添加物の「無添加」「不使用」の表示の在り方について~食品添加物表示制度に関する検討会より~

By | 2019年12月4日


 2019年11月1日、消費者庁において第6回「食品添加物表示制度に関する検討会」が開催されました。2019年4月に始まった同検討会において、これまでの議論のなかでも主に話し合われている「無添加」「不使用」表示の在り方について、こちらでもとりあげてみたいと思います。

添加物の「無添加」「不使用」表示の現状


 まず無添加、不使用に関する表示の規則の現状についてですが、同検討会の消費者庁資料「論点の整理(第4回検討会 資料2の修正版)」において、以下のようにまとめられています。 (ただし「食品表示基準」における整理であり、その他に公正競争規約(景品表示法第31条に基づく協定又は規約)にもこうした無添加、不使用に関する表示の規則があります。)

  • 「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」、「その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示」は表示禁止事項とされている(食品表示基準第9条第1項第1号、第13号等)。
  • ただし、糖類及びナトリウム塩については、特定の要件を満たす場合に限り、「添加していない旨」を表示することが許容されている(食品表示基準第7条)。
  • 通常同種の製品が一般的に添加物が使用されているものであって、当該製品について添加物を使用していない場合に、添加物を使用していない旨の表示をしても差し支えないという制度運用を行っている(食品表示基準Q&A(令和元年7月1日最終改正)加工-90)。

 上記のうち、表示禁止事項とされている「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」、「その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示」(食品表示基準第9条第1項第1号、第13号等)については、食品表示基準Q&A(加工-281)に解釈が掲載されています。

(加工-281)表示禁止事項の「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」、「その他内容物を誤認させる文字、絵、写真、その他の表示」とは、どのようなものですか。

(答)

  1. 加工食品の表示禁止事項は、第3条、第4条、第6条及び第7条(名称、原材料、添加物等)に関連するものに限定されます。
  2. 具体的には、例えば、以下のものが該当します。
    • 特定の原産地のもの、有機農産物など、特色のある原材料を一切使用していないにもかかわらず、当該特色のある原材料を使用した旨の強調表示
    • 産地名を誤認させる表示
    • 添加物を使用した加工食品に「無添加」と表示

出典:食品表示基準Q&A(加工-281)

 同検討会の消費者庁資料「追加資料(第5回検討会の整理)(論点3関連)」においては、「Q&A加工-281は、第9条(表示禁止事項)の解釈を網羅的に示したものではない」とし、「食品表示基準第9条の表示禁止事項に当たるかどうかを判断するためのメルクマールとなるものが必要ではないか」とまとめています。

ガイドラインの策定とQ&Aの見直しの検討


 同追加資料には、問題とされている「無添加」「不使用」表示についても整理されています。関連して、見直しの可能性があると思われる食品表示基準Q&A(加工-90)については、あらためて確認をしておくとよいでしょう。

  • 表示を要さない加工助剤を添加物として使用しているにもかかわらず、添加物不使用と表示すること。
    ➡ 第9条第1項第13号に抵触する可能性(Q&A加工-90)
  • 単に「無添加」と表示すること
    ➡ 第9条第1項第2号に抵触する可能性
    ➡ 糖類、ナトリウム塩不使用との表示と紛らわしい場合もあるという問題は存在するものの、消費者がどのような意識で単なる「無添加」を認識しているのかということも考慮する必要がある。

(加工-90)「添加物は一切使用していません」、「無添加」などと表示をすることはできますか。

(答)

  1. 通常同種の製品が一般的に添加物が使用されているものであって、当該製品について添加物を使用していない場合に、添加物を使用していない旨の表示をしても差し支えないと考えます。
    なお、加工助剤やキャリーオーバー等で表示が不要であっても添加物を使用している場合には、添加物を使用していない旨の表示をすることはできません。また、「無添加」とだけ表示することは、何を加えていないかが不明確なので、具体的に表示することが望ましいと考えます。
  2. さらに、同種の製品が一般的に添加物が使用されることがないものである場合、添加物を使用していない旨の表示をすることは適切ではありません。

出典:食品表示基準Q&A(加工-90)

 取り得る手段の案としては「Q&Aの見直し・追加」のほか、「ガイドラインの策定」など通知による指針の提示が、有力な案として検討されています。その際に、無添加・不使用とあわせて使用されている「合成」「人工」や「化学調味料」などの用語についても整理される見通しです(食品表示基準別表第六からの該当用語の削除、通知による指針の提示等)。
 また検討会では、ガイドライン策定の際の参考としてコーデックスの無添加・不使用表示に関する基準に言及もされていました。「強調表示に関するコーデックス一般ガイドライン 5.1(vi)」 (CAC/GL 1-1979)には、「通常、当該食品中に存在すると消費者が予期していること」「同程度に顕著な表現で明示されている場合を除き、当該食品に同等な特質を与える他の物質により代替されていないこと」などの基準がありますので、この機会にあわせて確認しておくとよいでしょう。

今後の予定


 第7回検討会は、12月19日に開催される予定です。計画では2019年度末まで(早ければ年末まで)に報告書のとりまとめをするとされていますが、業務においてこうした強調表示に関する確認を担当されている方は、議論の背景などを知っておくためにも、検討会資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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