Author Archives: 川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」について

 少し前になりますが、2018年6月に消費者庁より「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(以下「留意点」)が公表されていますので、今月はこちらを取り上げてみたいと思います。

強調表示と打消し表示


 打消し表示とは、商品の内容などについて強調表示をする際に、なんらか例外などがあるときに表示されるものです。分かりやすい例としては、体験談の表示に添えられる「個人の感想です。効果には個人差があります。」といった表示があげられます。「留意点」によると、強調表示と打消し表示は以下のように定義されています。

【強調表示】:事業者が、自己の販売する商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示

【打消し表示】:強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示

打消し表示の方法について


  「留意点」では、紙面広告だけでなく、動画広告やWeb広告(PC及びスマートフォン)についても、それぞれの媒体の特性別に注意すべき表示を整理しています。容器包装への表示については「紙面広告」と読み替えて想定していただくとして、ここではすべての媒体に共通する注意点について取り上げてみたいと思います。

(1)打消し表示の文字の大きさ

打消し表示の文字の大きさは、一般消費者に打消し表示が認識されない大きな理由の1つであると考えられています。事業者が打消し表示を行う際には、一般消費者が手にとって見るような表示物なのか、鉄道の駅構内のポスター等の一般消費者が離れた場所から目にする表示物なのかなど、表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、それらの表示物を一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要があります。

(2)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス

打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があり、打消し表示の文字の大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、一般消費者は、印象の強い強調表示に注意が向き、打消し表示に気付くことができないときがあると考えられます。

(3)打消し表示の配置箇所

打消し表示は、一般消費者が、それが強調表示に対する打消し表示であると認識できるように表示する必要があるため、打消し表示の配置箇所は、打消し表示であると認識されるようにするための非常に重要な要素です。

(4)打消し表示と背景との区別

打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合(例えば、明るい水色、オレンジ色、黄色の背景に、白の文字で打消し表示を行った場合)など、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合には、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがあります。

打消し表示の内容について


 そして、問題となりえる打消し表示の内容について以下の4類型が公表されています。

(1)例外型の打消し表示

商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(2)別条件型の打消し表示

例えば、割引期間や割引料金が強調される一方、割引期間や割引料金が適用されるための別途の条件が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は別途の条件なしに強調された割引期間や割引料金で商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(3)追加料金型の打消し表示

「全て込み」などと追加の料金が発生しないかのように強調している一方、それとは別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は当該価格以外に追加料金が発生しないという認識を抱くと考えられる。

(4)試験条件型の打消し表示

表示を行うに当たっては、表示された効果、性能等(ここで「表示された効果、性能等」とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能等であることに留意する必要がある。)が、試験・調査等によって客観的に実証された内容と適切に対応している必要がある。

 なお、冒頭の事例である「個人の感想です。効果には個人差があります。」については、体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするために、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべき、とされています。

今後について


 消費者庁の発表によれば、「打消し表示」については今後厳しく取り締まる方針となっています。上にあげた4つの表示方法と4つの表示内容については、どのような表示にもあてはめて考えることができる視点となっていると思いますので、パッケージデザインだけでなく、同封のしおり、パンフレットやウェブサイトなどの表示が適切であるかを検証する業務に携わる方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。

『平成30年7月豪雨を受けた食品表示の弾力的運用について』

※こちらの運用は年内(平成30年12月31日)で終了となります。
詳細は下記を参照ください。

 2018年7月13日、消費者庁は、災害救助法の適用を受けた被災地において、農林水産省及び厚生労働省と連名で、食品表示基準を弾力的に運用する旨を関係機関に通知しました。各通知は以下のサイトに掲載されています。

『食品表示に関するお知らせ』(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/

2018年7月13日~19日までに発表された通知


平成30年7月豪雨を受けた

  • 食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について
  • 乳児用液体ミルクの取扱いについて
  • 製造所の表示の運用について
  • 製造所固有記号の表示の運用について

各通知の概要(抜粋)


『食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について』

“食品の安全性に係る情報伝達について十分な配慮がなされていると判断されるとともに、消費者の誤認を招くような表示をしていない場合には、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地(※)において、譲渡又は販売される食品については、必ずしも食品表示基準に基づく義務表示事項の全てが表示されていなくとも、当分の間、取締りを行わなくても差し支えない”(※10府県60市37町4村)

“食品表示基準に基づく表示事項が容器包装に記載されていない食品を被災地で譲渡・販売する場合にも、アレルギー表示及び消費期限については、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があることから、これまでどおり、取締りの対象となります。”

“賞味期限については、多くの業務用加工食品において、容器包装に表示されている状況もあり、可能な限り個別に表示する”

“消費者の誤認を招くような悪質な違反についての取締りを排除するものではない。悪質な違反については、引き続き、関係機関とも連携した取締りを行う”

『乳児用液体ミルクの取扱いについて』

“母乳代替食品としての用に適する旨を表示した乳児用液体ミルクについて、特別用途食品制度における許可及び承認を受けていない場合も、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととします”

“ただし、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があり、これまでどおり、取締りの対象となります。”

“食品衛生上、開封後の飲み残しは保管しない”

