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川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について3~遺伝子組換え表示の表示方法の考え方について議論がされました~

 2017年11月17日に第6回目、そして2017年12月18日に第7回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。「遺伝子組換え表示の表示方法」(以下の論点3と論点4)について、引き続き議論がされ、論点4の「遺伝子組換えでない」表示の要件について、少し動きがありましたのでここにまとめたいと思います。

これまでの検討について


 前々回である第5回目(2017年9月27日)の検討会において、遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点についてと、遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方について、議論がされています。その論点に沿って、これまでの議論のまとめを整理すると次のようになります。

1.表示義務対象範囲

  • 論点1 表示義務対象品目の検討
     ⇒現状の制度を維持する
  • 論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討
     ⇒現状の制度を維持する

2.表示方法

  • 論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
     ⇒不分別の区分は残した方がよい
     ⇒『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示
  • 論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
     ⇒意図せざる混入率の引き下げは、まとめるのは難しい(次回検討)
     ⇒『遺伝子組換えでない』表示の要件は、厳しくしていく方向(次回検討※)
      (※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)

 上記のように、論点1から3までは現状の制度を維持する議論となりましたが、論点4については、何らか制度の変更について検討されていることがうかがえます。

「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示について(論点3)


 消費者庁より提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。上記のとおり、こちらは「不分別の区分は残した方がよい」「『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示」とまとめられています。

(1)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示内容を改める方法が想定されるが、どう考えるか。

「遺伝子組換え不分別」に代わる表示の使用

  • 「遺伝子組換え不分別」表示に代わり、より実態を反映した分かりやすい表示とする。
  • 「遺伝子組換え不分別」の実態を反映したあらかじめ定めた複数の表示から選択して表示できるようにする。

(2)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示の区分を改める方法が想定されるが、どう考えるか。

「遺伝子組換え不分別」の廃止

  • 「遺伝子組換え不分別」の区分を廃止し、「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換えでない」の2区分に整理する。

「遺伝子組換えでない」表示の要件について(論点4)


 同じく提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。

(1)混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、以下のような問題点について、どう考えるか。

  • スタック品種の増加により混入率の正確な把握が難しくなる中、監視の観点から、混入率を確認するための精度が担保された実効的な検査方法を策定することが必要である。
  • 混入率の引下げに伴って、より厳しい原材料管理を行う場合、原材料のコストが上がる可能性がある。また、原材料を必要量確保できなくなる可能性もある。

(2)「遺伝子組換えでない」表示が認められる混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、どう考えるか。

混入率 想定される表示
5%超 「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示)
5%~α% (「遺伝子組換えでない」旨の表示は不可)
α%以下 「遺伝子組換えでない」である旨(任意表示)

 (1)の混入率引き下げについては、上記の案にあげられている問題点(実効的な検査方法、原材料コストの上昇)の議論があり、第7回目の検討会ではまとめられず次回での検討となりました。(2)の「遺伝子組換えでない」表示の要件については、全体的には厳しくしていく方向で議論が進められています(※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)。この場合、検査方法の問題から「遺伝子組換えでない」表示は市場からなくなるといった見解がありました。そして同時に、分別流通などこれまでの事業者の努力への配慮についても議論されています。

今後の予定


 次回検討会は2018年1月31日の予定です。最終的なとりまとめは年度末(2018年3月ごろ)になる見込みですので、またコラムでとりあげたいと思います。
 検討会資料は、多くの食品を輸入に頼っていることと、その管理の難しさについて考えさせられる内容です。お時間のある方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。

参照:
遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html
遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_171218_0002.pdf

2017年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。おかげさまでラベルバンク新聞も10年目となりました。細々と続けてきましたが、時間が経つのは早いなと感じます。本年もどうぞ、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 さて昨年(2017年)も食品表示に関する様々な出来事がありました。食品表示実務に携わる方は、新基準への対応等で忙しくされているところかと思いますが、こちらでまとめた内容が、今後の業務計画を立てる際の参考になりましたら幸いです。

昨年の主な出来事


 食品表示に関する出来事のうち、昨年起きた主なものを整理してみました。やはり、一番の話題は「新たな原料原産地表示制度」だったかと思います。4月に募集されたパブリックコメントでは、8,000件を超える数の意見が集まりました。栄養成分表示義務化、アレルゲンや添加物、そして製造所固有記号の表示方法まで変わった「食品表示基準への一元化」の際のパブリックコメントの数が4,000件程度と考えると、2017年の原料原産地表示制度改正は相当高い関心を集めていたことがうかがえます。

2017年 1月 「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」に係る説明会開催
2月  
3月 「特別用途食品の表示許可等について」改正
「食品表示基準について」第7次改正
4月 遺伝子組換え表示制度に関する検討会開始
5月  
6月  
7月  
8月  
9月 食品表示基準改正(新たな原料原産地表示制度の施行)
「食品表示基準について」第8次改正
「食品表示基準Q&A」第3次改正
「新たな加工食品の原料原産地表示制度」に係る説明会開催
「食品表示法における酒類の表示のQ&A」別冊「原料原産地表示関係」公表
「機能性表示食品に関する質疑応答集」公表
10月 「特別用途食品の表示許可等について」改正
11月  
12月 「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」改正

 その他、食品表示に関連する分野の動きもあった年でした。2017年7月には「打消し表示に関する実態調査報告書」が公表され、特に通信販売に取り組まれている事業者には大きな影響があったかと思います。また8月にはJAS法が改正され、JAS規格が大きく変わりました。これまでの「モノ」に対する規格から、生産方法や試験方法なども規格の対象とするなど、主に海外への輸出を目指す事業者にとって新しい取り組みの可能性が広がったと思います。11月に開始された乳製品の動物検疫も、とりわけ輸入と輸出をする方にとっては対応に追われる大きな変化だったと思います。

今後予定されていること


 今後の予定も、こちらにまとめてみました。主には新しく始まった制度経過措置期間が対象ですので、今後の作業計画の再確認として参考にしていただければと思います。

2018年   遺伝子組換え表示検討会 とりまとめ報告予定
2019年    
2020年 3月末 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)終了
「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」の使用期間終了
2021年    
2022年 3月末 新たな加工食品の原料原産地表示制度 経過措置期間終了

