Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

日本と、諸外国の食品添加物表示制度(概要比較)について


 2019年4月18日に開催された「第1回食品添加物表示制度に関する検討会」の資料において、諸外国の食品添加物に関する表示制度の概要が示されています。国内で製造した食品を輸出される事業者の方も増えておりますので、こちらにとりあげてみたいと思います。

<食品添加物に関する諸外国の表示制度(概要)>

  日本 CODEX 米国 カナダ 豪州 中国 仏国
表示順 原材料と区分して重量順 重量順 重量順 原材料の後ろに任意の順 重量順 原材料と区分して重量順 重量順
表示方法 一般名
(物質名)
一般名
(具体名)
国際番号
一般名 一般名 一般名
(名称)
コード番号
一般名
(具体名)
INSコード
一般名
(物質名)
E番号
用途名併記 8種類 25種類 5種類 確認できず 25種類 22種類 24種類
一括名対象 14種類 ガムベース、着香料、加工デンプン 香料 香料、調味料、ガムベース 香料 香料 デンプン、ガムベース
栄養強化の目的で使用されるもの 表示免除(一部の食品を除く) 添加物ではない 規定から削除 添加物ではない 添加物ではない 添加物ではない 添加物ではない
加工助剤 表示免除 表示免除 表示免除 表示が必要(添加物ではない) 表示が必要(添加物ではない) 表示免除 表示免除
キャリーオーバー 表示免除 表示免除 表示免除 表示免除(条件つき) 記載なし 表示免除(条件つき) 表示免除

出典:「食品添加物表示制度をめぐる事情(消費者庁)」

詳細については、同検討会資料のうち「食品添加物表示制度に係る実態調査事業報告書」に記載されています。輸出や輸入をされる事業者の方にとって、添加物の確認は「使用基準(使用できる食品分類、用途、量等)の確認」に多くの時間を費やされるものと思われますが、同資料は、添加物の「表示基準」の確認の重要性についても、改めて気付かされるものがあると思います。

輸出や輸入における表示確認の実務では、上記の表示制度のうち、「この原材料は添加物に該当するかどうか」と「表示免除の対象かどうか」が大きな確認ポイントになると思われます。自国または対象国で表示免除であるために、原材料使用基準の確認の段階で詳細な情報が取れておらず、実際の輸出入時に気づいて慌てることはよくある課題といえます。キャリーオーバーなどは表示基準の問題であって、使用基準の問題とは異なるのですが、輸出入取引の際にはこうした互いの国の規則に対する認識合わせがまず大切だと思います。輸出や輸入に携わる方は、一度、目を通しておかれてはいかがでしょうか。


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食品添加物表示制度に関する検討会が始まりました


 2019年4月18日、消費者庁は「第1回食品添加物表示制度に関する検討会」を開催しました。国内の食品表示制度においては、「食品表示基準(2015年4月施行(加工食品の経過措置期間は2020年3月末まで))」、「新たな加工食品の原料原産地表示制度(2017年9月施行(経過措置期間は2022年3月末まで))」、「遺伝子組換え表示制度に関する食品表示基準の一部改正(2023年4月施行)」といった改正がされており、これらに続く改正の議論となります。添加物は消費者、事業者とも関心の高い表示事項と考えられますので、こちらに整理してみたいと思います。

食品添加物表示制度の現状


 まずは、検討会資料(「食品添加物表示制度をめぐる事情(消費者庁)」)より、現状の食品表示制度について整理してみたいと思います。

<食品添加物の定義>
添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物 [食品衛生法第4条第2項]

<食品添加物の種類>

食品添加物 指定添加物
455品目(リスト化:施行規則)
安全性と有効性が確認され、国が使用を認めたもの(品目が決められている)
既存添加物
365品目(リスト化:厚労省告示)
我が国において既に使用され、長い食経験があるものについて、例外的に使用が認められている添加物(品目が決められている)
天然香料
基原物質(約600品目例示)
植物、動物から得られる、着香の目的で使用されるもの
一般飲食物添加物
(約100品目例示)
通常、食品として用いられるが、食品添加物として使用されるもの

(添加物の品目数は平成31年3月31日現在)

<食品添加物表示(加工食品)>
原則として、使用した全ての添加物を「物質名※」で食品に表示。(※物質名は、簡略名等を用いることができる。)

表示例:

小麦粉、砂糖、植物油脂(大豆を含む)、鶏卵、アーモンド、バター、異性化液糖、脱脂粉乳、洋酒、でん粉/ソルビトール、膨張剤、香料、乳化剤、着色料(カラメル、カロテン)、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)