『製造所の表示の運用について』

“当分の間、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地の工場(製造所)で製造していた食品について、他の製造者や製造所に委託する場合にあっては、別添届出様式を用いてFAXにより消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、実際の製造所の所在地及び製造者の氏名と食品に表示された製造所の所在地及び製造者の氏名とが異なることとなっても差し支えないこととします”

“消費者から製造所について問合せがあった場合には、実際に製造された製造所の名称及び所在地を回答する”

別添届出様式はこちら

『製造所固有記号の表示の運用について』

“当分の間、別添届出様式を用いてFAXにより消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、平成30年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地の工場(製造所)で使用していた記号を他の工場(製造所)に例外的に使用できる”

“旧制度及び新制度にかかわらず、消費者から製造所固有記号について問合せがあった場合には、実際に製造された製造所の名称及び所在地を回答する”

別添届出様式はこちら

また、避難所の管理者の方への周知についても掲載されています。

避難所の管理者の皆さま

表示のない食品を提供する場合は、次のことに十分気をつけてください。

  • アレルゲンを含むかどうか不明な場合は、アレルギー疾患を有する被災者の方に渡さないでください。
  • 期限表示が不明な場合は、長期保存をさけ、早めに食べるようにしてください。開封後の食品は、食べ残しを保管せず、適切な喫食方法で、速やかに消費してください。
  • 乳児用液体ミルクについては、必要な情報を適切に提供してください。また、開封後の飲み残しを保管しないでください。

出典:食品表示の弾力的運用を踏まえた周知チラシについて(消費者庁)

被災地の方々が、一日でも早く平穏な生活を取り戻すことができますように。

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が改正されました

 2018年3月28日、消費者庁は「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)および「機能性表示食品に関する質疑応答集」を一部改正しました。いくつかの変更点がありますが、対象となる機能性関与成分の拡大として「糖質、糖類(2018年3月28日より)」「植物エキス及び分泌物(届出データベース改修後)」が追加されており、関心が高いと思いますのでこちらでとりあげてみたいと思います。

主な改正事項


 機能性表示食品制度の運用の課題と、対象成分の拡大、そして消費者への情報提供に関する課題に対応するための改正とされています。以下に、主な改正事項別に、課題と改正点をまとめてみます。

(1)届出資料について
 課題:煩雑な届出資料
 改正点:届出資料の簡素化
・届出資料への入力項目数を約30%削減

(2)届出確認について
 課題:届出確認事務の停滞
 改正点:届出確認の迅速化
・事業者団体等の事前確認を経た旨を届出
・公表済みの届出食品と同一性を失わない程度の変更である旨を届出

(3)生鮮食品について
 課題:生鮮食品の届出件数が低調
 改正点:生鮮食品の特徴を踏まえた取扱い
・一日摂取目安量の一部を摂取できる旨の表示の追加
・生鮮食品に係るQ&Aの拡充

(4)対象成分について
 課題:栄養成分及び機能性関与成分が明確でない食品の取扱い
 改正点:対象となる機能性関与成分の拡大
・糖質、糖類の取扱いを明記
・植物エキス及び分泌物の取扱いを明記

(5)第三者による検証について
 課題:第三者による成分分析ができない
 改正点:分析方法を示す資料の開示(必要に応じてマスキング)

(6)消費者への情報提供について
 課題:販売の有無を確認できない
 改正点:事業者による届出後の販売状況の届出

届出データベース改修と運用開始時期について


 今回の改正には、届出データベースの改修が必要なものも含まれており、改正事項によって運用開始時期が異なります。届出データベース改修前と、改修後での運用開始時期の違いは以下のとおりです。

  届出データベース改修前
(改正ガイドラインに基づく運用)
2018年3月28日から運用開始
届出データベース改修後
(改正ガイドライン別添に基づく運用)
運用開始時期については別途通知
届出資料の簡素化 (一部、様式の変更) 改正前より入力項目の約30%削減
届出確認の迅速化
(再届出)
(試験運用) 本格的に運用開始
届出確認の迅速化
(事業者団体等の事前確認)
運用開始
生鮮食品の届出
(一部を摂取できる旨の表示)
運用開始
糖質、糖類の届出 運用開始
植物エキス及び分泌物の届出   運用開始
分析方法の開示 運用開始
販売状況の届出   運用開始

 なお、データベース改修時期については発表されておらず、今年度末(2019年3月末)までかかるのではとの見方がされています。

糖質、糖類について


 すでに(2018年3月28日から)運用開始された内容のうち注目されるのは、糖質と糖類の追加ではないかと思います。改正ガイドラインから、該当箇所を抜粋してみてみました。(下線部分が追加された内容です)

改正ガイドライン「機能性関与成分及びその科学的根拠に関する基本的な考え方」(P3)

(1)機能性関与成分(中略)
② 健康増進法(中略) に摂取基準が策定されている栄養素を含め、食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる成分は対象外とする。なお、下表の栄養素の構成成分等については、当該栄養素との作用の違い等に鑑み、対象成分となり得るものとする。糖質、糖類については、主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦芽糖及びでんぷん等)を除いた糖質、糖類を対象成分となり得るものとする。

