りは、商品名の一部に「健康」といった用語は表示できないということになります。

 日本から海外に食品を輸出する際も、また反対に海外から日本に食品を輸入する際にも、その食品に“健康”や“栄養”などの強調表示がある場合には、こうした関連規則の有無を事前に確認することが大切です。また“健康”に関する表示もさらに広義に見れば、「オーガニック(有機)」や「グルテンフリー」、「無添加」などの表示についても各国に規則や基準があることが分かります。(※日本にはノングルテン米粉を除き基準値の設定はなく、現時点でグルテンフリーに関する公式な表示基準はありません。)
 こうした規則を確認する際には、可能な表示例や対象成分(ビタミンやミネラル等)だけでなく、「表示禁止事項(例:ただし「〇〇」とは表示できない等)」についてもあわせて確認されるとよいでしょう。

 今回は台湾のニュースを取り上げましたが、こうした傾向は他国でも起こり得ると思われます。健康に関する表示をした食品を取り扱われる方は、この機会に様々な国の動向を見ておかれるとよいのではと思います。


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特定保健用食品の表示に関する公正競争規約が施行されました


 2020年6月24日に消費者庁および公正取引委員会により告示された「特定保健用食品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」が、8月21日に施行されました。表示の許可について国の審査を受ける特定保健用食品に公正競争規約が必要となったこと、制度の導入(1991年)から長い期間を経ていることなどから、規約の主な内容とあわせて施行に至った背景についても整理してみたいと思います。

背景


 2014年12月の機能性表示食品制度検討に際し、「機能性表示食品に係る食品表示基準についての答申書」として、「特保制度との関係・整序などの根本的な問題や、いわゆる健康食品や特保を含め表示だけでなく広く広告を含めたあるべきルールの問題について、さらに消費者委員会として、引き続き検討を加える所存である」と報告されています。その後、2015年6月に消費者委員会において、以下のような論点整理がされたという経緯があります。

  • 特保が「健康に役立つ」として国民に広く利用されるようになった一方、
  1. 消費者が健康の維持・増進、食生活の改善を目的とした制度であることを正しく理解して製品を利用しているか(効果に対し過大な期待をしていないか)、
  2. 効果に見合わない宣伝・広告が行われているのではないかといった疑義が示されるようになった。

また、消費者委員会で特保の表示許可を審議する委員からも、特保に関して、表示・広告に関する問題だけでなく、制度や運用についても問題提起がされるようになっている。

平成 27 年4月には機能性表示食品の制度が始まり、企業の自己認証で健康強調表示を行うことができるようになった。同制度による製品は特保とともに、「いわゆる健康食品」と呼ばれる製品群に含まれる、健康への効果や安全性が明らかでない食品の淘汰に寄与することが期待されている。しかし、その効果が十分に発揮されるためには、国民が各制度を正しく理解し、適切な製品選択を行うことができる環境を早急に整えることが求められる。

 この論点について、2015年8月より「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会(内閣府消費者委員会)」において議論がなされ、以下のような報告がされたことが、今回の公正競争規約の背景となったものと思われます。

一方、現在の広告をみると、「特保の摂取で食生活の乱れを相殺できる」と受け取れるような、健康にとってのマイナスを特保摂取だけでゼロに戻せるといった暗示的な広告を行う製品もある。このような現状は、製品の広告制作に携わる人々や、製品の流通・販売に係わる人々も、あまり制度の本来の趣旨を理解していないために起きているのではないか。特保制度の目的である、健康増進・食生活改善という点を、もう一度認識しなおす必要がある。

特保に関する自主基準としては、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会の『「特定保健用食品」適正広告自主基準』があり、特保の広告の適正化に向けた取組を行っている。(中略)現時点においては、自主基準を全ての加盟企業が遵守するまでには、至っていない。その状況を改善するために、事後チェックで指摘を受けた事業者に対し是正状況のフォローアップを実施することや、「公正競争規約」を設けるといった工夫が、特保を製造する業者間で行われることを期待する。

主な規則


 特定保健用食品の表示に関する公正競争規約には、菓子や飲料など様々な食品分類に横断的に関わるといった特徴があります。こうした規約としては以前より「観光土産品の表示に関する公正競争規約」があるのですが、こちらは他の規約の適用を受けるものを除くことになっており、特定保健用食品についてはこうした除外規程はありません。
また容器包装の表示については、食品表示基準に従った規則が改めて整理されていますので、実務面において注意する必要があるのは、主に「容器包装以外の表示」(広告等の表示)と思われます。

<容器包装以外の表示>公正競争規約第9条~11条、同施行規則第20条~25条より一部抜粋

必要表示事項 (1) 特定保健用食品である旨
(2) 許可等を受けた表示の内容
(3) バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言
推奨表示事項 (1) 一日当たりの摂取目安量に関する表示
(2) 摂取の方法に関する表示
任意表示事項
  • 特定保健用食品の容器包装以外の表示に関する任意表示事項を表示する場合は、許可等を受けた内容の範囲で表示すること。
  • 前項の規定のほか、次の各号に掲げる事項を表示する場合は、それぞれ当該各号に定める基準に従って表示すること。