– 下線:添加物表示部分
– 膨張剤、香料、乳化剤:一括名表示
– 着色料(カラメル、カロテン)、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC):用途名併記

添加物表示の例外:

一括名で表示可 複数の組合せで効果を発揮することが多く、個々の成分まで全てを表示する必要性が低いと考えられる添加物や、食品中にも常在する成分であるため、一括名で表示しても表示の目的を達成できるために認められている。ただし、消費者庁次長通知において列挙した添加物を、示した定義にかなう用途で用いる場合に限る。
例:飲み下さないガムベース、通常は多くの組合せで使用され添加量が微量である香料、主に調味料として使用されるアミノ酸のように食品中にも常在成分として存在するもの等
イーストフード、ガムベース、かんすい、酵素、光沢剤、香料、酸味料、調味料、豆腐用凝固剤、苦味料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、チューインガム軟化剤
用途名併記 消費者の関心が高い添加物について、使用目的や効果を表示することで、消費者の理解を得やすいと考えられるものは、用途名を併記する。
例:甘味料(サッカリンNa)、着色料(赤色3号)、保存料(ソルビン酸)
甘味料、着色料、保存料、増粘剤(安定剤、ゲル化剤又は糊料)、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤(防ばい剤)
表示不要 最終食品に残存していない添加物や、残存してもその量が少ないため最終食品に効果を発揮せず期待もされていない添加物等については、表示が不要。 加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化の目的で使用※

※特別用途食品、機能性表示食品については表示が必要。また、食品表示基準別表第4で別途定める表示を要する食品もある。

検討会開催の背景


 2015年3月に閣議決定された「消費者基本計画」において、食品表示一元化の検討過程で別途検討すべき課題の1つとされたことが、検討会開催の背景となっています。この検討会に先立ち、消費者庁は①諸外国の食品添加物に関する表示制度、②食品添加物に関する国内事業者の情報発信の状況、③消費者意向調査といった必要な調査を実施しており、これらの調査結果を参考に、食品添加物表示制度についての議論がされることになります。

今後のスケジュール


 今後は関係者(消費者、事業者等)のヒアリングを行い、その後に論点を整理したうえで、報告書の取りまとめに向けた議論がなされる予定です。第2回は2019年5月30日開催です。報告書の取りまとめは2019年度末(2020年3月)、早ければ年末までを目標としたスケジュールとなっています。

 第1回目の内容からの想定にはなりますが、今後、表示方法(一括名、用途名等)については他の表示事項との優先順位を、表示禁止事項については「〇〇無添加」「〇〇不使用」等への使用制限について議論がされるものと思われます。とりわけ、現状において無添加等の表示をされている商品を取り扱う方は、一度この検討会の議論について目を通しておかれるとよいと思います。


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「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」が公表されました

 2019年3月29日、「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」が、消費者庁により公表されました。いわゆる「冠表示」となる原材料の原料原産地情報について、重量順位にかかわらず、自主的に情報提供するための指針とされています。日本においては、「〇〇産原料使用」などの特定の原材料の産地や製造地を強調する表示について、消費者からの関心が高い背景がありますので、今月はこちらの話題を取り上げてみたいと思います。

冠表示の定義


 「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」において、自主的に原料原産地表示を提供する「冠表示」を以下のように定義されています。

  • 「商品名に特定の原材料名を冠している表示」
  • 「商品名に近接した箇所に特定の原材料の使用を特に強調している表示」

 「商品名に特定の原材料名を冠している表示」の例として、“かにチャーハン”、“牛肉カレー”、“たっぷりたまねぎシチュー”、“えびグラタン”等が挙げられています。

 また「商品名に近接した箇所に特定の原材料の使用を特に強調している表示」の例として、“抹茶を贅沢に使った”、“ごまをふんだんに練り込んだ”、“こだわりの牛肉を使用した”、“たっぷり粒コーン入り”等が挙げられています。

 これらの「冠表示」となる原材料については、重量割合が上位1位でない場合であっても、自主的に原産地表示(または製造地表示)をすることが求められることになります。

対象とならない商品について


 上記の「冠表示」に当たらない例については、「情報提供が望まれる可能性が低いもの」として、以下の例が挙げられています。

  • 特定の原材料名を冠した商品名に当たらない(原材料が特定されていない)
    (例:肉ぎょうざ、五目ピラフ、野菜カレー、フルーツゼリー、シーフードドリア等)
  • 特定の原材料の使用を特に強調していない
    (例:はちみつ使用、みかん入り、生クリーム配合、粒コーン(北海道産30%)入り等)