表 対象成分となり得る構成成分等

食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養素 対象成分となり得る左記の構成成分等(例)
たんぱく質 各種アミノ酸、各種ペプチド
n-6系脂肪酸 γ‐リノレン酸、アラキドン酸
n-3系脂肪酸 α‐リノレン酸、EPA(eicosapentaenoic acid)、DHA(docosahexaenoic acid)
糖質 キシリトール、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)
糖類 L-アラビノース、パラチノース、ラクチュロース
食物繊維 難消化性デキストリン、グアーガム分解物
ビタミンA プロビタミンA、カロテノイド(β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン等)

 糖質、糖類については、上記の他に「摂取上の注意事項(P4、40)」「安全性評価(P7)」「分析方法(P22)」にも考え方が追加されていますので、関心のある方は改正ガイドラインを確認してみてください。

今後のスケジュール


 本稿作成時点(2018年4月13日)で、機能性表示食品の届出を受理された商品は1,338件になります。届出資料簡素化や届出確認迅速化などの改正、そしてデータベース改修後(おそらく今年度末頃)に「植物エキス及び分泌物」が対象として運用開始されることで、機能性表示食品はさらに増えていくものと思われます。また分析方法の開示も運用開始されたため、これまでの既存届出商品に何らか変更届出を行う際は、併せて分析方法を示す資料の開示が求められることになりますので、透明性についても高まっていくものと思われます。
 大きな改正ですので、機能性表示食品制度についてあらためて確認をされる機会にしていただければと思います。

「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について5~遺伝子組換えでない表示が認められる条件と、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示~


 今月も引き続き、遺伝子組換え表示制度についてとりあげたいと思います。2018年3月14日に、第10回「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開催され、遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(案)と、「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」について検討がなされました。
 そこで、「“遺伝子組換えでない”表示が認められる条件」の変更と「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の具体的な表示例について、整理してみたいと思います。

現状制度との変更点の概要


  • 「遺伝子組換え不分別」の表現に代わる表示案を検討しQ&A等に示す。
  • 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に引き下げる。5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにする。

「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件


 現行制度では、図の左下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「5%以下」)に該当すれば、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められています。
 これに対し、新たな表示制度では、図の右下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「α%以下」)に該当する場合に、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められることになります。そして「α%」は「0%(不検出)」とされました。

出典:「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」(消費者庁)

 ただし、図の右中段(意図せざる混入率が「5~α%(0%)以下」)に該当する場合は、「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」をすることができるようになります。
 なお、現行制度と新制度のどちらにおいても意図せざる混入率が5%を超える場合は、分別生産流通管理が行われていないとみなされ、「遺伝子組換え不分別」の表示義務が生じます。実際にこうした表示をしている商品は少ないとされていますが、新制度においては今後発表されるQ&A等を参考に「遺伝子組換え不分別」に代わる表示へと変更することになります。

分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示例


 適切に分別生産流通管理された原材料に、任意で事実に即した表示をする際の表示例が示されていますのでこちらに引用します。

【想定例】※混入率5%以下の表示例(大豆・とうもろこし)

(1)一括して表示する事項(枠内)とは別に任意の場所に表示する場合

  • 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたとうもろこしを使用しています。
  • 分別管理された大豆を使用していますが、遺伝子組換えのものが含まれる可能性があります。
  • 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しないよう、生産・流通・加工の段階で適切な管理を行っています。
  • 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しない原材料調達・製造管理を行っています。
  • 大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています。

(2)一括して表示する事項として原材料名欄に表示する場合

  • 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたもの
  • 遺伝子組換えの混入を防ぐため分別
  • 遺伝子組換え混入防止管理済

※正式施行の際、食品表示基準Q&Aに以下の表示例が示されています。

(一括表示事項欄に表示する場合の例)
「大豆(分別生産流通管理済み)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」 等

(一括表示事項欄外に表示する場合の例)
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」 等

今後の「遺伝子組換えでない」表示について


 新制度での変更は、ほぼこの点(遺伝子組換えでない表示の取り扱い)のみと言えます。報告書を全体的に見れば「現行制度維持」であり、ただこれまでの「(5%以下だが)遺伝子組換えでない」表示は消費者に誤認を与える恐れがあるために、条件を「不検出(0%)」へと変更するといったものです。
 確かに0%(不検出)であると言える場合には「遺伝子組換えでない」と表示できることになりますが、今後「遺伝子組換えでないと表示できる商品はほとんどなくなるのでは」との見方もでていることからも、多くの商品において「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」に切り替えることになるものと想定されます。
 また制度の啓発も進むと思われますので、消費者や取引先等から「分別生産流通管理」についての問い合わせなどが増える可能性もあります。表示実務を担当されている方は、まずは検討会報告書(案)に目を通していただくとともに、遺伝子組換え表示制度と分別生産流通管理についてあらためて確認されておくことで、今後各方面からの問い合わせに適切に対応できる体制をつくることが大切だと思います。


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【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

日本のイスラム”ハラル”市場参入について

チュニジア人のIkram(イクラム)さんのインターン終了時のレポートのあいさつ文です。
ハラルに関する情報などがお役にたてればと思い、こちらに掲載させていただきます。

 2ヶ月間の株式会社ラベルバンクでのインターシップの終わりが近づきつつある今、最終レポートの準備をしていると、どれだけ私の知識が広がったのかを実感することができます。北アフリカ出身の私からみると、地域間とチュニジア・日本の2国間の国における文化の違いもあり、日本の食における市場は驚くべきものでした。食物のカテゴリーと目的は、一般的に慣例的に日本人消費者向けになっています。当然、海外向けの食品は目的国によって変えられるべきであり、現地の安全基準や法令によって決められるべきです。日本の規制システムは他国とは違い、とても詳細に決められているため、複雑になっています。

