Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

食品表示法の一部改正について~自主回収の届出が義務化されます~

 2018年12月14日、食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)が公布されました。この改正により、食品の自主回収をした際に行政機関への届出が義務化されることになります。その経緯と詳細について、まとめてみたいと思います。

主な改正内容


  • 食品関連事業者等が「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」を行う場合、行政機関への届出を義務付けされます。(※届出対象となる食品表示基準違反:アレルゲン、消費期限などの欠落や誤表示)
  • 当該届出に係る食品リコール情報については、行政機関において消費者に情報提供(公表)されます。
  • 届出をしない又は虚偽の届出をした者は罰金となります。

食品表示法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 「かに」のアレルゲン表示の欠落
健康への影響 「かに」にアレルギーを有する人が、じんましん、呼吸困難等のアレルギー症状を発症することがある
画像 表示枠内の写真等
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品表示法の一部を改正する法律の概要(平成30年法律第97号)(消費者庁)

改正の背景について


 2018年6月13日に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」により、食品リコール情報の届出を制度として位置づけることになりました。食品衛生法の改正では、食品衛生法に違反する食品、食品衛生法違反のおそれがある食品の自主回収を行う場合、同様に行政機関への届出が義務付けされることになります。(※食品衛生法違反の原因となった原材料を使用した他の製品や、製造ラインの硬質部品が破損して製品に混入した場合等)

食品衛生法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 腸管出血性大腸菌O157の検出
健康への影響 下痢、嘔吐等の他、過去に重症化し死亡事例がある
画像
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省)

 その際、アレルゲン等の安全性に関わる食品衛生法違反による食品リコールについて、早急に検討することと決められたことが、食品表示法においても同様の仕組みを必要とした背景となっています。
 またこれまで食品表示法においては、食品関連事業者等が食品の自主回収(リコール)を行う際、食品リコール情報を行政機関に届け出る仕組みがなかったことが課題としてあげられています。ただ各自治体においては、すでに自主回収の報告制度が規定されている場合が多くありますので、過去に自主回収を経験された事業者の方にとってはイメージしやすいと思います。(自主報告制度を条例で規定している、もしくは条例以外の要綱等で規定している自治体は全体の80%弱です。※出典:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省))

自治体による自主報告制度について


 過去に自主回収をされたことのない事業者の方にとっては馴染みが薄いと思われますので、現状の自主報告制度について一度見ておかれることは大切だと思います。例として東京都の「自主回収報告制度」などが参考になると思いますので、下記にURLを掲載させていただきます。(※食品表示法のものと混同されないようご注意ください。)

「安全性に関する食品表示基準に従った表示」について


 最後に、「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」のうちの「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示」について整理したいと思います。例として「アレルゲン、消費期限など」としておりますが、具体的には「アレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別、その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令で定めるもの」とされています。

 こちらは「食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項」の一部です。全部で15項目あります。

(1)名称
(2)保存の方法
(3)消費期限又は賞味期限
(4)添加物
(5)アレルゲン
(6)L‐フェニルアラニン化合物を含む旨
(7)特定保健用食品を摂取をする上での注意事項
(8)機能性表示食品を摂取をする上での注意事項
 ・・・中略・・・
(15)食品表示基準第40条に規定する生食用牛肉の注意喚起表示に関する事項

引用:食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項(消費者庁)

 施行の時期は未定ですが、万一の場合に備えて、こうした情報については一度目を通しておかれるとよいのではと思います。


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輸出入と原材料使用基準、表示基準


 日本と海外各国では、食品の制度は大きく異なります。例えばアレルゲンの表示対象品目も異なってきますので、十分な事前調査が必要です。また、こうした規則の違いによる対応の難易度にも大きな差があります。例えばアレルゲンの表示基準の違いがあることについては、その違いを知ってしまえば、対応自体はそれほど難しくありません。表示を変更すればよい、ということになるためです。その一方で、規則の違いを把握できたとしても、実際に対応することはかなり難しいということもあります。
 そこで今回のミニコラムでは、実務対応上の課題からみた「使用基準」と「表示基準」について簡単にまとめてみたいと思います。まずは以下の表をみてください。

    基準の判断のしやすさ 基準への対応のしやすさ
使用基準 原材料 Hard Hard(食品分類による)
添加物 Easy Hard(食品分類による)
表示基準 義務表示 Hard Easy
任意表示 Hard Easy

使用基準については「原材料」と「添加物」の区分で、表示基準については「義務表示」と「任意表示」で分けて考えてみました。Easyは「対応が簡単」、そしてHardは「対応が難しい」という意味です。