今年、大切にしたいこと


 原料原産地表示制度の改正では、「根拠資料の保管」がポイントとなります。原料原産地表示はアレルゲンや添加物などの表示とは少し異なり、強調表示の側面も持ち合わせているためです。とりわけ、「国産」「国内製造」はそうであると言えるでしょう。そしてその根拠となる資料の準備は、不当表示を防ぐ意味でも大切だと思います。
 こうした情報管理体制の構築も大切ですが、一方で、落ち着いて消費者ニーズを見ることもより大切だと思います。同じような性質を持つ表示として「製造所固有記号(と「製造者」の表示)」が少し前に改正されていますので、その対応状況を見てみると、新しい表示への対応方法を検討するときの参考になるかもしれません。経過措置期間もありますので、まずは消費者がこうした表示に求めるものについて、今年はじっくり考える機会にできればと思います。

新たな原料原産地表示制度と「実質的な変更をもたらす行為」について

 2017年9月1日に食品表示基準Q&Aが改正され、原料原産地の「国内製造」表示に関して、以前よりも詳細な情報が記載されています。今回のコラムでは、「輸入された中間加工原材料」と「国内製造」の表示について、Q&Aの内容を中心に整理していきたいと思います。

製造地表示とは


 対象原材料が中間加工原材料である場合に、原則として、当該中間加工原材料の製造地を「○○製造」と表示する方法です。(ただし、中間加工原材料である対象原材料の生鮮原材料の原産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該生鮮原材料名と共にその原産地を表示することができます。)

 検討会では当初、「○○加工」が検討されたのですが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、「○○製造」として、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示することになりました。

「国内製造」とならない行為


 中間加工原材料が国産品の場合には、国内において製造された旨を「国内製造」と、輸入品の場合には、外国において製造された旨を「○○製造」と表示する必要があります。

 そのため、輸入された中間加工原材料については、国内他社でさらに「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」がなされ、それを仕入れて中間加工原材料として使用する場合は、「国内製造」となります。(食品表示基準Q&A 原原-43)

 食品表示基準Q&A原原-43に、「国内製造」とならない具体例が記載されていますので、以下に引用します。

容器包装へのラベルの添付、修正、付け替え 容器包装に日本用の日本語ラベルを付すなど  
詰め合わせ 販売のための外装に詰め合わせるなど  
小分け バルクで仕入れたものを小分けするなど 例:うなぎの蒲焼きをバルクで仕入れて小分けする、スパゲッティをバルクで仕入れて小分けする
切断 スライスするなどの単なる切断 例:ハムをスライスする
整形 形を整えるなど 例:ブロックのベーコンの形を整える
選別 形、大きさで選別するなど 例:煮干を大きさで選別する
破砕 少し砕くなど(粉末状にしたものを除く) 例:挽き割り大豆
混合 同じ種類の食品を混合するなど 例:紅茶を混合する
盛り合わせ 異なる種類の食品を容易に分けられるよう盛り合わせるなど 例:個包装されている、仕切り等で分けられているなど容易に分けられるように盛り合わせる
骨取り 除骨のみを行うなど 例:塩サバの骨抜き
冷凍 輸送又は保存のための冷凍など  
解凍 自然解凍等により、単に冷凍された食品を冷蔵若しくは常温の状態まで解凍したもの 例:冷凍ゆでだこを解凍する
乾燥 輸送又は保存のための乾燥など  
塩水漬け 輸送又は保存のための塩水漬けなど  
加塩 既に塩味のついた食品を加塩など 例:塩鮭甘口にふり塩をし塩鮭辛口にする
調味料等の軽微な添加 少量の調味料を加えるなど
薬味を少量足すなど

例:水煮にごく少量のしょうゆを加える。
例:大学芋にごまをまぶす

添加物の添加 添加物を添加するなど 例:ぶどうオイルにビタミンEを栄養強化の目的で添加する、干しえびを着色する、オレンジ果汁を着香する
殺菌 容器包装前後に殺菌するなど 例:ちりめんじゃこを加熱殺菌、濃縮果汁を小分けする際に行う殺菌
結着防止 固まらないように植物性油脂を塗布するなど 例:レーズンへ植物性油脂を塗布する
再加熱 揚げ直し、焼き直し、蒸し直しなど単なる加熱  

“実質的な変更をもたらす行為”とは


 「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」とは、製品として輸入品であることを示す「原産国名」表示での考え方と同様であり、食品表示基準Q&A加工-154、155に記載されています。

製品の原産国とは、景品表示法に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」に規定しているとおり、「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」のことを指します。
この場合において、次のような行為については、「商品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」に含まれません。

  1. 商品にラベルを付け、その他標示を施すこと
  2. 商品を容器に詰め、又は包装をすること
  3. 商品を単に詰合せ、又は組合せること
  4. 簡単な部品の組立てをすること
  5. これに加え、関税法基本通達では、

  6. 単なる切断
  7. 輸送又は保存のための乾燥、冷凍、塩水漬けその他これに類する行為
  8. 単なる混合

についても、原産国の変更をもたらす行為に含まれない旨が明記されています。

 ここで、「商品の原産国に関する不当な表示」という文書のうち、『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』のなかに、食品の原産国に関する定義が規定されていますので、確認してみましょう。

品目 実質的な変更をもたらす行為
食料品 緑茶
紅茶
荒茶の製造
清涼飲料
(果汁飲料を含む)
原液又は濃縮果汁を希釈して製造したものにあっては希釈
米菓 煎餅又は揚

(『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』より「食料品」部分を抜粋)

まとめ


 新しい原料原産地表示制度の検討背景を考えると、「国産」「国内製造」と表示する際には、こうしたQ&Aの記載をよく確認のうえ、注意して表示をする必要があります。
 また、表示の根拠となる資料についても、例えば産地が記載されている規格書と、使用原材料の産地を記載した製造記録や製造指示書を用意するなどし、仕入れた原材料をどの製品に使用したか、その実績が分かるようにしておくなど、情報の整備を進めることが大切になるといえるでしょう。

参照:
食品表示基準Q&A
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0016.pdf
「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_27.pdf

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「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について2~論点の整理と、表示義務対象範囲について議論がされました~

