加工食品の原料原産地表示の拡大について6 ~パブリックコメントの募集が始まりました~

By | 2017年4月4日

2017年3月27日、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見(以下「パブリックコメント」)募集が始まりました。同時に、「新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)」とするQ&A形式の資料案も公表されています。今回のコラムでは、これまでの「中間とりまとめ案」から新しく情報が追加された箇所についてまとめてみたいと思います。

頻繁な原材料の原産地の変更


中間とりまとめ案において「事業者の実行可能性については、頻繁な原材料の原産地の変更に伴う包材の切替え、煩雑な作業の発生等、事業者の負担について考える必要がある」とされていた「頻繁」の考え方に関して、新しい記載がされています。

「表示をしようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地切替えが行われる」、と具体的に「1年」とされました。これは可能性表示、大括り表示、そして可能性表示と大括り表示の併用においても同様の条件となっています。

一定期間の使用実績、一定期間の使用計画


中間とりまとめ案において「過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)」とされていた「一定期間」の考え方に関しても、新しい記載がされています。

「過去の産地別使用実績は、製造年から遡って3年以内の中での1年以上の実績に限ります。ただし、実績の期間が1年間の場合で、製造年から3年前の1年間のみを実績とすることは認められません」「産地別使用計画は、当該計画に基づく製造の開始日から1年間以内の予定に限ります」、と具体的に「1年間」とされました。

使用割合が極めて少ない産地


中間とりまとめ案において「使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は○○産と表示しないなどの表示方法を講ずる」とされていた「極めて少ない」の考え方に関しても、新しい記載がされています。

「使用割合が極めて少ないとは、5%未満を指します」「可能性表示をする場合には、過去の使用実績等における重量割合が5%未満の産地について、産地名の後ろに括弧を付して、「5%未満」などと表示します」、と可能性表示をする際の誤認防止の基準として具体的に「5%未満」とされました。

経過措置期間


中間とりまとめ案において「施行に当たっては、事業者の包材の改版状況も勘案して、十分な経過措置期間をおく」とされていた「経過措置期間」についても、今回言及がされています。

「平成32年3月末日までを経過措置期間としています。」

その他実務上のポイント


その他、実際に新しい原料原産地表示制度に対応すると想定して、実務上で検討しておいたほうがよいと思われる記載を抜粋していきたいと思います。

保管すべき根拠資料の例

  1. 産地が記載されている送り状や納品書等
  2. 産地が記載されている規格書等であって、容器包装、送り状又は納品書等において、製品がどの規格書等に基づいているのか照合できるようになっているもの
  3. 仕入れた原料を当該商品に使用した実績が分かるもの(製造記録や製造指示書など)など

根拠資料の保管期間

根拠資料等の保管期間は、その根拠を基に表示が行われている商品の

  1. 賞味(消費)期限に加えて1年間
  2. 賞味期限の表示を省略しているものについては、製造をしてから5年間とします。

使用計画に求められる合理性(合理的な説明ができない場合)

  • i) 「A国又はB国又はその他」と表示した場合で、計画期間中に結果としてA国、B国のどちらも使用せず、「その他」に含まれる国しか使用していない。
  • ii)「A国又はB国又はその他」と表示した場合で、計画期間中に結果としてA国、B国のどちらか一方を使用していない。など

「国内製造」とならない行為(輸入された中間加工原材料)

国内他社で「商品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」がなされ、それを仕入れて中間加工原材料として用いるような場合には、「国内製造」となります。
(「実質的な変更をもたらす行為」に含まれない行為の事例も記載があります)

業務用加工食品に必要な表示事項

  1. 最終製品において製造地表示義務の対象原材料となる業務用加工食品(最終製品中、重量順位第1位の原材料となるものなど)については、当該業務用加工食品の原産国名
  2. 輸入品以外の加工食品で、「製造」に該当しないような単なる切断、小分け等を行い最終製品となる業務用加工食品については、最終製品において原料原産地表示義務の対象となる原材料(当該業務用加工食品中、重量順位第1位の原材料など)の原産地名

自主的な表示(重量順位第2位、第3位等の義務付けられていない原材料)

義務表示と同様に一定の条件下で、「可能性表示」や「大括り表示」、「中間加工原材料の製造地表示」などを活用することができることとします。

その他多数ありますが、紙幅の都合によりこのあたりにとどめたいと思います。
なお、パブリックコメントの意見募集は2017年4月25日までです。事業者と消費者の双方にとって重要な改正内容と思われますので、パブリックコメント案について確認してみてはいかがでしょうか。

参照:
食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見募集の開始について(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html#public_meeting
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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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