【原材料使用基準】
原材料使用基準については、とりわけ添加物については規則をみつけること自体は難しくありません。ただし、必要であることから使用されているものであるため、同じような機能をもつ代替の添加物を探す必要があります。その際、製造性での課題や、栄養成分訴求等の品質保証の課題について検証が必要な場合は、時間がかかることになります。

添加物以外の原材料(食品素材)については、使用基準そのものをみつけることが困難な場合があります。とくにノベルフード(食経験が長くないもので例としては成分を抽出し濃縮したエキス等があります)に該当するものを主要原材料としている場合は、代替原材料の選定は難しくなります。

【表示基準】
表示事項、表示方法、禁止表示といった表示基準は、規則が分かってしまえば対応は難しくありません。ただし、原材料使用基準の規則と違い、現地の規則は長文で記載されており、現地の担当者でも理解が難しい場合があります。つまり規則の把握自体が簡単ではないとも言えます。とりわけ強調表示など特定の条件下で表示の必要性が生じる規則などについては、規則自体の把握はかなり難しい場合があります。

そして共通する課題が、「食品分類の特定」でしょう。原材料使用基準も表示基準も、日本と同様に「食品分類」によってそれぞれ異なります。輸出入の際、どこに時間がかかりそうかを考えるうえで参考になればと思います。


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海外とアレルゲン表示


 先日、海外に輸出される予定の国産食品に「アレルゲンフリー」と表示されているものを見る機会がありました。メーカーさんに話を聞くと「原材料として使用していない」から表示しているとのことで、いくつか注意が必要と感じましたので、今月のコラムは「海外とアレルゲン表示」について書いてみたいと思います。

対象品目の違い


 日本と海外とでは、アレルゲン表示の対象品目に違いがあります。まずは日本のアレルゲン表示の対象品目は、以下の27品目(義務表示は7品目)となります。

義務(7品目):えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生
推奨(20品目):あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

 これに対して、海外の対象品目はやや異なります。例えば香港では、以下の8品目が表示義務の対象となります。

(i) グルテンを含有する穀物
(ii) 甲殻類および甲殻類製品
(iii) 卵および卵製品
(iv) 魚および魚加工品
(v) ピーナッツ、大豆およびこれらの製品
(vi) 乳および乳製品(乳糖を含む)
(vii) ナッツおよびナッツ製品

引用:各国の食品・添加物等の規格基準(農林水産省)より

 また日本(2013年に「ごま」「カシューナッツ」を表示推奨品目に追加)と同じように、規則も改正されていきます。例えば2018年では台湾のアレルゲン表示の規則に改定(2018年8月21日改定、2020年7月1日施行)があり、従来の6品目から11品目へと拡大されています。

  1. 甲殻類およびその製品
  2. マンゴーおよびその製品
  3. ピーナッツおよびその製品
  4. ゴマ、ヒマワリ種子、およびそれらの製品
  5. 牛乳、山羊乳、およびそれらの製品(牛乳および山羊乳由来のラクチトールを除く)
  6. 卵およびその製品
  7. ナッツおよびその製品(アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、カシューナッツ、ピーカン、ブラジルナッツ、ピスタチオナッツ、マカダミアナッツ、松の実、栗など)
  8. 小麦、大麦、ライ麦、オート麦などのグルテンおよびその製品を含む穀類
  9. 大豆およびその製品(高純化または精製された大豆油脂、トコフェロールおよびその分解物、フィトステロールおよびフィトステロールエステルを除く)
  10. 最終成果物として算出されるべきすべてのSO2換算で10mg/kg 以上の濃度となる亜硫酸塩および二酸化硫黄などの使用
  11. サーモン、サバ、オオクチ(Yuan xue)、カラスガレイ(Bian xue)およびそれらの製品

引用:各国の食品・添加物等の規格基準(農林水産省)より

 日本から海外へと輸出される食品については、とりわけ「小麦」は含まれないが「グルテン」を含むもの、またキャリーオーバーの添加物に「亜硫酸塩」を含むものなどが注意点としてあげられます(輸入時は、反対に「グルテン」は含まれないが「小麦」を含むものに注意が必要です)。海外に食品を輸出されようとされる方は、対象国のアレルゲン表示の規則について、調べておく必要があります。農林水産省作成の「各国の食品・添加物等の規格基準」は日本語で参照できますので、一度見ておかれるとよいと思います。

フリーと不使用の違い


 次に、「アレルゲンフリー」の持つ意味についても確認が必要です。日本の食品表示基準には、以下の規則があります。

「使用していない」旨の表示は、必ずしも「含んでいない」ことを意味するものではありません。(中略)例えば、一般に「ケーキ」には「小麦粉(特定原材料)」を使用していますが、「小麦粉」を使用しないで「ケーキ」を製造した場合であって、それが製造記録などにより適切に確認された場合に、「本品は小麦(粉)を使っていません」と表示することができます。しかし、このような場合であっても、同一の調理施設で小麦粉を使ったケーキを製造していた場合、コンタミネーションしている場合がありますので、この表示をもって、小麦が製品に含まれる可能性を否定するものではありません。
(食品表示基準Q&Aより)

