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川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

食品のインターネット販売における情報提供について

 2016年末に、消費者庁より「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会報告書」が公表されました。報告書内では提言もなされていますが、消費者や事業者に対する調査の結果などが掲載されており、今後の食品製造販売の参考にできると思います。原産地表示のような義務化の話題とは異なり、こうした「任意」の表示については忙しいと検討する時間を確保しにくいものですが、その分、差別化を考えるうえでのヒントになる可能性もありますので、こちらで取り上げたいと思います。

懇談会の背景と提言の概要


 まず懇談会の背景は、主には「インターネット等を利用して食品を購入する場合、食品自体は遠隔地にあるため、消費者は購入時にラベル表示を確認できない」ことによります。

 そして全10回の開催を経て「事業者は、消費者が購入時に食品の義務表示事項と同等の情報の内容を確認できるような環境を整備することを目標としつつ、『情報提供の促進のための取組』を参考に、段階的に情報提供の取組を推進し、義務表示事項に係る情報提供を拡大していくことが望ましい」等の提言がなされました。

統計情報と主な調査結果


 参考にするべき「情報提供の促進のための取組」は結論にとっておくとして、その前に国内の統計情報と、主な調査結果を抜粋したいと思います。

【総務省の統計情報】

  • 「ネットショッピングを利用した世帯(二人以上)の世帯全体に占める割合」は24.8%(平成26年)
  • 「一世帯当たり1か月間のネットショッピングの消費額(二人以上の世帯)」は9,138円(平成27年)
  • 「ネットショッピングの支出額に占める主な項目の支出額の割合(二人以上の世帯)」の内、「食料」は11.8%(平成27年)

【主な調査結果】

  • 義務表示事項に係る情報を重視する消費者は1割程度であるが、インターネット販売で食品を購入したことがある消費者の9割程度は、購入時に何かしらの義務表示事項に係る情報を確認している。

    • 食物アレルギーで食事に留意が必要な場合は、「アレルゲン」を特に確認。
    • 初めて購入する場合は、「原産地」や「製造者」、「消費期限・賞味期限」を特に確認。
    • 毎回購入する食品をすぐに欲しい場合はあまり確認しない。
    • 缶詰などの生鮮に近い加工食品は「原材料」を特に確認。
    • 冷凍食品、レトルト食品、スナック菓子では「栄養成分表示」を特に確認。
  • 「利用しているサイトを選んだ理由」に対し、「提供されている義務表示事項に係る情報が多いから」を選択した者は、週1回以上の利用者では37.4%、月1~3回では21.2%、月1回未満では15.9%。
  • インターネットでの食品の購入経験がない消費者に対し、購入のためにインターネット販売のウェブページ上で提供してほしい義務表示事項に係る情報を問う設問には、「消費期限・賞味期限(同等のものを含む)」(74.4%)、「原材料」(73.4%)、「原産地・原料原産地」(70.7%)の順で多く回答。

情報の更新に係る課題


 以上のように、一言で言えば「実際の食品ラベルと同じ内容を、同じ記載方法で掲載する」ことが最善と言えるのですが、「情報の更新」という大きな課題があります。サイトに掲載されている情報と、実際に発送される商品の情報とが一致しているかどうかを管理することです。実際にインターネットで食品を販売されている方は実感があることと思いますが、報告書にも整理されていますので抜粋してみました。

  • 製造者から伝達された義務表示事項に係る情報を全てウェブページで提供しているかについては、提供「していない」が4割程度存在しており、その中には、ウェブページの情報を最新に保つことが困難であるとの理由から、製造者から伝達された情報を提供していない事業者が存在する。
  • 取引開始時に伝達された情報に、その後、変更があるかどうかや、変更の可能性がどの程度あるか等は把握できていないので、直ちに対応できないこともある。また、食品の情報が変更された場合、製造者から流通業者まで情報が伝達される仕組みがそもそも不十分である等の事情がある。
  • 生鮮食品については、天候不順等によって、あらかじめ計画していた産地の商品が調達できない場合も少なくないということがあり、直前での情報の変更が生じることもある。

情報提供の促進のための取組


 以上の課題も踏まえ、「『情報提供の促進のための取組』を参考に、段階的に情報提供の取組を推進し、義務表示事項に係る情報提供を拡大していくことが望ましい」と報告されています。以下に、ポイントをお伝えしたいと思います。

取組のポイント

  • 対応できる義務表示事項に係る情報から順に取り組む。
  • 対応できる食品から順に取り組む。
  • 問合せ先をウェブページ上に記載する。
義務表示事項に係る情報ごとの提供方法例

  • 【保存方法】
      一目でわかるように、「冷凍」、「冷蔵」、「常温」の別についても情報を提供する。
  • 【消費期限/賞味期限】
      「必ず賞味期限が30日以上あるものを配送する」など、期限の情報を提供する。
  • 【内容量】
      重量に加えて1個当たりの目安となる重量を記載することや個数を併記する。
  • 【アレルゲン】
      義務7品目だけか、又は推奨まで含めた27品目かを明示して情報を提供する。

 アレルゲンなど安全性に関する情報については、「目立つように記載する」「必要十分な情報をコンパクトに分かりやすく掲載する」「別ページで一覧表を示している」などの工夫も報告されています。

 情報更新の課題に対する事業者の取組などもまとめてありますので、インターネットで食品を販売される方は、一度読んでおかれるとよいと思います。

出典:食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会報告書(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_26_161213_0002.pdf

