今回のコラムは、機能性表示食品についてです。読者のみなさんは、加工食品の製造や販売をされている方が多いと思います。機能性表示食品の届出をされている方は少ないと思いますが、いろいろと注目されている制度ですので、現状について簡単にまとめてみます。
制度開始から1年経過
2015年4月1日に始まった「機能性表示食品」も、1年が経過しました。本稿を執筆している2016年4月25日の時点で304商品が受理され、その情報が公開されています。特定保健用食品(許可件数 約1,200)と単純比較はできないのですが、多数の利用がある制度であると言えると思います。そして1年経過を機に、いくつかの変更点が発表されていますのでまとめてみます。
4月以降の変更点のまとめ
まずは以前から告知されていたとおり、4月以降に開始される臨床試験については事前登録が必要となります。(「食品表示基準の施行後1年を超えない日までに開始(参加者1例目の登録)された研究については、事前登録を省略できるものとする」ガイドラインP26)
そしてガイドライン、確認事項、留意事項の各資料に改正がありました。
・機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(平成28年3月31日一部改正)
・機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項(平成28年4月1日一部改正)
・機能性表示食品の届出書作成に当たっての確認事項(平成28年4月1日一部改正)
また、届出方法も郵送方式から、オンライン方式に変更されました。同時に、届出商品がWEB上で検索できるようデータベース化※されています。(※昨年度の届出商品情報は現在データ移行中)
ガイドラインの主な変更(追記)点について
ガイドラインは、機能性表示食品の届出をする際の最も重要な資料と言えます。新旧対照表が公表されていますので、主な変更(追記)点をまとめてみます。
・当該食品又は機能性関与成分について「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に含まれるものでないことの確認や、食品衛生法への抵触の確認をすること。また機能性関与成分と同様の関与成分について、特定保健用食品における安全性審査が行われているかどうか、届出者の可能な範囲において情報を収集した上で、評価を行うこと。
・提出する組織図は、届出者の組織内における健康被害情報の対応窓口部署の位置付けが明記されたものとする。また、連絡フローチャートは、行政機関(消費者庁、都道府県等(保健所))への報告等、具体的に記載すること。
・その他「同等」から「同等量」への追記など、同等性に関する記載の詳細化。
(「確認事項」にも、「機能性関与成分について評価した場合、既存情報の機能性関与成分と届出をしようとする機能性関与成分との間の同等性を考察しているか」の追記)
今後について
今年1月18日より、「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」が開催されています。4月26日に第4回目の検討会が開催され、これまでに「機能性関与成分における栄養成分の取扱い」「機能性関与成分が明確でない食品の取扱い」等について検討がされているところです。
現在は「定量確認及び定性確認が可能な成分」「食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる成分※は対象外」(※ビタミン、ミネラル等の栄養成分)となっていますが、今後は見直しされる可能性がありますので、関心のある方は定期的に検討会情報を確認されるとよいと思います。
また健康に関する表示をした食品にとって重要な通知である「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」が、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」となる改正案が4月20日に出されており、5月20日までパブリックコメントを受け付けている状態です。
改正案には「機能性表示食品」「特定保健用食品」に関する記載が追加されており、例えば「機能性表示食品について、届出をした表示内容を超える表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある」といった注意がされています。
このように、機能性表示食品を取り巻く環境も1年前と少しずつ変わってきていることが見て取れると思います。これらの情報は、下記参照資料から確認できますので、健康に関する表示について関心のある方はあらためて確認されることが大切だと思います。
機能性表示食品に関する情報(「ガイドライン」「確認事項」「留意事項」の各資料)
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html
機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kinousei_kentoukai.html
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000144018
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
>> 講演・セミナーの詳細はこちら
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