 ラベルの規制、品質監査、取引などを所管する消費者庁は、消費者の権利の保護、強化のために発足しました。食品の定義そのものやカテゴリー分けから、日本と他の国々の基準や規制は違っています。また、厚生労働省は食品を大きく2種類に分類しています。栄養機能食品もしくは特定保健用食品のような健康を強調した保健機能食品と、主に妊婦、乳幼児、高齢者向けの特別用途食品です。ラベルは、食品表示法に従ってエネルギーと栄養素を誤解のないよう表示する必要があります。

 強調表示は国によってさまざまです。例えば、ある国では疾病リスクを抑えるという表示を禁止しています。製造者は、貿易のプロセスで強調表示の指定に戸惑いを覚えることもあるかもしれません。しかし、少子高齢化という日本の抱える問題を考えると、将来、国内の消費が減少することが考えられます。日本政府はそのため、より海外へ大きな市場を求めて動き出しています。ヨーロッパにおいては、美食家の関心を集めるなど、日本の製品は海外市場で取り上げられ、日本の文化は多くの若者を魅了し、それによって日本が旅行先に選ばれるようになっています。

 日本の地理から考えると、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、南フィリピン、タイ、ミャンマーなどが大きな市場と考えられるでしょう。また、世界のイスラム教徒の62%はアジア太平洋地域在住ということも鑑み、近い将来、中国と競うことになるであろうポテンシャルのある市場についての話をしたいと思います。

 現在、イスラムの市場に参入するには厳格で厳しい“ハラル認証” を受ける必要があります。このプロセスは、日本にとって新しいものなので、ハラル認証を受けられるにもかかわらず、認証を受けずに表示をしていない製品が見られます。これは日本のイスラムコミュニティを無視しているわけではなく、文化や慣例の問題です。日本製品が、今後ゆっくり注意深くハラル市場へ参入するようになると、ハラル市場で世界的にもっとも信頼されているJAKIMという認証機関によるシステムによって今後、ハラル認証は認知されていくことでしょう。2017年からJAKIMは日本の6つの組織をハラル認証の発行機関として指定しました。この仕組みにより、日本企業は海外のイスラム市場へ参入し、製品を輸出しています。また、この重要なプロセスにより、どの日本企業も相手国を理解し、ニーズを知ることでイスラム市場へ参入することができます。例えば、ある国の企業、正確には製品開発チームは、ニーズや伝統的な特色、風味、食習慣、購買力、目的国の中間階層の労働者の能力に注目すべきです。そうすれば、認証を受けた日本製品が現地の状況に適合し、現地生産の製品と競合できるようになるでしょう。

 ハラル認証を受けるのは簡単ではありませんが、不可能ではありません。認証要件は、シンプルで理論的であるといえますが、業界にとっては、ハラルへ切り替えるプロセスはかなり難しいものです。だからといって、ハラルでない食品(豚肉、イスラムの方法でない屠殺による動物の肉、血、死骸など、もしくはゼラチンなどこれらに由来する食品)を使用してはなりません。製品そのものだけでなく、相互汚染などによる残留物の混入も認められません。安全性と品質管理の研究による分析法や洗浄プロセスを活用すると、効率的にハラル認定を受けることができます。

 今日の私たちの使命は、顧客の手助けになるよう、将来起こりうる問題や予期せぬ事態をバックアップするようなプランや解決法を見つけることだと思います。一度目的が達成されると、常に状況を追跡でき、革新的なアイディアを提案し、顧客がさらにビジネスを拡大する手伝いが可能になります。

 お会いした食品会社のみなさん、そしてラベルバンクのみなさん、貴重なお時間を割いていただき、いろいろ教えていただいたことで、今日インターンとしていろいろなことを学ぶことができました。とても感謝しています。


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「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について4~議論されている主な改正点と現行制度の整理~

 2018年1月31日に第8回目、そして2018年2月16日に第9回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。第9回目では「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」について検討がされています。
 開催前は大きな改正には至らないかと思っていましたが、「遺伝子組換えでない」表示の基準に変更がでましたので、先月に引き続きこちらでとりあげてみます。また、おさらいとして、現行制度の概要についての整理をしてみたいと思います。

主な改正点について


 「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」をもとに、現状の検討状況をあらためてまとめてみると、以下のようになります。

1.表示義務対象範囲
① 表示義務対象品目の検討
 ⇒現行制度(8作物33品目)を維持する
② 表示義務対象原材料の範囲
 ⇒現行制度(主な原材料(重量割合上位3位かつ5%以上)に限定)を維持する

2.表示方法

①「遺伝子組換え不分別」の表示方法
 ⇒「遺伝子組換え不分別」に代わる分かりやすい表示をQ&A 等に示す
②「遺伝子組換えでない」の表示方法
 ⇒現行制度の「5%以下」から「0%(検出限界以下)」に引き下げる(ただし「0%(検出限界以下)」に引き下げた際に「遺伝子組換えでない」表示ができなくなる食品については、分別生産流通管理が適切に行われている旨を任意で表示することを妨げない)