 日本には「アレルゲンフリー(含んでいない)」表示についての数値基準は明確には定められていませんが、こうした表示に対する基準が定められている国もあります。例えばアメリカやEUでは、「グルテンフリー」と表示できる基準値として「20ppm(mg/kg)」が設定されています。「gluten-free」だけでなく「no gluten」なども対象になるなど、表示方法についても規則がある場合がありますので、こうした表示をされたい方は事前に確認をされておくとよいでしょう。
 また関連する表示としては、「低グルテン」の規則がある国もあります。例としてオーストラリアとニュージーランドの規則は次のようなものとなります。

グルテン

  • (グルテン)フリー
    食品には以下のものを含有してはならない
    (a) 検出可能なグルテン、もしくは
    (b) オーツまたは関連商品、もしくは
    (c) モルト化したグルテンを含有する雑穀または関連商品
  • 低(グルテン)
    100g あたり20mg 未満のグルテンを含有する食品

参考:Federal Register of Legislation. Standard 1.2.7 Nutrition, health and related claims

 その他、アレルゲンフリーの表示をする際には届出が必要な国もありますので、表示方法などの規則だけでなく制度についても調べておく必要があると言えます。

最後に


 こうした制度や規則の違いの背景の1つに、食文化の違いがあると思います。海外に輸出される予定の日本の食品ラベルを見る機会も増えていますが、アレルゲンフリーや○○産原材料使用などの「強調表示」がされているケースも増えていると感じます。日本も同じですが、強調表示をするにはそれなりの根拠の用意が必要となります。
 規則が異なるために、日本では可能だった強調表示ができなくなる場合も多々あります。その際には、無理に他に可能な強調表示を探すのもよいですが、空いた表示スペースには「食品自体の説明文章」にあてると、食文化の異なる消費者にも分かりやすくなるのでは思いますので、海外へ販売するときの参考までにしていただければと思います。


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強調表示とは

食品表示基準での強調表示といえば、栄養成分強調表示(高い旨、含む旨等)を思い浮かべる方が多いのではと思いますが、不当表示を防ぐ目的で広義にとらえると様々な強調表示がありますので、ミニコラムとしてまとめてみたいと思います。

以下の図は、強調表示の類型についてまとめたものです。

上下の違いは、強調の目的の違いです。
安全や健康に関して強調をする場合と、商品の品質に関して強調をする場合に分けています。
左右の違いは、強調の内容の違いです。
何かを使用しているか、強化している場合と、何かを使用してないか、軽減している場合に分けています。

これらの強調表示の際には、根拠(エビデンス)となる資料が必要となります。原材料の種類に関する強調の場合であれば、原材料規格書や製造記録などが該当します。栄養成分の量に関する強調の場合であれば、栄養成分の分析成績書などが該当します。

食品の場合、すべての原材料について常に同じ規格のものを安定して使用することは、簡単ではないケースが多いと思います。ですので、毎年定期的に原材料規格書や分析成績書を更新するといった品質保証(表示してあることと実際との整合性を確認する)業務が大切といえます。

強調している表示に対して、保有している根拠資料が適切でなければ、不当表示となる恐れがあります。その点で、強調表示と不当表示は背中合わせのような関係と考えてよいでしょう。何かを強調するには、それにふさわしい根拠が必要です。

保有している根拠資料が強調表示の根拠として適切であるかどうかを、一度見直しをする機会にしていただければと思います。

「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」について

 少し前になりますが、2018年6月に消費者庁より「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(以下「留意点」)が公表されていますので、今月はこちらを取り上げてみたいと思います。

強調表示と打消し表示


 打消し表示とは、商品の内容などについて強調表示をする際に、なんらか例外などがあるときに表示されるものです。分かりやすい例としては、体験談の表示に添えられる「個人の感想です。効果には個人差があります。」といった表示があげられます。「留意点」によると、強調表示と打消し表示は以下のように定義されています。

【強調表示】:事業者が、自己の販売する商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示

【打消し表示】:強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示

打消し表示の方法について


  「留意点」では、紙面広告だけでなく、動画広告やWeb広告(PC及びスマートフォン)についても、それぞれの媒体の特性別に注意すべき表示を整理しています。容器包装への表示については「紙面広告」と読み替えて想定していただくとして、ここではすべての媒体に共通する注意点について取り上げてみたいと思います。