 2017年9月27日、第5回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点についてと、遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方について、議論がされています。

制度の在り方の検討に当たっての論点


 これまでの検討会においての消費者団体等ヒアリング、事業者等ヒアリングを経て、遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点について、以下のように整理されています。
(出典:遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点(案)(消費者庁))

1.表示義務対象範囲

  • 論点1 表示義務対象品目の検討
  • 論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討

2.表示方法

  • 論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
  • 論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討

<論点1>

(現状)
遺伝子組換え食品としての安全性が確認された農産物(8品目)及びこれを原材料とする加工食品(33品目)を表示義務対象品目としている。
なお、加工食品については、表示の信頼性及び実行可能性の確保の観点から、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質(以下「組換えDNA等」という。)が検出可能なものに限定している

(意見)
消費者が誤解することのないよう全ての加工食品を表示義務対象品目にすべき
表示の信頼性、実行可能性等の観点から組換えDNA等が検出できるものを義務表示対象品目にすべき

<論点2>

(現状)
加工食品の表示義務対象原材料を、原材料の重量に占める割合が高い上位3品目までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上である原材料に限定している

(意見)

  • 表示義務対象原材料の範囲を拡大すべき
  • 事業者の実行可能性を踏まえた検討をすべき

<論点3>

(現状)
分別生産流通管理が行われたことを確認した遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換え」である旨の表示を義務付けている。また、遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない農産物並びにこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換え不分別」である旨の表示を義務付けている

(意見)

  • 「遺伝子組換え不分別」表示の意味が分かりにくい。
  • 遺伝子組換え食品に関する問合せのうち、「遺伝子組換え不分別」表示の意味に関する問合せが多くを占めている。

<論点4>

(現状)
分別生産流通管理が行われたことを確認することを条件に非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品に「遺伝子組換えでない」旨を表示することができる。
なお、分別生産流通管理が適切に行われた場合でも、大豆及びとうもろこしは遺伝子組換え農産物の一定の混入の可能性があることから、分別生産流通管理が適切に行なわれていれば、このような一定の「意図せざる」混入がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができることとされている(「5%以下」と規定)。

(意見)

  • 1.遺伝子組換え農産物が最大5%混入しているにもかかわらず「遺伝子組換えでない」表示を可能としていることは誤認を招くことから改善が必要、2.意図せざる混入の基準を引き下げるべき。
  • 意図せざる混入の基準を引き下げることは安定供給及びコストの観点から困難である。

 検討会において、まずは各論での議論を進め、その後に全体として捉えたときの検討もされるという流れになる見込みです。論点については、上記の4点に整理されることに決まりました。

表示義務対象範囲の考え方について


 つぎに、論点1の「表示義務対象品目の検討」についての議論がされました。具体的な論点は以下の通りです。(出典:遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方(案)(消費者庁))

【問題点】

  • 遺伝子組換えの原材料を使用したものと遺伝子組換えでない原材料を使用したものとの間に、実証可能な差異がなく、科学的検証ができない。
  • 科学的検証ができない加工食品について、偽装表示の監視をする場合は、個々の事業者への立入検査等による社会的検証(根拠書類の確認)のみがその手法となる。
  • 原材料から製造される加工食品であれば、当該原材料を検査することで根拠書類の真正性の確認が可能であるが、加工食品の状態で輸入される製品の場合、根拠書類の真正性を十分確認することができず、結果として表示の信頼性を損うおそれがある。
  • また、多くの原材料を輸入に頼るなか、国際的なトレーサビリティ制度もなく、国内事業者が書類等の真正性の確認ができないため、国際的な取引に影響を及ぼすおそれがある。

 論点1については科学的な検証を中心に議論を進め、科学的に検証ができないものに表示義務を課す場合のデメリットにも触れるなどし、基本的には現在の制度を維持するといったまとめになりました。

 ついで、論点2の「表示義務対象原材料の範囲の検討」についての議論がされました。具体的な論点は以下の通りです。(出典:遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方(案)(消費者庁))

【問題点】

  • 遺伝子組換え表示制度導入時(平成11年)よりも、義務表示事項は増加している(平成29年9月1日から、新たな加工食品の原料原産地表示制度がスタート)。
  • 個食化が進み、容器包装が小さくなっている傾向がある。

 現状の「上位3品目かつ重量割合5%以上」に限る必要はないとした意見もありましたが、やはり遺伝子組換え表示は安全性に関する表示ではなく、商品選択のための表示という理解のもと、表示量の多さの問題などから大体の意見としては現状の制度を維持するとしたまとめになりました。

今後のスケジュール


 検討会は本年度内(2018年3月)までを目途に、報告書をとりまとめる予定になっています。次回検討会の日程は未定ですが、今後も節目ごとにコラムで取り上げたいと思います。食品表示の実務面で今後すぐに必要となる情報ではありませんが、検討会の資料を読むことによって、各国の事情や、日本の食糧自給率など、食品の事業を取り巻く社会環境についても知ることができますので、一度目を通しておかれるとよいと思います。

参照:
遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html

加工食品の原料原産地表示の拡大について9 ~「新たな原料原産地表示制度」のQ&Aが更新されました~

 2017年9月1日に食品表示基準が改正され、「新たな原料原産地表示制度」が始まりました。その際に食品表示基準Q&Aも第3次改正が行われ、「新たな原料原産地表示制度」のページが追加されています。
 2017年3月27日にパブリックコメントの受付が始まった際、Q&A形式の資料である「新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)」が公表されていましたが、今回の食品表示基準Q&Aの第3次改正において「新たな原料原産地表示制度」ページの追加によって更新された内容がありますので、こちらで整理したいと思います。

目次からみる更新内容


 以前に公表された「新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)」の目次と、食品表示基準Q&A第3次改正で追加された「新たな原料原産地表示制度」の目次の質問項目から比較しました。

2017年3月27日 新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000156620

2017年9月1日 食品表示基準Q&A 別添 新たな原料原産地表示制度
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0014.pdf