 また、ガイドラインの対象とならない商品については、以下のように整理されています。

  1. 食品表示基準、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律、その他の法令により原産地等の表示が義務付けられている商品。
  2. ○○味、○○風味等といった表現で、その商品の味付けや風味等のバリエーションを表しており、特定の原材料の使用を特に強調していない商品。(例:しょうゆ味、りんご味、しそ風味等)
  3. 特定の原材料名を含む商品名が一般名称とされている(特定の原材料名が商品名に付されていることが一般化されている)商品。(例:さば水煮、トマトケチャップ、コーンスープ、麦茶、いちごジャム、カレーパン等)
  4. 商品の形状等からイメージされる食材の名称を商品名の一部としている商品。(例:メロンパン、かにかま、たい焼き、柿の種等)

情報提供の方法


 ガイドラインの対象である「冠表示」に該当する場合は、以下の方法により情報提供をすることが求められます。

  • 「冠表示」の原材料名が生鮮食品の場合は産地を、加工食品の場合は製造地を情報提供する。
    (原材料名欄に加工食品の名称で表示してあったとしても、「冠表示」の原材料名を生鮮食品名で表示している場合は、その生鮮食品まで遡って原産地を情報提供する)
  • 「商品の容器包装の一括表示部分に表示(食品表示基準に基づく原料原産地名の表示方法による)」、または「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所への表示」、または「ウェブサイトや電話対応等」により行う。
  • 「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所」に行う場合、食品表示基準に掲げる表示方法(例:「農産物の場合」国産品にあっては、国産である旨に代えて都道府県名その他一般に知られている地名を、輸入品にあっては、原産国名に加え州名、省名その他一般に知られている地名等)に準じて情報提供することができる。
  • 「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所」、または「ウェブサイト」に行う場合で、複数の原産国の原材料を使用している場合は、国別表示を基本とし、国別表示が重量順でない場合は、消費者に誤認を与えないよう、重量順でない旨を表示する。

注意が必要な点


 ガイドラインでは、「複数の原産地の原材料を使用している場合で、一括表示部分以外の場所に表示する際の表示例」を、参考情報として整理しています。(例:「原材料○○の原産地は、(日本、アメリカ、タイ、中国)です。なお、当該原産地は、2018年○月時点で使用予定がある産地を順不同で表示しています。」等)

 冠表示にあたる場合は、このような積極的な情報提供が求められると思いますが、強調表示の一種であることに留意することが必要です。つまり、誤認を与えないようにすることと、合理的な根拠を保管しておくことが大切であるといえます。とりわけ、複数の原産地の原材料を使用している場合は、この点に注意される必要がありますので、ガイドラインをよく確認のうえ、情報提供されるとよいと思います。


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栄養成分表示者について~食品表示基準Q&A 第6次改正より~

 2019年3月1日に食品表示基準Q&Aの第6次改正がありました。今回は新しい表示例として、「栄養成分表示者」の追加がありましたので、こちらにとりあげてみたいと思います。

追加されたQ&A本文


 まずは追加されたQ&Aの内容を確認してみましょう。

(加工-172)小規模の事業者(注)が消費者に販売する食品は、栄養表示をしようとする場合を除き、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますが、小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する場合も、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますか。

(注)小規模の事業者とは以下のいずれかに該当する者です。

  • 消費税法(昭和63年法律第108号)第9条第1項において消費税を納める義務が免除される事業者
  • 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者

(答)
小規模の事業者が製造した食品を小規模でない事業者が販売する場合は、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することはできません。この場合、製造者(小規模の事業者)が必ず栄養成分の量及び熱量の表示を行う必要はなく、販売する者(小規模でない事業者)が表示しても差し支えありません。

(加工-173)小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する際、小規模でない事業者が栄養成分の量及び熱量の表示を追記した場合、栄養成分の量及び熱量の表示を追記した者の氏名又は名称及び住所を表示する必要がありますか。

(答)
小規模でない事業者が栄養成分の量及び熱量の表示を追記した場合、追記した者が追記した表示内容(栄養成分の量及び熱量の表示)の責任を負うことになります。この場合、追記した者の氏名又は名称及び住所を別記様式2又は別記様式3の表示に近接した箇所に表示することが望ましいです。

【表示例】

栄養成分表示

食品単位当たり

熱量
たんぱく質
脂質
炭水化物
食塩相当量

kcal
g
g
g
g

栄養成分表示者:○○○○株式会社
東京都千代田区霞が関○-○-○

食品表示基準において栄養成分表示が省略できる場合


 ここでおさらいですが、食品表示基準においては以下の場合に栄養成分表示を省略することが可能となっています。
(出典:食品表示基準 第3条3項)