(1)打消し表示の文字の大きさ

打消し表示の文字の大きさは、一般消費者に打消し表示が認識されない大きな理由の1つであると考えられています。事業者が打消し表示を行う際には、一般消費者が手にとって見るような表示物なのか、鉄道の駅構内のポスター等の一般消費者が離れた場所から目にする表示物なのかなど、表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、それらの表示物を一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要があります。

(2)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス

打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があり、打消し表示の文字の大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、一般消費者は、印象の強い強調表示に注意が向き、打消し表示に気付くことができないときがあると考えられます。

(3)打消し表示の配置箇所

打消し表示は、一般消費者が、それが強調表示に対する打消し表示であると認識できるように表示する必要があるため、打消し表示の配置箇所は、打消し表示であると認識されるようにするための非常に重要な要素です。

(4)打消し表示と背景との区別

打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合(例えば、明るい水色、オレンジ色、黄色の背景に、白の文字で打消し表示を行った場合)など、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合には、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがあります。

打消し表示の内容について


 そして、問題となりえる打消し表示の内容について以下の4類型が公表されています。

(1)例外型の打消し表示

商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(2)別条件型の打消し表示

例えば、割引期間や割引料金が強調される一方、割引期間や割引料金が適用されるための別途の条件が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は別途の条件なしに強調された割引期間や割引料金で商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(3)追加料金型の打消し表示

「全て込み」などと追加の料金が発生しないかのように強調している一方、それとは別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は当該価格以外に追加料金が発生しないという認識を抱くと考えられる。

(4)試験条件型の打消し表示

表示を行うに当たっては、表示された効果、性能等(ここで「表示された効果、性能等」とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能等であることに留意する必要がある。)が、試験・調査等によって客観的に実証された内容と適切に対応している必要がある。

 なお、冒頭の事例である「個人の感想です。効果には個人差があります。」については、体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするために、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべき、とされています。

今後について


 消費者庁の発表によれば、「打消し表示」については今後厳しく取り締まる方針となっています。上にあげた4つの表示方法と4つの表示内容については、どのような表示にもあてはめて考えることができる視点となっていると思いますので、パッケージデザインだけでなく、同封のしおり、パンフレットやウェブサイトなどの表示が適切であるかを検証する業務に携わる方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。

『平成30年7月豪雨を受けた食品表示の弾力的運用について』

※こちらの運用は年内(平成30年12月31日)で終了となります。
詳細は下記を参照ください。

 2018年7月13日、消費者庁は、災害救助法の適用を受けた被災地において、農林水産省及び厚生労働省と連名で、食品表示基準を弾力的に運用する旨を関係機関に通知しました。各通知は以下のサイトに掲載されています。

『食品表示に関するお知らせ』(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/

2018年7月13日~19日までに発表された通知


平成30年7月豪雨を受けた

  • 食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について
  • 乳児用液体ミルクの取扱いについて
  • 製造所の表示の運用について
  • 製造所固有記号の表示の運用について

各通知の概要(抜粋)


『食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について』

“食品の安全性に係る情報伝達について十分な配慮がなされていると判断されるとともに、消費者の誤認を招くような表示をしていない場合には、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地(※)において、譲渡又は販売される食品については、必ずしも食品表示基準に基づく義務表示事項の全てが表示されていなくとも、当分の間、取締りを行わなくても差し支えない”(※10府県60市37町4村)

“食品表示基準に基づく表示事項が容器包装に記載されていない食品を被災地で譲渡・販売する場合にも、アレルギー表示及び消費期限については、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があることから、これまでどおり、取締りの対象となります。”

“賞味期限については、多くの業務用加工食品において、容器包装に表示されている状況もあり、可能な限り個別に表示する”

“消費者の誤認を招くような悪質な違反についての取締りを排除するものではない。悪質な違反については、引き続き、関係機関とも連携した取締りを行う”

『乳児用液体ミルクの取扱いについて』

“母乳代替食品としての用に適する旨を表示した乳児用液体ミルクについて、特別用途食品制度における許可及び承認を受けていない場合も、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととします”

“ただし、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があり、これまでどおり、取締りの対象となります。”

“食品衛生上、開封後の飲み残しは保管しない”

『製造所の表示の運用について』

“当分の間、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地の工場(製造所)で製造していた食品について、他の製造者や製造所に委託する場合にあっては、別添届出様式を用いてFAXにより消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、実際の製造所の所在地及び製造者の氏名と食品に表示された製造所の所在地及び製造者の氏名とが異なることとなっても差し支えないこととします”

“消費者から製造所について問合せがあった場合には、実際に製造された製造所の名称及び所在地を回答する”

別添届出様式はこちら

『製造所固有記号の表示の運用について』

“当分の間、別添届出様式を用いてFAXにより消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地の工場(製造所)で使用していた記号を他の工場(製造所)に例外的に使用できる”

