機能性表示食品の制度が始まって2ヶ月。ようやく、売場に届出商品が並ぶようになりました。 届出情報も公開されていますが、一般消費者にとっては分かりにくい、などニュースでも何度か目にされているかと思います。
うちサプリメント:24 品
うち加工食品:19 品
(うち飲料:19 品)
うち生鮮食品:0 品
(2015年6月25日更新資料より)
今回は、その機能性表示食品を開発し販売する方向けに、簡単に内容をまとめてみたいと思います。
現状、届出情報が公開されている商品点数は44点で、 半数以上がサプリメント形状(錠剤、カプセル、粉末、ドリンク)であり、加工食品に分類されている商品はすべてが飲料です(酢を含む)。 つまりほとんどが特定保健用食品で販売されている商品の形状と似ている、というのが現時点での状況です。
このコラムの読者の多くである、菓子や加工食品を製造、販売、また輸入される方、農水産物や畜産物を加工される方が期待している生鮮食品や、地方名産のお土産品など加工食品などでの機能性表示 食品は、今のところまだありませんが、今後少しずつ増えるのではと思います。
「機能性表示」とは、なんらか体によさそうな表示のことですが、具体的な表現が必要になります。
× 「魚を食べると頭がよくなる」
○ 「 ( 試験の結果、本品は)(魚に含まれる)DHA( を1 日250mg 摂取すること)によって、正常な脳機能の維持に役立ちます」(EUの例)
機能性表示には、試験結果などの科学的根拠が必要です。試験の結果や論文をもとに、具体的な表現ができるということになります。下記は実際の国内の届出事例ですが、それぞれ最終製品での臨床試験によるものと、関与成分の研究レビューを科学的根拠としています。
「本品にはルテイン・アスタキサンチン・シアニジン-3- グルコシド・DHA が含まれるので、手元のピント調節機能を助けると共に、 目の使用による肩・首筋への負担を和らげます。」
「本品にはL?テアニンが含まれています。L?テアニンには夜間の健やかな眠りをサポートすることが報告されています。」
特定保健用食品で表示される機能よりも、幅が広がっていること、より詳細な内容の表示がされていること、などが見て取ることができます。このように、「うちの商品も機能性を表示しよう」と思った際は、「関与成分」「摂取量」「機能」が記載された試験結果などの論文が必要になります。
論文などの科学的根拠を用意できる場合、ここで重要になるのが、「同等性」です。 試験で使用された成分と量など、製品で使用されるものと同じ有効性と安全性をもっているかを確認することです。 量については含有量と製品での分析により確認しやすいのですが、難しいのが「成分」が同一であることを示すことです。 そのため、届出資料にも同等性についての考察が記載されています。公的な規格との一致から、パターン分析の結果による相同率まで、様々な方法によりますが、多いのは下記の視点での考察となります。
・試験で使用された形状(崩壊性など)は同じであるか
・試験で使用された成分と由来が同じであるか
・試験で使用された成分と配合(処方)は同じであるか
・試験で使用された試験食品と製造工程が同じであるか
・製品への配合の用途により試験で使用された成分から変質していないか
・試験で使用された成分と同じ分析方法で定量できるか
・その成分は製品中でも安定して存在するか(経時劣化はないか)
ここまでは、「論文と製品」間の同等性となりますが、今後、生鮮食品や加工食品のうち調理を必要とする商品が届出されると、 今度は「製品と摂取時」間の同等性についても考察が記載されるのではと思います。お客様でされる調理の内、例えば、水洗いの方法や、 茹で汁の扱いなど、成分減少が考えられるケースがあった場合、注意点を一般向けの資料に記載するなどが考えられます。 そのような商品が増えてきてからが、この機能性表示制度がもたらす新しい側面が始まるのではないかと思います。
【参考】消費者庁 機能性表示食品に関する情報
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
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