(1) 許可等表示に関する表示
(2) 特定保健用食品である旨の表示
(3) 安全性に関する表示
(4) ヒト試験に関する表示
(5) ヒト試験におけるデータ(グラフ等)の表示
(6) 関与成分の作用メカニズムに関する表示
(7) 製品特徴・配合成分に関する表示
(8) 統計データ等の表示
(9) アンケート・モニター結果の表示
(10) 個人の感想等の表示
(11) 医師・専門家等を起用した表示
(12) 子供を起用した表示

 上記は抜粋ですので、詳細は施行規則を参照してください。例えば任意表示事項の「(1) 許可等表示に関する表示」は、「許可等表示について、キャッチコピー等での言い換え、簡略化、一部省略した表示、又は追加の説明を表示することができる。ただし、表示する場合は、過大な効果を期待させ、又はその過大な効果についても国が許可等しているかのように誤認させることがないよう表示すること。」とされています。

今後について


 特定保健用食品の表示に関する公正競争規約および施行規則は2020年8月21日に施行されましたが、「容器包装以外の表示」(公正競争規約第9条~第14条および施行規則第20条~第26条)については、2020年6月24日の告示日から6ヶ月を経過した日が施行日となります。
 容器包装以外といった広告表示に関する規則について詳細に規定されていることから、特定保健用食品だけでなく一般的な健康食品を取り扱う方にとっても、こちらの規約についての詳細を確認されておくとよいと思います。


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「魚介類の名称のガイドラインの一部改正」及び「魚類の新標準和名の提唱手順」が公表されました


 2020年7月16日、消費者庁は「魚介類の名称のガイドラインの一部改正」及び「魚介類の名称のガイドラインに係る魚類の新標準和名の提唱手順」を公表しました。

【ポイント】

  • 魚種の追加、標準和名等についての整理がされた
  • 標準和名の付けられていない魚種について、新たな標準和名を提唱することができる

背景


 「魚介類の名称のガイドライン」は、生鮮魚介類の小売販売を行う事業者等に対し、食品表示基準に基づき魚介類の名称を表示等する際に参考となる考え方等を示すものとされています。また魚介類を原材料として使用する加工食品の表示をする際においても、最も一般的な名称を確認するにあたっての拠り所となるガイドラインでもあります。
 そのガイドラインに対し、水産関係事業者団体等から魚種の追加等に係る改正要望があり、昨年、ガイドライン改正案作成に係る検討会が4回開催され、今回の改正案等の公表に至っています。

ガイドラインの改正概要


 改正の概要は以下のとおりです。

1. 魚種の追加 国産魚種:3種(クロシビカマス、メアジ、イヌノシタ)
海外漁場魚種・外来魚種:39種(クリアノーズスケイト、アメリカウナギ、イラコアナゴ、パンガシウス、ヨーロピアンスプラット、グレーターシルバースメルト、ニジワカサギ、リング、ヒタチダラ、ホワイトヘイク、アメリカンアングラー、ナンヨウキンメ、アラスカキチジ、ナガメヌケ、キタノメヌケ、ゴケメヌケ、アラスカアカゾイ、ヒレグロメヌケ、ニシアカウオ、アルゼンチンオオハタ、ミナミオオスズキ、オオヤセムツ、ニュージーランドマアジ、ミナミマアジ、チリマアジ、ニジイトヨリ、ゴウシュウマダイ、アメギス、ホシギス、モトギス、コガネギス、トランペッターシラーゴ、ミナミクサカリツボダイ、フエフキタカノハダイ、バルコグランダー、ミナミクロメダイ、ヒレナガナメタ、タイセイヨウオヒョウ、ウマガレイ)
2. 魚種の削除 生産、流通実態のない「カワスズメ」を削除
3. 標準和名及び一般的名称例の整理 国産魚種:5種(サクラマス、サツキマス、カラフトマス、キンメダイ、アラスカメヌケ)
海外漁場魚種・外来魚種:15種(チャネルキャットフィッシュ、パンガシウス、メルルーサ、シロイトダラ、モトアカウオ、チヒロアカウオ、マジェランアイナメ、ミナミカゴカマス、ミナミオオスミヤキ、ウロコマグロ、ナイルティラピア、ミナミメダイ、シルバー、オキヒラス、グリーンランドアカガレイ)
4. 学名の修正 国産魚種:10種(アカエイ:Dasyatis akajei → Hemitrygon akajei など)
海外漁場魚種・外来魚種:3種(モトアカウオ:Sebastes marinus → Sebastes norvegicus など)

新たな標準和名の提唱手順


 ガイドラインにおいて、魚類の名称の表示は標準和名を基本とすることとしていますが、新規に国内市場に流通する魚種など、標準和名が付けられていない魚種が存在します。このため、このような魚種についても、新たに標準和名の提唱を可能とするスキームを構築すべきとの議論が上述の検討会においてなされました。
 そうした背景をもとに、標準和名等が付けられていない魚種について、消費者庁を窓口に、日本魚類学会に属する研究者に依頼することにより、新たな標準和名を提唱することのできるスキームが構築されています。