“旧制度及び新制度にかかわらず、消費者から製造所固有記号について問合せがあった場合には、実際に製造された製造所の名称及び所在地を回答する”

別添届出様式はこちら

また、避難所の管理者の方への周知についても掲載されています。

避難所の管理者の皆さま

表示のない食品を提供する場合は、次のことに十分気をつけてください。

  • アレルゲンを含むかどうか不明な場合は、アレルギー疾患を有する被災者の方に渡さないでください。
  • 期限表示が不明な場合は、長期保存をさけ、早めに食べるようにしてください。開封後の食品は、食べ残しを保管せず、適切な喫食方法で、速やかに消費してください。
  • 乳児用液体ミルクについては、必要な情報を適切に提供してください。また、開封後の飲み残しを保管しないでください。

出典:食品表示の弾力的運用を踏まえた周知チラシについて(消費者庁)

被災地の方々が、一日でも早く平穏な生活を取り戻すことができますように。

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が改正されました

 2018年3月28日、消費者庁は「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)および「機能性表示食品に関する質疑応答集」を一部改正しました。いくつかの変更点がありますが、対象となる機能性関与成分の拡大として「糖質、糖類(2018年3月28日より)」「植物エキス及び分泌物(届出データベース改修後)」が追加されており、関心が高いと思いますのでこちらでとりあげてみたいと思います。

主な改正事項


 機能性表示食品制度の運用の課題と、対象成分の拡大、そして消費者への情報提供に関する課題に対応するための改正とされています。以下に、主な改正事項別に、課題と改正点をまとめてみます。

(1)届出資料について
 課題:煩雑な届出資料
 改正点:届出資料の簡素化
・届出資料への入力項目数を約30%削減

(2)届出確認について
 課題:届出確認事務の停滞
 改正点:届出確認の迅速化
・事業者団体等の事前確認を経た旨を届出
・公表済みの届出食品と同一性を失わない程度の変更である旨を届出

(3)生鮮食品について
 課題:生鮮食品の届出件数が低調
 改正点:生鮮食品の特徴を踏まえた取扱い
・一日摂取目安量の一部を摂取できる旨の表示の追加
・生鮮食品に係るQ&Aの拡充

(4)対象成分について
 課題:栄養成分及び機能性関与成分が明確でない食品の取扱い
 改正点:対象となる機能性関与成分の拡大
・糖質、糖類の取扱いを明記
・植物エキス及び分泌物の取扱いを明記

(5)第三者による検証について
 課題:第三者による成分分析ができない
 改正点:分析方法を示す資料の開示(必要に応じてマスキング)

(6)消費者への情報提供について
 課題:販売の有無を確認できない
 改正点:事業者による届出後の販売状況の届出

届出データベース改修と運用開始時期について


 今回の改正には、届出データベースの改修が必要なものも含まれており、改正事項によって運用開始時期が異なります。届出データベース改修前と、改修後での運用開始時期の違いは以下のとおりです。

  届出データベース改修前
(改正ガイドラインに基づく運用)
2018年3月28日から運用開始
届出データベース改修後
(改正ガイドライン別添に基づく運用)
運用開始時期については別途通知
届出資料の簡素化 (一部、様式の変更) 改正前より入力項目の約30%削減
届出確認の迅速化
(再届出)
(試験運用) 本格的に運用開始
届出確認の迅速化
(事業者団体等の事前確認)
運用開始
生鮮食品の届出
(一部を摂取できる旨の表示)
運用開始
糖質、糖類の届出 運用開始
植物エキス及び分泌物の届出   運用開始
分析方法の開示 運用開始
販売状況の届出   運用開始

 なお、データベース改修時期については発表されておらず、今年度末(2019年3月末)までかかるのではとの見方がされています。

糖質、糖類について


 すでに(2018年3月28日から)運用開始された内容のうち注目されるのは、糖質と糖類の追加ではないかと思います。改正ガイドラインから、該当箇所を抜粋してみてみました。(下線部分が追加された内容です)

改正ガイドライン「機能性関与成分及びその科学的根拠に関する基本的な考え方」(P3)

(1)機能性関与成分(中略)
② 健康増進法(中略) に摂取基準が策定されている栄養素を含め、食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる成分は対象外とする。なお、下表の栄養素の構成成分等については、当該栄養素との作用の違い等に鑑み、対象成分となり得るものとする。糖質、糖類については、主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦芽糖及びでんぷん等)を除いた糖質、糖類を対象成分となり得るものとする。