 追加された質問項目は34項目ありますので、以下に列挙したいと思います。

追加された質問項目


Ⅰ 表示対象

(原原-3)酒類も原料原産地表示の対象になりますか。対象である場合、原料原産地表示の対象となる原材料とはどのようなものですか。
(原原-4)いわゆる「冠表示」の原材料も原料原産地表示の対象になりますか。
(原原-5)水も原料原産地表示の対象になりますか。
(原原-7)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の1の三の規定に基づき、複合原材料(2種類以上の原材料からなる原材料)を、単に混合しただけなど、原材料の性状に大きな変化がないことから、原材料名欄で分割して表示している場合、どの原材料の原産地を表示すればよいですか。
(原原-8)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の1の三の規定に基づき、複合原材料(2種類以上の原材料からなる原材料)を、単に混合しただけなど、原材料の性状に大きな変化がないことから、原材料名欄で分割した後、製品中に含まれる複数の同一原材料を合算して表示している場合、原材料の原産地はどのように考えればよいですか。
(原原-9)食品表示基準第3条第1項の表の原材料の項の2の一の規定に基づき、同種の原材料をまとめ書きしている場合(「野菜(○○、△△)」等)、どの原材料に原産地を表示する必要がありますか。
(原原-10)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の2の一の規定に基づき、同種の原材料をまとめ書きしている場合、野菜が全て国産である場合は、どのような書き方ができますか。
(原原-11)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の2の二の規定に基づき、複数の加工食品A、Bが個別に包装されるなど、区分けされ、それを組み合わせて1つの製品となる食品であって、その構成要素となる加工食品A、Bに区分けして原材料表示をしている場合、どの原材料に原産地の表示義務がありますか。
(原原-12)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の3の規定に基づき、原材料を「植物油」、「でん粉」等と括って表示している場合、原材料の原産地はどのように考えればよいですか。
(原原-13)食品表示基準第3条第1項の表の原材料名の項の3の規定に基づき、原材料を「魚肉」等と括って表示している場合、原材料の原産地はどのようにするのですか。
(原原-14)重量割合上位1位の原材料が2つ以上ある場合、どの原材料に原料原産地表示を行う必要がありますか。

Ⅱ 表示方法

(原原-15)原料原産地表示は、どこに表示すればよいですか。
(原原-17)複数の原産地の原材料を混合している場合の表示の方法について教えてください。
(原原-18)原材料名欄には、アレルギー表示や遺伝子組換え表示を行うこともありますが、原料原産地表示、アレルギー表示、遺伝子組換え表示の順番について、優先順位はありますか。
(原原-19)原料原産地表示について、原料原産地を国名以外で表示することはできますか。
(原原-20)原料原産地名の表示について、国名を「略称」等で表示することはできますか。また、米国をUSAやUSと表示することはできますか。
(原原-21)原料原産地表示について、原産地を表す記号を活用して、表示することはできますか。
(原原-22)原材料に占める重量割合が最も高い原材料(重量割合上位1位の原材料)について、食品表示基準第7条の規定に基づき、特定の原産地名とその使用割合を強調して表示していますが、別途、一括表示内に原料原産地の表示が必要ですか。
(原原-23)一括表示内に原料原産地を表示する際、食品表示基準第7条の規定による使用割合の併記は必要ですか。
(原原-24)原料原産地表示対象の重量割合上位1位の原材料に加え、任意で上位5位の原材料にも原料原産地名を表示したい場合、上位2位、3位、4位の原材料には原料原産地名を表示しなくてもよいですか。
(原原-25)原材料が1種類で原材料名の表示を省略している場合、どのように表示すればよいですか。

Ⅲ 「又は表示」(※以前の項目名は「可能性表示」)

(原原-28)「又は表示」は、都道府県名による原産地表示でも使用できますか。
(原原-30)複数の原産地の原材料をタンクに継ぎ足して製造するような場合は、一度使用した原産地は計算上0になることはないが、どのように表示すればよいですか。

Ⅳ 「大括り表示」

(原原-33)大括り表示において、「EU産」や「南米産」など、「輸入」よりも小さな区分の表示は認められますか。

Ⅴ 「大括り表示」+「又は表示」

質問項目の追加なし(回答内容の構成のみ変更)。

Ⅵ 使用実績等

(原原-40)「又は表示」、「大括り表示」等を使用する際に過去の一定期間における産地別使用実績又は今後の一定期間における産地別使用計画は、どのような単位で計上することができますか。

Ⅶ 「中間加工原材料の製造地表示」

(原原-41)原料原産地表示の対象の原材料が中間加工原材料の場合の表示方法について教えてください。
(原原-42)中間加工原材料の製造地の決め方を教えてください。
(原原-44)何段階かの製造工程を経て製造された中間加工原材料については、どの段階の製造地を表示するのですか。
(原原-45)原料原産地表示の対象である中間加工原材料が複合原材料であって、「中間加工原材料の製造地表示」ではなく、生鮮原材料の原産地まで遡って表示する場合、複合原材料の中のどの原材料に原産地を表示する必要がありますか。
(原原-46)国内の自社の工場で製造した中間加工原材料について、どの段階の原産地を表示すればよいですか。

Ⅷ 業務用

質問項目の追加なし(回答内容の構成のみ変更)。

Ⅸ その他

(原原-56)別表第15の1~5に掲げる加工食品(いわゆる「22食品群+4品目」)については、「又は表示」や「大括り表示」、「中間加工原材料の製造地表示」はできますか。
(原原-57)いわゆる22食品群(別表第15の1に掲げる加工食品)の中で、原材料及び添加物に占める重量の割合が50%以上の生鮮食品がないものについては、どのように表示すればよいですか。
(原原-61)自然災害や不作等による原材料の調達の急な変更の対応は、どのようにしたらよいですか。
(原原-63)施行の際に製造所又は加工所で製造過程にあって、経過措置期間後に製造を完了する製品も対象になりますか。

 9月1日に公表された新しいQ&Aを見たけど、どこを見れば新しい情報があるのか分からないという方は、上記の項目について目を通しておかれるのがよいかと思います。

参照:
新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000156620
食品表示基準Q&A 別添 新たな原料原産地表示制度
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0014.pdf

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乳製品の動物検疫開始について

※2017年9月1日、”食品表示基準の一部を改正する内閣府令”が公布され、これに伴い、”食品表示基準Q&A(第3次改正)”、”食品表示基準について(第8次改正)”の文書が変更されております。
新しい原料原産地制度の開始に伴うものですが、Q&Aも大幅に変更されていますので、またあらためてご紹介できるようしたいと思います。

