新たな原料原産地表示制度と「実質的な変更をもたらす行為」について

By | 2017年12月6日

 2017年9月1日に食品表示基準Q&Aが改正され、原料原産地の「国内製造」表示に関して、以前よりも詳細な情報が記載されています。今回のコラムでは、「輸入された中間加工原材料」と「国内製造」の表示について、Q&Aの内容を中心に整理していきたいと思います。

製造地表示とは


 対象原材料が中間加工原材料である場合に、原則として、当該中間加工原材料の製造地を「○○製造」と表示する方法です。(ただし、中間加工原材料である対象原材料の生鮮原材料の原産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該生鮮原材料名と共にその原産地を表示することができます。)

 検討会では当初、「○○加工」が検討されたのですが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、「○○製造」として、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示することになりました。

「国内製造」とならない行為


 中間加工原材料が国産品の場合には、国内において製造された旨を「国内製造」と、輸入品の場合には、外国において製造された旨を「○○製造」と表示する必要があります。

 そのため、輸入された中間加工原材料については、国内他社でさらに「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」がなされ、それを仕入れて中間加工原材料として使用する場合は、「国内製造」となります。(食品表示基準Q&A 原原-43)

 食品表示基準Q&A原原-43に、「国内製造」とならない具体例が記載されていますので、以下に引用します。

容器包装へのラベルの添付、修正、付け替え 容器包装に日本用の日本語ラベルを付すなど  
詰め合わせ 販売のための外装に詰め合わせるなど  
小分け バルクで仕入れたものを小分けするなど 例:うなぎの蒲焼きをバルクで仕入れて小分けする、スパゲッティをバルクで仕入れて小分けする
切断 スライスするなどの単なる切断 例:ハムをスライスする
整形 形を整えるなど 例:ブロックのベーコンの形を整える
選別 形、大きさで選別するなど 例:煮干を大きさで選別する
破砕 少し砕くなど(粉末状にしたものを除く) 例:挽き割り大豆
混合 同じ種類の食品を混合するなど 例:紅茶を混合する
盛り合わせ 異なる種類の食品を容易に分けられるよう盛り合わせるなど 例:個包装されている、仕切り等で分けられているなど容易に分けられるように盛り合わせる
骨取り 除骨のみを行うなど 例:塩サバの骨抜き
冷凍 輸送又は保存のための冷凍など  
解凍 自然解凍等により、単に冷凍された食品を冷蔵若しくは常温の状態まで解凍したもの 例:冷凍ゆでだこを解凍する
乾燥 輸送又は保存のための乾燥など  
塩水漬け 輸送又は保存のための塩水漬けなど  
加塩 既に塩味のついた食品を加塩など 例:塩鮭甘口にふり塩をし塩鮭辛口にする
調味料等の軽微な添加 少量の調味料を加えるなど
薬味を少量足すなど

例:水煮にごく少量のしょうゆを加える。
例:大学芋にごまをまぶす

添加物の添加 添加物を添加するなど 例:ぶどうオイルにビタミンEを栄養強化の目的で添加する、干しえびを着色する、オレンジ果汁を着香する
殺菌 容器包装前後に殺菌するなど 例:ちりめんじゃこを加熱殺菌、濃縮果汁を小分けする際に行う殺菌
結着防止 固まらないように植物性油脂を塗布するなど 例:レーズンへ植物性油脂を塗布する
再加熱 揚げ直し、焼き直し、蒸し直しなど単なる加熱  

“実質的な変更をもたらす行為”とは


 「製品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」とは、製品として輸入品であることを示す「原産国名」表示での考え方と同様であり、食品表示基準Q&A加工-154、155に記載されています。

製品の原産国とは、景品表示法に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」に規定しているとおり、「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」のことを指します。
この場合において、次のような行為については、「商品の内容についての実質的な変更をもたらす行為」に含まれません。

  1. 商品にラベルを付け、その他標示を施すこと
  2. 商品を容器に詰め、又は包装をすること
  3. 商品を単に詰合せ、又は組合せること
  4. 簡単な部品の組立てをすること
  5. これに加え、関税法基本通達では、

  6. 単なる切断
  7. 輸送又は保存のための乾燥、冷凍、塩水漬けその他これに類する行為
  8. 単なる混合

についても、原産国の変更をもたらす行為に含まれない旨が明記されています。

 ここで、「商品の原産国に関する不当な表示」という文書のうち、『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』のなかに、食品の原産国に関する定義が規定されていますので、確認してみましょう。

品目 実質的な変更をもたらす行為
食料品 緑茶
紅茶
荒茶の製造
清涼飲料
(果汁飲料を含む)
原液又は濃縮果汁を希釈して製造したものにあっては希釈
米菓 煎餅又は揚

(『「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則』より「食料品」部分を抜粋)

まとめ


 新しい原料原産地表示制度の検討背景を考えると、「国産」「国内製造」と表示する際には、こうしたQ&Aの記載をよく確認のうえ、注意して表示をする必要があります。
 また、表示の根拠となる資料についても、例えば産地が記載されている規格書と、使用原材料の産地を記載した製造記録や製造指示書を用意するなどし、仕入れた原材料をどの製品に使用したか、その実績が分かるようにしておくなど、情報の整備を進めることが大切になるといえるでしょう。

参照:
食品表示基準Q&A
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0016.pdf
「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_27.pdf

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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