食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案について意見募集が開始されました

By | 2022年1月11日

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意見募集の結果を受けて修正されたガイドライン案の資料等(2022年3月1日公表分)をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。

 2021年12月22日、消費者庁は「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案」に関する意見募集(パブリックコメント)を開始しました。2021年11月18日に公表された「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」(食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会)からいくつか変更されている点もありますので、こちらに整理してみたいと思います。

意見募集の背景


 まずはガイドラインの策定に至った経緯の再確認として、「意見募集の趣旨」より引用します。

  • 食品表示基準第9条では表示すべき事項の内容と矛盾する用語や内容物を誤認させるような文字等を禁止してはいるものの、その解釈を示す食品表示基準Q&Aが網羅的ではない
  • 「無添加」等の表示方法を示す食品表示基準Q&Aが曖昧である
  • 「無添加」等の表示は商品の主要面に義務表示事項よりも目立つように表示されるケースがあり、本来見るべき一括表示欄が活用されていない
  • といった現状等を踏まえ、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるガイドラインを新たに策定することが提案された。

前回(11月18日)検討会案からの変更点


 類型項目(案)からの主な変更点は以下のとおりです。

  • 「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」に一本化
    (「第9条に直ちに該当しないものの、消費者への誤認を生じさせるおそれのある表示」の削除)
  • 11の類型項目のうち旧④と旧⑩を統合し、10の類型項目に再編

 その他は表現の修正や、例文の具体化など、変更は軽微なものであるといえます。

表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示


 食品添加物の「無添加」「不使用」などの表示について、「表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」として、以下の10類型が示されています。(赤文字は、類型項目案より表現の修正があった箇所)

類型1 単なる「無添加」の表示
例:単に「無添加」とだけ記載した表示
(対象を明示せず単に無添加と表示をすると、何を添加していないのかが不明確である)
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例:「人工甘味料不使用」等、人工、合成、化学調味料、天然等の用語を使用
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示
※清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反
例2:食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例1:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示
例2:既存添加物の着色料を使用した食品に、「合成着色料不使用」と表示
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例1:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、化学調味料を使用していない旨を表示
例2:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示
(不使用表示と共に同一機能、類似機能を有する原材料について明示しない場合、消費者が当該原材料の機能であると分からず、他の原材料による機能が作用していると読み取るおそれがあり、内容物を誤認させるおそれがある)
類型6 健康、安全と関連付ける表示
例1:体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
例1:おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
「開封後」に言及せずに表示することで、期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合)
例3:製品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例1:食品元来の色を呈している食品に「着色料不使用」と表示
例2:同種の商品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示(消費者が当該食品添加物の使用を予期していない例としては、ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用等)
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
例1:原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示
例2:原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示
(食品添加物の表示については、当該食品の原材料の製造又は加工の過程まで確認を行うことが必要であり、一括表示外であっても、確認結果に基づいた表示を行わない場合、内容物を誤認させるおそれがある)
類型10 過度に強調された表示
例1:商品の多くの箇所に、目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
例2:保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示

表示の見直しについて

 今回のガイドライン案には、表示の見直しにかかる期間にも言及がされています。

  • 第9条に新たな規定を設けるものではないことから、本来であれば特段の経過措置期間を要するものではない
  • しかし第9条の解釈を示す食品表示基準Q&Aが曖昧等の理由により、表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示が行われている可能性がある
  • 2年程度(令和6年3月末)の間に、必要に応じて表示の見直しを行うこと

 意見募集の受付締切日は2022年1月21日となっております。意見募集の結果による修正を経て、2022年3月までには正式なガイドラインとして公表される見通しです。今後、関連する食品表示基準Q&Aや公正競争規約についても何らかの修正がなされると思われますが、今回のガイドライン案のみをもって、ひとまず現状の表示の見直しの要不要についての判断はしやすくなると思います。関連する不使用表示は現在行っていない場合でも、食品添加物の表示に対する考え方の参考になると思いますので、一度目を通しておかれるとよいでしょう。

【2022年3月24日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。

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