2018年8月30日、内閣府消費者委員会食品表示部会において、「食品表示の全体像」について議論が始まりましたので、こちらにとりあげてみたいと思います。新しい原料原産地表示をはじめ、義務表示が増えてきたために、表示の在り方などあらためて検討がされています。まずは背景からお伝えしたいと思います。
検討の背景
「新しい原料原産地表示制度検討会」の答申書(2017年8月10日)に記載された付帯意見をきっかけに、2018年5月31日開催の消費者委員会にて議論が了承されたという流れです。
加工食品の原料原産地表示制度にかかる答申書(平成 29 年 8 月 10 日付け)における付帯意見(抜粋)
1.義務表示の増加に伴い、製品上に表示する文字がかなり多くなっている。加工食品の原料原産地表示も含めて、今後、義務化される表示が増えれば、状況は更に深刻化し、消費者が安全性に係わる表示を見落としてしまう要因にもなりかねない。現在の食品表示は製品上への表示が対象であるが、インターネットでの表示を表示制度の枠組みに組み入れて活用する方策検討も含めて、今後、表示の在り方や食品表示間の優先順位について総合的に検討すべきである。
第 275 回消費者委員会(平成 30 年 5 月 31 日開催)において、以下のとおり了承された。
○食品表示を取り巻く現状等について整理しつつ、消費者のニーズにも十分留意した上で、食品表示の全体像について検討。
○この調査審議のテーマについては、例えば、表示事項間の優先順位並びにインターネットを活用した表示の可能性を含むWeb上における情報提供と従来の容器包装上の表示との組み合わせなどが挙げられるが、食品表示の専門的知見が必要なため、専門家が揃っている食品表示部会において検討。
現状の表示事項と区分について
どのような表示事項が必要であるか、現状を確認してみましょう。日本の表示制度では、以下のような表示事項、区分とされています。
名称 | 一般的名称。商品名ではない。 |
原材料名 アレルギー物質 |
食品添加物以外の原材料(食品)を重量割合の多い順に記載 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、の7品目は義務表示 |
添加物 アレルギー物質 |
使用した食品添加物、原材料に含まれる食品添加物を記載 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、の7品目は義務表示 |
内容量 | 重量(g、kg)、体積(ml、L)、数量(個数等) |
賞味期限 | 年月日で記載。製造者が設定 |
保存方法 | 期限設定時の保存方法を記載。開封後の注意ではない |
販売者 | 表示内容に責任を有する者の氏名又は名称及び所在地 |
製造所 | 製造者の氏名又は名称及び所在地 |
栄養成分の量及び熱量 | 食品単位当たりの熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量に換算して表示)の量をそれぞれ決められた単位で記載 |
(出典:「食品表示に関する資料」(消費者委員会事務局))
「安全性にかかわる主な事項」
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「消費者の選択に資する主な事項」
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(出典:「食品表示に関する資料」(消費者委員会事務局))
主な論点について
具体的にどんな議論をするのかについてですが、こちらは消費者委員会事務局より提示された資料に整理されています。
食品表示の全体像を議論するにあたっての論点(たたき台)
○表示事項間の優先順位
○インターネットを活用した表示
○容器包装上の表示と Web による情報提供の組み合わせ方
○容器包装上の表示におけるデザイン、レイアウト上の工夫
(文字サイズ、マークの活用など)
○外国語表示への対応
主には「個食化が進み、容器方法が小さくなってきている」「しかし義務表示事項は増えている」「このままでは消費者が安全性に係わる表示を見落としてしまう」といった懸念があり、上記のような論点について議論がされていくことになると思います。
今後の流れ
8月30日に議論ははじまったばかりで、まずコーデックス規格と日本の表示制度について再確認がされ、第46回は10月10日に開催されました。「わかりやすい表示」に関する議論もされ、「文字サイズ」だけではなく、ユニバーサルデザインなどの工夫についても、他分野の商品や海外などいろいろな事例をもとに今後検討されていくのではと思われますので、食品表示ご担当の方は一度読んでおかれるとよいと思います。
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井上 慎也
趣味は自転車。
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