2017年11月17日に第6回目、そして2017年12月18日に第7回目の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(消費者庁)が開催されました。「遺伝子組換え表示の表示方法」(以下の論点3と論点4)について、引き続き議論がされ、論点4の「遺伝子組換えでない」表示の要件について、少し動きがありましたのでここにまとめたいと思います。
これまでの検討について
前々回である第5回目(2017年9月27日)の検討会において、遺伝子組換え表示制度の在り方の検討に当たっての論点についてと、遺伝子組換え表示の表示義務対象範囲の考え方について、議論がされています。その論点に沿って、これまでの議論のまとめを整理すると次のようになります。
1.表示義務対象範囲
- 論点1 表示義務対象品目の検討
⇒現状の制度を維持する- 論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討
⇒現状の制度を維持する2.表示方法
- 論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
⇒不分別の区分は残した方がよい
⇒『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示- 論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
⇒意図せざる混入率の引き下げは、まとめるのは難しい(次回検討)
⇒『遺伝子組換えでない』表示の要件は、厳しくしていく方向(次回検討※)
(※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)
上記のように、論点1から3までは現状の制度を維持する議論となりましたが、論点4については、何らか制度の変更について検討されていることがうかがえます。
「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示について(論点3)
消費者庁より提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。上記のとおり、こちらは「不分別の区分は残した方がよい」「『不分別』のより分かりやすい表現はQ&A等で例示」とまとめられています。
(1)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示内容を改める方法が想定されるが、どう考えるか。
「遺伝子組換え不分別」に代わる表示の使用
- 「遺伝子組換え不分別」表示に代わり、より実態を反映した分かりやすい表示とする。
- 「遺伝子組換え不分別」の実態を反映したあらかじめ定めた複数の表示から選択して表示できるようにする。
(2)消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示とするための方法として、例えば以下に示すような表示の区分を改める方法が想定されるが、どう考えるか。
「遺伝子組換え不分別」の廃止
- 「遺伝子組換え不分別」の区分を廃止し、「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換えでない」の2区分に整理する。
「遺伝子組換えでない」表示の要件について(論点4)
同じく提出された「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」は、以下のとおりです。
(1)混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、以下のような問題点について、どう考えるか。
- スタック品種の増加により混入率の正確な把握が難しくなる中、監視の観点から、混入率を確認するための精度が担保された実効的な検査方法を策定することが必要である。
- 混入率の引下げに伴って、より厳しい原材料管理を行う場合、原材料のコストが上がる可能性がある。また、原材料を必要量確保できなくなる可能性もある。
(2)「遺伝子組換えでない」表示が認められる混入率を引き下げることで、正確性が担保された「遺伝子組換えでない」表示となり、消費者の誤認を回避することに資すると考えられるが、どう考えるか。
混入率 想定される表示 5%超 「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示) 5%~α% (「遺伝子組換えでない」旨の表示は不可) α%以下 「遺伝子組換えでない」である旨(任意表示)
(1)の混入率引き下げについては、上記の案にあげられている問題点(実効的な検査方法、原材料コストの上昇)の議論があり、第7回目の検討会ではまとめられず次回での検討となりました。(2)の「遺伝子組換えでない」表示の要件については、全体的には厳しくしていく方向で議論が進められています(※追記:第8回目検討会において「不検出」の場合のみ認める方針となりました)。この場合、検査方法の問題から「遺伝子組換えでない」表示は市場からなくなるといった見解がありました。そして同時に、分別流通などこれまでの事業者の努力への配慮についても議論されています。
今後の予定
次回検討会は2018年1月31日の予定です。最終的なとりまとめは年度末(2018年3月ごろ)になる見込みですので、またコラムでとりあげたいと思います。
検討会資料は、多くの食品を輸入に頼っていることと、その管理の難しさについて考えさせられる内容です。お時間のある方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。
遺伝子組換え表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/genetically_modified_food.html
遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_171218_0002.pdf