平成30年(2018年)12月14日に公布された「食品表示法の一部を改正する法律」が、今年、令和3年(2021年)6月1日に施行されます。改正内容のポイントを再確認すると以下のとおりです。
<改正の概要>
- 自主回収を行った場合は、行政への届出(原則オンライン)が義務化される
- 届出された自主回収情報は、システム上に公開される
(システムは6月1日までに稼働予定)
既存の食品事業者の方はご存知と思いますが、昨今では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う業態転換や事業構造見直しにより、新しく食品事業に参入された方も増えていると思いますので、この機会にあらためて整理してみたいと思います。
届出が義務化される対象の表示
「第六条第八項の内閣府令で定める事項について食品表示基準に従った表示」がされていない食品を販売した場合の自主回収が対象です。「第六条第八項の内閣府令で定める事項」とはアレルゲンやL-フェニルアラニン化合物を含む旨、消費期限、加熱を要する旨等の安全性に関係する表示を指し、これらの表示に欠落や誤りがある場合が対象となります。
「第六条第八項の内閣府令で定める事項」の詳細は、「食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」より確認できます。
(具体的には、「名称」「保存の方法」「消費期限又は賞味期限」「アレルゲン」「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」「指定成分等含有食品に関する事項」のほか、保健機能食品、食肉、食肉製品、乳製品、液卵、魚介類、冷凍食品などの食品別に多数の表示事項が指定されています)
また「自主回収を要しない場合」についても、2021年(令和3年)2月26日に公表されています。例えば「地域の食品製造事業者が、同一地区の個人経営の小売店に消費期限を付していない食品を販売したが、当該製造事業者から当該小売店に連絡を行い、当該小売店が消費者への販売前に販売を取りやめた場合であって、かつ、当該小売店の職員の摂取についても想定されないとき。」や「生食用と表示する予定であった魚介類等の食品に加熱加工用と表示した場合」等が該当します。
さらに同通知内では、健康危害のレベルに応じ”CLASSⅠ””CLASSⅡ”の分類についても示されています。”CLASSⅠ”は「アレルゲン(特定原材料に準ずる品目も含む。)及びL-フェニルアラニン化合物を含む旨に関する表示」で、”CLASSⅡ”はそれ以外です。詳細は、「食品表示法第10条の2第1項の規定に基づく食品の自主回収の届出について(消食表第80号)」をご確認ください。
オンライン上での届出と公開について
これまでに自主回収と届出を経験されたことのある食品事業者の方にとって、以前との大きな違いは「オンラインでの届出」と「システム上での公開」の2点になるものと思います。届出と公開は、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」上で行われます。実際の検索画面を見ると、イメージしやすくなると思います。
<食品衛生申請等システム(公開回収事案検索)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspub/_link.do
このように、「商品名」「届出者名」「回収の理由」「回収方法」のほか、「健康への危険性の程度」などの情報を、都道府県別に指定して検索することができるようになります。また公開された回収事案には、食品表示法違反によるものだけでなく、食品衛生法違反による自主回収情報(カビ、残留農薬、異物混入等)も含まれます。
(【注意】なお、国内での流通後(輸入品を含む)の食品を自主回収する場合が対象となることから、輸入時点の違反事例(添加物使用基準不適合等)についての多くは、これまでどおり「輸入時違反事例(厚生労働省)」より確認をすることになります。)
自主回収の届出は、こちらから行います。
<食品衛生申請等システム(事業者用ログイン)>
https://ifas.mhlw.go.jp/faspte/page/login.jsp
現在のところ(2021年4月25日時点)すべての画面や機能が完成しているわけではないようですが、届出作業に必要なイメージをつかむことはできるかと思います。
業務フロー見直しの機会に
なお、回収事例は公開されますので、消費者だけでなく事業者も検索することができます。どのような食品において、どのような表示にもとづく回収事例があったかを知ることができるため、食品表示確認作業の業務フローを検討する際に、注意すべきポイントの参考情報とすることもできるでしょう。
6月1日の完全施行が近づくにつれ、システムのマニュアル等も追加されるものと思われます。食品表示確認の業務フローを見直したり、新しく用意したりする際のきっかけにしていただければと思います。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
>> 寄稿の詳細はこちら
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
千代田保健所様主催。
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