以下に掲げるもの(栄養表示(栄養成分若しくは熱量に関する表示及び栄養成分の総称、その構成成分、前駆体その他これらを示唆する表現が含まれる表示をいう。以下同じ。)をしようとする場合、特定保健用食品及び機能性表示食品を除く。)

  1. 容器包装の表示可能面積がおおむね三十平方センチメートル以下であるもの
  2. 酒類
  3. 栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの※
  4. 極めて短い期間で原材料(その配合割合を含む。)が変更されるもの
  5. 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第九条第一項において消費税を納める義務が免除される事業者が販売するもの

※熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウムの全てについて、0と表示することができる基準を満たしている場合、または、1日に摂取する当該食品由来の栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量及び熱量が、社会通念上微量である場合(コーヒー豆やその抽出物、ハーブやその抽出物、茶葉やその抽出物、スパイス等)(「食品表示基準について」、「食品表示基準Q&A」より)

 追加されたQ&A内でいう「小規模の事業者」とは、上記の5(消費税法第九条第一項において消費税を納める義務が免除される事業者が販売するもの)を指しています。「~の事業者が販売するもの」であり、製造するものではない、という点でQ&Aによる補足が必要になったものと思われます。

小規模事業者と栄養成分表示


 製造者に代わって、販売者が栄養成分表示を作成する、というケースを想定してのQ&A追加ということになります。実態としては、各地域にある地場農水産加工品の販売所への納入時などを想定しているものと思われます。そして2015年4月に施行され、栄養成分表示義務化への経過措置期間である2020年3月末まであと1年という時期に食品表示基準Q&Aに追加されたということは、それだけ多くの小規模事業者が栄養成分表示の新規作成を困難と感じているものと思われます。

 このQ&A追加により、小規模事業者が販売者より栄養成分表示を求められた場合は、販売者に栄養成分表示を作成してもらうことが容易になるでしょう(もちろん、取引の関係によります)。そして、地場の農水産加工品の品ぞろえを増やしたい販売者にとっては、小規模事業者である製造者に代わって栄養成分表示作成をしなければならないケースが増えることも考えられます。

 なお、食品表示基準Q&A第6次改正では、その他にもいくつか改正点(栄養成分表示における食品単位当たりの表示について、「1個の重量にばらつきがありますが、表示値は△gの場合の値です。」「1個の重量は、〇~〇gです。」といった枠外への補足事項の表示を可能とするもの等)があります。
 食品表示基準Q&Aはたびたび改正されており、2018年9月の第5次改正時には「香料や着色料といった五感に訴えるような添加物は、調味料や甘味料同様にキャリーオーバーとみなされず表示が必要」の追加がされたなどの改正がありますので、この機会に、過去の改正情報についてもあわせて確認されてみるとよいと思います。


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遺伝子組換え表示制度 一部改正の審議について(1)

 2019年2月現在、内閣府消費者委員会食品表示部会において、「食品表示基準の一部改正(遺伝子組換え表示)に係る審議」が開催されています。新たな原料原産地表示への対応など、今後の食品表示計画を検討されている方も多いと思いますので、今回のコラムに取り上げてみたいと思います。

これまでの経緯


 2017年4月から2018年3月にかけて「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が消費者庁において開催され、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会 報告書」が公表されました。その後2018年10月にパブリックコメントの募集が開始され、同月より内閣府消費者委員会食品表示部会において、「食品表示基準の一部改正(遺伝子組換え表示)に係る審議」が始まりました。そしてパブリックコメントのとりまとめ結果をもとに2018年12月、2019年1月、2月と審議を重ねている状況です。

主な審議内容(公定検査について)


 おさらいになりますが、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会 報告書」における、現行制度との主な変更点は、以下の2点でした。

  • 「遺伝子組換え不分別」の表現に代わる表示案を検討しQ&A等に示す。
  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に引き下げる。5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにする。

 このため、制度の実効性を確保する観点から、主に「監視、公定検査法」について議論がなされています。とりわけ、「遺伝子組換えでない」や「分別生産流通管理が適切に行われている」と表示された商品に対し、それが事実であるかを原料農産物にまで遡って検証するという内容です。

 消費者庁案として提示された 「科学的検証と社会的検証を用いた遺伝子組換え表示の監視の考え方」には、以下のような検証方法が示されています。

【遺伝子組換え表示の監視】

(中略)「遺伝子組換えでない」旨の表示(任意表示)については、その原料の分別生産流通管理がなされている旨の書類、遺伝子組換え農産物が混入していないことの根拠の確認等の社会的検証に加え、科学的検証の手法で原材料の大豆やとうもろこしにおいて遺伝子組換え農産物を含まないことを確認します。