2016年の主な食品表示ニュースと今後の予定

 あけましておめでとうございます。おかげさまでラベルバンク新聞も9年目となります。
本年もどうぞ、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
 さて昨年(2016年)も食品表示に関する様々な出来事がありましたので、こちらにまとめてみたいと思います。日ごろより食品表示の実務に携わる方は、新しい食品表示基準への対応等で忙しくされていると思いますので、こちらが改めて確認できる機会になればと思います。

昨年の主な出来事


2016年 3月 「食品表示基準について」の一部改正(第4次改正)(製造所固有記号の届出関連)
機能性表示食品の届出等に関するガイドライン 一部改正
4月 機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項 一部改正
機能性表示食品の届出書作成に当たっての確認事項 一部改正
機能性表示食品制度届出データベース 運用開始
製造所固有記号制度届出データベース 運用開始
不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律 施行(課徴金制度関連)
食品表示法における酒類の表示のQ&A 一部改正(製造所固有記号関連)
7月 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 運用開始
8月 「食品表示基準について」の一部改正(第5次改正)
(業務用加工食品及び業務用添加物の製造所固有記号の取扱い関連)
9月 生鮮食品の旧基準表示経過措置期間終了
10月 特定保健用食品に関する質疑応答集について 公表
11月 「食品表示基準について」の一部改正(第6次改正)
(安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法関連)
特別用途食品制度に関する検討会報告書 公表
加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ 公表
特定保健用食品の表示許可等について 改正
12月 食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会報告書 公表
「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」に係る説明会の開催
機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会報告書公表

 その他、亜塩素酸水の使用に関する改正が「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について(厚生労働省)」において公表されています(残留農薬基準値設定含め、昨年4月、6月、9月の3回)。また、「食品表示基準について(施行通知)」は昨年だけで3回改正されておりますので、手元の資料が古い場合は最新のものに差し替えておくとよいでしょう。なお、食品表示基準Q&Aについては、一昨年の12月に改正(第2次改正)があって以来、変更はされていません。

今後予定されていること


 そして今後予定されている食品表示関連の出来事についても、まとめてみたいと思います。

2017年 1月 「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」に係る説明会の開催
(2016年12月より引き続き)
2018年 4月 機能性表示食品制度見直し目途
(「施行後2年を目途に新制度の施行状況を検討」)
2020年 3月 「食品表示基準」の経過措置期間(加工食品、添加物)終了
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の使用期間終了
未定 加工食品の原料原産地表示制度の一部改正に伴う食品表示基準、Q&A等の改正
(経過措置期間に関する情報の公表含む)

 昨年、国内の出来事でもっとも影響が大きいと思われるものは、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」にて、「国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とする」と公表されたことではないかと思います。こちらの改正については公表後の現在においても各方面から様々な意見が出されているため、今後のパブリックコメントの結果によってQ&A等での記載に少なからず影響があるものと思われますが、引き続き注視が必要なテーマと考えています。
 
 ちなみに、海外でもこうした制度改正は実施されています。EUでは昨年12月に栄養成分表示の改正に関する猶予期間が終了し、中国でも昨年10 月に修正食品安全法実施条例案が公表されています。アメリカでは2018年7月までに、栄養成分表示に添加糖類が必要になるなどの改正がされています。それぞれの国民の関心にあわせて制度が改正されているとすれば、今、日本では原料の原産地に対して関心が高まっていると言えます。そして、なぜ関心が高まっているのかを考えてみることが大切だと思います。
 
 よりよい製品を製造し、より多くの人に食べてもらうためには、その製品の品質を正確に知ってもらうことが必要になります。そのための食品表示でもありますので、こうした制度改正に関する情報も把握しつつ、今、社会が求めていることは何なのかを考えながら、今後もこうした記事を書いていきたいと思います。それでは、今年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

加工食品の原料原産地表示の拡大について5 ~中間とりまとめが公表されました~

 2016年11月29日、消費者庁および農林水産省において、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」が公表されました。9月末の案から大枠は変わっていませんが、改めて情報を整理してみたいと思います。

義務表示の対象


【対象となる食品】

  • 国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とする。(※)

【対象となる原材料】

  • 製品に占める重量割合上位1位の原材料を義務表示の対象とする。

(※)対象とならない(原料原産地表示を要しない)場合は以下のとおり。

  • 食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合
  • 不特定又は多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合
  • 容器包装に入れずに販売する場合
  • 容器包装の表示可能面積がおおむね 30平方センチメートル以下の場合

義務表示の方法


  • 対象原材料の産地について「国別重量順表示」を原則とする。
  • 原産国が3か国以上ある場合は、現行ルールと同様、3か国目以降を「その他」と表示することができる。

 表示方法については、現行ルール(食品表示基準第三条「原料原産地名」の22食品群(別表第十五)の表示方法)と同じです。

(表示例)

名称 ポークソーセージ
原材料名 豚肉(カナダ、アメリカ、その他)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料

義務表示の例外1「可能性表示(「又は」表示)」


  • 使用可能性のある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法であり、過去の取扱い実績等に基づき表示されるもの。

(表示例)

名称 こいくちしょうゆ
原材料名 大豆(アメリカ又はカナダ又はブラジル)、小麦、食塩

※大豆の産地は、平成○年から2年間の取扱実績順

 一定の期間を通じて、使用割合が高いと見込まれる原産国名が上位に表示され、反対に、使用割合が少ないと見込まれる原産国名は下位に表示されることになります。

義務表示の例外2「大括り表示(「輸入」表示)」


  • 3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する方法。輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品(合計)と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示する。

