今回のテーマは製造所固有記号の続きです。
筆者はときどき講演をするのですが、聴講者の関心がもっとも高いテーマの1つと感じています。本当は添加物やアレルギーなどについて書きたいのですが(原材料規格書の計算や翻訳といった仕事が中心ですので・・・)、それはまた次回以降にしようと思います。
さて、新しい食品表示基準(新基準)のもとでは、「原則として同一製品を二以上の製造所で製造している場合」にのみ、製造所固有記号が使えることになりました。その場合、製造者と製造所所在地についての問い合わせに対しても応答する必要がありますので、今回はそれをまとめてみます。
旧基準との比較
旧基準においても、製造所固有記号を使う場合は、消費者からの問い合わせに対し製造者と製造所所在地について対応する必要性はありました。
参照:製造所固有記号に関する手引きQ&A(消費者庁)
ただ、消費者からすれば「どこに問い合わせればよいのか」がいまひとつ分かりにくく、そのため事業者も備えが十分でない実情があったと思います。
これに対して、新基準ではその問い合わせ先を「表示」することになりました。
今回の改正のなかでは、消費者から見ると分かりやすいメリットといえると思います。新基準に記載された規則は、以下のとおりです。
1. 製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称の情報の提供を求められたときに回答する者の連絡先
2.製造所固有記号が表す製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称を表示したウェブサイトのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)
3.当該製品を製造している全ての製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称及び製造所固有記号
参照:食品表示基準(P20)
消費者からみる製造所固有記号
つまり消費者は、パッケージの食品表示に記載された製造所固有記号(例:+ABC)について、その付近に表示されている電話番号等から製造者と製造所所在地をすぐに知ることができるようになります。
? 表示
・食品にお客様ダイヤル等の電話番号が表示されていれば、その連絡先に問合せを行うこと
・食品にウェブサイトアドレスが表示されていれば、当該ウェブサイト等にアクセスして確認すること
・食品のパッケージに製造所の所在地等一覧が表示されていれば、パッケージに表示された製造所固有記号と照合すること
? 消費者庁の製造所固有記号制度届出データベースで検索する
参照:食品表示基準Q&A(固有記号 – 12)
応答義務について
右記のように、製造所固有記号を使う事業者の立場としては「表示されている電話番号に製造者や製造所所在地に関する問い合わせがあれば、回答しなければならない」といった変化が生じることになります。これまで表示されていたお客様相談室等での回答ではなく、別部署からの回答をしていた場合は、FAQリストを更新する必要性などが想定できるでしょう。
また「何をどこまで回答するか」についても、食品表示基準Q&Aに記載されています。
参照:食品表示基準Q&A(固有記号 – 14)
具体的な表示方法
ではどのように表示すればよいのか、その具体例も食品表示基準Q&Aに記載されていますので、代表的な例をこちらにあげてみます。
名称 | |
---|---|
原材料名 | |
添加物 | |
内容量 | |
賞味期限 | |
保存方法 | |
製造者 | ●●株式会社+Aa 東京都千代田区霞が関■?■?■ お客様ダイヤル0120(○○)○○○○ 当社ウェブサイトアドレス http://www.・・・・・ |
参照:食品表示基準Q&A(固有記号?17)
その他二次元コード(QRコード)や、固有記号別に製造者と製造所所在地を列挙する方法なども具体的に事例が記載されていますので、一度確認をしておかれるとよいと思います。
製造者と製造所所在地を簡単に確認ができるようになることを、特に事業者側は気にかけていることも多いでしょう。ただそれは、「消費者が何に不安を感じて、製造者と製造所所在地を確認したいと考えるのか」、今一度考える機会でもあるのではと思います。
参照:製造所固有記号に関する手引きQ&A(消費者庁)http://www.caa.go.jp/foods/qa/seizousho_qa.html
食品表示基準 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf
食品表示基準Q&Ahttp://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_qa-togo.pdf
食品表示基準について(施行通知)
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
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