地理的表示「GIマーク」の運用が始まりました。

By | 2015年8月1日

2015年6月より運用が開始され、7月17日に最初の登録申請内容が公示されました。
第1号は「夕張メロン」です。
このGI マークは「地理的表示保護制度」によるもので、農林水産省への申請と審査により登録された地理的表示に対し、その基準を満たす商品(生鮮食品、加工食品を想定)にマークを使用できるものです。

「地理的表示保護制度(GI)」の大枠


(出典:地理的表示及びGI マーク の表示について(農林水産省))
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/gi_mark/index.html

「地理的表示保護制度(GI)」の大枠は下記の通りです。

1.「地理的表示」を生産地や品質等の基準とともに登録。
⇒産品の品質について国が「お墨付き」を与える。

2.基準を満たすものに「地理的表示」の使用を認め、GI マークを付す。
⇒品質を守るもののみが市場に流通。GI マークにより、他の産品との差別化が図られる。

3.不正な地理的表示の使用は行政が取り締まり。
⇒訴訟等の負担なく、自分たちのブランドを守ることが可能。

4.生産者は、登録された団体への加入等により、「地理的表示」を使用可。
⇒地域共有の財産として、地域の生産者全体が使用可能。

(出典:地理的表示保護制度(GI)(農林水産省)より引用)

やはり「3」の取り締まりがあること、そしてその対象はGI マークだけでなく「表示」まで含まれることで、登録された地域ブランドの保護の実効性が高められている点がポイントかと思います。GI マークについては複数国で商標出願・申請しているため、海外に輸出される商品も取り締まりの対象となるとのことで、将来的には有機(JAS)マークのような相互保護の枠組みづくりが進むのではと思われます。ちなみにEU では、ハムやチーズなどで地理的表示保護(GI)マークのある製品がよくみられるようですので、 一度旅行の際に観察されると参考になるのではと思います。登録を受けた場合は9 万円の登録免許税が必要ですが、一旦登録されると登録が取り消されない限りは存続し更新等の手続は不要ですので、多くの地域産品が申請するのではと思われます。気になる「生産地」の範囲ですが、 地域産品と品質等の特性と「結び付き」が認められれば、生産地に含めることが可能とのことですので、 詳しくは農林水産省のホームページをご確認ください。

また注意点ですが、ある地理的表示が登録を受けた場合、下記の表示はできなくなります。

      1: 登録を受けた地理的表示と同一の表示
      2: 登録を受けた地理的表示と類似する表示

つまり「夕張メロン」が登録された場合は、その基準を満たさないものに「夕張メロン」もしくは類似の表示をしてはいけない、 ということになります(当たり前のことではあるのですが…)。これにより、「生産量よりも流通量が数倍多い」といった課題の解決策の1 つとなるのではと思いますし、また同時に食品表示の実務担当者にとっては「特色のある原材料(食品表示基準)」の判断基準が1 つ増えることにもなりますので、これまでよりも食品表示確認の作業工程が一部明確になるという点で、詳しく知っておきたい制度の1 つであると言えると思います。

【参考】地理的表示保護制度(GI)(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/index.html


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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