(表示例)

名称 こいくちしょうゆ
原材料名  大豆(輸入、国産)、小麦、食塩

※大豆の産地は、平成○年から2年間の取扱実績順

 「輸入」と表示されれば、当該商品の重量順第1位の原材料には国産は使用されていない、「輸入、国産」と表示されれば、当該商品の原材料として、輸入と国産が混合して使用され、輸入の割合の方が多い、ということが分かります。

義務表示の例外3「大括り表示+可能性表示」


  • 過去の取扱実績等に基づき、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示できるとした上で、「輸入」と 「国産」を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できる。

(表示例)

名称 ポークソーセージ
原材料名  豚肉(輸入又は国産)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料

※豚肉の産地は、平成○年の取扱実績順

 想定されるケースは、「対象原材料について、3か国以上の外国から輸入するとともに輸入品と国産の割合が、製造の月単位、季節単位で変動する場合」となります。

義務表示の例外4「中間加工原材料の製造地表示」


  • 対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示する方法。中間加工原材料である対象原材料の原料の産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該原料名とともにその産地を表示することができる。

(表示例)

名称 清涼飲料水
原材料名 りんご果汁(ドイツ製造)、果糖ぶどう糖液糖、果糖

(表示例)

名称 清涼飲料水
原材料名 りんご果汁(りんご(ドイツ、ハンガリー))、果糖ぶどう糖液糖、果糖

 当初、「○○加工」が検討されましたが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、「○○製造」として、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示することになりました。

義務表示に共通する事項


【誤認防止】
使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は○○産と表示しないなどの表示方法を講ずる。等

【書類の備置き】
事業者は、例外表示の際に表示内容が正しいことを確認できるよう、過去の使用実績等の根拠となる書類の備置き等を必要とする。

【おにぎりののり】
のりは重量が軽く重量順1位の原材料にはならない。一方、のりの原料原産地は、消費者の商品選択の上で重要な情報と考えられ、義務表示の対象とする。

【経過措置】
パブリックコメント等により広く国民の声を聞くものとし、施行に当たっては、事業者の包材の改版状況も勘案して、十分な経過措置期間をおく。

 既に原料原産地表示が義務付けられている 22 食品群と4品目に該当する商品や、米トレーサビリティーの対象の商品を除けば、ほとんどの加工食品で原材料表示欄の変更が必要になると思われます。
 特に過去実績などの把握をしなければならない場合には、原材料規格書管理に期間の視点が必要となります。原材料の産地が頻繁に変わる商品を取り扱いの方は、現在の規格書管理の運用について改めて検討する機会にするとともに、今後の施行まで制度に関する情報を確認されておくとよいと思います。

参照:加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html

機能性関与成分の取扱い等について ~エキス(抽出物)等も対象成分に~

 2016年10月18日、消費者庁において「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取り扱い等に関する検討会」の第10回目が行われ、新しく「エキス(抽出物)等、関与成分は明確でないが機能性が担保されているもの」についても制度の対象とする案が提示されました。ニュース等で概要はご存じでも、忙しくて内容まで目を通せていないという方に向け、以下に制度案をまとめてみたいと思います。

機能性関与成分に関する考え方の整理

機能性関与成分、及び指標成分を以下のような整理とする。

  • 機能性関与成分:新たに、機能性の科学的根拠が得られたエキス(抽出物)等を追加。
    ただし、少なくとも1つの指標成分で作用機序が考察されているもの。
    指標成分:機能性関与成分の同等性を確保するための指標であり、エキス(抽出物)等に含まれる成分。
  • 機能性関与成分名については、基原を入れた名称とすること。

対象となり得る区分・範囲について

  • 対象食品としては、現行のガイドラインどおり、食品全般を対象とする。
  • 新たに機能性関与成分の対象となり得る成分は、エキス(抽出物)等とする。
    ※エキスとは、基原原料を抽出し、濃縮したもの。
    (参考)「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」
    (平成27年12月25日付け薬生審査発1225第6号)
  • ただし、栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物等)を多く含むエキス(抽出物)等、
    及び菌(原生生物を含む。)由来のエキス(抽出物)は除く。

機能性関与成分の考え方について

  • 現行ガイドラインの機能性関与成分の考え方を示した記載部分につき、以下の修正を行う。
    1. 表示しようとする機能性に係る作用機序について、in vitro試験及びin vivo試験、又は臨床試験により考察されているものであり、直接的又は間接的な定量確認及び定性確認が可能な成分である。ただし、エキス(抽出物)等を機能性関与成分とする場合、表示しようとする機能性に係る作用機序について、少なくとも1つの指標成分について、in vitro試験及びin vivo試験、又は臨床試験により考察されているものであり、指標成分についての定量確認及び定性確認を行う必要がある。
  • また、定量確認及び定性確認が可能な成分の考え方の例を示している別紙1について、4つ目の分類として、以下の追記を行う。
  • エキス(抽出物)等である場合
    エキス(抽出物)等としての例: ○○エキス、××エキス
    (品質保証に、指標成分の定量確認だけでなく、形態学、分析化学(指標成分の定性的なパターン分析等)、分子生物学等の観点からの基原の保証が必要である。)

品質管理について(食品中の機能性関与成分等の分析に関する事項)