表 対象成分となり得る構成成分等

食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養素 対象成分となり得る左記の構成成分等(例)
たんぱく質 各種アミノ酸、各種ペプチド
n-6系脂肪酸 γ‐リノレン酸、アラキドン酸
n-3系脂肪酸 α‐リノレン酸、EPA(eicosapentaenoic acid)、DHA(docosahexaenoic acid)
糖質 キシリトール、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)
糖類 L-アラビノース、パラチノース、ラクチュロース
食物繊維 難消化性デキストリン、グアーガム分解物
ビタミンA プロビタミンA、カロテノイド(β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン等)

 糖質、糖類については、上記の他に「摂取上の注意事項(P4、40)」「安全性評価(P7)」「分析方法(P22)」にも考え方が追加されていますので、関心のある方は改正ガイドラインを確認してみてください。

今後のスケジュール


 本稿作成時点(2018年4月13日)で、機能性表示食品の届出を受理された商品は1,338件になります。届出資料簡素化や届出確認迅速化などの改正、そしてデータベース改修後(おそらく今年度末頃)に「植物エキス及び分泌物」が対象として運用開始されることで、機能性表示食品はさらに増えていくものと思われます。また分析方法の開示も運用開始されたため、これまでの既存届出商品に何らか変更届出を行う際は、併せて分析方法を示す資料の開示が求められることになりますので、透明性についても高まっていくものと思われます。
 大きな改正ですので、機能性表示食品制度についてあらためて確認をされる機会にしていただければと思います。

「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について5~遺伝子組換えでない表示が認められる条件と、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示~


 今月も引き続き、遺伝子組換え表示制度についてとりあげたいと思います。2018年3月14日に、第10回「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開催され、遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(案)と、「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」について検討がなされました。
 そこで、「“遺伝子組換えでない”表示が認められる条件」の変更と「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の具体的な表示例について、整理してみたいと思います。

現状制度との変更点の概要


  • 「遺伝子組換え不分別」の表現に代わる表示案を検討しQ&A等に示す。
  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に引き下げる。5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにする。

「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件


 現行制度では、図の左下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「5%以下」)に該当すれば、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められています。
 これに対し、新たな表示制度では、図の右下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「α%以下」)に該当する場合に、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められることになります。そして「α%」は「0%(不検出)」とされました。

出典:「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」(消費者庁)

 ただし、図の右中段(意図せざる混入率が「5~α%(0%)以下」)に該当する場合は、「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」をすることができるようになります。
 なお、現行制度と新制度のどちらにおいても意図せざる混入率が5%を超える場合は、分別生産流通管理が行われていないとみなされ、「遺伝子組換え不分別」の表示義務が生じます。実際にこうした表示をしている商品は少ないとされていますが、新制度においては今後発表されるQ&A等を参考に「遺伝子組換え不分別」に代わる表示へと変更することになります。

分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示例


 適切に分別生産流通管理された原材料に、任意で事実に即した表示をする際の表示例が示されていますのでこちらに引用します。

【想定例】※混入率5%以下の表示例(大豆・とうもろこし)

(1)一括して表示する事項(枠内)とは別に任意の場所に表示する場合

  • 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたとうもろこしを使用しています。
  • 分別管理された大豆を使用していますが、遺伝子組換えのものが含まれる可能性があります。
  • 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しないよう、生産・流通・加工の段階で適切な管理を行っています。
  • 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しない原材料調達・製造管理を行っています。
  • 大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています。

(2)一括して表示する事項として原材料名欄に表示する場合

  • 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたもの
  • 遺伝子組換えの混入を防ぐため分別
  • 遺伝子組換え混入防止管理済

※正式施行の際、食品表示基準Q&Aに以下の表示例が示されています。

(一括表示事項欄に表示する場合の例)
「大豆(分別生産流通管理済み)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」 等

(一括表示事項欄外に表示する場合の例)
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」 等

今後の「遺伝子組換えでない」表示について


 新制度での変更は、ほぼこの点(遺伝子組換えでない表示の取り扱い)のみと言えます。報告書を全体的に見れば「現行制度維持」であり、ただこれまでの「(5%以下だが)遺伝子組換えでない」表示は消費者に誤認を与える恐れがあるために、条件を「不検出(0%)」へと変更するといったものです。
 確かに0%(不検出)であると言える場合には「遺伝子組換えでない」と表示できることになりますが、今後「遺伝子組換えでないと表示できる商品はほとんどなくなるのでは」との見方もでていることからも、多くの商品において「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」に切り替えることになるものと想定されます。
 また制度の啓発も進むと思われますので、消費者や取引先等から「分別生産流通管理」についての問い合わせなどが増える可能性もあります。表示実務を担当されている方は、まずは検討会報告書(案)に目を通していただくとともに、遺伝子組換え表示制度と分別生産流通管理についてあらためて確認されておくことで、今後各方面からの問い合わせに適切に対応できる体制をつくることが大切だと思います。


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【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

