2016年11月29日、消費者庁および農林水産省において、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」が公表されました。9月末の案から大枠は変わっていませんが、改めて情報を整理してみたいと思います。
義務表示の対象
【対象となる食品】
- 国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とする。(※)
【対象となる原材料】
- 製品に占める重量割合上位1位の原材料を義務表示の対象とする。
(※)対象とならない(原料原産地表示を要しない)場合は以下のとおり。
- 食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合
- 不特定又は多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合
- 容器包装に入れずに販売する場合
- 容器包装の表示可能面積がおおむね 30平方センチメートル以下の場合
義務表示の方法
- 対象原材料の産地について「国別重量順表示」を原則とする。
- 原産国が3か国以上ある場合は、現行ルールと同様、3か国目以降を「その他」と表示することができる。
表示方法については、現行ルール(食品表示基準第三条「原料原産地名」の22食品群(別表第十五)の表示方法)と同じです。
(表示例)
原材料名 豚肉(カナダ、アメリカ、その他)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料
義務表示の例外1「可能性表示(「又は」表示)」
- 使用可能性のある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法であり、過去の取扱い実績等に基づき表示されるもの。
(表示例)
原材料名 大豆(アメリカ又はカナダ又はブラジル)、小麦、食塩
※大豆の産地は、平成○年から2年間の取扱実績順
一定の期間を通じて、使用割合が高いと見込まれる原産国名が上位に表示され、反対に、使用割合が少ないと見込まれる原産国名は下位に表示されることになります。
義務表示の例外2「大括り表示(「輸入」表示)」
- 3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する方法。輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品(合計)と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示する。
(表示例)
原材料名 大豆(輸入、国産)、小麦、食塩
※大豆の産地は、平成○年から2年間の取扱実績順
「輸入」と表示されれば、当該商品の重量順第1位の原材料には国産は使用されていない、「輸入、国産」と表示されれば、当該商品の原材料として、輸入と国産が混合して使用され、輸入の割合の方が多い、ということが分かります。
義務表示の例外3「大括り表示+可能性表示」
- 過去の取扱実績等に基づき、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示できるとした上で、「輸入」と 「国産」を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できる。
(表示例)
原材料名 豚肉(輸入又は国産)、豚脂肪、たん白加水分解物、還元水あめ、食塩、香辛料
※豚肉の産地は、平成○年の取扱実績順
想定されるケースは、「対象原材料について、3か国以上の外国から輸入するとともに輸入品と国産の割合が、製造の月単位、季節単位で変動する場合」となります。
義務表示の例外4「中間加工原材料の製造地表示」
- 対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示する方法。中間加工原材料である対象原材料の原料の産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該原料名とともにその産地を表示することができる。
(表示例)
原材料名 りんご果汁(ドイツ製造)、果糖ぶどう糖液糖、果糖
(表示例)
原材料名 りんご果汁(りんご(ドイツ、ハンガリー))、果糖ぶどう糖液糖、果糖
当初、「○○加工」が検討されましたが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、「○○製造」として、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示することになりました。
義務表示に共通する事項
【誤認防止】
使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は○○産と表示しないなどの表示方法を講ずる。等
【書類の備置き】
事業者は、例外表示の際に表示内容が正しいことを確認できるよう、過去の使用実績等の根拠となる書類の備置き等を必要とする。
【おにぎりののり】
のりは重量が軽く重量順1位の原材料にはならない。一方、のりの原料原産地は、消費者の商品選択の上で重要な情報と考えられ、義務表示の対象とする。
【経過措置】
パブリックコメント等により広く国民の声を聞くものとし、施行に当たっては、事業者の包材の改版状況も勘案して、十分な経過措置期間をおく。
既に原料原産地表示が義務付けられている 22 食品群と4品目に該当する商品や、米トレーサビリティーの対象の商品を除けば、ほとんどの加工食品で原材料表示欄の変更が必要になると思われます。
特に過去実績などの把握をしなければならない場合には、原材料規格書管理に期間の視点が必要となります。原材料の産地が頻繁に変わる商品を取り扱いの方は、現在の規格書管理の運用について改めて検討する機会にするとともに、今後の施行まで制度に関する情報を確認されておくとよいと思います。
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/kakousyokuhin_kentoukai.html
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
>> 講演・セミナーの詳細はこちら
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