<指標成分について>

  • 以下の要件を満たすように指標成分を設定する。

    1. 複数の成分を設定できること。
    2. 基原等に特徴的な成分であること。ただし、機能性関与成分の対象外の栄養成分でないこと。
    3. 少なくとも1つの指標成分については、エキス(抽出物)等の機能性に係る作用機序について、in vitro試験及びin vivo試験、又は臨床試験により考察されている成分であること。

<定性確認>

  • 原材料として用いるエキス(抽出物)等及び最終製品のそれぞれにおいて定性確認を行う。
  • 定性確認に求められる事項としては、エキス(抽出物)等の規格の設定、ロット内及び複数ロットでの分析の実施を行う。

<定量確認>

  • 現行のガイドラインと同様、最終製品における定量分析の実施を行う。
  • 最終製品における指標成分の分析方法の妥当性の検証を行う。
  • ロット内及び複数ロットでの分析の実施を行う。

その他、以下の案が提示されています。

  • 安全性の評価方法:エキス(抽出物)等の規格の評価、パターン分析等によるエキス(抽出物)等の同等性の評価、及び崩壊性試験及び溶出試験等による最終製品としての同等性の評価を必須とする。
  • 品質管理:食品のGMPの項目に加え、崩壊性試験や溶出試験、重量偏差試験等を行い、製造過程の管理方法を届出資料中に詳細に記載する。
  • 国の関与(情報公開):機能性関与成分であるエキス(抽出物)等の規格を開示する。
  • 国の関与(体制の整備):届出情報の様式やガイドライン、消費者庁の体制を整備した上で、エキス(抽出物)等を機能性関与成分とする届出を可能とする。また、事後チェックの仕組みを充実させていく。

 ほとんど検討会資料のまま引用になりましたが…、いずれにしても、届出を検討される食品事業者にも消費者にも選択肢が広がることになります。「事業者の責任において科学的根拠を基に機能性を表示する」制度であることを再確認できる内容ですので、適切な品質管理と高い透明性を前提に、成分に特徴のある食品を扱う事業者がチャレンジできる場となればと思います。

参照:機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kinousei_kentoukai.html

加工食品の原料原産地表示の拡大について4 ~すべての加工食品対象、重量割合上位1位、原則国別重量順表示~

 2016年9月23日、消費者庁と農林水産省の共催による「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」の第9回目が行われ、今後の表示制度案が提示されました。第10回目として中間とりまとめ案が検討される段階まで来ていますので、制度の大枠についてはこの路線で進められるものと思われます。

原則は国別表示


特徴をあげると以下のようになります。

  • 国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とする。
  • 製品に占める重量割合が上位1位の原材料を義務表示の対象とする。
  • 国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とする。
  • 原産国が3か国以上ある場合は、3か国目以降を「その他」と表示することができる。

案では具体例もいくつか示されています。

名称 カレー
原材料名 牛肉(オーストラリア)、チーズ、ソテー・ド・オニオン、…(略)
名称 ポークソーセージ
原材料名 豚肉(カナダ、アメリカ、その他)、豚脂肪、たん白加水分解物、…(略)

国別重量順表示の例外について


 ただし、対象原材料の過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)からみて、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ、国別重量順の表示が困難であると見込まれる場合には「可能性表示」が認められます。(消費者の誤認が生じないよう、過去の使用実績等に基づく表示であることを容器包装に注意書きが必要。また、過去の使用実績等の根拠となる書類の備置き等が必要。)

名称 ポークソーセージ
原材料名 豚肉(カナダ又はアメリカ)、豚脂肪、たん白加水分解物、…(略)

※豚肉の産地は、平成○年の取扱実績順

 その際、3以上の外国の産地表示に関して容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、「大括り表示」として、3以上の外国産を「輸入」と括って表示することができます。

名称 ロースハム
原材料名 豚ロース肉(輸入)、糖類(水あめ、砂糖)、食塩
名称 こいくちしょうゆ
原材料名 大豆(輸入、国産)、小麦、食塩

 また、輸入と国産の重量順表示が不可能である場合には、「可能性表示」と「大括り表示」の組み合わせも可能となります。

名称 ポークソーセージ
原材料名 豚肉(輸入又は国産)、豚脂肪、たん白加水分解物、…(略)

※豚肉の産地は、平成○年の取扱実績順

 なお、対象原材料が中間加工原材料である場合には、その原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示することになります。

名称 清涼飲料水
原材料名 りんご果汁(ドイツ製造)、果糖ぶどう糖液糖、果糖

誤認の防止と根拠資料の準備が大切


 検討会で繰り返し議論されていたテーマは、「消費者に誤認を生じさせない」ことでした。今回の制度案は、消費者が原産地情報をより詳しく得ることができるようになるとの評価もある一方で、例えば「輸入又は国産」では分かりにくく誤認を与えかねない、と心配する声もあります。
 事業者の立場としては、そうした誤認や不安を生じさせないよう、基本的には原則である分かりやすい国別表示を志向することになると思います。ただ、取り扱い食品によっては、実行可能性の問題から可能性表示や大括り表示とならざるを得ないケースも多数でてくるものと思われます。
 その際には、容器包装に過去の使用実績等に関する注意書きをした上で、ホームページ等での情報提供を行うことで、分かりにくい面を補完することが望まれると思います。そして「過去の使用実績」等の証拠となる書類の備え置きが必要になりますので、現在の規格書管理業務のなかで、作業手順を整理しておくことが大切になるでしょう。