 2017 年11 月1 日より、乳製品の動物検疫が開始されます。食品表示が主な業務担当である方にとりましても、輸出入の増えていく社会背景において品質チェックの観点から重要な情報と考え、今月はこちらの話題についてお知らせしたいと思います。

要点をまとめると、以下のようになります。

  • これまで対象であった「生乳」に加え、「乳製品」が対象となる
  • 輸入、輸出ともに動物検疫所での検査が必要になる
  • 輸入の際には輸出国政府機関発行の「検査証明書」が必要になる
    (その際、「リスト国」と「リスト国以外の国」とで対応が異なる)

追加で対象となる乳製品は、以下のとおりです。(数字はHSコード。動物検疫所HPより引用。)

  • 0401(ミルク、クリーム等)
    *LL牛乳(乳等省令で定める「常温保存可能品」の認定を受けているもの)を除く。
  • 0402(ミルク、クリーム等)
    *無糖れん乳、無糖脱脂れん乳を除く。
  • 0403(バターミルク等)
    *発酵乳(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料を除く。
  • 0404(ホエイ等)
  • 0405(バター等)
    *バターオイル、ギーを除く。
  • 0406(チーズ等)
    *プロセスチーズを除く。
  • 3502.20、3502.90(ミルクアルブミン、濃縮ホエイ等、生乳・乳製品を原料とするもの)
    *分画精製されたα-ラクトアルブミンを除く。
  • 2309.10、2309.90(生乳・乳製品を原料に含む飼料・ペットフード等)
    *「ドライペットフード」及び「偶蹄類動物以外の動物に与えるものであって、小売販売されるもの(注1)のうち、原料(注2)の重量に占める生乳・乳製品の割合が50%未満であり、かつ、常温保存可能なもの」を除く。
    注1)輸入後に加工等を行うことなく単に袋詰め等小分けするものを含む。
    注2)添加した水は原料として換算しない。

*上記のうち、缶詰、瓶詰、レトルト(いずれも、容器に充填後、加熱滅菌されているものに限る)を除く。

 背景としては、日本への家畜の伝染性疾病の侵入防止に万全を期すことと、日本の畜産物の輸出促進にあります。欧米への輸出に必要な検疫協議を進めるにあたり、国際基準や諸外国と同等の水準の検疫体制を構築しておくことが必要となるため、今回の改正に至ったとされています。

 検査にかかる具体的な手順は、以下のとおりです。

輸入するとき

※家畜伝染病予防法施行規則で指定された港・空港に輸入する必要があります。

動物検疫所へ輸入検査申請(輸出国政府機関が発行する検査証明書等の提出)

到着時の輸入検査(動物検疫所又は指定検査場所で検査)

▼ 合格

輸入検疫証明書の交付

通関

輸出するとき

※輸出検査申請に先立ち、仕向先国の受入条件を確認してください。

動物検疫所へ輸出検査申請(必要書類は、仕向先国の受入条件により異なる)

通関前の輸出検査(動物検疫所又は指定検査場所で検査)

▼ 合格

輸出検疫証明書の交付

通関

出典:動物検疫所「乳製品リーフレット(平成29年6月14日版)」

 なお、輸入の際には「リスト国(生乳・非加熱乳製品の対日輸出を認める国)」と「リスト国以外の国(生乳・非加熱乳製品の対日輸出を認めない国)」とで、家畜衛生条件が異なる点に注意が必要です。リスト国以外の国から乳製品を輸入する際には、口蹄疫ウィルス不活性化処理工程を経ることが条件となります。リスト国とリスト国以外の国については、動物検疫所のサイトに一覧で掲載されています。

 乳製品の輸出入を検討される方はもとより、食品の品質に関わる業務をされる方におかれましても、一度ご確認されるとよいと思います。

参照:動物検疫所「乳製品の検疫開始について」
http://www.maff.go.jp/aqs/topix/dairy_products.html

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加工食品の原料原産地表示の拡大について8 ~改正案が大筋了承されました~

 2017年7月28日、消費者委員会食品表示部会が開催され、改正案について大筋で合意がなされました。一部の修正と前提条件つきの答申ではあるものの、おおむね、パブリックコメント募集時に公開された改正案のとおりに決まることになります。
以下に、あらためて制度改正の概要について整理するとともに、今回の一部修正と前提条件について概要をまとめてみたいと思います。

改正の概要と表示例


1.義務表示の対象

対象となる食品:国内で製造又は加工された全ての加工食品(輸入品以外の全ての加工食品)を義務表示の対象とする。
対象となる原材料:製品に占める重量割合上位1位の原材料を義務表示の対象とする。また重量割合上位1位の原材料が50%未満の22食品群も原料原産地表示の対象に含む。

2.義務表示の方法

  1. 対象原材料の産地について、現行の表示方法と同様に、国別に重量割合の高いものから順に国名を表示する「国別重量順表示」を原則とする。
  2. 対象原材料が加工食品の場合、中間加工原材料の「製造地」を表示する。
  3. 原産国が3か国以上ある場合は、現行の表示方法と同様、重量割合の高いものから順に国名を表示し、3か国目以降を「その他」と表示することができる。
  4. 「国別重量順表示」が難しい場合には、一定の条件の下で、「可能性表示」や「大括り表示」の表示を認める。

(産地の表示例)

名称 ポークソーセージ(ウインナー)
原材料名 豚肉(アメリカ)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料/調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na、K)、・・・

(製造地の表示例)

名称 清涼飲料水
原材料名 りんご果汁(ドイツ製造)、果糖ぶどう糖液糖、果糖/酸味料、ビタミンC

3.「国別重量順表示」が難しい場合の表示方法

1)「可能性表示(「又は」表示)」の表示例

名称 ポークソーセージ(ウインナー)
原材料名 豚肉(カナダ又はアメリカ又はその他)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料/調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na、K)、・・・