【監視対象となる表示例】

(1)遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理されたことを確認した対象農産物である旨の表示(対象農産物名のみを記載している場合も含む)

表示例

名  称 納豆
原材料名 大豆(カナダ・分別生産流通管理済み)、△△、〇〇〇、…
名  称 コーングリッツ
原材料名 とうもろこし(米国)

(2)遺伝子組換え農産物の混入がない非遺伝子組換え農産物である旨の表示

表示例

名  称 豆腐
原材料名 大豆(国産・遺伝子組換えでない

【市販品買上げ調査等】
(目的)遺伝子組換え農産物が含まれている可能性がある対象商品の絞り込み
(手法)科学的検証:加工食品の定性検査

「陽性」である場合の想定される原因

  • 遺伝子組換え農産物の使用(混入)
  • 製造ラインにおける他商品の遺伝子組換え混入原材料からの混入
  • 適切に分別生産流通管理された農産物への遺伝子組換え農産物の意図せざる混入
  • その他

【事業者への立入検査等(市販品買上げ調査等の結果が「陽性」の場合)】
(目的)違反事実の確認及び特定
(手法)社会的検証:分別生産流通管理に関する書類、その他関連書類、
          製造現場の確認、聞取り調査等
    科学的検証:原料農産物の定量検査(注1)・定性検査(注2)、加工食品の定性検査

(注1)IP管理された旨の表示及びGM表示がないものが対象 (注2)「遺伝子組換えでない」旨の表示が対象

そして、「検査の精度」と、こうした検証に対する労力が課題とされており、この議論を重ねているところです。

表示方法と今後について


 その他、表示方法に関する議論もされていますが、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会 報告書」と関連性があると考えられている意見(「遺伝子組換え表示制度改正案にかかる委員意見」において報告書の論点番号が付記されているもの)を抜粋すると以下のようになります。

【表示内容、表現方法】

  • 「不分別」といった表現や、不検出から5%の間を示す表現については分かりやすくすべき。
  • 主観的な表現の使用は避け、極力Q&Aなどで例示すべき。
  • 「不検出」という表現に消費者は過度な期待を抱きがちになり、留意が必要。
  • 簡素な手段を用いて、充実した表示がなされる方向で検討されるべき。
  • 「遺伝子組換えでない」と表示していないことの意味が2種類あり、その点は消費者の誤認が払拭できないのではないか。
  • IPハンドリング実施の事実を、マークなどを用いて表示してはどうか。また、「IPハンドリング」という用語自体も積極的に普及を図ってはどうか。

 このほか、先の検討会において議論された内容が再度議論されているのは、パブリックコメントの結果によるものと思われます。パブリックコメントは773件の意見が集まりましたが、そのとりまとめ結果の資料(「遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見募集の結果について(概要)」)を見ると、現行の遺伝子組換え表示制度や、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会 報告書」における改正案に対し、理解が十分でないことが分かります。

 この後、最終的な答申案について審議がされる予定です。食品表示の実務に関して言えば、こうした審議の経過までは知らなくても業務上の問題はないものの、やはり制度の成り立ちの背景を知っておくことは、分かりやすい表示を考えるうえで役に立つと思いますので、一度目を通しておかれることをおすすめしたいと思います。


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2018年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。おかげさまでラベルバンク新聞も11年目となりました。本年もどうぞ、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 一昨年(2017年)ほどではないものの、昨年(2018年)も食品表示に関するニュースがいくつかありました。食品表示実務に携わる方は、新基準への対応等で忙しくされているところかと思いますので、こちらでまとめた内容が、今後の業務計画を立てる際の参考になりましたら幸いです。

昨年の主な出来事


 食品表示に関する出来事のうち、昨年起きた主な改正等を整理してみました。

2018年 3月 遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書の発表(「遺伝子組換えでない」表示の条件の変更)
「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」改正(「糖質、糖類」「植物エキス及び分泌物」の追加)
5月 「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン第2版」公表
6月 「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」公表
「食品衛生法等の一部を改正する法律」の公布
8月 「特別用途食品の表示許可等について」一部改正(「乳児用液体ミルク」の追加)
9月 「食品表示基準」改正※
「食品表示基準について」第13次改正※
「食品表示Q&A」第5次改正※
12月 「食品表示法の一部を改正する法律」の公布

