2020年5月25日、消費者委員会食品表示部会において、食品表示基準の一部改正(食品添加物に関する表示 他)に係る審議が行われ、食品表示基準より「人工」、「合成」の用語を削除する等の諮問書および答申書案に対し、了承がなされました。改正は2020年7月16日に施行予定となります。
背景
2020年3月31日にとりまとめがされた「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」において、現行制度では「人工甘味料」、「合成保存料」等の用語が無添加表示のためだけに使用されている実態が指摘されていた経緯があります。そこで消費者の誤認を防止する観点等から、「人工」、「合成」の用語を削除することになりました。消費者の誤認を防止する目的であるため、改正後(経過措置期間後)は添加物に対する「人工」「合成」等の表示は実質的に使用できなくなると思われます。
出典:食品添加物表示制度に関する検討会報告書
4. 今後の食品添加物表示制度の方向性
(2)「無添加」、「不使用」の表示の在り方
②整理の方向性
イ 「人工」、「合成」の用語
消費者意向調査の結果では、消費者は添加物に関して「人工」、「合成」といった文言があると避けるという消費者が存在することが分かった。また、事業者団体等関係者からのヒアリングでは、「化学調味料」のように、食品表示法上、その定義が不明確な用語が使用されていることも、添加物に対する消費者の理解に影響しているとの意見が挙がった。
検討会では、食品表示基準にある「合成保存料」、「人工甘味料」等の、「人工」及び「合成」を冠した食品表示添加物表示に関する規定については、添加物の表示が全面化された平成元年当時の食品衛生法における添加物表示の整理と矛盾することから、また消費者の誤認防止の観点から、委員の総意として当該用語を削除することが適当であるとされた。
なお、「化学調味料」のような法令上にない用語の使用により消費者の添加物に対する理解に影響を与えると指摘された表示については、(2)の②のア(「無添加」、「不使用」等の表示)で示されたガイドラインの検討段階において、事業者がその用語について広告等を含め表示することがないような検討を併せて行うことが望ましい。
主な改正内容
食品表示基準における改正は、以下のとおりです。
食品添加物表示制度に関する検討会報告書を踏まえ、一般加工食品の横断的義務表示事項を定めた基準第3条第1項の表、別表第6、別表第7を改正し、「人工」及び「合成」の用語を削除する。
◆ 改正案 第3条第1項の表(横断的義務表示)
添加物 | |
現行 | 1 次に掲げるものを除き、添加物に占める重量の割合の高いものから順に別表第6の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名及び同表の下欄に掲げる用途の表示を、それ以外の添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名を表示する。 一~三(略) 2 (略) 3 1の規定にかかわらず、添加物の物質名の表示は、一般に広く使用されている名称を有する添加物にあっては、その名称をもって、別表第7の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる。 4 1の規定にかかわらず、次に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に掲げる用途の表示を省略することができる。 一添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料又は合成着色料 二(略) |
改正案 | 1~3(略) 4 1の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に定める用途の表示を省略することができる。 一添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料 二(略) |
◆ 改正案 別表第6(添加物の用途)
甘味料 | 現行 | 甘味料、人工甘味料又は合成甘味料 |
改正案 | 甘味料 | |
着色料 | 現行 | 着色料又は合成着色料 |
改正案 | 着色料 | |
保存料 | 現行 | 保存料又は合成保存料 |
改正案 | 保存料 | |
(略) |
◆ 改正案 別表第7(添加物の物質名の代替となる語(一括名))
(略) | ||
香料 | 現行 | 香料又は合成香料 |
改正案 | 香料 | |
(略) |
なお、これらのほかに、「原料ふぐの種類に関する表示」、「特色のある原材料等に関する表示(2020年1月JAS法施行令の改正(施行日は2020年7月16日)に伴い「有機畜産物」を追加)」等の改正も予定されています。
今後の予定
公布及び施行は2020年7月16日(JAS法施行令と同日施行)です。また経過措置期間として、2022年3月31日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く)及び同日までに販売される業務用加工食品の添加物の表示については、なお従前の例によることができることとしています。
現在、添加物に対し「合成」「人工」等の用語の表示を使用されている方は、同委員会の資料はもとより、できれば食品添加物表示制度に関する検討会議事録などの背景もあわせて確認をされるとよいと思います。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
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・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
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