※豚肉の産地は、平成○年の使用実績順

2)「大括り表示(「輸入」表示)」の表示例

名称 ロースハム
原材料名 豚ロース肉(国産、輸入)、糖類(水あめ、砂糖)、食塩/調味料(有機酸等)、増粘多糖類、発色剤(亜硝酸Na)、香辛料

3)「大括り表示+可能性表示(「又は」表示)」の表示例

名称 小麦粉
原材料名 小麦(輸入又は国産)

※小麦の産地は、平成○年の使用実績順

4.その他の改正点

  • 一定期間における使用割合が5%未満である原産地については、その旨を表示する。
  • おにぎりののりについては、のりの原料となる原そうの原産地を表示する。
  • 「国別重量順表示」が難しい場合の表示方法については、根拠書類の保管を条件とする。

答申書に記載された意見について


 以下は、2017年7月28日消費者委員会食品表示部会において提出された答申書から、「前提条件」「追加修正」についての情報をまとめたものです。

【諮問された食品表示基準案を適当とする前提条件】(概要)

  1. 理解度等に関する目標値を設定し、消費者と事業者への周知活動を行うこと。
  2. 周知活動には、新たな普及・啓発方法も取り入れて行うこと。
  3. 相談窓口の常設など、事業者の理解不足による誤表示が発生しないよう周知すること。
  4. Q&Aを拡充し、事業者が制度を誤って解釈しないよう、的確な制度解説を行うこと。(特に例外要件の判断基準、根拠資料の保管ルール、行政に対する説明事項など)
  5. 「周知状況を把握する調査」は、消費者のみならず事業者に対しても実施すること。
  6. 食品表示に関する監視体制をより一層強化すること。
  7. 別表第十五に追加する品目を選定する場合の基準を明確化し、公表すること。
  8. 国別重量順表示と例外表示がどの程度の割合で存在するかを定期的に検証すること。
  9. 経過措置期間終了後、理解度等に関する調査を実施し、その結果を公表すること。
  10. 経過措置期間終了から2年後を目途とし、必要に応じて制度の見直しを実施すること。

【諮問された食品表示基準案のうち、修正・追加を行うべき内容】(全文引用)

(1)第3条第2項表1の五イの(ロ)

一定期間使用割合が5パーセント未満である対象原材料の原産地について、当該原産地の表示の次に括弧を付して、当該一定期間使用割合が5パーセント未満である旨の表示を義務付けるが、第3条第2項表1の四の規定に基づく「その他」の表示に対しては、当該表示を義務付けない。

(2)施行期日、経過措置、今般の基準改正による原料原産地表示の対象とならない製品の範囲

施行は今回の食品表示基準の一部改正に係る公布の日からとし、経過措置期間は府令の施行の日から平成34年3月31日までとする。また、今回の食品表示基準の一部改正にかかる施行の際に加工食品の製造所又は加工所で製造過程にある加工食品は、従前の食品表示基準の例によることができる。

まとめ


 その他、答申では付帯意見としていくつか追記がなされています。義務表示が増えているのでインターネットでの表示の活用の検討をという意見と、また海外商取引への影響の懸念について、そして分かりやすい基準案とQ&Aへの要望がありました。
 全体的にみたときの大きな変更点は、「経過措置期間が平成32年3月31日から、平成34年3月31日へと延期された」点であり、その他の詳細な情報(例外表示の判断基準や根拠資料の保管ルールなど)については、Q&Aを待って確認することになります。これで一連の検討会が終わり、この夏には正式に制度改正が施行される予定です。
 実務上では、とりわけ「根拠資料の保管」がポイントになりますので、まずは手元の規格書などの情報整理と、情報管理体制の見直しを進めていくことが大切になると思います。

加工食品の原料原産地表示の拡大について7~パブリックコメントの結果が公表されました~

2017年6月8日、消費者委員会食品表示部会が開催されました。2017年4月25日まで意見募集した原料原産地表示制度改正に関するパブリックコメントについて、集計結果をもとにした審議が行われています。主な内容としては、「経過措置期間」は5年程度が適当であるといった議論がされました。(その後6月29日開催の同部会において、経過措置期間を2022年3月末までとする諮問案が提出されました。パブリックコメント前の案では2020年3月末までとされていたことから、2年延長された形になります。)

寄せられた意見


今回の改正案に対し、寄せられた意見総数は8,715件でした。うち「おにぎりののり」に関する意見だけで3,000件以上あるのですが、2014年8月に意見募集された「食品表示基準(栄養成分義務化やアレルゲン、添加物表示、製造所固有記号等の改正)」に対する意見総数が4,329件であったことを考えると、今回の原料原産地表示制度の改正はやはり関心の高いテーマであるといえるでしょう。
意見募集の結果をまとめた「主な意見の概要と意見に対する考え方」を見ると、賛成意見の多くは同じような内容に集約されていますが、反対意見には様々な内容があることがみてとれます。また原料原産地制度の改正案に対して誤解されている意見も少なくなく、やはり複雑な制度であることを、あらためて感じさせられます。

変更点のポイント


今回の意見募集結果を受け、消費者庁より変更案が提示されています。大きく4点ありますので、順番に見ていきましょう。

  1. 「可能性表示」の呼称について
  2. 過去の産地別使用実績の期間の取り方について
  3. 経過措置期間について
  4. 消費者への普及・啓発について

『「可能性表示」の呼称について、「又は表示」という呼称も使用することとする』

“「可能性表示」などの表示方法の呼称は、法令に基づくものではなく、従来から、産地として複数の国の使用可能性がある点に着目して、「可能性表示」という名称で呼ばれていた。”
“「可能性」という言葉により、表示されている産地以外のものが使用されているかもしれないと消費者が誤認しないよう、「又は」でつないでいる産地のみを使用していることを明確にするため、「又は表示」という呼称も使用することとする。”

寄せられた意見に「改正案に基づく表示では一つの商品に対して複数の表示が行われるが、消費者がこれらの表示の意味を理解できないようであれば、周知、徹底を十分に行い、理解を深めたのちに実施すべき。」「可能性表示では、実際に自分が購入したいものが、本当はどこの産地なのか特定できない。」といった声が多く、誤認を防ぐためにこのような見直しを検討していると思われます。