※食品表示基準 新旧対照表(2018年9月21日)、(2018年9月1日
食品表示基準について 新旧対照表
食品表示基準Q&A 新旧対照表

今後予定されていること


 今後の予定は、以下のとおりです。主には新しく始まった制度経過措置期間が対象ですので、今後の作業計画の再確認として参考にしていただければと思います。

2020年 3月末 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)(製造所固有記号)終了
2022年 3月末 新たな加工食品の原料原産地表示制度 経過措置期間終了

 今年もいろいろなことがあると思いますが、1つ1つの業務をきっちりと進めることで、全体としてよりよい仕事ができるようにしたいと思います。それでは、今年もよろしくお願いいたします。

食品表示法の一部改正について~自主回収の届出が義務化されます~

 2018年12月14日、食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)が公布されました。この改正により、食品の自主回収をした際に行政機関への届出が義務化されることになります。その経緯と詳細について、まとめてみたいと思います。

主な改正内容


  • 食品関連事業者等が「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」を行う場合、行政機関への届出を義務付けされます。(※届出対象となる食品表示基準違反:アレルゲン、消費期限などの欠落や誤表示)
  • 当該届出に係る食品リコール情報については、行政機関において消費者に情報提供(公表)されます。
  • 届出をしない又は虚偽の届出をした者は罰金となります。

食品表示法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 「かに」のアレルゲン表示の欠落
健康への影響 「かに」にアレルギーを有する人が、じんましん、呼吸困難等のアレルギー症状を発症することがある
画像 表示枠内の写真等
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品表示法の一部を改正する法律の概要(平成30年法律第97号)(消費者庁)

改正の背景について


 2018年6月13日に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」により、食品リコール情報の届出を制度として位置づけることになりました。食品衛生法の改正では、食品衛生法に違反する食品、食品衛生法違反のおそれがある食品の自主回収を行う場合、同様に行政機関への届出が義務付けされることになります。(※食品衛生法違反の原因となった原材料を使用した他の製品や、製造ラインの硬質部品が破損して製品に混入した場合等)

食品衛生法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 腸管出血性大腸菌O157の検出
健康への影響 下痢、嘔吐等の他、過去に重症化し死亡事例がある
画像
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省)

 その際、アレルゲン等の安全性に関わる食品衛生法違反による食品リコールについて、早急に検討することと決められたことが、食品表示法においても同様の仕組みを必要とした背景となっています。
 またこれまで食品表示法においては、食品関連事業者等が食品の自主回収(リコール)を行う際、食品リコール情報を行政機関に届け出る仕組みがなかったことが課題としてあげられています。ただ各自治体においては、すでに自主回収の報告制度が規定されている場合が多くありますので、過去に自主回収を経験された事業者の方にとってはイメージしやすいと思います。(自主報告制度を条例で規定している、もしくは条例以外の要綱等で規定している自治体は全体の80%弱です。※出典:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省))

自治体による自主報告制度について


 過去に自主回収をされたことのない事業者の方にとっては馴染みが薄いと思われますので、現状の自主報告制度について一度見ておかれることは大切だと思います。例として東京都の「自主回収報告制度」などが参考になると思いますので、下記にURLを掲載させていただきます。(※食品表示法のものと混同されないようご注意ください。)

「安全性に関する食品表示基準に従った表示」について


 最後に、「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」のうちの「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示」について整理したいと思います。例として「アレルゲン、消費期限など」としておりますが、具体的には「アレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別、その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令で定めるもの」とされています。

 こちらは「食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項」の一部です。全部で15項目あります。

(1)名称
(2)保存の方法
(3)消費期限又は賞味期限
(4)添加物
(5)アレルゲン
(6)L‐フェニルアラニン化合物を含む旨
(7)特定保健用食品を摂取をする上での注意事項
(8)機能性表示食品を摂取をする上での注意事項
 ・・・中略・・・
(15)食品表示基準第40条に規定する生食用牛肉の注意喚起表示に関する事項

引用:食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項(消費者庁)

 施行の時期は未定ですが、万一の場合に備えて、こうした情報については一度目を通しておかれるとよいのではと思います。


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輸出入と原材料使用基準、表示基準


 日本と海外各国では、食品の制度は大きく異なります。例えばアレルゲンの表示対象品目も異なってきますので、十分な事前調査が必要です。また、こうした規則の違いによる対応の難易度にも大きな差があります。例えばアレルゲンの表示基準の違いがあることについては、その違いを知ってしまえば、対応自体はそれほど難しくありません。表示を変更すればよい、ということになるためです。その一方で、規則の違いを把握できたとしても、実際に対応することはかなり難しいということもあります。
 そこで今回のミニコラムでは、実務対応上の課題からみた「使用基準」と「表示基準」について簡単にまとめてみたいと思います。まずは以下の表をみてください。

