インターネット通販と食品表示について

By | 2016年9月2日

 こちらも消費者庁検討会情報(「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」)を参考にしていますが、第7回目(8月10日開催)の資料が興味深かったので、こちらでご紹介しようと思います。

消費者側の意見(ヒアリング)


  • インターネット販売においても、食品表示法で規定されている表示内容と同等の情報を提供してほしい。
  • インターネット販売においても、義務表示事項と同等の情報が提供されることを望むが、全ての食品について確認しているわけではない。
  • インターネット販売は、注文から手元に届くまでに時間が生じることから、消費期限・賞味期限の情報が特に重要。
  • パソコン(サイト)とスマートフォン(サイト)の違いによって求める情報の内容に差異はない。

消費者側の意見(アンケート)


  • 義務表示事項に係る情報を重視して商品を選ぶ者は8.4%。
  • 購入する際に確認する義務表示事項に係る情報の内容は、「原材料」(41.9%)、「消費期限・賞味期限(同等のもの 含む)」(41.0%)、「原産地・原料原産地」(35.4%)の順に高い。 また、「特に確認していない」とする者は9.5%であり、何かしらの義務表示事項に係る情報を確認して購入する者が90% 以上を占める。
  • 自身が利用しているサイトを選んだ理由として、「提供されている義務表示事項に係る情報量が多いから」とする者は 21.1%。
  • 必要とする義務表示事項に係る情報が提供されていなかった場合、何かしらの方法で確認する者は59.0%、確認しない者は41.0%(確認しないが購入する18.4%、確認もしないし購入もしない22.6%)であった。 また、自分が必要とする義務表示事項に係る情報を何かしらの方法で確認する者において、その方法で情報を確認できなかった場合には、そのサイトでは購入しないとする 者が76.8%に上る。なお、そのサイトでは購入しないとする者のうち、73.8%は 別の手段を用いて購入し、26.2%は別の手段を用いても購入しない。

事業者の意見(ヒアリング)


  • ウェブサイト上に、掲載する義務表示事項に係る情報の方針を定めている場合がある。 (例:ラベル表示と同等の情報を掲載する、ラベル表示の一部の情報だけを掲載する等) しかしながら、情報の正確さを担保する観点等から、義務表示事項に係る情報をラベル表示のように掲載できない場合がある。
  • 消費者のニーズ(問合せ内容)を踏まえて、必要な情報を提供するように対応している。
  • 消費者から義務表示事項に係る情報の内容に関する要望はほとんどない。
  • ウェブサイト上に、義務表示事項に係る情報を掲載するための技術的な仕組み等が十分に整っていない。【お取り寄せ、ネットスーパー】
  • 食品のインターネット販売における義務表示事項に係る情報の内容等について、細か くルールが決められると、事業者の情報提供の自由度が下がってしまうおそれがある。 【お取り寄せ】
  • 自社製品と他社製品とでは義務表示事項に係る情報の取得量に違いがある。自社製 品の方が他社製品よりも情報量が多い。【ネットスーパー】
  • パソコンサイトとスマートフォンサイトの情報量に差異はない。【宅配、ネットモール】
引用:必要な情報の内容と必要な情報提供の方法(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/160810_shiryou2.pdf

 興味深いと感じるのは消費者側と事業者側の意見の対比と、それに対する事業者側の意見が業態により異なっている点です。
 この資料を読んでいただきたいのは、これから食品に関する事業を始めようとされる方や、新しくインターネットを使って販売をしようとされる方です。既にインターネット通販を始めている様々な業態の食品事業者が、既にできていることと、まだできていないこと、関心があること、関心がないことなど、様々な情報を得ることができると思います。

 事業者側へのアンケートも行われていますので、その結果も近く公表されるでしょう。自社商品を購入される消費者の意見も資料から確認できますので、あわせて読んでいくことで、今後の事業計画の参考情報にできるのではと思います。

 食品表示情報の掲載は、情報不足による離脱率を下げる守備的な役割かもしれません。ですが実際の事業者の対応を知ることで、比較優位のヒントを得ることができれば、強みに変えることもできるのではないでしょうか。

参照:食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index26.html
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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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