 また、「重量順表示」であることから、「使用割合」に関する誤認を生じさせないことも必要となります。具体的には使用割合が少ない場合についてですが、制度案では「使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、
又は、○○産と表示しないなどの表示方法を講じる」こととされています。同じ原材料の中での使用割合が頻繁に変わる場合は、その情報管理も大切になるといえます。

 改正にあたっては一定の移行期間を設けるとされていますが、何年何月など具体的な実施時期には触れられていません。検討会の今後として、11月2日に中間とりまとめ案が検討される予定となっていますので、関心のある方は検討会情報を確認されておかれるとよいと思います。

参照:加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会(消費者庁サイト)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html

「そしゃく配慮食品」の日本農林規格が制定されました


 2016年8月17日、「そしゃく配慮食品の日本農林規格(JAS規格)」が制定されました。以前より農林水産省の部会等で検討されてきた「新しい介護食品(「スマイルケア食」)」に、規格を設けてJASマークを表示することができるようになります。

4つの分類と定義


そしゃく配慮食品の定義は、以下のとおりです。

「通常の食品に比してそしゃくに要する負担が小さい性状、固さその他の品質を備えた加工食品(乳児用のものを除く。)をいう。」

そして、以下の4つの分類が定義づけられています。

容易にかめる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかみ切り、かみ砕き又はすりつぶせる程度のもの(適度なかみごたえを有するものに限る。)をいう。
歯ぐきでつぶせる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかめる食品と舌でつぶせる食品の中間程度のものをいう。
舌でつぶせる食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、舌と口蓋の間で押しつぶせる程度のものをいう。
かまなくてよい食品 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、かまずに飲み込める程度のものをいう。

かまなくてもよい食品を除く3食品には「一般に飲食に供される食品としての外観及び食味を有していること」が要件とされています。加えて、舌でつぶせる食品とかまなくてよい食品の2食品には「著しい離水がないこと」の要件が必要とされ、4つの食品すべてに「付着性及び凝集性が適度であること」が必要とされます。

表示の方式


 そしゃく配慮食品においては「表示の方式」が定められており、以下の表示を「容器または包装の見やすい箇所」に表示することとなっています。

  • 容易にかめる旨、歯ぐきでつぶせる旨、舌でつぶせる旨、かまなくてよい旨
  • 調理方法(食品表示基準で調理方法の表示義務が規定されているものを除く)
  • 内容量または固形量および内容総量

 文字ポイントの規定までは記載がありませんが、「そしゃく配慮食品」の特性を考えると、読みやすい大きさでの表示が望ましいと思われます。ここで、そしゃく配慮食品の農林規格が制定された背景である「新しい介護食品(スマイルケア食)」について整理してみたいと思います。

スマイルケア食とは


[背景]

  • 65歳以上の高齢者人口は、平成14年度の2,363万人から平成24年度の3,074万人へと約1.3倍に増加し、今や4人に1人が65歳以上の高齢者となっている。
  • 高齢者の中には、きちんと食事をとらない為にエネルギーやタンパク質などが不足し、体重の減少、食欲減退、だるい、歩けなくなるといった症状が起きてくる「低栄養」状態になってしまう方も多くいる。
  • そこで役立つのがスマイルケア食(新しい介護食品)。見た目も美しく、おいしく食べられる。

[対象者]

原則、在宅の高齢者や障がい者の方であって、

  • 食機能(噛むこと、飲み込むこと)に問題があることから栄養状態が不良
  • 食機能に問題があるが、本人又は介護を行っている方の食内容や食形態の工夫により栄養状態は良好
  • 食機能に問題はないが、栄養状態が不良

+上記に移行する恐れのある人

[内容]

  • 単品としての加工食品(レトルト食品など)
  • 個々の食品が組み合わされた料理
  • 料理を組み合わせた一食分の食(配食サービス、宅配食など)

[対象外]

  • 治療食
  • 病院食
  • 形状がカプセル、錠剤のもの

(参照:農林水産省ホームページ「スマイルケア食」)

 スマイルケア食は、「美味しさ」や「食べる楽しみ」への配慮を要件としており、今後普及を推進していくとされています。今年2月からは「青マーク」と呼ばれる分類(医師等の指導のもと摂取)マークの運用が始まっており、すでにいくつかの商品において、マーク利用の許諾を受け販売されています。
 今回のそしゃく配慮食品の農林規格は、医師等の指導によらず消費者自身が選択できる商品分類(赤マーク、黄色マーク)の規格として制定されたものといえます。高齢者向けの食品等を扱う事業者の方、今後そうした食品を扱うことに関心のある方は、一度情報を確認してみてはいかがでしょうか。

参照:そしゃく配慮食品の日本農林規格
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/kikaku_itiran-7.pdf
スマイルケア食(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html

インターネット通販と食品表示について

 こちらも消費者庁検討会情報(「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」)を参考にしていますが、第7回目(8月10日開催)の資料が興味深かったので、こちらでご紹介しようと思います。

消費者側の意見(ヒアリング)


  • インターネット販売においても、食品表示法で規定されている表示内容と同等の情報を提供してほしい。
  • インターネット販売においても、義務表示事項と同等の情報が提供されることを望むが、全ての食品について確認しているわけではない。
  • インターネット販売は、注文から手元に届くまでに時間が生じることから、消費期限・賞味期限の情報が特に重要。
  • パソコン(サイト)とスマートフォン(サイト)の違いによって求める情報の内容に差異はない。

