「大豆ミート食品類」の日本農林規格が制定されました~プラントベース(植物由来)食品の表示の注意点について~

By | 2022年3月7日
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 2022年2月24日、大豆ミート食品類の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2020年秋にJAS規格化に向けた検討(検討主体:大塚食品株式会社)を開始し、その後2021年11月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。大豆ミート食品類の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」の2食品の要件が定義されています。

「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」


 同規格の定義より、2食品の違いを整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
加工 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること 大豆ミート原料を用いて、製品特有の肉様の特徴を有するように加工すること
原材料 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料およびその加工品を原材料として使用しないこと 1次原材料から3次原材料までに、動物性原材料(乳及び食用鳥卵を除く)およびその加工品(調味料を除く)を原材料として使用しないこと
大豆たん白質含有率 大豆たん白質含有率が10%以上であること 大豆たん白質含有率が1%以上であること
原料のアミノ酸スコア アミノ酸スコアが100である大豆ミート原料を使用すること -(設定なし)

 なお、アミノ酸スコアの基準値設定の経緯として、「大豆たん白の新たな摂り方を消費者に提案する目的」から「全ての必須アミノ酸をバランスよく摂取できる」点の訴求は重要であるためとされています。

表示について


 同規格より、表示の基準を整理すると以下のようになります。

  大豆ミート食品 調製大豆ミート食品
表示事項 “大豆ミート食品”又は“大豆肉様食品”と容器包装の見やすい箇所に記載 “調製大豆ミート食品”又は“調製大豆肉様食品” と容器包装の見やすい箇所に記載
当該製品が食肉ではないことの説明(“肉を使用していません”,“肉不使用”等)を容器包装の見やすい箇所に記載しなければならない。
表示方法 -(設定なし)
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)

※業務用加工食品については,送り状,納品書等又は規格書等に表示できる。

 大豆ミート食品類においては、“肉を使用していません”,“肉不使用”等の表示が必要となる点については、昨年夏に消費者庁より公表された「プラントベース(植物由来)食品等の表示に関するQ&A」が参考になると思いますので、以下に関連Q&Aを整理してみたいと思います。

プラントベース食品等の表示に関するQ&A


 2021年8月20日に公表された同Q&Aより、植物由来食品の「肉」(代替肉)に関する表示について注意点を抜粋します。(プラントベース食品の定義は、「主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含める。」)

表示例 注意点
商品名に「大豆肉」、「ノットミート」等と表示 商品名とは別に、「大豆を使用したものです」、「原材料に大豆使用」、「お肉を使用していません」、「肉不使用」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食肉ではないのに食肉であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉を使ったハンバーグの商品名に「大豆からつくったハンバーグ」と表示 代替肉の使用割合が100%でない場合は、例えば、商品名とは別に、代替肉の使用割合を表示するなど、一般消費者が、表示全体から、代替肉の使用割合が100%ではないのに100%であるかのように誤認する表示になっていないこと
大豆から作った代替肉の商品名に「大豆ミート」と表示し、「100%植物性」と併記 商品名とは別に、「原材料は植物性です(食品添加物を除く)」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食品添加物を含めて全ての原材料に植物性のものを使用していないのに使用しているかのように誤認する表示になっていないこと

 上記は、容器包装を含むすべての表示に関する注意事項です。そして以下が、一括表示内の「原材料名表示」に関する注意点です。プラントベース食品の原材料名表示では、「肉」や「卵」を含む用語は使用できない点に注意が必要といえます。

Q. プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

A. 食品表示基準において、原材料名は「その最も一般的な名称をもって表示する」こととなっております。プラントベース(植物由来)食品の原材料名としては、例えば、大豆から作られている食品の場合には、「大豆」「大豆加工品」等と記載してください。なお、プラントベース(植物由来)食品の原材料の名称としては、現時点では、肉や卵を含む用語は 、「一般的な名称」とは言えないと考えます。

 以上、大豆ミート食品類のJAS規格の概要と、プラントベース食品の表示に関する注意点についてです。また関連する食品として、「ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品」のJAS規格化も検討が進んでいる状況です。大豆をはじめとする植物由来食品を取り扱いの方は、一度、こうした状況を整理しておかれるとよいと思います。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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