「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」について

By | 2018年11月5日

 少し前になりますが、2018年6月に消費者庁より「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(以下「留意点」)が公表されていますので、今月はこちらを取り上げてみたいと思います。

強調表示と打消し表示


 打消し表示とは、商品の内容などについて強調表示をする際に、なんらか例外などがあるときに表示されるものです。分かりやすい例としては、体験談の表示に添えられる「個人の感想です。効果には個人差があります。」といった表示があげられます。「留意点」によると、強調表示と打消し表示は以下のように定義されています。

【強調表示】:事業者が、自己の販売する商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示

【打消し表示】:強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示

打消し表示の方法について


  「留意点」では、紙面広告だけでなく、動画広告やWeb広告(PC及びスマートフォン)についても、それぞれの媒体の特性別に注意すべき表示を整理しています。容器包装への表示については「紙面広告」と読み替えて想定していただくとして、ここではすべての媒体に共通する注意点について取り上げてみたいと思います。

(1)打消し表示の文字の大きさ

打消し表示の文字の大きさは、一般消費者に打消し表示が認識されない大きな理由の1つであると考えられています。事業者が打消し表示を行う際には、一般消費者が手にとって見るような表示物なのか、鉄道の駅構内のポスター等の一般消費者が離れた場所から目にする表示物なのかなど、表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、それらの表示物を一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要があります。

(2)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス

打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があり、打消し表示の文字の大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、一般消費者は、印象の強い強調表示に注意が向き、打消し表示に気付くことができないときがあると考えられます。

(3)打消し表示の配置箇所

打消し表示は、一般消費者が、それが強調表示に対する打消し表示であると認識できるように表示する必要があるため、打消し表示の配置箇所は、打消し表示であると認識されるようにするための非常に重要な要素です。

(4)打消し表示と背景との区別

打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合(例えば、明るい水色、オレンジ色、黄色の背景に、白の文字で打消し表示を行った場合)など、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合には、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがあります。

打消し表示の内容について


 そして、問題となりえる打消し表示の内容について以下の4類型が公表されています。

(1)例外型の打消し表示

商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(2)別条件型の打消し表示

例えば、割引期間や割引料金が強調される一方、割引期間や割引料金が適用されるための別途の条件が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は別途の条件なしに強調された割引期間や割引料金で商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。

(3)追加料金型の打消し表示

「全て込み」などと追加の料金が発生しないかのように強調している一方、それとは別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は当該価格以外に追加料金が発生しないという認識を抱くと考えられる。

(4)試験条件型の打消し表示

表示を行うに当たっては、表示された効果、性能等(ここで「表示された効果、性能等」とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能等であることに留意する必要がある。)が、試験・調査等によって客観的に実証された内容と適切に対応している必要がある。

 なお、冒頭の事例である「個人の感想です。効果には個人差があります。」については、体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするために、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべき、とされています。

今後について


 消費者庁の発表によれば、「打消し表示」については今後厳しく取り締まる方針となっています。上にあげた4つの表示方法と4つの表示内容については、どのような表示にもあてはめて考えることができる視点となっていると思いますので、パッケージデザインだけでなく、同封のしおり、パンフレットやウェブサイトなどの表示が適切であるかを検証する業務に携わる方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

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