2023年7月24日、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、「アルコール飲料の糖質と糖類に関する強調表示」の要件を明確にするための改正案について意見募集を行いました。現状のFSANZコードの基準 1.2.7では、アルコール飲料における糖質の含有量についての自主的な表示を認めています。しかし同コードでは、糖類の含有量に関する強調表示の基準は明確にされていません。そのためFSANZは、1.15%を超えるアルコールを含む食品に対する糖質と糖類の表示の許容範囲を明確にするために基準を改正することを提案しています。
意見募集の提案書(2023年9月4日まで)によると、過去10年間で糖質や糖類の栄養成分を強調表示するアルコール飲料が増加していることが背景とされています。FSANZは2020年に市場調査を行い、実際の製品の表示例(Table 2)として、糖質では「Low carb, Lower carb, X% less carbs, No carbs」、糖類では「Low sugar, Lower sugar, X% less sugar, No sugar, Zero sugar」などを挙げています。
その後2022年に消費者行動に関する研究レビューを実施し、その結果、消費者はアルコール飲料の栄養特性について一般知識に基づいた十分な理解ができていないと結論づけました。また、これらの強調表示が消費者にアルコール飲料のアルコールやエネルギーについて不正確な推測を引き起こす可能性があるとしています。
改正案(Attachment A)では、1.15%を超えるアルコールを含む食品に対する糖質と糖類の表示の許容範囲が明確化されており、例えば特定の糖類の名称(果糖等)および糖質・糖類以外の炭水化物成分 (食物繊維等) に関する強調表示は禁止されることになります。
sugar means, unless otherwise expressly stated, any of the following: (a) white sugar; (b) caster sugar; (c) icing sugar; (d) loaf sugar; (e) coffee sugar; (f) raw sugar.
(1) A nutrition content claim or health claim must not be made about:
(a) kava; or (b) an infant formula product; or (c) a food that contains more than 1.15% alcohol by volume, other than a nutrition content claim about: (i) salt or sodium content of a food that is not a beverage; (ii) carbohydrate content; (iii) energy content; (iv) gluten content; (v) sugar content; or (vi) sugars content.(2) A nutrition content claim about sugars content of a food that contains more than 1.15% alcohol by volume must not name or refer to any specific sugars. Example A nutrition content claim that refers to fructose is not permitted.
(3) A nutrition content claim about carbohydrate content of a food that contains more than 1.15% alcohol by volume must not name or refer to a component of carbohydrate other than sugar or sugars.
(Sugarsの定義は基準1.1.2の「sugars:」に記載されています。)
なお、提案書にはEU、米国、カナダなど海外の関連基準の状況についても整理されています。日本から該当製品の輸出を検討される際には、自国の基準※を再確認したうえで、慎重に比較と確認をされるとよいでしょう。
※食品表示基準第7条「栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨」(および「別表第十三」)(無糖、低糖、糖類〇%オフ等)、同第7条「糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る)を添加していない旨」(糖類無添加、砂糖不使用等)
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
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