今月も引き続き、遺伝子組換え表示制度についてとりあげたいと思います。2018年3月14日に、第10回「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開催され、遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書(案)と、「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」について検討がなされました。
そこで、「“遺伝子組換えでない”表示が認められる条件」の変更と「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の具体的な表示例について、整理してみたいと思います。
現状制度との変更点の概要
- 「遺伝子組換え不分別」の表現に代わる表示案を検討しQ&A等に示す。
- 「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に引き下げる。5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにする。
「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件
現行制度では、図の左下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「5%以下」)に該当すれば、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められています。
これに対し、新たな表示制度では、図の右下段(大豆及びとうもろこしについて、意図せざる混入率が「α%以下」)に該当する場合に、「遺伝子組換えでない」などの任意表示が認められることになります。そして「α%」は「0%(不検出)」とされました。
出典:「適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例」(消費者庁)
ただし、図の右中段(意図せざる混入率が「5~α%(0%)以下」)に該当する場合は、「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」をすることができるようになります。
なお、現行制度と新制度のどちらにおいても意図せざる混入率が5%を超える場合は、分別生産流通管理が行われていないとみなされ、「遺伝子組換え不分別」の表示義務が生じます。実際にこうした表示をしている商品は少ないとされていますが、新制度においては今後発表されるQ&A等を参考に「遺伝子組換え不分別」に代わる表示へと変更することになります。
分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示例
適切に分別生産流通管理された原材料に、任意で事実に即した表示をする際の表示例が示されていますのでこちらに引用します。
【想定例】※混入率5%以下の表示例(大豆・とうもろこし)
(1)一括して表示する事項(枠内)とは別に任意の場所に表示する場合
- 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたとうもろこしを使用しています。
- 分別管理された大豆を使用していますが、遺伝子組換えのものが含まれる可能性があります。
- 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しないよう、生産・流通・加工の段階で適切な管理を行っています。
- 遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しない原材料調達・製造管理を行っています。
- 大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています。
(2)一括して表示する事項として原材料名欄に表示する場合
- 遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたもの
- 遺伝子組換えの混入を防ぐため分別
- 遺伝子組換え混入防止管理済
※正式施行の際、食品表示基準Q&Aに以下の表示例が示されています。
(一括表示事項欄に表示する場合の例)
「大豆(分別生産流通管理済み)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」 等(一括表示事項欄外に表示する場合の例)
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」 等
今後の「遺伝子組換えでない」表示について
新制度での変更は、ほぼこの点(遺伝子組換えでない表示の取り扱い)のみと言えます。報告書を全体的に見れば「現行制度維持」であり、ただこれまでの「(5%以下だが)遺伝子組換えでない」表示は消費者に誤認を与える恐れがあるために、条件を「不検出(0%)」へと変更するといったものです。
確かに0%(不検出)であると言える場合には「遺伝子組換えでない」と表示できることになりますが、今後「遺伝子組換えでないと表示できる商品はほとんどなくなるのでは」との見方もでていることからも、多くの商品において「分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示」に切り替えることになるものと想定されます。
また制度の啓発も進むと思われますので、消費者や取引先等から「分別生産流通管理」についての問い合わせなどが増える可能性もあります。表示実務を担当されている方は、まずは検討会報告書(案)に目を通していただくとともに、遺伝子組換え表示制度と分別生産流通管理についてあらためて確認されておくことで、今後各方面からの問い合わせに適切に対応できる体制をつくることが大切だと思います。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
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【寄稿】
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・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
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