    基準の判断のしやすさ 基準への対応のしやすさ
使用基準 原材料 Hard Hard(食品分類による)
添加物 Easy Hard(食品分類による)
表示基準 義務表示 Hard Easy
任意表示 Hard Easy

使用基準については「原材料」と「添加物」の区分で、表示基準については「義務表示」と「任意表示」で分けて考えてみました。Easyは「対応が簡単」、そしてHardは「対応が難しい」という意味です。

【原材料使用基準】
原材料使用基準については、とりわけ添加物については規則をみつけること自体は難しくありません。ただし、必要であることから使用されているものであるため、同じような機能をもつ代替の添加物を探す必要があります。その際、製造性での課題や、栄養成分訴求等の品質保証の課題について検証が必要な場合は、時間がかかることになります。

添加物以外の原材料(食品素材)については、使用基準そのものをみつけることが困難な場合があります。とくにノベルフード(食経験が長くないもので例としては成分を抽出し濃縮したエキス等があります)に該当するものを主要原材料としている場合は、代替原材料の選定は難しくなります。

【表示基準】
表示事項、表示方法、禁止表示といった表示基準は、規則が分かってしまえば対応は難しくありません。ただし、原材料使用基準の規則と違い、現地の規則は長文で記載されており、現地の担当者でも理解が難しい場合があります。つまり規則の把握自体が簡単ではないとも言えます。とりわけ強調表示など特定の条件下で表示の必要性が生じる規則などについては、規則自体の把握はかなり難しい場合があります。

そして共通する課題が、「食品分類の特定」でしょう。原材料使用基準も表示基準も、日本と同様に「食品分類」によってそれぞれ異なります。輸出入の際、どこに時間がかかりそうかを考えるうえで参考になればと思います。


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【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

海外とアレルゲン表示


 先日、海外に輸出される予定の国産食品に「アレルゲンフリー」と表示されているものを見る機会がありました。メーカーさんに話を聞くと「原材料として使用していない」から表示しているとのことで、いくつか注意が必要と感じましたので、今月のコラムは「海外とアレルゲン表示」について書いてみたいと思います。

対象品目の違い


 日本と海外とでは、アレルゲン表示の対象品目に違いがあります。まずは日本のアレルゲン表示の対象品目は、以下の27品目(義務表示は7品目)となります。

義務(7品目):えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生
推奨(20品目):あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

 これに対して、海外の対象品目はやや異なります。例えば香港では、以下の8品目が表示義務の対象となります。

(i) グルテンを含有する穀物
(ii) 甲殻類および甲殻類製品
(iii) 卵および卵製品
(iv) 魚および魚加工品
(v) ピーナッツ、大豆およびこれらの製品
(vi) 乳および乳製品(乳糖を含む)
(vii) ナッツおよびナッツ製品

引用:各国の食品・添加物等の規格基準(農林水産省)より

 また日本(2013年に「ごま」「カシューナッツ」を表示推奨品目に追加)と同じように、規則も改正されていきます。例えば2018年では台湾のアレルゲン表示の規則に改定(2018年8月21日改定、2020年7月1日施行)があり、従来の6品目から11品目へと拡大されています。

  1. 甲殻類およびその製品
  2. マンゴーおよびその製品
  3. ピーナッツおよびその製品
  4. ゴマ、ヒマワリ種子、およびそれらの製品
  5. 牛乳、山羊乳、およびそれらの製品(牛乳および山羊乳由来のラクチトールを除く)
  6. 卵およびその製品
  7. ナッツおよびその製品(アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、カシューナッツ、ピーカン、ブラジルナッツ、ピスタチオナッツ、マカダミアナッツ、松の実、栗など)
  8. 小麦、大麦、ライ麦、オート麦などのグルテンおよびその製品を含む穀類
  9. 大豆およびその製品(高純化または精製された大豆油脂、トコフェロールおよびその分解物、フィトステロールおよびフィトステロールエステルを除く)
  10. 最終成果物として算出されるべきすべてのSO2換算で10mg/kg 以上の濃度となる亜硫酸塩および二酸化硫黄などの使用
  11. サーモン、サバ、オオクチ(Yuan xue)、カラスガレイ(Bian xue)およびそれらの製品