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日本のイスラム”ハラル”市場参入について

チュニジア人のIkram(イクラム)さんのインターン終了時のレポートのあいさつ文です。
ハラルに関する情報などがお役にたてればと思い、こちらに掲載させていただきます。

 2ヶ月間の株式会社ラベルバンクでのインターシップの終わりが近づきつつある今、最終レポートの準備をしていると、どれだけ私の知識が広がったのかを実感することができます。北アフリカ出身の私からみると、地域間とチュニジア・日本の2国間の国における文化の違いもあり、日本の食における市場は驚くべきものでした。食物のカテゴリーと目的は、一般的に慣例的に日本人消費者向けになっています。当然、海外向けの食品は目的国によって変えられるべきであり、現地の安全基準や法令によって決められるべきです。日本の規制システムは他国とは違い、とても詳細に決められているため、複雑になっています。

 ラベルの規制、品質監査、取引などを所管する消費者庁は、消費者の権利の保護、強化のために発足しました。食品の定義そのものやカテゴリー分けから、日本と他の国々の基準や規制は違っています。また、厚生労働省は食品を大きく2種類に分類しています。栄養機能食品もしくは特定保健用食品のような健康を強調した保健機能食品と、主に妊婦、乳幼児、高齢者向けの特別用途食品です。ラベルは、食品表示法に従ってエネルギーと栄養素を誤解のないよう表示する必要があります。

 強調表示は国によってさまざまです。例えば、ある国では疾病リスクを抑えるという表示を禁止しています。製造者は、貿易のプロセスで強調表示の指定に戸惑いを覚えることもあるかもしれません。しかし、少子高齢化という日本の抱える問題を考えると、将来、国内の消費が減少することが考えられます。日本政府はそのため、より海外へ大きな市場を求めて動き出しています。ヨーロッパにおいては、美食家の関心を集めるなど、日本の製品は海外市場で取り上げられ、日本の文化は多くの若者を魅了し、それによって日本が旅行先に選ばれるようになっています。

 日本の地理から考えると、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、南フィリピン、タイ、ミャンマーなどが大きな市場と考えられるでしょう。また、世界のイスラム教徒の62%はアジア太平洋地域在住ということも鑑み、近い将来、中国と競うことになるであろうポテンシャルのある市場についての話をしたいと思います。

 現在、イスラムの市場に参入するには厳格で厳しい“ハラル認証” を受ける必要があります。このプロセスは、日本にとって新しいものなので、ハラル認証を受けられるにもかかわらず、認証を受けずに表示をしていない製品が見られます。これは日本のイスラムコミュニティを無視しているわけではなく、文化や慣例の問題です。日本製品が、今後ゆっくり注意深くハラル市場へ参入するようになると、ハラル市場で世界的にもっとも信頼されているJAKIMという認証機関によるシステムによって今後、ハラル認証は認知されていくことでしょう。2017年からJAKIMは日本の6つの組織をハラル認証の発行機関として指定しました。この仕組みにより、日本企業は海外のイスラム市場へ参入し、製品を輸出しています。また、この重要なプロセスにより、どの日本企業も相手国を理解し、ニーズを知ることでイスラム市場へ参入することができます。例えば、ある国の企業、正確には製品開発チームは、ニーズや伝統的な特色、風味、食習慣、購買力、目的国の中間階層の労働者の能力に注目すべきです。そうすれば、認証を受けた日本製品が現地の状況に適合し、現地生産の製品と競合できるようになるでしょう。

 ハラル認証を受けるのは簡単ではありませんが、不可能ではありません。認証要件は、シンプルで理論的であるといえますが、業界にとっては、ハラルへ切り替えるプロセスはかなり難しいものです。だからといって、ハラルでない食品(豚肉、イスラムの方法でない屠殺による動物の肉、血、死骸など、もしくはゼラチンなどこれらに由来する食品)を使用してはなりません。製品そのものだけでなく、相互汚染などによる残留物の混入も認められません。安全性と品質管理の研究による分析法や洗浄プロセスを活用すると、効率的にハラル認定を受けることができます。

 今日の私たちの使命は、顧客の手助けになるよう、将来起こりうる問題や予期せぬ事態をバックアップするようなプランや解決法を見つけることだと思います。一度目的が達成されると、常に状況を追跡でき、革新的なアイディアを提案し、顧客がさらにビジネスを拡大する手伝いが可能になります。

 お会いした食品会社のみなさん、そしてラベルバンクのみなさん、貴重なお時間を割いていただき、いろいろ教えていただいたことで、今日インターンとしていろいろなことを学ぶことができました。とても感謝しています。


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「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について4~議論されている主な改正点と現行制度の整理~

