新しい食品表示基準といろいろな強調表示

By | 2015年12月1日

今月のコラムは、強調表示についてです。

ところでみなさんは、「糖類ゼロ」と「糖類不使用」の違いをご存知でしょうか?
一般消費者向けのコラムでよく見かけるテーマですが、製造の現場においても表示の切り替えに伴う混乱が少々みられるため、今回取り上げてみようと思います。

「糖類ゼロ」と「糖類不使用」


まずは基本の整理です。

「糖類ゼロ」は、製品に含まれる糖類の量が、一定の基準値未満である場合に表示できます。その基準値は、食品100gあたり0.5g未満(飲料の場合は100mlあたり0.5g未満)です。つまりその製品は、糖類を含んでいない(もしくはほぼ含んでいない)、という意味合いです。栄養成分分析をしても、糖類が検出されないか、基準値未満の結果となるものです。

「糖類不使用」は、製品の原材料として糖類を使用していない等の条件を満たす場合に表示できます。その製品は、糖類を使っていない、という意味合いです。つまり他の原材料に自然に含まれる糖類については、含まれる可能性があるということになります。例えば砂糖を使用しないでつくった果実飲料を分析しても、果実に含まれる糖類が検出されるでしょう。

新しい食品表示基準と強調表示


以上のように、「ゼロ」と「不使用」は異なります。

栄養成分に限らず、添加物やアレルゲンなどの原材料についても、同じことが言えます。特にアレルゲンは、特定の原材料を使用しないことが、特定の原材料が含まれないことを指すものではないため、「小麦フリー」や「小麦不使用」などの表示をする際には十分な注意が必要です。

ではなぜ改めて強調表示を取り上げているかの背景についてですが、新しい食品表示基準において、各強調表示(栄養強調、相対、無添加強調)の基準値やルールが変わっているためです。

まとめると、下記のようになります。

表1:強調表示の種類

栄養成分の補給ができる旨の表示できる旨の表示 栄養強調表示 多い 「高」、「多」、「豊富」、「たっぷり」等
含む 「入り」、「含有」、「供給」、「源」、「使用」、「添加」等
相対表示 強化 「○%アップ」、「○倍」等
栄養成分若しくは熱量の適切な摂取ができる旨の表示 栄養強調表示 低い 「低」、「控えめ」、「少」、「ライト」、「ダイエット」等
含まない 「無」、「ゼロ」、「ノン」、「フリー」等
相対表示 低減 「○%カット」、「○%減」、「○gオフ」等
糖類(またはナトリウム塩)を添加していない旨の表示 無添加強調表示 添加していない 「糖類無添加」、「砂糖不使用」、「食塩無添加」、「○○を使用していません」等

表2:強調表示の種類と変更点

栄養強調表示 相対表示 無添加強調表示
ルールには変更はないが、基準値に変更がある
・栄養強調表示の基準値の変更
・栄養機能食品の上限値、下限値の変更
ルールの一部に変更がある
・一部に25%以上の相対差の要件を追加
・一部に絶対差の計算方法の変更
ルール自体が新しく設置されている
・糖類またはナトリウム塩の無添加
・添加糖類または添加ナトリウム塩に代わる原材料の不使用
・食品の糖類含有量が原材料と添加物に含まれていた量を超えない

対応の基本は「原材料の管理」と「栄養成分の管理」


新しい食品表示基準のもとでは、「砂糖不使用」も「糖類を添加していない旨の表示」に該当します。

実際に砂糖を使用しない製品であっても、ジャムや濃縮果汁などを「添加糖類に代わる原材料」として使用している場合は、「砂糖不使用」と表示ができなくなることになります。レシピの変更があるときは、添加糖類に代わるものの使用の確認など、原材料の管理が重要と言えます。

また「糖類ゼロ」については旧基準からのルールや基準値の変更はありませんが、「糖類○%カット」など他製品と比較したうえでの表示を行う際は、相対差などルールに変更があるので注意が必要です。そしてこうした強調表示を行う際は、定期的な製品分析の実施などの管理が大切だと言えます。

なお、糖質については強調表示の基準値の規定がないため、事業者の責任で表示が可能です。「糖質ゼロ」であれば、食品の質量からたんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分量を除いて算出した結果が、0もしくは負の数値であれば糖質含量を0とできます。(食品表示基準施行通知より)無添加についても、規定がないため、事実であれば表示可能です。(食品表示基準Q&Aより)

何かを使用しない、もしくは含まないといった表示は商品の差別化にもなるものですが、表示の規則によることはもちろん、それ以上に原材料や栄養成分の情報管理をしっかり行うことが大切だと思います。 


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
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