「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が改正されました

By | 2018年5月8日

 2018年3月28日、消費者庁は「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)および「機能性表示食品に関する質疑応答集」を一部改正しました。いくつかの変更点がありますが、対象となる機能性関与成分の拡大として「糖質、糖類(2018年3月28日より)」「植物エキス及び分泌物(届出データベース改修後)」が追加されており、関心が高いと思いますのでこちらでとりあげてみたいと思います。

主な改正事項


 機能性表示食品制度の運用の課題と、対象成分の拡大、そして消費者への情報提供に関する課題に対応するための改正とされています。以下に、主な改正事項別に、課題と改正点をまとめてみます。

(1)届出資料について
 課題:煩雑な届出資料
 改正点:届出資料の簡素化
・届出資料への入力項目数を約30%削減

(2)届出確認について
 課題:届出確認事務の停滞
 改正点:届出確認の迅速化
・事業者団体等の事前確認を経た旨を届出
・公表済みの届出食品と同一性を失わない程度の変更である旨を届出

(3)生鮮食品について
 課題:生鮮食品の届出件数が低調
 改正点:生鮮食品の特徴を踏まえた取扱い
・一日摂取目安量の一部を摂取できる旨の表示の追加
・生鮮食品に係るQ&Aの拡充

(4)対象成分について
 課題:栄養成分及び機能性関与成分が明確でない食品の取扱い
 改正点:対象となる機能性関与成分の拡大
・糖質、糖類の取扱いを明記
・植物エキス及び分泌物の取扱いを明記

(5)第三者による検証について
 課題:第三者による成分分析ができない
 改正点:分析方法を示す資料の開示(必要に応じてマスキング)

(6)消費者への情報提供について
 課題:販売の有無を確認できない
 改正点:事業者による届出後の販売状況の届出

届出データベース改修と運用開始時期について


 今回の改正には、届出データベースの改修が必要なものも含まれており、改正事項によって運用開始時期が異なります。届出データベース改修前と、改修後での運用開始時期の違いは以下のとおりです。

  届出データベース改修前
(改正ガイドラインに基づく運用)
2018年3月28日から運用開始
届出データベース改修後
(改正ガイドライン別添に基づく運用)
運用開始時期については別途通知
届出資料の簡素化 (一部、様式の変更) 改正前より入力項目の約30%削減
届出確認の迅速化
(再届出)
(試験運用) 本格的に運用開始
届出確認の迅速化
(事業者団体等の事前確認)
運用開始
生鮮食品の届出
(一部を摂取できる旨の表示)
運用開始
糖質、糖類の届出 運用開始
植物エキス及び分泌物の届出   運用開始
分析方法の開示 運用開始
販売状況の届出   運用開始

 なお、データベース改修時期については発表されておらず、今年度末(2019年3月末)までかかるのではとの見方がされています。

糖質、糖類について


 すでに(2018年3月28日から)運用開始された内容のうち注目されるのは、糖質と糖類の追加ではないかと思います。改正ガイドラインから、該当箇所を抜粋してみてみました。(下線部分が追加された内容です)

改正ガイドライン「機能性関与成分及びその科学的根拠に関する基本的な考え方」(P3)

(1)機能性関与成分(中略)
② 健康増進法(中略) に摂取基準が策定されている栄養素を含め、食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる成分は対象外とする。なお、下表の栄養素の構成成分等については、当該栄養素との作用の違い等に鑑み、対象成分となり得るものとする。糖質、糖類については、主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦芽糖及びでんぷん等)を除いた糖質、糖類を対象成分となり得るものとする。

表 対象成分となり得る構成成分等

食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養素 対象成分となり得る左記の構成成分等(例)
たんぱく質 各種アミノ酸、各種ペプチド
n-6系脂肪酸 γ‐リノレン酸、アラキドン酸
n-3系脂肪酸 α‐リノレン酸、EPA(eicosapentaenoic acid)、DHA(docosahexaenoic acid)
糖質 キシリトール、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)
糖類 L-アラビノース、パラチノース、ラクチュロース
食物繊維 難消化性デキストリン、グアーガム分解物
ビタミンA プロビタミンA、カロテノイド(β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン等)

 糖質、糖類については、上記の他に「摂取上の注意事項(P4、40)」「安全性評価(P7)」「分析方法(P22)」にも考え方が追加されていますので、関心のある方は改正ガイドラインを確認してみてください。

今後のスケジュール


 本稿作成時点(2018年4月13日)で、機能性表示食品の届出を受理された商品は1,338件になります。届出資料簡素化や届出確認迅速化などの改正、そしてデータベース改修後(おそらく今年度末頃)に「植物エキス及び分泌物」が対象として運用開始されることで、機能性表示食品はさらに増えていくものと思われます。また分析方法の開示も運用開始されたため、これまでの既存届出商品に何らか変更届出を行う際は、併せて分析方法を示す資料の開示が求められることになりますので、透明性についても高まっていくものと思われます。
 大きな改正ですので、機能性表示食品制度についてあらためて確認をされる機会にしていただければと思います。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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