 2018年1月31日に第8回目、そして2018年2月16日に第9回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。第9回目では「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」について検討がされています。
 開催前は大きな改正には至らないかと思っていましたが、「遺伝子組換えでない」表示の基準に変更がでましたので、先月に引き続きこちらでとりあげてみます。また、おさらいとして、現行制度の概要についての整理をしてみたいと思います。

主な改正点について


 「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」をもとに、現状の検討状況をあらためてまとめてみると、以下のようになります。

1.表示義務対象範囲
① 表示義務対象品目の検討
 ⇒現行制度(8作物33品目)を維持する
② 表示義務対象原材料の範囲
 ⇒現行制度(主な原材料(重量割合上位3位かつ5%以上)に限定)を維持する

2.表示方法

①「遺伝子組換え不分別」の表示方法
 ⇒「遺伝子組換え不分別」に代わる分かりやすい表示をQ&A 等に示す
②「遺伝子組換えでない」の表示方法
 ⇒現行制度の「5%以下」から「0%(検出限界以下)」に引き下げる(ただし「0%(検出限界以下)」に引き下げた際に「遺伝子組換えでない」表示ができなくなる食品については、分別生産流通管理が適切に行われている旨を任意で表示することを妨げない)

 これらの改正により、現状「遺伝子組換えでない」表示をしている商品の多くは、その表示の代わりに「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の表示をすることになるものと思われます。

現行制度について


 表示の変更にあたっては、やはり遺伝子組換え表示の現行制度について知っておく必要がありますので、こちらにあらためて整理したいと思います。まず、表示義務の対象となる品目は、下記2つの別表に掲載されています。

食品表示基準別表第十七(左欄が8作物、右欄が33食品群)

対象農産物 加工食品
大豆(枝豆及び大豆もやしを含む。) ① 豆腐・油揚げ類
② 凍り豆腐,おから及びゆば
③ 納豆
④ 豆乳類
⑤ みそ
⑥ 大豆煮豆
⑦ 大豆缶詰及び大豆瓶詰
⑧ きなこ
⑨ 大豆いり豆
⑩ ①から⑨までに掲げるものを主な原材料とするもの
⑪ 調理用の大豆を主な原材料とするもの
⑫ 大豆粉を主な原材料とするもの
⑬ 大豆たんぱくを主な原材料とするもの
⑭ 枝豆を主な原材料とするもの
⑮ 大豆もやしを主な原材料とするもの
とうもろこし ① コーンスナック菓子
② コーンスターチ
③ ポップコーン
④ 冷凍とうもろこし
⑤ とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰
⑥ コーンフラワーを主な原材料とするもの
⑦ コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。)
⑧ 調理用のとうもろこしを主な原材料とするもの
⑨ ①から⑤までに掲げるものを主な原材料とするもの
ばれいしょ ① ポテトスナック菓子
② 乾燥ばれいしょ
③ 冷凍ばれいしょ
④ ばれいしょでん粉
⑤ 調理用のばれいしょを主な原材料とするもの
⑥ ①から④までに掲げるものを主な原材料とするもの
なたね  
綿実  
アルファルファ アルファルファを主な原材料とするもの
てん菜 調理用のてん菜を主な原材料とするもの
パパイヤ パパイヤを主な原材料とするもの

食品表示基準別表第十八

形質 加工食品 対象農産物
高オレイン酸 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
ステアリドン
酸産生
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄とうもろこしに掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし

 また、義務表示と任意表示を整理すると、以下のような構造となります。遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は、表示義務はありません。「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」での改正点でいえば、下線の2か所が対象になります。

遺伝子組換えの義務表示と任意表示

「従来のものと組成、栄養価等が同等か」

→同等である
 →「遺伝子組換えのものを分別し、原材料とするもの」…義務表示 例:大豆(遺伝子組換え)等
 →「遺伝子組換え不分別」…義務表示 例:大豆(遺伝子組換え不分別)等
 →「遺伝子組換えでないものを分別し、原材料とするもの」「DNA・たんぱく質が検出不可」…任意表示 例:大豆、または大豆(遺伝子組換えでない

→同等ではない

 …義務表示 例:大豆(高オレイン酸遺伝子組換え)等

 このように現行制度では、「遺伝子組換えでない」の表示は、分別生産流通管理が適切に行われていれば、一定(大豆及びとうもろこしについて5%以下)の「意図せざる混入」がある場合でも表示をすることができます。(改正案では、「5%以下」が「0%(検出限界以下)」に引き下げられる見込みです。)

今後の予定


 今回の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」をもとに、今年度末(2018年3月末)までに最終のとりまとめがされる予定です。想定される改正点をもとに、表示確認の業務フローに変更が必要な点はないか、などの準備を検討する機会にできればと思います。

参照:「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_180216_0002.pdf