消費者側の意見(アンケート)


  • 義務表示事項に係る情報を重視して商品を選ぶ者は8.4%。
  • 購入する際に確認する義務表示事項に係る情報の内容は、「原材料」(41.9%)、「消費期限・賞味期限(同等のもの 含む)」(41.0%)、「原産地・原料原産地」(35.4%)の順に高い。 また、「特に確認していない」とする者は9.5%であり、何かしらの義務表示事項に係る情報を確認して購入する者が90% 以上を占める。
  • 自身が利用しているサイトを選んだ理由として、「提供されている義務表示事項に係る情報量が多いから」とする者は 21.1%。
  • 必要とする義務表示事項に係る情報が提供されていなかった場合、何かしらの方法で確認する者は59.0%、確認しない者は41.0%(確認しないが購入する18.4%、確認もしないし購入もしない22.6%)であった。 また、自分が必要とする義務表示事項に係る情報を何かしらの方法で確認する者において、その方法で情報を確認できなかった場合には、そのサイトでは購入しないとする 者が76.8%に上る。なお、そのサイトでは購入しないとする者のうち、73.8%は 別の手段を用いて購入し、26.2%は別の手段を用いても購入しない。

事業者の意見(ヒアリング)


  • ウェブサイト上に、掲載する義務表示事項に係る情報の方針を定めている場合がある。 (例:ラベル表示と同等の情報を掲載する、ラベル表示の一部の情報だけを掲載する等) しかしながら、情報の正確さを担保する観点等から、義務表示事項に係る情報をラベル表示のように掲載できない場合がある。
  • 消費者のニーズ(問合せ内容)を踏まえて、必要な情報を提供するように対応している。
  • 消費者から義務表示事項に係る情報の内容に関する要望はほとんどない。
  • ウェブサイト上に、義務表示事項に係る情報を掲載するための技術的な仕組み等が十分に整っていない。【お取り寄せ、ネットスーパー】
  • 食品のインターネット販売における義務表示事項に係る情報の内容等について、細か くルールが決められると、事業者の情報提供の自由度が下がってしまうおそれがある。 【お取り寄せ】
  • 自社製品と他社製品とでは義務表示事項に係る情報の取得量に違いがある。自社製 品の方が他社製品よりも情報量が多い。【ネットスーパー】
  • パソコンサイトとスマートフォンサイトの情報量に差異はない。【宅配、ネットモール】
引用:必要な情報の内容と必要な情報提供の方法(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/160810_shiryou2.pdf

 興味深いと感じるのは消費者側と事業者側の意見の対比と、それに対する事業者側の意見が業態により異なっている点です。
 この資料を読んでいただきたいのは、これから食品に関する事業を始めようとされる方や、新しくインターネットを使って販売をしようとされる方です。既にインターネット通販を始めている様々な業態の食品事業者が、既にできていることと、まだできていないこと、関心があること、関心がないことなど、様々な情報を得ることができると思います。

 事業者側へのアンケートも行われていますので、その結果も近く公表されるでしょう。自社商品を購入される消費者の意見も資料から確認できますので、あわせて読んでいくことで、今後の事業計画の参考情報にできるのではと思います。

 食品表示情報の掲載は、情報不足による離脱率を下げる守備的な役割かもしれません。ですが実際の事業者の対応を知ることで、比較優位のヒントを得ることができれば、強みに変えることもできるのではないでしょうか。

参照:食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index26.html

加工食品の原料原産地表示の拡大について3 ~検討の現状と海外の制度について~

 今年1月より開催されている「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」も、8月23日に第7回目を終えました。現状の義務表示対象は加工食品の一部(22食品群+4品目)ですが、今後はすべての加工食品にまで広げる方向で検討が進められています。

現状の整理


第6回目(7月26日)の検討会で、4つの論点が発表されています。

  • 表示の対象となる加工食品(表示可能面積30㎠以下、包装のない加工食品の扱い等)
  • 義務表示の対象となる原材料(製品に占める重量割合などの条件、冠表示の扱い等)
  • 義務表示の方法(以下に詳細)
  • 表示媒体(インターネットによる情報提供の扱い等)

 複数の原材料を使用する加工食品での原産地表示は容易ではない実態を考慮し、「表示方法」に関する課題の解決案を提示するなどして実行可能性を検討している段階です。

  1. 切替え産地を列挙する『可能性表示』
    A国産、B国産又はC国産の原料を使用する可能性がある場合
    ⇒原料原産地名:A国又はB国又はC国
  2. 「国産」・「外国産」又は「輸入」といった『大括り表示』
    A国産、B国産又はC国産の原料を使用する可能性がある場合
    ⇒原料原産地名:外国産
  3. 輸入中間加工品の 『加工地表示』
    A国で加工した中間加工品(原料の産地は不明)を使用する場合
    ⇒加工地:A国

ここまでは、今年3月に発表された内容のとおり進んでいると言えます。

韓国とオーストラリアの表示制度


 検討会の資料を定期的に確認されている方にとっても目新しい情報となるのは、海外の原料原産地表示制度ではないでしょうか。輸出の際に、特定の食品もしくは特定の原材料を使用した場合に原産国表示が必要となるケースはありますが、輸入食品を含めほとんどの食品に横断的に原産地表示を義務付けしている例は、少ないと言えます。輸出や進出を検討する方はもとより、今後の日本の制度がどのようになるのかをイメージするうえでも大変参考になる情報だと思いますので、概要をまとめてみます。