 これらの改正により、現状「遺伝子組換えでない」表示をしている商品の多くは、その表示の代わりに「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の表示をすることになるものと思われます。

現行制度について


 表示の変更にあたっては、やはり遺伝子組換え表示の現行制度について知っておく必要がありますので、こちらにあらためて整理したいと思います。まず、表示義務の対象となる品目は、下記2つの別表に掲載されています。

食品表示基準別表第十七(左欄が8作物、右欄が33食品群)

対象農産物 加工食品
大豆(枝豆及び大豆もやしを含む。) ① 豆腐・油揚げ類
② 凍り豆腐,おから及びゆば
③ 納豆
④ 豆乳類
⑤ みそ
⑥ 大豆煮豆
⑦ 大豆缶詰及び大豆瓶詰
⑧ きなこ
⑨ 大豆いり豆
⑩ ①から⑨までに掲げるものを主な原材料とするもの
⑪ 調理用の大豆を主な原材料とするもの
⑫ 大豆粉を主な原材料とするもの
⑬ 大豆たんぱくを主な原材料とするもの
⑭ 枝豆を主な原材料とするもの
⑮ 大豆もやしを主な原材料とするもの
とうもろこし ① コーンスナック菓子
② コーンスターチ
③ ポップコーン
④ 冷凍とうもろこし
⑤ とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰
⑥ コーンフラワーを主な原材料とするもの
⑦ コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。)
⑧ 調理用のとうもろこしを主な原材料とするもの
⑨ ①から⑤までに掲げるものを主な原材料とするもの
ばれいしょ ① ポテトスナック菓子
② 乾燥ばれいしょ
③ 冷凍ばれいしょ
④ ばれいしょでん粉
⑤ 調理用のばれいしょを主な原材料とするもの
⑥ ①から④までに掲げるものを主な原材料とするもの
なたね  
綿実  
アルファルファ アルファルファを主な原材料とするもの
てん菜 調理用のてん菜を主な原材料とするもの
パパイヤ パパイヤを主な原材料とするもの

食品表示基準別表第十八

形質 加工食品 対象農産物
高オレイン酸 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
ステアリドン
酸産生
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄とうもろこしに掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし

 また、義務表示と任意表示を整理すると、以下のような構造となります。遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は、表示義務はありません。「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」での改正点でいえば、下線の2か所が対象になります。

遺伝子組換えの義務表示と任意表示

「従来のものと組成、栄養価等が同等か」

→同等である
 →「遺伝子組換えのものを分別し、原材料とするもの」…義務表示 例:大豆(遺伝子組換え)等
 →「遺伝子組換え不分別」…義務表示 例:大豆(遺伝子組換え不分別)等
 →「遺伝子組換えでないものを分別し、原材料とするもの」「DNA・たんぱく質が検出不可」…任意表示 例:大豆、または大豆(遺伝子組換えでない

→同等ではない

 …義務表示 例:大豆(高オレイン酸遺伝子組換え)等

 このように現行制度では、「遺伝子組換えでない」の表示は、分別生産流通管理が適切に行われていれば、一定(大豆及びとうもろこしについて5%以下)の「意図せざる混入」がある場合でも表示をすることができます。(改正案では、「5%以下」が「0%(検出限界以下)」に引き下げられる見込みです。)

今後の予定


 今回の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」をもとに、今年度末(2018年3月末)までに最終のとりまとめがされる予定です。想定される改正点をもとに、表示確認の業務フローに変更が必要な点はないか、などの準備を検討する機会にできればと思います。

参照:「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(素案)」
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_180216_0002.pdf

「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について3~遺伝子組換え表示の表示方法の考え方について議論がされました~

 2017年11月17日に第6回目、そして2017年12月18日に第7回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。「遺伝子組換え表示の表示方法」(以下の論点3と論点4)について、引き続き議論がされ、論点4の「遺伝子組換えでない」表示の要件について、少し動きがありましたのでここにまとめたいと思います。

これまでの検討について


 前々回である第5回目(2017年9月27日)の検討会において、遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点についてと、遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方について、議論がされています。その論点に沿って、これまでの議論のまとめを整理すると次のようになります。

1.表示義務対象範囲

  • 論点1 表示義務対象品目の検討
     ⇒現状の制度を維持する
  • 論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討
     ⇒現状の制度を維持する

2.表示方法

  • 論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
     ⇒不分別の区分は残した方がよい
     ⇒『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示
  • 論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
     ⇒意図せざる混入率の引き下げは、まとめるのは難しい(次回検討)
     ⇒『遺伝子組換えでない』表示の要件は、厳しくしていく方向(次回検討※)
      (※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)

 上記のように、論点1から3までは現状の制度を維持する議論となりましたが、論点4については、何らか制度の変更について検討されていることがうかがえます。

「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示について(論点3)


 消費者庁より提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。上記のとおり、こちらは「不分別の区分は残した方がよい」「『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示」とまとめられています。

(1)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示内容を改める方法が想定されるが、どう考えるか。

「遺伝子組換え不分別」に代わる表示の使用

  • 「遺伝子組換え不分別」表示に代わり、より実態を反映した分かりやすい表示とする。
  • 「遺伝子組換え不分別」の実態を反映したあらかじめ定めた複数の表示から選択して表示できるようにする。