 スキームについての詳細は、こちらの消費者庁サイトを参照してください。
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/case_001.html

新旧対照表の確認を


 魚介類の名称のガイドラインは、食品表示基準Q&Aの別添資料の1つです。そのため公表と同日である2020年7月16日に、食品表示基準Q&Aの第11次改正がされています。新旧対照表も掲載されていますので、魚介類を取扱う方および原材料に魚介類を使用される方、また輸入等より外国産魚類などの標準和名の付けられていない魚介類を取扱う方は、一度目を通しておかれるとよいでしょう。

【お知らせ】
2020年7月7日、消費者庁より以下の発表がありましたので、こちらにお知らせいたします。


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食品表示基準より「人工」、「合成」の用語を削除 ~経過措置期間は2022年3月31日まで~


 2020年5月25日、消費者委員会食品表示部会において、食品表示基準の一部改正(食品添加物に関する表示 他)に係る審議が行われ、食品表示基準より「人工」、「合成」の用語を削除する等の諮問書および答申書案に対し、了承がなされました。改正は2020年7月16日に施行予定となります。

背景


 2020年3月31日にとりまとめがされた「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」において、現行制度では「人工甘味料」、「合成保存料」等の用語が無添加表示のためだけに使用されている実態が指摘されていた経緯があります。そこで消費者の誤認を防止する観点等から、「人工」、「合成」の用語を削除することになりました。消費者の誤認を防止する目的であるため、改正後(経過措置期間後)は添加物に対する「人工」「合成」等の表示は実質的に使用できなくなると思われます。

出典:食品添加物表示制度に関する検討会報告書

4. 今後の食品添加物表示制度の方向性
(2)「無添加」、「不使用」の表示の在り方
②整理の方向性
イ 「人工」、「合成」の用語
 消費者意向調査の結果では、消費者は添加物に関して「人工」、「合成」といった文言があると避けるという消費者が存在することが分かった。また、事業者団体等関係者からのヒアリングでは、「化学調味料」のように、食品表示法上、その定義が不明確な用語が使用されていることも、添加物に対する消費者の理解に影響しているとの意見が挙がった。
 検討会では、食品表示基準にある「合成保存料」、「人工甘味料」等の、「人工」及び「合成」を冠した食品表示添加物表示に関する規定については、添加物の表示が全面化された平成元年当時の食品衛生法における添加物表示の整理と矛盾することから、また消費者の誤認防止の観点から、委員の総意として当該用語を削除することが適当であるとされた。
 なお、「化学調味料」のような法令上にない用語の使用により消費者の添加物に対する理解に影響を与えると指摘された表示については、(2)の②のア(「無添加」、「不使用」等の表示)で示されたガイドラインの検討段階において、事業者がその用語について広告等を含め表示することがないような検討を併せて行うことが望ましい。

主な改正内容


 食品表示基準における改正は、以下のとおりです。

食品添加物表示制度に関する検討会報告書を踏まえ、一般加工食品の横断的義務表示事項を定めた基準第3条第1項の表、別表第6、別表第7を改正し、「人工」及び「合成」の用語を削除する。

◆ 改正案 第3条第1項の表(横断的義務表示)

添加物
現行 1 次に掲げるものを除き、添加物に占める重量の割合の高いものから順に別表第6の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名及び同表の下欄に掲げる用途の表示を、それ以外の添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名を表示する。
一~三(略)
2 (略)
3 1の規定にかかわらず、添加物の物質名の表示は、一般に広く使用されている名称を有する添加物にあっては、その名称をもって、別表第7の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる。
4 1の規定にかかわらず、次に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に掲げる用途の表示を省略することができる。
一添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料又は合成着色料
二(略)
改正案 1~3(略)
4 1の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に定める用途の表示を省略することができる。
一添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料
二(略)

◆ 改正案 別表第6(添加物の用途)

甘味料 現行 甘味料、人工甘味料又は合成甘味料
改正案 甘味料
着色料 現行 着色料又は合成着色料
改正案 着色料
保存料 現行 保存料又は合成保存料
改正案 保存料
(略)

◆ 改正案 別表第7(添加物の物質名の代替となる語(一括名))

(略)
香料 現行 香料又は合成香料
改正案 香料
(略)

 なお、これらのほかに、「原料ふぐの種類に関する表示」、「特色のある原材料等に関する表示(2020年1月JAS法施行令の改正(施行日は2020年7月16日)に伴い「有機畜産物」を追加)」等の改正も予定されています。

今後の予定


 公布及び施行は2020年7月16日(JAS法施行令と同日施行)です。また経過措置期間として、2022年3月31日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く)及び同日までに販売される業務用加工食品の添加物の表示については、なお従前の例によることができることとしています。
 現在、添加物に対し「合成」「人工」等の用語の表示を使用されている方は、同委員会の資料はもとより、できれば食品添加物表示制度に関する検討会議事録などの背景もあわせて確認をされるとよいと思います。


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