引用:各国の食品・添加物等の規格基準(農林水産省)より

 日本から海外へと輸出される食品については、とりわけ「小麦」は含まれないが「グルテン」を含むもの、またキャリーオーバーの添加物に「亜硫酸塩」を含むものなどが注意点としてあげられます(輸入時は、反対に「グルテン」は含まれないが「小麦」を含むものに注意が必要です)。海外に食品を輸出されようとされる方は、対象国のアレルゲン表示の規則について、調べておく必要があります。農林水産省作成の「各国の食品・添加物等の規格基準」は日本語で参照できますので、一度見ておかれるとよいと思います。

フリーと不使用の違い


 次に、「アレルゲンフリー」の持つ意味についても確認が必要です。日本の食品表示基準には、以下の規則があります。

「使用していない」旨の表示は、必ずしも「含んでいない」ことを意味するものではありません。(中略)例えば、一般に「ケーキ」には「小麦粉(特定原材料)」を使用していますが、「小麦粉」を使用しないで「ケーキ」を製造した場合であって、それが製造記録などにより適切に確認された場合に、「本品は小麦(粉)を使っていません」と表示することができます。しかし、このような場合であっても、同一の調理施設で小麦粉を使ったケーキを製造していた場合、コンタミネーションしている場合がありますので、この表示をもって、小麦が製品に含まれる可能性を否定するものではありません。
(食品表示基準Q&Aより)

 日本には「アレルゲンフリー(含んでいない)」表示についての数値基準は明確には定められていませんが、こうした表示に対する基準が定められている国もあります。例えばアメリカやEUでは、「グルテンフリー」と表示できる基準値として「20ppm(mg/kg)」が設定されています。「gluten-free」だけでなく「no gluten」なども対象になるなど、表示方法についても規則がある場合がありますので、こうした表示をされたい方は事前に確認をされておくとよいでしょう。
 また関連する表示としては、「低グルテン」の規則がある国もあります。例としてオーストラリアとニュージーランドの規則は次のようなものとなります。

グルテン

  • (グルテン)フリー
    食品には以下のものを含有してはならない
    (a) 検出可能なグルテン、もしくは
    (b) オーツまたは関連商品、もしくは
    (c) モルト化したグルテンを含有する雑穀または関連商品
  • 低(グルテン)
    100g あたり20mg 未満のグルテンを含有する食品

参考:Federal Register of Legislation. Standard 1.2.7 Nutrition, health and related claims

 その他、アレルゲンフリーの表示をする際には届出が必要な国もありますので、表示方法などの規則だけでなく制度についても調べておく必要があると言えます。

最後に


 こうした制度や規則の違いの背景の1つに、食文化の違いがあると思います。海外に輸出される予定の日本の食品ラベルを見る機会も増えていますが、アレルゲンフリーや○○産原材料使用などの「強調表示」がされているケースも増えていると感じます。日本も同じですが、強調表示をするにはそれなりの根拠の用意が必要となります。
 規則が異なるために、日本では可能だった強調表示ができなくなる場合も多々あります。その際には、無理に他に可能な強調表示を探すのもよいですが、空いた表示スペースには「食品自体の説明文章」にあてると、食文化の異なる消費者にも分かりやすくなるのでは思いますので、海外へ販売するときの参考までにしていただければと思います。


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強調表示とは

食品表示基準での強調表示といえば、栄養成分強調表示(高い旨、含む旨等)を思い浮かべる方が多いのではと思いますが、不当表示を防ぐ目的で広義にとらえると様々な強調表示がありますので、ミニコラムとしてまとめてみたいと思います。

以下の図は、強調表示の類型についてまとめたものです。

上下の違いは、強調の目的の違いです。
安全や健康に関して強調をする場合と、商品の品質に関して強調をする場合に分けています。
左右の違いは、強調の内容の違いです。
何かを使用しているか、強化している場合と、何かを使用してないか、軽減している場合に分けています。

これらの強調表示の際には、根拠(エビデンス)となる資料が必要となります。原材料の種類に関する強調の場合であれば、原材料規格書や製造記録などが該当します。栄養成分の量に関する強調の場合であれば、栄養成分の分析成績書などが該当します。

食品の場合、すべての原材料について常に同じ規格のものを安定して使用することは、簡単ではないケースが多いと思います。ですので、毎年定期的に原材料規格書や分析成績書を更新するといった品質保証(表示してあることと実際との整合性を確認する)業務が大切といえます。

強調している表示に対して、保有している根拠資料が適切でなければ、不当表示となる恐れがあります。その点で、強調表示と不当表示は背中合わせのような関係と考えてよいでしょう。何かを強調するには、それにふさわしい根拠が必要です。

保有している根拠資料が強調表示の根拠として適切であるかどうかを、一度見直しをする機会にしていただければと思います。