(2)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示の区分を改める方法が想定されるが、どう考えるか。

「遺伝子組換え不分別」の廃止

  • 「遺伝子組換え不分別」の区分を廃止し、「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換えでない」の2区分に整理する。

「遺伝子組換えでない」表示の要件について(論点4)


 同じく提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。

(1)混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、以下のような問題点について、どう考えるか。

  • スタック品種の増加により混入率の正確な把握が難しくなる中、監視の観点から、混入率を確認するための精度が担保された実効的な検査方法を策定することが必要である。
  • 混入率の引下げに伴って、より厳しい原材料管理を行う場合、原材料のコストが上がる可能性がある。また、原材料を必要量確保できなくなる可能性もある。

(2)「遺伝子組換えでない」表示が認められる混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、どう考えるか。

混入率 想定される表示
5%超 「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示)
5%~α% (「遺伝子組換えでない」旨の表示は不可)
α%以下 「遺伝子組換えでない」である旨(任意表示)

 (1)の混入率引き下げについては、上記の案にあげられている問題点(実効的な検査方法、原材料コストの上昇)の議論があり、第7回目の検討会ではまとめられず次回での検討となりました。(2)の「遺伝子組換えでない」表示の要件については、全体的には厳しくしていく方向で議論が進められています(※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)。この場合、検査方法の問題から「遺伝子組換えでない」表示は市場からなくなるといった見解がありました。そして同時に、分別流通などこれまでの事業者の努力への配慮についても議論されています。

今後の予定


 次回検討会は2018年1月31日の予定です。最終的なとりまとめは年度末(2018年3月ごろ)になる見込みですので、またコラムでとりあげたいと思います。
 検討会資料は、多くの食品を輸入に頼っていることと、その管理の難しさについて考えさせられる内容です。お時間のある方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。

参照:
遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html
遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_171218_0002.pdf

2017年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。おかげさまでラベルバンク新聞も10年目となりました。細々と続けてきましたが、時間が経つのは早いなと感じます。本年もどうぞ、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 さて昨年(2017年)も食品表示に関する様々な出来事がありました。食品表示実務に携わる方は、新基準への対応等で忙しくされているところかと思いますが、こちらでまとめた内容が、今後の業務計画を立てる際の参考になりましたら幸いです。

昨年の主な出来事


 食品表示に関する出来事のうち、昨年起きた主なものを整理してみました。やはり、一番の話題は「新たな原料原産地表示制度」だったかと思います。4月に募集されたパブリックコメントでは、8,000件を超える数の意見が集まりました。栄養成分表示義務化、アレルゲンや添加物、そして製造所固有記号の表示方法まで変わった「食品表示基準への一元化」の際のパブリックコメントの数が4,000件程度と考えると、2017年の原料原産地表示制度改正は相当高い関心を集めていたことがうかがえます。

2017年 1月 「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」に係る説明会開催
2月  
3月 「特別用途食品の表示許可等について」改正
「食品表示基準について」第7次改正
4月 遺伝子組換え表示制度に関する検討会開始
5月  
6月  
7月  
8月  
9月 食品表示基準改正(新たな原料原産地表示制度の施行)
「食品表示基準について」第8次改正
「食品表示基準Q&A」第3次改正
「新たな加工食品の原料原産地表示制度」に係る説明会開催
「食品表示法における酒類の表示のQ&A」別冊「原料原産地表示関係」公表
「機能性表示食品に関する質疑応答集」公表
10月 「特別用途食品の表示許可等について」改正
11月  
12月 「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」改正

 その他、食品表示に関連する分野の動きもあった年でした。2017年7月には「打消し表示に関する実態調査報告書」が公表され、特に通信販売に取り組まれている事業者には大きな影響があったかと思います。また8月にはJAS法が改正され、JAS規格が大きく変わりました。これまでの「モノ」に対する規格から、生産方法や試験方法なども規格の対象とするなど、主に海外への輸出を目指す事業者にとって新しい取り組みの可能性が広がったと思います。11月に開始された乳製品の動物検疫も、とりわけ輸入と輸出をする方にとっては対応に追われる大きな変化だったと思います。

今後予定されていること


 今後の予定も、こちらにまとめてみました。主には新しく始まった制度経過措置期間が対象ですので、今後の作業計画の再確認として参考にしていただければと思います。

2018年   遺伝子組換え表示検討会 とりまとめ報告予定
2019年    
2020年 3月末 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)終了
「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」の使用期間終了
2021年    
2022年 3月末 新たな加工食品の原料原産地表示制度 経過措置期間終了

今年、大切にしたいこと


 原料原産地表示制度の改正では、「根拠資料の保管」がポイントとなります。原料原産地表示はアレルゲンや添加物などの表示とは少し異なり、強調表示の側面も持ち合わせているためです。とりわけ、「国産」「国内製造」はそうであると言えるでしょう。そしてその根拠となる資料の準備は、不当表示を防ぐ意味でも大切だと思います。
 こうした情報管理体制の構築も大切ですが、一方で、落ち着いて消費者ニーズを見ることもより大切だと思います。同じような性質を持つ表示として「製造所固有記号(と「製造者」の表示)」が少し前に改正されていますので、その対応状況を見てみると、新しい表示への対応方法を検討するときの参考になるかもしれません。経過措置期間もありますので、まずは消費者がこうした表示に求めるものについて、今年はじっくり考える機会にできればと思います。