韓国

例1)漬け白菜70%[白菜98%(国産)、食塩2%]、大根(国産)、…
例2)○○チョコレート[白砂糖、植物性油脂(なたね油 オーストラリア産、パーム硬化油 マレーシア産)、混合粉ミルク(輸入産)、ココアパウダー、ピーナッツバター]、…

引用:韓国における加工食品の原料原産地表示制度(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160613_shiryou2.pdf

 「配合比率上位3位までの原料(※配合比率98%を基準に分岐あり)」を対象とする等、数値基準が日本の原料原産地制度と大きく異なります。また「商品名に強調表示した原料」も対象とする点や、「原産地が更に頻繁に変わる場合等は「外国産」と表示可」、「海外加工の中間加工品を使用した場合、中間加工地(原産国)を表示」など、今回の検討会の案どおりに改正された際のイメージとして参考になるかと思います(実際の商品は韓国語ですが)。

オーストラリア

<表示例>

(図:カンガルーロゴの下に帯グラフ(目盛図)、“60%”など国産原料使用割合の表示)

引用:オーストラリアにおける原料の原産地表示制度(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160726_shiryou2.pdf

 マークにより国内産原料の使用割合を視覚化している点が特徴です。優先食品にはこのマークによる表示が義務づけされ、非優先食品(調味料、菓子等)には原産国(製造国)表示が義務づけられます。主要原材料がオーストラリア産で、かつ製造過程も全てオーストラリアで行われる食品には、「Product of Australia」など、オーストラリアで実質的な変更が加えられ、かつ生産・製造コストの50%以上がオーストラリアに起因する食品には、「Made in Australia」など、国産原料使用の度合いを表示する制度であることが分かります。

原料原産地制度の目的


 原産地表示拡大に賛成の方もいれば、実際に拡大した際の実行可能性に困っている方もいるなど、同じ食品関連事業者とはいえ、様々な立場があります。今後の事業計画を考えるうえで、やはり大切なことは「目的」を再確認することだと思います。
 韓国は、「農産物、水産物又はその加工品等に対して、適正かつ合理的な原産地表示をさせることで、消費者の知る権利を保障し、かつ、公正な取引を誘導することによって生産者と消費者を保護すること」。オーストラリアは、「より明確で、矛盾のない、有益で確認が容易な食品の原産国表示を提供することにより、消費者が購入する食品について、個人の嗜好に沿って、より多くの情報に基づいた選択ができるようにすること」。
 そして日本の、今回の検討会で確認された目的は、「原料原産地表示は、消費者が食品を購入する際の合理的判断に資するために、消費者への正確な情報提供を行うもの。表示により安全を担保するものではない」です。
 今回の検討会の行く末に気をもむだけでなく、今後ますます進む国際社会において自社の食品表示をどのように考えればよいのか、そのヒントになる情報を得るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

参照:加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html

「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」が公表されました

 2016年6月30日、「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(以下「旧」)が、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(以下「新」)へ改定されました。タイトルだけ見ると“いわゆる”が外れただけに見えるのですが、実際の内容は「全部改定」です。主な変更点についてまとめてみたいと思います。

対象となる食品の定義


  • 旧:健康食品※から保健機能食品を除いた「いわゆる健康食品」が対象。
    (※健康保持増進効果、機能等を表示して販売されている食品(栄養補助食品、健康補助食品、サプリメントなど)全般を指すもの)
  • 新:健康保持増進効果等を表示して販売されている食品(「健康食品」)と、保健機能食品。

 「新」では、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)について、問題となる表示事例も含め対象に追加されました。またパブリックコメントへの回答には、生鮮食品も対象となる記載もあるなど、「健康食品」の定義がより明確にされていると言えます。

対象となる「健康保持増進効果等」の定義


 ここは、新旧で大きな変わりはありません。計13項目ありますが、食品表示のみでも確認できる留意事項は、主に(1)ア~エと、(2)エの5項目でしょう。
(2)のア~ウは、規格書などの確認が必要となります。(3)の例としては「ヘルシー」「体にやさしい」が、パブリックコメントの回答に言及されています。

(1)「健康の保持増進の効果」

  1. 疾病の治療又は予防を目的とする効果(例:医薬品の表示)
  2. 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果(例:医薬品の表示)
  3. 特定の保健の用途に適する旨の効果(例:特定保健用食品、機能性表示食品の表示)
  4. 栄養成分の効果(例:栄養機能食品の表示)

(2)「内閣府令で定める事項」

  1. 含有する食品又は成分の量(例:大豆○○gを含む、カルシウム○○mg配合)
  2. 特定の食品又は成分を含有する旨(例:プロポリス含有、○○抽出エキス使用)
  3. 熱量(例:カロリー○%オフ、エネルギー0kcal)
  4. 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果(例:美肌・美白効果が得られます、皮膚にうるおいを与えます)

(3)「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの

  1. 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
  2. 含有成分の表示及び説明により表示するもの
  3. 起源、由来等の説明により表示するもの
  4. 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話やアンケート結果、学説、体験談などを引用又は掲載することにより表示するもの
  5. 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する行政機関(外国政府機関を含む)や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの

禁止される表示


 「新」では、以下のような構造に整理されています。新しく「不実証広告規制」の項目が追加されていることからも、ここでの主な留意事項は⑴のア「優良誤認表示」であると言えるでしょう。健康に関する表示だけでなく、強調表示全般の確認業務においても非常に重要です。また、インターネット上の口コミサイトやブログ、アフィリエイトなどの用語も、新しく追加されています。