『過去の産地別使用実績の期間の取り方について、「製造年から3年前の1年」も可とする』

“可能性表示及び大括り表示を行う場合の過去の産地別使用実績において、実績の根拠を1年とする場合、「製造年から3年前の1年は不可」としたところであるが、パブリックコメントにおける意見等を踏まえ、製造年から遡って3年以内の中で、1年以上であれば、期間の取り方に制限は設けないこととし、「製造年から3年前の1年も可」とする。”

寄せられた意見に「過去データの蓄積・管理と包装フィルムの改版タイミングを考えると、運用が困難な局面が想定されるため、3年前単年も許可してほしい。」「可能性表示について、実績の場合では最低3年前、計画については計画から2年間は認めてほしい。」といった声が多く、実行可能性確保のためにこのような見直しを検討していると思われます。

『経過措置期間について、見直しを検討する』

“経過措置期間は、「食品表示基準の経過措置期間と同様、平成32年(2020年)3月末」としたところであるが、新制度への移行に漏れをなくす観点から、パブリックコメントにおける意見等を十分考慮した上で、最終的に判断する。”

寄せられた意見に「経過措置期間として、平成32年(2020年)3月末から、あと1~2年ほしい。原料原産地対象商品が多く、調査・システム対応・切替えなどを段階的に交換する必要がある。」といった声が多く、実行可能性確保のためにこのような見直しを検討していると思われます。

『積極的な普及・啓発活動に加え、表示制度の理解度調査を実施する』

“新たな食品表示制度について、消費者向けQ&Aを始めとする消費者への普及・啓発のために分かりやすい資料を作成し、説明の場も積極的に設け、理解促進を図ることとする。また、新たな食品表示制度がどれだけ消費者に理解されたか、継続的に食品表示に関する消
費者意向調査を実施し、理解度を調査・把握していく予定。”

寄せられた意見に「広く消費者に普及・啓発活動することが求められる。数年後に消費者の理解度を調査することを要望する。」「例外規定が設けられたことは、実行可能性を担保する観点からやむを得ないものと考えるが、今後、新たな基準の周知を事業者だけに委ねず、国においてしっかりと対応してほしい。」といった声が多かったことから、このような施策を検討していると思われます。

経過措置期間は2022年3月末までに変更


以上の件について、各委員の意見確認が行われました。ただし経過措置期間については具体的な議論が行われ、「5年程度が適当」と結論付けられたのち、6月29日の同部会において「2022年3月末まで」とされました。次回食品表示部会は7月12日に開催される予定です。ご関心のある方は引き続き確認されるとよいと思います。

参照:
消費者委員会食品表示部会 第40回食品表示部会議事録
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/040/gijiroku/

「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」について


 今月は、4月より検討会が始まった「遺伝子組換え表示」をテーマに取り上げてみたいと思います。

検討会の背景と概要


2017年4月26日、第1回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開催されました。同検討会では、遺伝子組換え表示制度について表示義務品目の検証結果と海外の表示制度等を参考に、事業者の実行可能性を確保しつつ、消費者が求める情報提供を可能とする制度設計の検討を進めることになっています。

現状の表示制度の整理


ここで、簡単に現状の表示制度を整理してみます。まず表示義務の対象となる品目は、食品表示基準別表第十六の「8作物(大豆(枝豆及び大豆もやしを含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ)」と、別表第十七の「8作物を原材料とした33食品群」、そして別表第十八の「高オレイン酸遺伝子組換え大豆及びこれを原材料として使用した食品等」です。別表は、“食品表示基準”を参照してください。

義務表示と任意表示を整理すると、次のような構造となります。加工食品については、その主な原材料について表示が義務付けられています。主な原材料とは、原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料の重量に占める割合が5%以上のものをいいます。製造時に水を添加した場合は、添加した水は原材料として換算しません。遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は、表示義務はありません。

「従来のものと組成、栄養価等が同等か」

  • 同等である

    • 「遺伝子組換えのものを分別し、原材料とするもの」・・・義務表示
      例:大豆(遺伝子組換え)等
    • 「遺伝子組換え不分別」・・・義務表示
      例:大豆(遺伝子組換え不分別)等
    • 「遺伝子組換えでないものを分別し、原材料とするもの」・・・任意表示
    • 「DNA・たんぱく質が検出不可」・・・任意表示
  • 同等ではない(高オレイン酸遺伝子組換え大豆及びこれを原材料として使用した食品等)・・・義務表示
    例:大豆(高オレイン酸遺伝子組換え)等

「遺伝子組換えでない」の表示は、分別生産流通管理が適切に行われていれば、一定(大豆及びとうもろこしについて5%以下)の「意図せざる混入」がある場合でも表示をすることができます。

「遺伝子組換え不使用」といった強調表示をする場合は、全ての原材料について分別生産流通管理が行われている必要があります。例えば、「ばれいしょ」と「大豆油」が使用されている食品について、「大豆油」は表示品目の対象外ではありますが、商品に「遺伝子組換え不使用」と表示する場合には、大豆油の原料の大豆が分別流通管理されていることを確認のうえ、「原材料名:ばれいしょ(遺伝子組換えでない)、大豆油(遺伝子組換えでない)」と表示することになります。また、対象農作物以外において「遺伝子組換えではありません」等と表示することは禁止されています。

なお、遺伝子組換え農作物は「安全性審査」で承認されたものだけが国内に流通する仕組みになっています。とりわけ輸入食品においては、使用されている原材料が安全性審査で承認されたものであるかどうかの確認業務が必要となります。

検討会での確認事項


遺伝子組換え表示の制度は、導入から約15年が経過しています。この間に、遺伝子組換え食品のDNA等に関する分析技術が向上している可能性や、遺伝子組換え農産物の作付面積の増加により流通の実態が変化している可能性があるとして、第1回目の検討会では現在の状況について整理がされました。

各種の資料が配布されましたが、検討課題を分かりやすく示すものを以下に引用します。

“大豆について、国際価格高騰の影響等により1998年と比べて2015年の輸入量が減少しているが、大豆、とうもろこし共に、1998年、2015年のいずれの時点でも、我が国の最大の輸入国は米国である。米国における遺伝子組換え農産物の作付面積割合は、大豆、とうもろこし共に、17年間で25%程度から90%以上に拡大している。”
“なたねについて、1998年、2015年のいずれの時点でも、我が国の最大の輸入国はカナダである。カナダにおける遺伝子組換え農産物の作付面積割合は、17年間で40%弱から90%以上に拡大している。”
“日本では、最終製品において組み換えられたDNA等が検出できない品目については、義務表示の対象外としており、韓国やオーストラリア等も同様である。EUでは、DNA等の検出の可否にかかわらず、表示が義務付けられている。
意図せざる混入率は、国によりそれぞれ異なっており、日本では5%、EUでは0.9%となっている。なお、米国については、現在のところ、詳細は不明である。”

