2019年4月18日に開催された「第1回食品添加物表示制度に関する検討会」の資料において、諸外国の食品添加物に関する表示制度の概要が示されています。国内で製造した食品を輸出される事業者の方も増えておりますので、こちらにとりあげてみたいと思います。
<食品添加物に関する諸外国の表示制度(概要)>
日本 | CODEX | 米国 | カナダ | 豪州 | 中国 | 仏国 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示順 | 原材料と区分して重量順 | 重量順 | 重量順 | 原材料の後ろに任意の順 | 重量順 | 原材料と区分して重量順 | 重量順 |
表示方法 | 一般名 (物質名) |
一般名 (具体名) 国際番号 |
一般名 | 一般名 | 一般名 (名称) コード番号 |
一般名 (具体名) INSコード |
一般名 (物質名) E番号 |
用途名併記 | 8種類 | 25種類 | 5種類 | 確認できず | 25種類 | 22種類 | 24種類 |
一括名対象 | 14種類 | ガムベース、着香料、加工デンプン | 香料 | 香料、調味料、ガムベース | 香料 | 香料 | デンプン、ガムベース |
栄養強化の目的で使用されるもの | 表示免除(一部の食品を除く) | 添加物ではない | 規定から削除 | 添加物ではない | 添加物ではない | 添加物ではない | 添加物ではない |
加工助剤 | 表示免除 | 表示免除 | 表示免除 | 表示が必要(添加物ではない) | 表示が必要(添加物ではない) | 表示免除 | 表示免除 |
キャリーオーバー | 表示免除 | 表示免除 | 表示免除 | 表示免除(条件つき) | 記載なし | 表示免除(条件つき) | 表示免除 |
出典:「食品添加物表示制度をめぐる事情(消費者庁)」
詳細については、同検討会資料のうち「食品添加物表示制度に係る実態調査事業報告書」に記載されています。輸出や輸入をされる事業者の方にとって、添加物の確認は「使用基準(使用できる食品分類、用途、量等)の確認」に多くの時間を費やされるものと思われますが、同資料は、添加物の「表示基準」の確認の重要性についても、改めて気付かされるものがあると思います。
輸出や輸入における表示確認の実務では、上記の表示制度のうち、「この原材料は添加物に該当するかどうか」と「表示免除の対象かどうか」が大きな確認ポイントになると思われます。自国または対象国で表示免除であるために、原材料使用基準の確認の段階で詳細な情報が取れておらず、実際の輸出入時に気づいて慌てることはよくある課題といえます。キャリーオーバーなどは表示基準の問題であって、使用基準の問題とは異なるのですが、輸出入取引の際にはこうした互いの国の規則に対する認識合わせがまず大切だと思います。輸出や輸入に携わる方は、一度、目を通しておかれてはいかがでしょうか。
メールマガジン配信登録
こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。
関連サービス
【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。
【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。
関連記事一覧
川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
>> 講演・セミナーの詳細はこちら
最新記事 by 川合 裕之 (全て見る)
- 食品表示に関する制度改正状況のまとめ(1) - 2024年12月6日
- 米国カリフォルニア州の食品の期限表示に関する標準化法案と期限表示をとりまく食品廃棄問題の現状について - 2024年10月31日
- 各国のアレルゲン表示に関する基準の改正動向について - 2024年10月4日