「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されました

By | 2022年4月7日
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3月末に公表された正式なガイドラインの内容についてお伝えする予定です。各類型の詳細な例示や基準までは示されていませんが、ガイドライン新設の背景や、案からの修正の経緯より、ポイントをお伝えできればと思います。また類型4および5の参考情報に言及されているCODEX基準をはじめ、海外各国の添加物不使用表示の基準の動向もご紹介したいと思います。

 2022年3月30日、消費者庁により「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されました。「第8回食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2022年3月1日)」で使用された「【資料2】ガイドライン修正反映版」(意見募集後修正案)の内容からの主な変更点はこちら(下線赤文字部分)です。

(5)本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関して、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめたものであり、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではない。食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものである。

 その他は意見募集後修正案のとおりですが、あらためて、今回のガイドラインの概要をこちらに整理したいと思います。

不使用表示の類型


 不使用表示の類型1~10は以下のとおりです。(ガイドラインの説明文および例より一部を抜粋したものです。)

類型1 単なる「無添加」の表示
例:単に「無添加」とだけ記載した表示のうち、無添加となる対象が消費者にとって不明確な表示
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例:「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示(清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反である。)
例2:食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例1:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示
例2:既存添加物の着色料を使用した食品に、○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。)
(同程度に顕著な表現で明示されている場合を除き、当該食品に同等な特質を与える他の物質により代替されている場合、強調表示を用いることができない。)
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例1:原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示
例2:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示
(食品の特定の成分のみを抽出したこと等により、当該食品との科学的な同一性が失われていると考えられるもので代替することは、社会通念上食品であると考えられるもので代替することとは異なる。不使用表示と共に同一機能、類似機能を有する原材料について明示しない場合、消費者が当該原材料の機能であると分からず、他の原材料による機能が作用していると読み取るおそれがある。)
類型6 健康、安全と関連付ける表示
例1:体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示
例2:安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
例1:おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
(おいしい理由と食品添加物を使用していないこととの因果関係を説明できない場合)
例2:「開封後」に言及せずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
(期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合)
例3:商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示
(変色と着色料の用途との関係について説明ができない場合)
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例1:同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に、「着色料不使用」と表示
例2:同種の製品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示(ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用等)
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
例1:原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示
例2:原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示
(食品添加物の表示については、当該食品の原材料の製造又は加工の過程まで確認を行うことが必要であり、一括表示外であっても、確認結果に基づいた表示を行わない場合、内容物を誤認させるおそれがある。)
類型10 過度に強調された表示
例1:商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
例2:保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示
(一括表示欄における表示と比較して過度に強調されたフォント、大きさ、色、用語など。他の類型項目と組み合わさった際、他の類型項目による誤認を助長させるおそれがある。)

 またあわせて、添加物不使用表示に関連する食品表示基準Q&A(加工-90の改正、加工-232の削除)も改正されています。

【改正】(加工-90)「食品添加物は一切使用していません」、「無添加」などと食品添加物が不使用である旨の表示をすることはできますか。

(答)

  1. 消費者に誤認等を与えないよう留意して表示する必要があると考えます。
  2. 例えば、(中略)
  3. 消費者に誤認等を与えないための留意点は、別添「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」としてまとめています。

【削除】(加工-232)糖類や食塩(ナトリウム)以外のものであっても、事実であれば無添加の表示は可能ですか。

今後について


 表示の見直しとして、「2年程度(2024年3月末まで)」の経過措置期間が示されています。また今後は、ガイドラインを参考とした景品表示法等の適用により、ウェブサイトや広告など容器包装外における不使用表示の縮減も見込まれています(その他、公正競争規約の見直しも見込まれています)。
 パブリックコメントに寄せられた意見に対する考え方において、「あらゆる例示を列挙することは困難」「ケースバイケースで全体として判断」と記載のとおり、ガイドラインは具体例を示すものではなく、表示禁止事項の解釈を示したものという位置づけです。表示の見直しにあたり判断に迷うケースも多いと思いますが、その際には、今回のガイドラインの検討会の資料を読むことで、不使用表示の課題と解決について確認されることが大切だと思います。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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