(1) 景品表示法上の不当表示

  1. 優良誤認表示
  2. 有利誤認表示

(2) 健康増進法上の虚偽誇大表示

  1. 事実に相違する表示
  2. 人を誤認させる表示
  3. 「著しく」

問題となる表示例について


 特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品についても、それぞれ問題となる表示例(3食品で計10項目)が具体的に記載されています。今回の改正では、もっとも印象的な変更点かと思います。

 例:特定保健用食品(「食後の中性脂肪の上昇を抑える」の許可表示に対し、「食後」という文言を省略し「中性脂肪の上昇を抑える」と表示することにより、効果が継続的にあるかのように表示すること)
 例:機能性表示食品(商品自体に機能があるとの根拠を有していないにもかかわらず、届出表示の一部を省略することにより、商品自体に機能性があるかのように表示すること)
 例:栄養機能食品(国が定める栄養成分以外の成分の機能を表示すること)
 
もちろん「保健機能食品以外の健康食品」についても問題となる表示例(7項目)が列挙されています。文書のタイトルは少し変わっただけですが、内容は大きく変わっていますので、新基準移行作業のパッケージデザイン点検のときの参考資料として改めて確認されるとよいと思います。

参照:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf
「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に対する御意見の概要及び御意見に対する考え方
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_7.pdf

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関連サービス

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輸入食品の「グルテンフリー」表示について


 2016年6月23日、消費者庁より「食品表示の適正化に向けた取組について」が発表されました。定例の監視指導と啓発活動の一環ですが、その項目のなかに「グルテンフリー」がありましたので、今回のコラムでとりあげてみようと思います。

表示の適正化等に向けた重点的な取組の概要


 消費者庁から発表されている表示に関する取組のうち、「輸入食品のアレルギー表示の徹底について」の概要は以下のとおりです。

近年、海外から米粉等を使用した「グルテンフリー」と表示された加工食品が輸入されているが、欧米諸国における「グルテンフリー」表示と、我が国における食品表示基準に基づくアレルギー表示とは基準が異なることに鑑み、原材料におけるアレルゲンの混入状況を十分確認の上、適切なアレルギー表示を行うよう啓発パンフレット(別添2)等を活用し、輸入者等の食品関連事業者に対し周知啓発を図る。

輸入業者への啓発内容について


 輸入事業者向けの啓発パンフレットも発表されています。内容は以下のとおりです。

  • EUやアメリカ等における「グルテンフリー表示」と、日本の「アレルギー表示」とは基準が異なります。
  • 原材料におけるアレルゲンの状況を十分確認のうえ、適切なアレルギー表示を行ってください。
  • 小麦アレルゲンを含む食品に「グルテンフリー」と強調した表示をしたときには、消費者が小麦アレルゲンが含まれていないと判断すると考えられることから、景品表示法等の規制上、問題となるおそれがあります。

EU・アメリカ等のグルテンフリー表示

  • セリアック病の人の商品選択に資する観点から、「グルテンフリー」表示が可能。表示する際は、グルテン濃度が20ppm未満。

国内のアレルギー表示

  • 食物アレルギーが、ごく微量のアレルゲンによって引き起こされることがあるため、小麦などの特定原材料を含む食品にあっては、原材料としての使用の意図にかかわらず、原則、当該特定原材料を含む旨を表示する必要がある。
  • 数ppm以上の小麦総たんぱく量を含む状況であれば、容器包装に小麦のアレルギー表示をしなければならない。
  • 混入の可能性が排除できない場合については、食物アレルギー疾病を有する者に対する注意喚起表記を推奨。

フリーと不使用は異なる


 パンフレットにはQ&Aも掲載されていますが、食品表示担当者向けの内容となっています。食品を輸入することが初めての方に向け、過去のコラム「アレルゲンフリーについて」より追記してみます。

 パッケージの文言を考えるときにおそらく分かりにくいのが、「フリー」と「不使用」の言葉の違いかと思います。この2つは厳密には異なる用語なので、その違いを知っておくことは事故を起こさないためにも大切だと言えます。「○○フリー」ではなく、「ある特定原材料(アレルゲン)を使用せずに作りました」といった表示については、食品表示基準Q&Aに、参考になる記載があります。

(E-22)特定の特定原材料等を使用していない旨の表示があれば、当該特定原材料等が含まれていないと考えてよいですか。
(答)「使用していない」旨の表示は、必ずしも「含んでいない」ことを意味するものではありません。

混入と製品分析


 また、パンフレット内にも記載のある「混入(コンタミネーション:表示例は「本製品の製造ラインでは、小麦を使用した製品を製造しています」等)」の問題も大切です。
「混入だから微量なのでは?微量だから体に影響ないのでは?」と考えることは正しくありません。実際に、混入した製品を分析してみると、数十ppm(数~十数ではなく)検出されることもあります。「意図せずして」混入しているため、その濃度のコントロールは難しいということだと思います。

 グルテンフリーのようなアレルゲンの強調表示をされる方にとっては、「混入(コンタミネーション)の確認」は大切です。そうした食品を必要とされる消費者に適切な情報提供ができるよう、原材料の再確認と定期的な製品分析など、安全について今一度考えてみる機会にできればと思います。

参照:食品表示の適正化に向けた取組について(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/160623_pressrelease_0003.pdf