DNA・タンパク質が検出できるもの DNA・タンパク質が検出できないもの 意図せざる混入率 表示義務の原材料の範囲
日本 対象外 5% 原材料の重量に占める割合が高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるもの
韓国 対象外 3% 全ての原材料
オーストラリア・ニュージーランド 対象外 1% 規定なし
EU 0.9% 規定なし

引用:「資料2 遺伝子組換え食品の表示制度をめぐる情勢」より

課題と今後のスケジュール


議論された内容のうち、今後の検討課題となりそうな箇所をピックアップしてみます。

  • 消費者にとって遺伝子組換え表示制度というものが十分に浸透していない
  • 「遺伝子組換えは使用していません」という任意の不使用表示のみが流通している
  • 遺伝子組換え食品の安全性についての情報や理解が十分でない
  • 意図せざる混入率の基準を引き下げることの影響はかなり大きい

今後、まずは消費者、製造や流通の事業者などからのヒアリングが予定されています。取りまとめは、今年度末(2018年3月末)を目途に行われるスケジュールですので、定期的に検討会の情報を確認のうえ、今後求められることを考える機会にできればと思います。

参照:遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html

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加工食品の原料原産地表示の拡大について6 ~パブリックコメントの募集が始まりました~

2017年3月27日、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見(以下「パブリックコメント」)募集が始まりました。同時に、「新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)」とするQ&A形式の資料案も公表されています。今回のコラムでは、これまでの「中間とりまとめ案」から新しく情報が追加された箇所についてまとめてみたいと思います。

頻繁な原材料の原産地の変更


中間とりまとめ案において「事業者の実行可能性については、頻繁な原材料の原産地の変更に伴う包材の切替え、煩雑な作業の発生等、事業者の負担について考える必要がある」とされていた「頻繁」の考え方に関して、新しい記載がされています。

「表示をしようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地切替えが行われる」、と具体的に「1年」とされました。これは可能性表示、大括り表示、そして可能性表示と大括り表示の併用においても同様の条件となっています。

一定期間の使用実績、一定期間の使用計画


中間とりまとめ案において「過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)」とされていた「一定期間」の考え方に関しても、新しい記載がされています。

「過去の産地別使用実績は、製造年から遡って3年以内の中での1年以上の実績に限ります。ただし、実績の期間が1年間の場合で、製造年から3年前の1年間のみを実績とすることは認められません」「産地別使用計画は、当該計画に基づく製造の開始日から1年間以内の予定に限ります」、と具体的に「1年間」とされました。

使用割合が極めて少ない産地


中間とりまとめ案において「使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は○○産と表示しないなどの表示方法を講ずる」とされていた「極めて少ない」の考え方に関しても、新しい記載がされています。

「使用割合が極めて少ないとは、5%未満を指します」「可能性表示をする場合には、過去の使用実績等における重量割合が5%未満の産地について、産地名の後ろに括弧を付して、「5%未満」などと表示します」、と可能性表示をする際の誤認防止の基準として具体的に「5%未満」とされました。

経過措置期間


中間とりまとめ案において「施行に当たっては、事業者の包材の改版状況も勘案して、十分な経過措置期間をおく」とされていた「経過措置期間」についても、今回言及がされています。

「平成32年3月末日までを経過措置期間としています。」

その他実務上のポイント


その他、実際に新しい原料原産地表示制度に対応すると想定して、実務上で検討しておいたほうがよいと思われる記載を抜粋していきたいと思います。

保管すべき根拠資料の例

  1. 産地が記載されている送り状や納品書等
  2. 産地が記載されている規格書等であって、容器包装、送り状又は納品書等において、製品がどの規格書等に基づいているのか照合できるようになっているもの
  3. 仕入れた原料を当該商品に使用した実績が分かるもの(製造記録や製造指示書など)など

根拠資料の保管期間

根拠資料等の保管期間は、その根拠を基に表示が行われている商品の

  1. 賞味(消費)期限に加えて1年間
  2. 賞味期限の表示を省略しているものについては、製造をしてから5年間とします。

使用計画に求められる合理性(合理的な説明ができない場合)

  • i) 「A国又はB国又はその他」と表示した場合で、計画期間中に結果としてA国、B国のどちらも使用せず、「その他」に含まれる国しか使用していない。
  • ii)「A国又はB国又はその他」と表示した場合で、計画期間中に結果としてA国、B国のどちらか一方を使用していない。など

「国内製造」とならない行為(輸入された中間加工原材料)

国内他社で「商品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」がなされ、それを仕入れて中間加工原材料として用いるような場合には、「国内製造」となります。
(「実質的な変更をもたらす行為」に含まれない行為の事例も記載があります)

業務用加工食品に必要な表示事項

  1. 最終製品において製造地表示義務の対象原材料となる業務用加工食品(最終製品中、重量順位第1位の原材料となるものなど)については、当該業務用加工食品の原産国名
  2. 輸入品以外の加工食品で、「製造」に該当しないような単なる切断、小分け等を行い最終製品となる業務用加工食品については、最終製品において原料原産地表示義務の対象となる原材料(当該業務用加工食品中、重量順位第1位の原材料など)の原産地名

自主的な表示(重量順位第2位、第3位等の義務付けられていない原材料)

義務表示と同様に一定の条件下で、「可能性表示」や「大括り表示」、「中間加工原材料の製造地表示」などを活用することができることとします。

その他多数ありますが、紙幅の都合によりこのあたりにとどめたいと思います。
なお、パブリックコメントの意見募集は2017年4月25日までです。事業者と消費者の双方にとって重要な改正内容と思われますので、パブリックコメント案について確認してみてはいかがでしょうか。

参照:
食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見募集の開始について(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html#public_meeting