新たな原料原産地表示制度と「実質的な変更をもたらす行為」について

 2017年9月1日に食品表示基準Q&Aが改正され、原料原産地の「国内製造」表示に関して、以前よりも詳細な情報が記載されています。今回のコラムでは、「輸入された中間加工原材料」と「国内製造」の表示について、Q&Aの内容を中心に整理していきたいと思います。

製造地表示とは


 対象原材料が中間加工原材料である場合に、原則として、当該中間加工原材料の製造地を「○○製造」と表示する方法です。(ただし、中間加工原材料である対象原材料の生鮮原材料の原産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該生鮮原材料名と共にその原産地を表示することができます。)

 検討会では当初、「○○加工」が検討されたのですが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、「○○製造」として、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示することになりました。

「国内製造」とならない行為


 中間加工原材料が国産品の場合には、国内において製造された旨を「国内製造」と、輸入品の場合には、外国において製造された旨を「○○製造」と表示する必要があります。

 そのため、輸入された中間加工原材料については、国内他社でさらに「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」がなされ、それを仕入れて中間加工原材料として使用する場合は、「国内製造」となります。(食品表示基準Q&A 原原-43)

 食品表示基準Q&A原原-43に、「国内製造」とならない具体例が記載されていますので、以下に引用します。

容器包装へのラベルの添付、修正、付け替え 容器包装に日本用の日本語ラベルを付すなど  
詰め合わせ 販売のための外装に詰め合わせるなど  
小分け バルクで仕入れたものを小分けするなど 例:うなぎの蒲焼きをバルクで仕入れて小分けする、スパゲッティをバルクで仕入れて小分けする
切断 スライスするなどの単なる切断 例:ハムをスライスする
整形 形を整えるなど 例:ブロックのベーコンの形を整える
選別 形、大きさで選別するなど 例:煮干を大きさで選別する
破砕 少し砕くなど(粉末状にしたものを除く) 例:挽き割り大豆
混合 同じ種類の食品を混合するなど 例:紅茶を混合する
盛り合わせ 異なる種類の食品を容易に分けられるよう盛り合わせるなど 例:個包装されている、仕切り等で分けられているなど容易に分けられるように盛り合わせる
骨取り 除骨のみを行うなど 例:塩サバの骨抜き
冷凍 輸送又は保存のための冷凍など  
解凍 自然解凍等により、単に冷凍された食品を冷蔵若しくは常温の状態まで解凍したもの 例:冷凍ゆでだこを解凍する
乾燥 輸送又は保存のための乾燥など  
塩水漬け 輸送又は保存のための塩水漬けなど  
加塩 既に塩味のついた食品を加塩など 例:塩鮭甘口にふり塩をし塩鮭辛口にする
調味料等の軽微な添加 少量の調味料を加えるなど
薬味を少量足すなど

例:水煮にごく少量のしょうゆを加える。
例:大学芋にごまをまぶす

添加物の添加 添加物を添加するなど 例:ぶどうオイルにビタミンEを栄養強化の目的で添加する、干しえびを着色する、オレンジ果汁を着香する
殺菌 容器包装前後に殺菌するなど 例:ちりめんじゃこを加熱殺菌、濃縮果汁を小分けする際に行う殺菌
結着防止 固まらないように植物性油脂を塗布するなど 例:レーズンへ植物性油脂を塗布する
再加熱 揚げ直し、焼き直し、蒸し直しなど単なる加熱  

“実質的な変更をもたらす行為”とは


 「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」とは、製品として輸入品であることを示す「原産国名」表示での考え方と同様であり、食品表示基準Q&A加工-154、155に記載されています。

製品の原産国とは、景品表示法に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」に規定しているとおり、「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」のことを指します。
この場合において、次のような行為については、「商品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」に含まれません。

  1. 商品にラベルを付け、その他標示を施すこと
  2. 商品を容器に詰め、又は包装をすること
  3. 商品を単に詰合せ、又は組合せること
  4. 簡単な部品の組立てをすること
  5. これに加え、関税法基本通達では、

  6. 単なる切断
  7. 輸送又は保存のための乾燥、冷凍、塩水漬けその他これに類する行為
  8. 単なる混合

についても、原産国の変更をもたらす行為に含まれない旨が明記されています。

 ここで、「商品の原産国に関する不当な表示」という文書のうち、『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』のなかに、食品の原産国に関する定義が規定されていますので、確認してみましょう。

品目 実質的な変更をもたらす行為
食料品 緑茶
紅茶
荒茶の製造
清涼飲料
(果汁飲料を含む)
原液又は濃縮果汁を希釈して製造したものにあっては希釈
米菓 煎餅又は揚

(『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』より「食料品」部分を抜粋)

まとめ


 新しい原料原産地表示制度の検討背景を考えると、「国産」「国内製造」と表示する際には、こうしたQ&Aの記載をよく確認のうえ、注意して表示をする必要があります。
 また、表示の根拠となる資料についても、例えば産地が記載されている規格書と、使用原材料の産地を記載した製造記録や製造指示書を用意するなどし、仕入れた原材料をどの製品に使用したか、その実績が分かるようにしておくなど、情報の整備を進めることが大切になるといえるでしょう。

参照:
食品表示基準Q&A
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0016.pdf
「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_27.pdf

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「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について2~論点の整理と、表示義務対象範囲について議論がされました~

 2017年9月27日、第5回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点についてと、遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方について、議論がされています。

制度の在り方の検討に当たっての論点


 これまでの検討会においての消費者団体等ヒアリング、事業者等ヒアリングを経て、遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点について、以下のように整理されています。
(出典:遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点(案)(消費者庁))

1.表示義務対象範囲

  • 論点1 表示義務対象品目の検討
  • 論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討

2.表示方法

  • 論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
  • 論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討

<論点1>

(現状)
遺伝子組換え食品としての安全性が確認された農産物(8品目)及びこれを原材料とする加工食品(33品目)を表示義務対象品目としている。
なお、加工食品については、表示の信頼性及び実行可能性の確保の観点から、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質(以下「組換えDNA等」という。)が検出可能なものに限定している

(意見)
消費者が誤解することのないよう全ての加工食品を表示義務対象品目にすべき
表示の信頼性、実行可能性等の観点から組換えDNA等が検出できるものを義務表示対象品目にすべき

<論点2>

(現状)
加工食品の表示義務対象原材料を、原材料の重量に占める割合が高い上位3品目までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上である原材料に限定している

(意見)

  • 表示義務対象原材料の範囲を拡大すべき
  • 事業者の実行可能性を踏まえた検討をすべき

<論点3>

(現状)
分別生産流通管理が行われたことを確認した遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換え」である旨の表示を義務付けている。また、遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない農産物並びにこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換え不分別」である旨の表示を義務付けている

(意見)

  • 「遺伝子組換え不分別」表示の意味が分かりにくい。
  • 遺伝子組換え食品に関する問合せのうち、「遺伝子組換え不分別」表示の意味に関する問合せが多くを占めている。

<論点4>

(現状)
分別生産流通管理が行われたことを確認することを条件に非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換えでない」旨を表示することができる。
なお、分別生産流通管理が適切に行われた場合でも、大豆及びとうもろこしは遺伝子組換え農産物の一定の混入の可能性があることから、分別生産流通管理が適切に行なわれていれば、このような一定の「意図せざる」混入がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができることとされている(「5%以下」と規定)。

(意見)

  • 1.遺伝子組換え農産物が最大5%混入しているにもかかわらず「遺伝子組換えでない」表示を可能としていることは誤認を招くことから改善が必要、2.意図せざる混入の基準を引き下げるべき。
  • 意図せざる混入の基準を引き下げることは安定供給及びコストの観点から困難である。

 検討会において、まずは各論での議論を進め、その後に全体として捉えたときの検討もされるという流れになる見込みです。論点については、上記の4点に整理されることに決まりました。

表示義務対象範囲の考え方について


 つぎに、論点1の「表示義務対象品目の検討」についての議論がされました。具体的な論点は以下の通りです。(出典:遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方(案)(消費者庁))

【問題点】

  • 遺伝子組換えの原材料を使用したものと遺伝子組換えでない原材料を使用したものとの間に、実証可能な差異がなく、科学的検証ができない。
  • 科学的検証ができない加工食品について、偽装表示の監視をする場合は、個々の事業者への立入検査等による社会的検証(根拠書類の確認)のみがその手法となる。
  • 原材料から製造される加工食品であれば、当該原材料を検査することで根拠書類の真正性の確認が可能であるが、加工食品の状態で輸入される製品の場合、根拠書類の真正性を十分確認することができず、結果として表示の信頼性を損うおそれがある。
  • また、多くの原材料を輸入に頼るなか、国際的なトレーサビリティ制度もなく、国内事業者が書類等の真正性の確認ができないため、国際的な取引に影響を及ぼすおそれがある。

 論点1については科学的な検証を中心に議論を進め、科学的に検証ができないものに表示義務を課す場合のデメリットにも触れるなどし、基本的には現在の制度を維持するといったまとめになりました。

 ついで、論点2の「表示義務対象原材料の範囲の検討」についての議論がされました。具体的な論点は以下の通りです。(出典:遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方(案)(消費者庁))

【問題点】

  • 遺伝子組換え表示制度導入時(平成11年)よりも、義務表示事項は増加している(平成29年9月1日から、新たな加工食品の原料原産地表示制度がスタート)。
  • 個食化が進み、容器包装が小さくなっている傾向がある。

 現状の「上位3品目かつ重量割合5%以上」に限る必要はないとした意見もありましたが、やはり遺伝子組換え表示は安全性に関する表示ではなく、商品選択のための表示という理解のもと、表示量の多さの問題などから大体の意見としては現状の制度を維持するとしたまとめになりました。

今後のスケジュール


 検討会は本年度内(2018年3月)までを目途に、報告書をとりまとめる予定になっています。次回検討会の日程は未定ですが、今後も節目ごとにコラムで取り上げたいと思います。食品表示の実務面で今後すぐに必要となる情報ではありませんが、検討会の資料を読むことによって、各国の事情や、日本の食糧自給率など、食品の事業を取り巻く社会環境についても知ることができますので、一度目を通しておかれるとよいと思います。

参照:
遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html